Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№35:Treponema denticola の表層病原性成分の遺伝
子調節機構の解明
Author(s)
北村, 友里恵; 深澤, 俊也; 菊池, 有一郎; 国分, 栄仁;
齋藤, 淳; 石原, 和幸
Journal
歯科学報, 119(3): 250-250
URL
http://hdl.handle.net/10130/4944
Right
Description
目的:歯周炎は歯周病原細菌に起因した感染症の一
つである。歯周病原細菌は様々な方法によって宿主 の免疫応答から逃れ,病原性を発揮することが知ら れている。近年,がん免疫においてプログラム細胞 死‐1(programmed cell death-1,PD-1)/PD-リ ガンド‐1(programmed cell death ligand-1,PD-L1)経路が,T 細胞の機能抑制に重要な役割を果 たしていることが注目されている。しかし,PD-1 /PD-L1経路と歯周病との関連においては明らかに されていない。そこで今回,歯周炎における PD-L 1発現について in vitro および in vivo で検討するこ ととした。 方 法:ヒ ト 歯 肉 上 皮 細 胞(Ca9−22)に
Porphy-romonas gingivalisATCC 33277を感染させ12時間後 の PD-L1遺伝子発現量の変化を qRT-PCR によっ て計測した。さらに,siRNA を我々の研究グルー プで確立した非ウィルスベクターを用いた手法によ り遺伝子導入し,上皮細胞における PD-L1発現の 制御を行った。次に,全身麻酔下において,7週齢 マウスの上顎第2臼歯に絹糸(6−0)を結紮し, 実験的歯周炎を惹起させた。処置後5日目にμCT を用いて歯槽骨吸収状態を観察した。頰・口蓋側そ れぞれ6か所の計測ポイントを設定し,その合計で 歯槽骨吸収量を評価した。同時に,絹糸周囲の歯肉 組織を採取し,PD-L1の遺伝子発現変化を健常側 と比較した。 結果および考察:12時間の P. gingivalis 感染は Ca9 −22における PD-L1発現を約5倍上昇させた(p <0.001)。PD-L1を標的とした siRNA を上皮細 胞に遺伝子導入した結果,PD-L1の遺伝子発現量 は約80%抑制された。歯周炎モデルマウスのμCT 画像における計測では,絹糸結紮側において頰側で 2.5mm,口蓋側で3.4mm の骨吸収を認めた。採 取した絹糸周囲の歯肉組織内には,健常側と比較し て約20倍の PD-L1遺伝子発現の上昇が認められた (p<0.01)。以上の結果より,P. gingivalis の感染や 絹糸による炎症によって PD-L1の遺伝子発現が上 昇することが明らかとなった。また,細胞における 発現は siRNA によって調節可能であった。歯槽骨 吸収における PD-1/PD-L1機構の詳細なメカニズ ムについて,今後さらに検討を行う。 目的:Treponema denticola は,慢性歯周炎の主要な 病原菌である。本菌の表層には,Dentilisin や Msp などの病原因子が存在し,宿主防御反応の回避,組 織傷害性等の作用を示し歯周炎の発症に関わると考 えられている。Dentilisin と Msp は複合体を 形 成 し,その発現においても関連が認められる。我々は これらの病原因子の発現について解析を行った結 果,Dentilisin の欠損に伴い,T. denticola の有する 遺 伝 子 で あ る TDE_0127の 発 現 上 昇 を 認 め た。 TDE_0127のコードするタンパク質は DNA binding protein のモチーフを有し,Dentilisin に関連した遺 伝子の発現調節を司ることが示唆された。そこで本 研究の目的は,T. denticola TDE_0127の機能と役割 について解明することとした。 方法:T. denticola ATCC 35405株(野生株)を供試 し,エリスロマイシン耐性遺伝子の相同組み換えに より TDE_0127の遺伝子欠損株(YK-7)を作出し た。細菌の増殖曲線は,TYGVS 培地を用いて培養 開始から静止期までの OD 値を測定することによっ て評価した。Dentilisin 活性は発色基質(SAAPNA) を用いて測定した。TDE_0127欠損による遺伝子発 現の変化は DNA マイクロアレイにより解析した。 結果および考察:TDE_0127の欠損により増殖速度 にはほとんど影響はみられなかったが,静止期の菌 数に増加が認められた。DNA マイクロアレイによ る発現解析では,宿主細胞付着に関わると予測され ている遺伝子の発現が,欠損株において上昇してい た。Dentilisin 活性は,欠損株において約30%の低 下が認められた。これらの結果から,TDE_0127の コードするタンパク質は,酸素ストレスに対する応 答に関わるとともに,Dentilisin および付着因子等 の制御に関わっていることが示唆された。