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Title
Treponema denticola transcriptional profiles in
serum-restricted conditions
Author(s)
中西, 万理子
Journal
歯科学報, 121(1): 76-77
URL
http://hdl.handle.net/10130/5432
Right
Description
論 文 内 容 の 要 旨
1.研 究 内 容
歯周病は歯肉縁下プラーク内のグラム陰性桿菌および,スピロヘータによって引き起こされる混合感染症で ある。その進行とともに歯周組織の破壊が引き起こされ,最終的には歯の喪失へとつながる。歯周病原性細菌 のうち,口腔トレポネーマである Treponema denticola は,Porphyromonas gingivalis と Tannerella forsythia とと もに慢性歯周炎局所から高頻度で分離されその発症と進行に深い関わりがあることが報告されている。本菌は periplasmic flagella を持ち,唾液のような粘性のある液体中を進み,歯肉縁下に定着する。定着後は歯肉溝滲 出液を利用して増殖している。本菌の血清タンパクに対して走化性は,歯肉縁下への定着に重要な役割を果た していると考えられるが,血清濃度と走化性の調節機構についての報告は少ない。そこで今回我々は,T. denti-colaにおいて血清濃度変化が本菌の走化性に関わる遺伝子発現に与える影響について調べた。 2.研 究 方 法
供試菌株としては Treponema denticola ATCC 35405株を用いた。まず T. denticola を通常の10%血清を含む TYGVS 培 地(10%TYGVS),1%血 清 を 含 む TYGVS 培 地(1%TYGVS),血 清 を 含 ま な い TYGV 培 地 (TYGV)に接種し,それぞれの成長曲線から log phase の吸光度を調べた。血清の有無による遺伝子発現プ ロファイルを解析するため TYGVS 培地および,TYGV 培地で培養した菌体を log phase で集菌し RNA を抽 出した。得られた RNA から cDNA を合成し,マイクロアレイ解析により発現の変化した遺伝子をスクリー ニングした。このうち走化性に関わる遺伝子を選 び,定 量 的 リ ア ル タ イ ム PCR に よ り 解 析 し た。10% TYGVS,1%TYGVS,TYGV 中でそれぞれ培養した T. denticola を OD660の濁度に基づき経時的に集菌し,RNA を採取した。これを用い,マイクロアレイにより選択した遺伝子の発現解析を行った。
3.研究成績および結論
10%TYGVS と TYGV の log phase での遺伝子発現をマイクロアレイで比較すると,10%TYGVS 培地での 培養で発現の多かった遺伝子は methyl-accepting chemotaxis protein(dmc),2成分制御系の sensor histidine kinase/response regulator および ABC transpoter であり,一方 TYGV 培地の培養で発現が多かった遺伝子 は鞭毛関連遺伝子,sensor histidine kinase/response regulator,鞭毛の運動に関わる histidine kinase である cheX,cheA,chymotrypsin−like protease(prtB),および ABC transpoter であった。これらのうち走化性
氏 名(本 籍) なか にし ま り こ
中
西
万 理 子
(千葉県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1854 号(甲第1120号) 学 位 授 与 の 日 付 平成22年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Treponema denticola transcriptional profiles in serum-restricted conditions
掲 載 雑 誌 名 FEMS Microbiology Letters,365,2018年
論 文 審 査 委 員 (主査) 山田 了教授 (副査) 新谷 誠康教授 松久保 隆教授 東 俊文教授 石原 和幸教授 歯科学報 Vol.121,No.1(2021) 76 ― 76 ―
に関わる事が報告されている dmcB,prtB そして遺伝子上でこれらの遺伝子と tandem に配列している dmcA に関して,その発現を詳細に解析した。
10%TYGVS 培地において dmcA および prtB の経時的発現を比べると mid log phase(吸光度:0.6)で発
現が優位に高くなっているのに対し,dmcB では late log phase(吸光度:0.8)で発現が優位に高く認められ
た。このことから dmcB が dmcA prtB とは異なった制御を受けていることが考えられた。以上の結果から T. denticolaの dmcA,dmcB,prtB は血清濃度により発現が調節され本菌の定着および病原性に重要な役割を果 たすと考えられた。 論 文 審 査 の 要 旨 Treponema denticolaは歯肉縁下に定着し歯肉溝滲出液を栄養源としており,血清タンパクに対して走化性を 持つことが知られている。そこで今回我々は T. denticola の血清成分獲得に関わる遺伝子発現について走化性 を中心とした解析を行った。供試菌株は Treponema denticola ATCC 35405株を用いた。T. denticola を TYGV 培地に通常の10%血清添加した培地(10%TYGVS),1%血清添加した培地(1%TYGVS),血清無添加の
TYGV 培地(TYGV)に接種し,それぞれの成長曲線を調べ,mid-log phase における OD660の吸光度を調べ
た。TYGVS 培地および TYGV 培地で培養した T. denticola を log phase で集菌し,その total RNA を抽出し マイクロアレイ解析を行った。TYGVS 培地で発現の多かった遺伝子は methyl-accepting chemotaxis protein (dmc)B および sensor histidine kinase/response regulator であり,一方 TYGV 培地で発現が多かった遺伝 子は chymotripsin-like protease(prtB),sensor histidine kinase/response regulator,外部の信号を鞭毛モー ターに伝える histidine kinase である cheX,cheA であった。
これらの結果から prtB,dmcB およびこれら2つの遺伝子と T. denticola genome 上で tandem に配列してい る dmcA の3つの遺伝子に関して,その発現を10%TYGVS 培地,1%TYGVS 培地,TYGV 培地でそれぞれ 培養し,経時的に抽出した RNA を用いて定量的リアルタイム PCR を用いて分析した。その結果,TYGVS
培地(10%血清添加)において dmcA,prtB の経時的発現を比べると mid log phase(OD:0.6)で最も多く
なっているのに対して,dmcB では late log phase(OD:0.8)で発現が上昇していた。以上の結果から T.
den-ticolaの dmcA,prtB,dmcB は血清濃度により発現がなされており,その獲得に関わっていると考えられる。
本審査委員会では1)dmcA,prtB,dmcB 各遺伝子とその位置関係,2)ABC traspoter についての考察, 3)Che family genes と dmcA,dmcB との関わりについて,4)統計分析法についての討議ならびに質疑が なされ,概ね妥当な回答が得られた。また論文の構成や図などについて改善の指摘があり,修正がなされた。 本研究で得られた知見は,歯科医学の進歩発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判定さ れた。
歯科学報 Vol.121,No.1(2021) 77