9 6 金沢 大 学 十 全 医 学 会 雑 誌 第1 0 6巻 第1 号 9 6‑1 0 4 (19 9 7)
原 発 性非小 細胞肺 癌 におけるB cト2 蛋白お よ びp5 3 蛋白発 現 の 予後因子 と して の意義に つ い て
金沢 大 学 医 学 部 医 学 科 外 科 学 第 血講 座 ( 主 任: 渡辺洋 字 教 授)
大 竹 由 美 子
原 発性 非 小 細 胞 肺 癌1 6 8例を対 象に Bcl‑2 蛋 白お よ びp5 3蛋白の発 現 を 免 疫 組 織 学 的に評 価し, 肺 癌の予 後 因 子と し ての 意 義 を検 討し た. Bcl‑2 蛋 白 発 現の陽性 率は全 体2 9.8 % , 組 織 型 別で は扁 平上皮 痛が 3 8.4 % と腺 病2 3.7 % に対し有 意に高かった (p<0.0 5). 病 期 別の Bcl‑2 蛋 白 発 現 陽 性 寧は Ⅰ期, Ⅲ期, Ⅲ期, Ⅳ期の4 群 間で は有 意 差は み ら れなか っ た が Ⅰ, Ⅲ期と Ⅲ,
Ⅳ期の2 群 間の検 討で は Ⅰ, Ⅱ期で有 意に陽性 率が高か った(p<0.0 5) ∴性別, 年齢, T国子, N因 子, M 国 子の検 討でもBcl‑2 蛋 白 発 現 陽 性 率に有 意差は認め ら れなかっ た が, 生存率との相 関で は Bcl‑2 蛋 白 発 現 陽 性 症 例が陰性 症 例に対し有 意に良好 な 予 後を示し た b<0.0 5). これを 組 織 型 別に み た場 合, 腺 疇で は Bcl‑2 蛋 白 発 現 陽 性 例と陰 性 例で予 後に差は認め ら れなかった・ 扁 平上皮 癌で は Bcl‑2 蛋 白 発 現個 性 例は陰 性 例に対し有 意に予 後が良 好であっ た(p<0.0 5). p5 3蛋 白 発 現のl劉 生率は全体で 6 2,5 %, 組 織 塑 別で は扁 平上皮痛で7 1.2 % と瞳 癌5 7.0 % に対し高かった が, 有 意 差は認め ら れ な かっ た・ 性 別, 年 齢, 病 期, T 因 子, N 因子, M 因 子の検 討でもp5 3蛋 白 発 現 陽 性 率に有 意 差は認め ら れなか っ た. 生 存 率との相 関で はp5 3蛋 白 発 現 陽 性 症例 が陰 性 症 例に対し有 意に不 良な予 後を 示し た b <0.0 5). Bcl‑2 蛋 白 発 現とp5 3蛋 白 発 現の予後因 子と し ての有 用 性 を 検 討し た と
ころ全 体お よ び腺 病で はp5 3蛋 白 発 現のみ が有 用であ り, 扁 平上皮 癌で は Bcト2 蛋 白 発 現のみ が有 用であった・ 以 上の結 果か ら原 発 性 非 小 細 胞 肺 癌に おける Bcl‑2 蛋 白 発 現は扁 平上皮 痛に多 くみ ら れ, 原 発性 非 小 細 胞 肺 癌, こと に腺 病に おけるp5 3蛋 白 発 現お よ び扁平上皮癌に おける Bcl‑2 蛋 白 発 現は ともに有 用な予 後 国 子と なり うる と考 えら れ た.
E ey w o rds n o n‑S m all c ell lu ng c a n c e r,Bcl‑2 pr otein
,P5 3pr otein,aPOp tO Sis,Pr Ogn O Sticfa cto r
肺 癌 症 例で は臨 床 的に予 後が良 好と考 えら れ る群に おいても 不 良 な 予 後 を 呈 するものが少 なか らず 見 う けら れ, 臨 床 軋 病 理組 織 学 的 予 後 国子のみ な らず, 細 胞生物 学 的 予 後 因 子が関与 し ているl }. な か でも 頼 通 伝 子お よ び癌抑 制 遺 伝 子の閲う・が さ ま ざ ま な研 究 者に よ って検 討さ れて いる. Bcl‑2 はヒト濾 胞 性 リン パ腫で認め ら れ たt(1 4 ; 1 8) (q 3 2 ;q2 1) の転 座 点 近 傍に存 在 する癌 遺 伝 子で, ア ポ ト ー シスを抑 制 すること が知ら れ てい る恥4). 他の多 くの癌 遺 伝 子と は異 な り, 直 接 細 胞 増 殖に関 与 するので はな く, ア ポ トー シスを 介し て細 胞 増 殖に関 与 する5 ). またp5 3 は癌 抑 制 遺 伝 子のひ とつである が, これ が欠 損 あるい は変 異 する とアポ トー シスが誘 導さ れず, 損 傷D N A が複 製さ れ発 痛の 一因となる即 ).
本 研 究で はこれ らのア ポ ト ー シス制 御に関わ る痛 関 連 遺 伝 子
の発 現を免 疫 組織 学 的に評 価し, 肺 癌の予 後 因子と し ての意 義 を検 討し た.
対 象お よび方 法
Ⅰ. 対 象
1 9 8 7年1月か ら1 9 9 1年1 2月 までに金 沢 大 学 医 学 部 第 一外 科 学 教 室で外 科 的 治 療 を 行っ た原 発性 非 小 細 胞 肺 痛 症 例のう ち 病 院 病 理 部に保 存さ れ ている1 6 8症 例の パラフ ィ ンブロ ックを対 象 と し た. 男性1 2 1例, 女 性4 7例, であ り 年 齢は3 7歳か ら8 4歳 ( 平 均6 5.3歳) であっ た. 肺 癌 取 り 扱い規 紆】に よ る病 期 分 類の内 訳
は
, Ⅰ期5 9例, Ⅲ期2 9イ札 ⅢA 期4 4例, ⅢB期2 9例, nr・期7例で
あり, 組 織 型 別で は腺 病9 5例, 扁 平上皮 癌7 3例であっ た. 1Ⅰ. 免疫 組 織 染 色 法
1. Bcl‑2
Bcl‑2 に対 するパラフ ィ ン包捜さ れ た癌 組 織を4′′∠m の厚さ に 薄 切し, シ ランコ ー ティ ングスラ イ ド( 武 藤 化 学, 東 京) に付 着さ せ, 1 0 0 % キ シレ ンで 1 0分 間, 3回の脱パラフ ィ ンを 行った 後, 1 0 0 %, 1 0 0 %, 1 0 0 % , 9 0 %, 7 0 % のエタノ ー ルに て各3分間親 水し, 流 水 水 洗し た. 次に0.0 1 M クエ ン酸 積 衝 液 (0・1 M クエン 醸) 2.1gを 蒸 留 水1 0 0 0ml に溶か し, 2 N の水 酸 化ナ トT) ウ ムにて 聞 6.0 に調 整) に て 50 0 W , 5分 間, 3回の マ イ クロ ウエ 【 ブ処理 を行っ た. その後2 0分 間 室 温に て0.3 %過 酸 化 水 素 加メタノー ル で内 因性ペ ルオ キ シ ダ ー ゼ を阻 害し た. 次に ウシ正′尉血清 (ダ
コ ジャ パ ン, 京 都) を 用い て ブロ ッ キング を行い, pH 7・2のり ン酸 綬 衝 食 塩 水 (pho sphate‑bufEe r ed s alin e, P B S)にて洗 浄し,
抗 Bcl‑2 蛋 白 抗 体 (Clo n e1 2 4) (ダコ ジャ パ ン) をP B S に て4 0倍 に希 釈し, 室 温で1時 間 反 応さ せ た. 続いて P B S に て 5分臥 3 回 洗 浄 後, ピ オ ナン標 識抗マ ウス, 抗ウ サ ギ ・ ヤ ギ抗 体 (ダコ ジャ パ ン) を用いて室 温に て 2 0分 間反 応さ せ, P B S で 5分間, 3 回 洗 浄し,
ペ ルオ キ シ ダ ー ゼ標 識ス トレプ ト ア ピ ジン(ダコジ
ャ パ ン) で室 温に て2 0分 間 反応さ せ た. 発 色 剤は 四塩 酸3, 3 ̀・ ヂアミノ ベ ンチ ジン(3,3‑di am in obe n zi din etetr ahydr o ch llo ride・
D A B) ( 和 光, 束 京) 2 0mgを1 0 0mlのP B S に溶 解し, 1 0p13 0 %過
平 成8 年1 2月3 日受付, 平 成9 年1 月2 0日受理
A b br evi atio n s: D A B, 3,3‑diami n obe n zidin e tetr ahydr o chllo ride; P B S,Ph o sph ate‑bu 鮎r ed s alin e
酸化水 素水 を 加 え 作 製し た。 P B S で 5分 間, 3回 洗 浄複, こ の発 色剤を用い室 温に て顕 微 鏡で発色 状 態 を確 認し な が ら3 〜7分 間 反応さ せ1 0分流 水 水 洗し, マイ ヤ ー ・ ヘ マ ト キ シ リン( 武藤 化 学) に て1分 間核 染 色を行った・ その後 流 水 水 洗に て10分 間 色 出 しを行っ た. 9 0 %, 1 0 0 %, 1 0 0 %, 1 0 0 %のエ タノー ルにて各3分 間の脱 水を行っ た後, 1 0 0 % キ シレ ンに より3分 間, 3回の透徹 を 行い, マリノー ル( 武 藤 化 学) に て封入 を行っ た・
2. p 53
パラフ ィ ン包 捜さ れ た癌 組 織を 4〃m の厚さ に薄 切し, シ ラン
コ ーティ ングスラ イ ド に付 着さ せ, 1 0 0 % キ シレ ンで1 0分 間, 3 回の脱パラフ ィ ンを行った後, 1 0 0 %, 1 0 0 %, 1 0 0 %, 9 0 %, 7 0 % のエタノ ー ルに て各3分 間 親 水し, 流 水 水 洗し た 次に 0.0 1 M ク
エン酸緩 衝 液 中に て 5 0 0 W , 5分 間, 3回の マイ クロウエ ー ブ処 理を行っ た. その後2 0分 間 室 温に て0.3 %過 酸 化 水 素 加メタノ ー
ルで内 因性ペルオ キ シ ダー ゼを 阻害し た. 次に ウ シ 正常血清を 用いて ブロ ッキングを 行い, P B S に て洗 浄し, 抗p5 3蛋 白 抗 体 (D O‑7) (ダコ ジャ パ ン) を P B S に て 1 0 0倍に希 釈し, 室 温で 1時 間反 応さ せ た. 続いて P B S に て5分 間, 3回 洗 浄 後, ビ オ ナ ン標 識抗マウス, 抗ウ サ ギ ・ ヤ ギ抗 体を用いて室 温に て2 0分 間反 応 させ, P B S で5分 間, 3 回 洗 浄し, ペ ルオ キ シ ダー ゼ標 識スト レプ ト ア ピ ジンで室 温に て2 0分 間 反 応さ せ た. P B S で 5分 間, 3 回洗 浄後, 発 色 剤で室 温に て顕 微 鏡で発 色 状 態を確 認しなが ら
B
Fig・1・ Im m u n oh isto che mic al staining of Bcl〜2 in epide r m oi d
C a r cin o ma. T he cy topla s m of Bcl‑2 pr otein po sitiv e c ell w a s Stain edstr o ngly(朗, ×4 0;(B), ×4 0 0.
3 、7分 間 反応さ せ, 1 0分 間 流 水水 洗し, マイ ヤ ー ・ ヘ マト キ シ リンに て 1分 間 桟 敷 色を行った. その後 流 水 水洗に て10分 間 色 出しを 行った. 9 0 %, 1 0 0 %, 1 0 0 %, 1 0 0 % のエ タノ ー ルに て各3 分 間脱 水 を 行っ た後, 1 0 0% キ シレ ンに より3分 間, 3回の透 徹を 行い, マリノ ー ルに て封入 を行っ た.
】Ⅰ【. 免疫 組 織 染 色の判 定
透 過 光 顕 微 鏡 画 像 解 析 装 置 C A S 2 0 0 イメー ジ分 析 装 置 (Cell A
n alysisSyste m ,E lmhu r st,U S A) を 用い免 疫 組 織 染 色 強度を定 量 的に測 定し た. マ イ ヤ ー ・ へ マ ト キ シ リンに よ る核 染 色は 6 2 0n m の波 長で測 光し, D A B の染色 強度 (O D) は5 00n m の波長
で測 光し た.
1 . Bcl‑2の染 色 強度の測 定
Bcl‑2 の染 色 強 度の測定に は細 胞 計 測プロ グ ラムを 用い, 細 胞 質の平均 吸 光 度 を 測 定し た. 陰 性 標 準 標 本の平均 吸 光 度 測定 は 5標 本か ら任 意に選 択し た 1 0 〜1 5視 野で おこなった. 染 色標 本の平 均 吸 光 度 測 定は膿瘍のリン パ球 浸 潤の少ない部 分を任意 に選 択し, 1 0 、1 5視 野で おこなっ た. 陰 性 標 準 標 本の吸 光 度 測 定に より 得ら れ た値の平均 値をもと め、 平 均 値以 上 を陽 性、 平 均 値 未 満 を 陰性と判 定し た。
2 . p5 3の染 色 強 度の測 定
p5 3の染 色 強度の測 定に は, E R/P R定 量 分 析 法を用い, 全 柁 面 積に対 する D A B で発 色し た核の面 積 比 ( 陽 性 面 積 比, %
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Cytop la $ m a V e r age OP tic alde n sity
F ig.2. H istogr a m ofa v e r age op tic al de n sit y of Bcl‑2 staining in
Cy tOpla s m . T he c utoff pointw a sde丘n eda sl.0 5 2,Which isthe a v e r agein n egativ e c o ntr oI study (a r r o w). T he cy topla s m a v e r age op tic al de n sit yof le s stha n l.0 5 2w a s r ega rdeda s Bcl‑ 2 pr otein‑PO Sitiv e, a nd thatof l.0 5 2 0 r m O r e W a S r ega rded a s
Bcl‑2pr otein n egativ e.