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論 文 要 旨 専攻名

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Academic year: 2021

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別紙様式11

(課程博士・論文博士共通)

論 文 要 旨

専攻名

(又は推薦専攻名)

地域イノベーション学専攻 氏

ふり

がな

むらた よしまさ

村田 吉優 ㊞ 学位論文題目

地域再生のエンジンとしての官民協働に関する研究

(A study on the Public-Private Partnership as the Engine to Regional Revitalization)

アベノミクスで日本経済は回復基調にあるが、国も地方自治体も財政が依然深刻な状 況にあることは変わらない。経済成長と財政再建を両立させなければならないが、それに は高度なマネジメントが必要である。地方においては権限と財源が不足する中、公共サー ビスを行政だけで賄うには限界があり、官民一体となって公共経営を行う必要がある。そ の官民協働の発想が公共を改革し、地域再生のエンジンになると考え、歴史や海外の事情 を踏まえ研究を行った。

第1章では、 「地域再生の課題」を明確にした。日本は東京一極集中で健全な国家とは言 えない。東京も地方も発展する健全な国家を目指さなければならない。よって、地域再生 なくして日本の再生はないとの見地に立つ。

ところが、中央集権体制の弊害で地方は疲弊したままであり、地方分権体制への移行が 求められる。

また、国家財政は債務残高が約 1,000 兆円にも及び財政破綻に陥りかねない。地方の財 政は、予算の 1/3 以上を国に依存し、地方債と合わせると 1/2 近くが依存財源である。

公共の危機にも拘らず、国も地方も意識が薄い。地方が自立するためには、行政の自助 努力だけでは限界があり、民間活力の導入を前提とする官民協働が有効であるとの先行研 究が多々あるものの、想定通りには進んでいない。日本特有の公共空間の概念に関する研 究も踏まえ、地域再生の条件を検討した。

その結果、地域の統治者である地方自治体が地域再生のリーダーとしての役割を果たす には、①地方を経営できる経営権、②地方を経営できる経営能力、③地域住民・民間企業 が協働して地域を支える共助精神の三条件を整えることである。そして、官民協働を地域 再生のエンジンとして機能させるためには、日本の公共空間を垂直的官民支配構造から水 平的官民協働構造にパラダイム転換していく必要があることを明確にした。

第2章では、 「地方自治体の実情」を精査した。まず、地方自治体の組織と機能を確認し たうえで、地方自治体の経営権を検証したが、やはり、地方行政は中央集権体制下にあり 経営権が限定的であることを論証した。

また、地方自治体の経営能力を量るべく、財政の実情を把握するため各指標を分析した。

その結果、大方の自治体財政が危機的状況にあることが判明した。かつ、少子高齢化に

(2)

より、税収の減少と社会保障費等歳出の増大が進み、一層財政が逼迫していくことが予測 され、行政経営能力に問題があることも判明した。地方財政健全化法の導入により、自治 体財政の健全化には力を入れているが、それだけでは経営能力の向上にはなかなか結びつ かない現状にある。

中央集権体制下で行政経営にも限界があるが、地域のことは国頼みではなく地域自身で 取組まなければならない。国家が財政破綻の懸念に直面する中、地方は自活し自力で地域 経営を行わなければならなくなる。それには、依存財源に依存せず自主財源だけで賄うと いう基本路線を確立せねばならない。そこに最大の努力を傾けることが経営でありマネジ メントである。それが、地方自治体の能力が向上することであり、ひいては地域活性化が 進むという論理を策定した。

第3章では、 「地方行財政改革の歴史的考察」を行った。日本は中央集権国家体制である が、歴史的にみて中央集権体制が確立したのは明治時代であり、その前までは実質的には 地方に「主権」があり地方分権は確立されていたと考えられる。

実質的に地方が自立していた古代から近世にかけての地方行政や地域起こしを論究した が、歴史的に資料や文献が整っているのは江戸時代であることから、主として当時の藩政 改革の分析を行った。

保科正之と上杉鷹山の藩政改革を検証したところ、傑出して優れた為政者が登場すると、

官主導による改革を民衆が支持し、経営能力と共助精神を合わせ三つの条件が揃って地域 再生が実現したことを明らかにした。

彼らが行った政策は、共に緊縮財政と殖産興業である。今で言う、財政再建と成長戦略 である。為政者が慈愛に満ち、かつ経営能力が高いと官主導による地域活性化が図られた ことを明らかにした。また、地方から改革を先行させることが、国全体の再生に及ぶこと を示唆しており、歴史的考察の結果、地域再生の意義を見出すことができたのである。た だ言うまでもなく、当該改革は封建体制下で展開されたものであって、民主主義社会の現 代とは政治社会制度が異なる点は留意すべきである。

第4章では、 「海外の地方自治制度と英国の行財政改革」について分析した。英国、ニュ ージーランド、オーストラリアそして米国の地方自治体の仕組みについて国際比較を試み た。各国における官と民との関係性が水平的であり、また地方が経営権を有していること を検証した。

そして、近年の行財政改革の取組みについて英国を先進事例として検証したところ、公 共改革に大きな成果が上げられてきた。

「英国病」と言われた国家の衰退に歯止めをかけるべく、1980 年代、サッチャー政権は、

NPM 型行財政改革と言われる公共の構造改革に取り組んだ。福祉国家から決別して、市場経

済的手法を公共経営に導入した。公共サービスの民間への移管と、行政マネジメントへの

民間経営手法がそれである。こうした成果として、地域再生の三条件の一つである、公共

部門の経営能力向上を図った。

(3)

さらに、メージャー政権時に PFI を導入し、労働党ブレア政権の時代に「第三の道」へ の修正が行われ、住民も公共活動の受け手から担い手としての役割を果たす協働政策とし て PPP の手法を取り入れたことにより、三条件が整った形で改革が進展した。結果として

「英国病」の克服に至った背景を明らかにした。

英国のこうした改革は、国家主導型の成功モデルである。当時の英国の情勢においては 必然と言えるが、その後の財政状況は必ずしも順調ではなく、国家統治のあり方について 模索が続く。上杉鷹山が進めたような地域に根差す地域主導型の改革が行われ、全国に及 んでいたなら、自律的地域改革の帰結として健全かつ安定的な国家統治を導いたであろう。

第5章では、 「官民協働による地域再生」を検討した。第1章から第4章までの調査・研 究結果を踏まえて、本研究の主な研究成果となる「官民協働型行政情報誌共同発行事業」

について検討し、共助社会の構築手法を提言した。

日本では小泉政権成立後、NPM 型行財政改革の手法が取り入れられ、地方自治体を巻き込 んだ三位一体改革として進められ、地域再生の三条件である地方分権による経営権と地方 の経営能力向上に取組んだ。英国と同様に、NPM 型行財政改革の市場経済的手法を公共経営 に導入するものである。

それは、理念としては正しいが、三位一体改革は容易には地方の理解を得られず、地方 主導型への転換に至らなかった。その理由として、NPM 型行財政改革、さらには PFI、 PPP を推進するうえで、日本的な公と私の関係が何かと影響を及ぼしていたからである。公の 私に対する優位性を過度に尊重しすぎると、お上意識的な方向に向かい、その垂直的官民 支配構造が官民協働推進の障害となり、日本では、NPM 型行財政改革の成功事例があまり多 くないのである。また、従来の官から民への発注行政の慣習が PFI、 PPP 推進の妨げにも なった。

そこで、垂直的な官民支配構造を、先に掲げた事業の仕組みを通じて水平的官民協働構 造に変革することにより、官と民が一体となり公共を革新しうるとの論理を構築した。事 業を実践することにより、官と民との異分子結合が相乗効果を発揮し公共の領域にイノベ ーションを起こすというものである。

水平的官民協働構造は、地方自治体が従来の発注型行政の発想ではなく、民間企業側も ビジネスライクな考え方には立たないことが要件である。地域社会をサスティナブルなも のにしていくために、双方の違いを認め立場を理解して官民一体となって取組むことによ って実現できるものである。

それは、市民や民間企業が地域社会の一員として共に公共を支えるという「共助精神」

である。本事業は「共助精神」の理念を育み、その理念を啓蒙するものと確信する。

水平的官民協働構造により、官民一体となった公共サービスを実現できるとの観点に立 って、行政情報誌共同発行事業を実践したところ、行政側ゼロ予算事業の構造となり、地 方自治体の財政負担が不要であるとの納得が得られた。行政側の負担を大きく軽減するこ とで水平的官民協働構造の突破口を開けられるという概念が実証された。

また、地方自治体業務の中で、自治体職員の専門性や高い能力を発揮すべき専門・非定

(4)

型の業務領域、即ち外部化を図ることが困難な領域において、民間の知恵や資金を導入し、

官民協働での取組みを行うことにより、新しい価値を創造しうるとの論理も構築した。そ れに基づき、官民協働型行政情報誌共同発行事業を実践した結果、財政コストの削減を図 り、事業としても成り立たせることができた。これは、今まで公共の領域において誰も成 し得なかったことを実現させたのである。行財政改革への貢献と経済的成果の相反するも のを両立させるという、まさに新しい価値を創造できる論理を実証した。

これは、ハーバード大学マイケル・ポーター教授の唱える、社会的価値と経済的価値の 創出を両立させる CSV 理論とも合致する。

本来の官民協働が機能すれば、必ずしも三条件が揃わなくても、行財政改革への貢献の みならず地域経済への貢献をも同時に実現することを実証した。我が国の 400 を超える地 方自治体との間で共同発行を行ってきたことが、本研究で示した論理が正しいことを証明 している。

公共の領域において水平的官民協働構造を地域再生のエンジンとして機能させた一つの 成果である。この発想は社会を変革しうる有益なものであると確信し、共助社会のあり方 として提言した。

続紙 有□ 無□

参照

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