別紙様式11
(課程博士・論文博士共通)
論 文 要 旨
専攻名
(又は推薦専攻名) 地域イノベーション学専攻 氏ふり 名がな 上杉うえすぎ 謙次郎け ん じ ろ う ㊞
学位論文題目
AlNテンプレートの高品質化と深紫外発光素子応用に関する研究
(英訳又は和訳:Crystalline Quality Improvement and Deep-Ultraviolet Light-Emitting Device Applications of AlN Templates)
III族窒化物半導は、AlN、GaN、InNの混晶化により深紫外域から近赤外域までの広い波 長帯域に対応するバンドギャップエネルギーを取ることが可能であり、直接遷移型のバン ド構造を有することから、青色発光ダイオード(Light-Emitting Diode : LED)に代表される受 発光素子として広く実用化されている。近年では電力変換用素子としての実用化も急速に 進められているほか、LED およびレーザーダイオードの短波長化が進められている。波長 300 nm以下の発光波長を有する深紫外(Deep-Ultraviolet- : DUV-)LEDは、例えば殺菌用途へ の応用が期待され、水銀ランプ代替や小型である点を活かした新規アプリケーションの開 発が進められている。しかし、青色LEDの外部量子効率が既に80%を超えているのに対し てDUV領域のそれは著しく低く、波長280 nmでは20%、波長265 nmでは5%程度の値が 報告されているのみである。これは、高密度の結晶欠陥に起因した低い内部量子効率、p型 ドーピング技術の未成熟による低い電流注入効率、p型層や電極における光吸収に起因した 低い光取り出し効率に由来する。本研究では、この中で結晶欠陥の低減による内部量子効 率の向上に着目した。昇華法により作製されたAlN 自立基板が極めて高価であるため、一 般的な DUV-LED の結晶成長には sapphire(0001)基板上に有機金属気相成長(Metalorganic Vapor Phase Epitaxy : MOVPE)法でヘテロエピタキシャル成長させたAlNをテンプレートと して用いる。この際、AlNとsapphireの間の大きな格子不整合率に起因して、sapphire(0001) 基板上AlNには高密度の貫通転位が発生する。AlN の貫通転位密度を低減するためには、
典型的には数μm程度の厚いAlN を成長させて貫通転位同士を対消滅させることが必要と なる。これに対して、スパッタ法で成膜したAlNを高温で熱処理(アニール)することで、1 μm 以下の膜厚でも1×109 cm-2程度の比較的低い貫通転位密度を得られることが報告され、低コ ストかつ簡便な高品質AlNテンプレート(Face-to-Face Annealed Sputter-deposited AlN : FFA Sp-AlN)作製技術として注目されている。本研究は、この技術の課題であった高温アニール 中のクラック発生の抑制と更なる貫通転位密度の低減、そしてDUV-LEDへの応用に向けた 課題抽出とその解決策の提言を目的とした。
第 2 章では、本研究で用いた試料作製方法と試料評価方法について装置構成を述べた。
本研究では試料作製のため主にAlNの成膜のためのスパッタリング装置、成膜したAlN薄 膜を熱処理する高温アニール装置、AlNとAlxGa1-xNを成長させるためのMOVPE装置を
続紙 有■ 無□
別紙様式11-続紙
(課程博士・論文博士共通)
氏ふり
名がな 上杉うえすぎ 謙次郎け ん じ ろ う ㊞
用いた。また、作製した試料の構造的特性と光学的特性を評価するために、原子間力顕微 鏡、X線回折、カソードルミネッセンスなどを用いた。
第3章では、高温アニールに伴うFFA Sp-AlNテンプレートのクラック発生を抑制するこ とを目的として、スパッタ成膜条件の制御を行った。成膜圧力を低下させてAlN に圧縮応 力を発生させることで、比較的厚膜のAlN であっても高温アニールに伴うクラック発生を 抑制できることを見出した。また、AlN の厚膜化により貫通転位密度が低減することを見 出し、最適化された作製条件において貫通転位密度を2.07×108 cm-2まで低減させた。
第4章では、FFA Sp-AlNテンプレート上へのAlxGa1-xNのMOVPE成長に伴う課題抽出を 行った。FFA Sp-AlNテンプレート上へAlNをホモエピタキシャル成長させることで、平坦 性が高く残留不純物濃度の低いAlNを得ることに成功したが、さらにその上へAlxGa1-xNを 成長させた際に、顕著な表面平坦性の低下と結晶性の低下が生じることが明らかとなった。
そこで、MOVPEでsapphire(0001)基板上に直接成長させたAlN(MOVPE-AlN)テンプレート とFFA Sp-AlNテンプレートの比較を行った。AlNテンプレートの結晶性とAlxGa1-xN成長 初期の表面モフォロジーを比較することで、AlxGa1-xN の成長に伴う表面平坦性低下は、ら せん転位あるいは混合転位由来のスパイラル成長が巨大なヒロック構造を形成することが 原因であること、らせん転位密度および混合転位密度が低いFFA Sp-AlNテンプレート特有 の問題であることを見出した。
第 5 章では、らせん転位および混合転位由来のスパイラル成長を抑制することを目的と して、オフ角の大きい微傾斜sapphire(0001)基板を用いてFFA Sp-AlNテンプレートを作製 し、その上にAlxGa1-xNをMOVPE成長させた。基板オフ角の増大に伴ってAlxGa1-xNの表 面平坦性が向上することを確認し、表面平坦性の向上に伴って、多重量子井戸(Multiple Quantum Wells : MQWs)構造の発光効率および発光波長均一性が向上することを示した。
第6章では、FFA Sp-AlNテンプレートを用いてDUV-LEDを作製し、発光波長260.3 nm
において 1.24%の外部量子効率を得た。また、FFA Sp-AlN テンプレート上に作製した
DUV-LEDはMOVPE-AlNテンプレート上に作製したDUV-LEDと比較して発光効率が高い
ことを確認し、DUV-LED応用に向けたFFA Sp-AlNテンプレートの優位性を示した。
第 7 章 で は 、6H-SiC(0001)基 板 を 用 い て FFA Sp-AlN テ ン プ レ ー ト を 作 製 し た 。 Sapphire(0001)基板上に限らず、6H-SiC(0001)基板上においても高温アニールにより AlN の 結晶性が顕著に向上することを確認した。また、膜厚の薄いAlN において、AlN の極性が 反転した領域が、基板上に周期的に形成されることを見出した。
第8章では、本研究で得られた結果を総括した。