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論 文 要 旨 専攻名

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Academic year: 2021

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別紙様式11

(課程博士・論文博士共通)

論 文 要 旨

専攻名

(又は推薦専攻名) 地域イノベーション学専攻 ふり がな わた なべ りゅう

ポリエチレンオキシドの幾何学的構造制御に基づく結晶化抑制と高分子固体電解質への応用

(英訳又は和訳:Suppression of Crystallization of Polyethylene Oxide by Modification of Geometric Structure and Application to Polymer Electrolyte)

ポリエチレンオキシドは安全・軽量の特徴を有する次世代全固体型リチウムイオン電池 に用いられるイオン伝導性高分子として最も研究されてきている。ただし、リチウムイオ ンは、ポリエチレンオキシド鎖のセグメント運動によって移動するため、ポリエチレンオ キシドが結晶化する室温付近において、イオン伝導度が大きく低下することが大きな課題 である。したがって、室温付近におけるイオン伝導度の低下を防ぐために、今日多くの研 究がなされてきている。本研究では、ポリエチレンオキシドが抱えている低温領域におけ るイオン伝導の低下という問題を解決するために、可塑剤の添加という手法ではなく、高 分子鎖の幾何学的構造を分子レベルから設計することで結晶化抑制を実現する手法につい て検討した。

最初に、ポリエチレンオキシドに環状分子を糸通しさせ、擬ポリロタキサン構造へ誘導 することで、結晶化を抑制する検討を行った。環状分子としては、ポリエチレンオキシド と同じ繰り返し単位を有する平均分子量が1,000の環状ポリエチレングリコールを用いた。

分子量20,000の直鎖状ポリエチレングリコールと環状ポリエチレングリコールを少量のア

セトニトリルに溶解させ、1時間の超音波照射を行った。溶媒を留去して得られた混合物の 熱分析を行ったところ、環状ポリエチレングリコールの融点が完全に消失し、また、直鎖 状ポリエチレングリコールの結晶化温度が大きく低下した。環状ポリエチレングリコール の代わりに、同じ分子量 1,000 を有する直鎖状ポリエチレングリコールを添加して同様な 実験を行ったところ、そのような大きな結晶化抑制は観測されなかった。さらに、平均分

子量が 6,000 1,000 の環状ポリエチレングリコール同士の混合溶液に超音波処理を行っ

ても、顕著な結晶化抑制は観測されなかった。すなわち、超音波処理過程で環状ポリエチ レングリコールが直鎖状ポリエチレングリコールと糸通しを行い、擬ポリロタキサンが形 成されたことで結晶化が抑制されたことがわかった。そこで、ポリエチレンオキシドと環 状ポリエチレングリコールから得られた擬ポリロタキサンにリチウム塩を添加することで 電解質を調製し、そのイオン伝導度を測定した。その結果、リチウム塩濃度が高い場合は、

リチウム塩の可塑化効果が顕著に表れ、擬ポリロタキサンの形成による結晶化抑制の効果 が観測されなかった。しかし、リチウム塩濃度が低い場合は、低温領域におけるイオン伝 導が向上し、擬ポリロタキサン構造の形成が結晶化抑制に大きく寄与したことがわかった。

続紙 有☑ 無□

(2)

別紙様式11-続紙

(課程博士・論文博士共通)

ふり

がな わた なべ りゅう

次に、ポリオチレンオキシドに糸通しを行い、擬ポリロタキサンを形成させるために成 分として、大環状クラウンエーテルに着目した。具体的には、42-クラウン-14 とビス(m- フェニレン)-32-クラウン-10を用いて、平均分子量が20,000のポリエチレングリコールと の糸通し実験を行った。超音波処理を行うことで結晶化の抑制を確認することはできたも のの、その効果は弱かった。その理由として、クラウンエーテルと高分子鎖末端に存在す る水酸基との間の水素結合が、糸通しの駆動力として有効に働いていなかったと考えられ る。すなわち、より大きな環サイズを有する平均分子量が 1,000 の環状ポリエチレングリ コールの方が、統計的な糸通しという点で有利であったと結論した。

最後に、結晶化しやすい高分子であっても、その鎖構造を直鎖構造から分岐構造にする ことで、分子全体の対称性が低下し、結果として結晶化が抑制されることに着目した。そ こで、幹高分子と枝高分子の両方がポリエチレンオキシドで構成される分岐ポリエチレン オキシドの合成検討を行った。通常のポリエチレンオキシドには、分岐構造を導入するた めのとっかかりとなる反応性官能基が存在しない。そこで、OAロールや各種ホース類で用 いられているエチレン-エピクロロヒドリン共重合体に着目した。また、エチレン-エピ クロロヒドリン共重合体に効率よくポリエチレンオキシド側鎖を導入する手法として クリックケミストリーを応用することにした。具体的には、エチレン-エピクロロヒドリ ンとアジ化ナトリウムとの反応を行い、クロロ基を定量的にアジド基に変換した。別途、

平均分子量が 1,000 のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとプロパルギルブロミ ドとの縮合反応を行い、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルのω末端にアジド基 と反応可能な炭素-炭素三重結合を導入した。幹高分子の熱的な鎖切断を防止するために、

クリック反応を銅触媒存在下クロロホルムを溶媒中で行うことで、目的のグラフト化反応 が進行し、分岐構造を有するポリエチレンオキシドを調製することができた。その熱分析 を測定することで、幹ポリエチレンオキシドの結晶化を抑制できることを明らかにした。

以上、イオン伝導に寄与しない液体有機分子や無機酸化物などの可塑剤を添加しなくて も、ポリエチレンオキシドの幾何学的構造を制御することで、異種成分を含まず、ポリエ チレンオキシドのみから構成される固体電解質が可能になることを実験的に明らかにする ことができた。

参照

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