別紙様式１１
（課程博士・論文博士共通）
論 文 要 旨
専攻名
(又は推薦専攻名) 地域イノベーション学専攻 氏ふり 名がな 万まん 華か ㊞
学位論文題目
「中国における住宅の市場化と住宅価格の形成―深圳市の住宅市場を事例に」
（英訳又は和訳：Housing marketization and housing price formation in China: Housing market in Shenzhen）
1978 年に提出された経済的政策「改革開放」により、中国は従来の計画経済時代の終焉 と社会主義的市場経済時代への突入を告げた。こうした40年間での飛躍的な経済発展は世 界中の注目を集めている。近年経済の高成長と伴い、中国の都市部と農村部は大きく変容 を遂げつつある。改革開放後、農村部では大量の余剰労働力が発生する一方で、都市部、
特に東部沿海地域の大都市においては、労働力の需要が高まり、1978 年以前には厳しく制 限されていた農村から都市への移動が緩和された。その結果、都市人口の激的な増加とと もに、住宅・商業用地等の都市的な土地利用への需要が増加し、都市部の周辺にある農村 の土地が政府により大量に収用・転用された。このような都市化の波は東部沿海地域から 中部などの内陸部へと広がり、やがて全国規模へと拡大した。
一方、改革開放以降、中国は独自の社会主義市場経済体制のもと、経済改革の一環とし て住宅制度改革に取り組んだ。その中心は住宅供給方式の改革と言える。1980 年4月、鄧 小平の「住宅問題についての談話」をきっかけとして、国家・企業が住宅を直接建設・供 給する従来の福祉的な供給方式から市場を通じた住宅の供給方式への転換が試行された。
その後、1998年に国務院が｢都市住宅制度改革を深化させ、住宅建設を加速させることに関 する通知｣を発表すると、福祉的な住宅分配制度は廃止され、住宅の商品化が進むとともに、
住宅市場が創出された。しかし、都市化と住宅の商品化の急速な進展は、都市部住民の居 住環境を大きく改善する一方で、消費や投資を目的とする住宅購入の増加と不動産価格の 急激な高騰をもたらした。その結果、北京、上海などの国際的な大都市においては、住宅 価格はもはや大多数の市民にとって、その支払い能力を超える水準となっている。なぜ中 国の大都市において住宅価格がこれほど急騰しているのか、また、こうした住宅価格の高 騰に対して、国民が負担できる(アフォーダブルな)範囲内で住宅を取得できるようになる ためには、どのような政策が求められるのか。これらの問題に答えるため、中国における 住宅の市場化の特徴と住宅価格の形成メカニズムを明らかにすること、それにより、中国 におけるアフォーダブルな住宅価格を実現するための政策課題についての手がかりを探る ことが本論文の課題である。
続紙 有 無□
別紙様式１１－続紙
（課程博士・論文博士共通）
氏ふり
名がな 万まん 華か ㊞
そこで、本論文ではまず中国における住宅の市場化の条件となる中国特有の土地制度と、
中央・地方間の財政関係の特徴を明らかにするとともに、住宅の市場化の主体となる地方 政府の役割と、不動産市場および不動産企業の発展過程を詳しく考察した。次、中国の全 国的な住宅市場の動向ならびに住宅価格の地域的特徴について概観したうえで、中国にお ける住宅価格の高騰地域の１つである深圳市を事例に取り上げ、政府による土地収用から 住宅の開発・販売に至る住宅価格の形成メカニズムを実証的に明らかにした。さらに、近 年のバブルを巡る議論を踏まえて、深圳市の住宅価格に対する世帯年収の倍率のデータの 分析を通じて、近年住宅価格が市民にとってアフォーダブル水準であるかどうについて詳 しく検証した。
