アルコキシド法により合成したチタン酸鉛超微粒子 の焼成過程
著者 石川 賢司, 野村 卓志, 大澤 永, 高田 一正, 岡田 長也, 萩野 實
雑誌名 静岡大学電子工学研究所研究報告
巻 28
号 1
ページ 37‑41
発行年 1993‑08‑31
出版者 静岡大学電子工学研究所
URL http://doi.org/10.14945/00008627
静岡大?','U: C ‑ T?ii)f 究 l f r 研究報;!i‑ 2 8 ( 1 ) ( 1 9 9 3 ) 37~41
アルコキシド法により合成したチタン酸鉛超微粒子の焼成過程
石 川 賢 司 , 野 村 卓 志 , 大 津 永 , 高 田 一 正 , 岡 田 長 也 , 萩 野 賓 ( 1 9 9 3 年 6 月 7 日受理)
C a l c i n a t i o n P r o c e s s o f PbTi0 3 Powder P r e p a r e d by a n A l k o x i d e Method
K e n j i ISHIKAWA , T a k a s h i NOMURA , H i s a s h i OSAWA ,
Kazumasa TAKADA , Nagaya OKADA a n d Minoru HAGINO
( R e c e i v e d J u n e 7 , 1 9 9 3 )
C a l c i n a t i o n p r o c e s s i s i m p o r t a n t t o o b t a i n n a n o m e t e r ‑ s c a l e u l t r a f i n e p a 目 i c l e so f f e r r o e l e c t r i c m a t e r i a l b e c a u s e i t d e t e r m i n e s p r o p e r t i e s o f p a r t i c l e s s u c h a s g r a i n s i z e and c r y s t a l l i n i t y . We i n v e s t i g a t e d t h e c a l c i n a t i o n p r o c e s s o f PbTi0 3 by means of TEM a n d X‑ray d i f f r a c t i o n . Amorphous powder of PbTi0 3 p r e p a r e d by an a l k o x i d e method c r y s t a l l i z e s by 1 h o u r c a l c i n a t i o n a t 500
oC . The c r y s t a l i z a t i o n t e m p e r a t u r e i s q u i t e l o w e r t h a n t h a t o f b u l k , 900
oC . N a n o m e t e r ‑ s c a l e c r y s t a l s of PbTi0 3 i s o b t a i n e d a t c a l c i n a t i o n t e m p e r a t u r e s between 500 " C a n d 700
oC. The g r a i n s i z e c a n b e c o n t r o l l e d w i t h i n t h e t e m p e r a t u r e r a n g e .
1 . は じ め に
従来の半導体メモリは,電源を供給している問だけ記憶を保持する DRAM や SRAM が主に用いられ てきた.近年,電源を供給していない時にもその記憶を保持するメモリ IC が,半導体と強誘電体材料 を組み合わせることによって実用化されはじめた.これをきっかけとして LSI への強誘電体材料の組 込みが検討され,誘電体薄膜の形成技術が注目を集めている,一般に,強誘電体材料を薄膜化すると,
サイズ効果によってその誘電特性が変化するため,電子デバイスへの応用の観点からも,このサイズ 効果を調べることは重要である.
われわれは,誘電体のサイズ効果を応用して低ヒステリシス線形アクチュエータの開発を目指して 研究を行ってきた.強誘電体材料であるチタン酸ジルコン酸鉛 ( P b Z r ] x T i x O l , PZT) を用いたアクチユ エータでは,材料内の分域の移動によってヒステリシスおよび非線形が生じる.そこで,アクチュエ ータの形成に用いる材料粉体の粒径を小さくし,粒子表面の効果によって分域の移動を抑えることに よりヒステリシスが無く棟形性のよいアクチュエータを得ることができると考えられる 1 ) これまで,
アルコキシド法
2)を用いて微粒子を形成して原料の粉体として用いること九および粒径の増加を抑え てかつ結晶性のよい PZT が得られる HIP 法やホットプレス法などの焼成方法を試みることによって,
従来の 1 0 分の l 以下のヒステリシスしか持たず,線形性の高いアクチュエータを開発することに成功 したへまた,得られたアクチュエータの構造を透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察することにより,
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焼成後のPZT セラミックス中にもとの超微粒子の構造が残っており,これが分域の移動を妨げている ためにヒステリシスが小さく線形性が高いというモデルを提案した九これらの研究により,アルコ キシド法によって微粒子材料の粒径を小さくするだけではなく,焼成過程における結晶化の過程およ び粒子成長による粒径の変化を精密に制御することが,特性のよいアクチュエータ実現のために重要 であることがわかった.
そこで,ここでは形成したアクチュエータ用強誘電体材料の結晶性および粒径を主に決定する焼成 過程についてさらに詳しく調べ,サイズ効果の得られる数 nm から数百 nm の結晶化した微粒子が得ら れる焼成条件の検討を行った.強誘電体材料としては, PZT からジルコニウムを除いた単純な組成を 持つチタン酸鉛 (PbTi0 3 , PT) を用いた.円を用いて決定した焼成過程および最適焼成条件は, PZT に 対しでも適用可能であると考えられる.
2 . 実験方法
本研究で用いたアルコキシド加水分解法の流れ図を F i g . l に示す.金属アルコキシドである T i ( O ‑ i ‑ C3 H7 ) 4 および、P b ( O ‑ i ‑ C3 H7 ) 2 をそれぞれ有機溶媒に溶かしてO . 2 mo l / l の溶液としたものを 100ml づっ混合し 室温で 2 時間撹排した,有機溶媒は,含有する水分を完全に除去するために水素化カルシウムを加え て 8 時間環流を行った後に蒸留したものを用いた.これを 80 "Cに加熱して2 時間環流したのち,化学 量論比で 1 0 倍の量の水(蒸留水8 . 2 3 m l ) を少しず、つ加えて加水分解した.このとき,式(1)で示すよう な化学反応がおき,生成された PT が沈殿する.
T i ( O ‑ i ‑ C 3 H7 ) 4 +Pb (O
・i ‑ C 3 H 7 ) 2 + 3 H 2 0 → PbTi0 3 +6C3 H7 0H
得られた沈澱物を含んだ溶液をロータリーエパポレータ で真空乾燥させることにより, PT の微粒子が得られる.こ のようにして得られた微粒子はアモルファス状態であり,
このままでは良好な誘電特性を示さない.一般的にセラミ ックを製作する時には 得られた粉体をプレスして固め目 的とする形状に整形した後 結品化して良好な誘電特性が 得られる 900
0C 付近の温度まで加熱して焼成処理を行なう.
本研究では,この焼成過程を調べるために,特に整形は行 わずに粉末のまま加熱処理を行った.焼成は電気炉を用い て大気雰囲気中で行った.焼成時間は l 時間と一定にし,
焼成温度を400
0C から 900
0C まで変化させて処理した試料に 対して,焼成温度がPT 微粒子の結晶性および粒径に与える 影 響 を 調 べ た , 処 理 後 の 試 料 の 評 価 は 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 (TEM) および粉末用デイブラクトメータを用いたX 親回折 法によって行った.焼成過程における結晶化過程を X 線回
︒ ︒
今︑d
︑ ︑ . .
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PbTi0 3
F i g . 1 Flow d i a g r a m o f t h e p r e p a r a t i o n o f
PbTiO J p o w d e r s by a n a l k o x i d e m e t h o d .
また,得られた微粒子の粒径を TEM 像および X 線回折プロファイルの半 値幅から求め,焼成温度との関係を調べた.
折プロファイルから調べた.
結果と考察 3 .
X 線の回折プロファイルを測定した. その結 まず,焼成中の微粒子の結品化過程を調べるために,
果を F i g . 2 に示す,温度が 4 5 0
0C 以下で焼成を行った試料では微粒子を支持するために用いたアルミニ ウムのピーク以外には, 2 9
0付近をピークとするブロードな回折が見られるだけであり,得られた微 アモルファス状態の 粒子がアモルファス状態であることを示している.焼成温度が 4 7 0 "C付近から,
しだ 微粒子からのブロードなピークに重なって,
( 1 0 1 )
いにバルクの結晶面に対応する位置に回折ピーク が現れはじめる. 4 8 0
0C では低角度側よりそれぞ
( . ﹄ ‑ 同 ) k p ‑ 2 2 2
れ ( 1 0 0 ) , ( 1 0 1 ) , ( 1 1 0 ) 面に対応する位置にピーク これと同時にアモルファスからのピーク が現れ,
が減少し, 5 0 0 "Cでは完全に結品からの回折ピー 通常のPT の焼 これより,
クのみが観察された.
成では結品化のために 9 0 0 "Cという高温が必要で アルコキシド法で形成した PT 微粒子は あるが,
5 0 0 "Cの低い焼成温度で結晶化することが明らか
3 5 25
このように低い結晶化温度が得られた アルコキシド法によって青三成された{故粒 になった.
原因は, D i 佐 a c t i o n An g l e 2 8 ( d e g . )
F i g . 2 X‑ray d i f f r a c t i o n p r o f i l e s of PbTi0 3 p o w d e r s c a 1 c i n e d a t v a r i o u s t e m p e r a t u r e s . 子の直径が3nm 程度と従来の粉体の粒径である数
μ m に比べて非常に小さい径を持っているためで
2 0 0 0 ←
あると考えられる.
O
1 5 0 0 ←
1 0 0 0 ト
( E E )
自 国
E E U
これらの各焼成温度で得られた微粒子を 次に,
TEM により観察した結果を F i g . 3 に示す.試料は,
焼成後の微粒子を有機溶媒中に入れ,超音波洗浄 器で撹排した後にスポイトで上澄み液をメッシュ
この試料に対 上にたらし,乾燥させて準備した.
して, TEM を用いて各粒子の輪郭を観察して粒 O
5 0 0 ト
径を決定した.焼成温度の上昇につれて粒径は
O
♀~
6 0 0
..m.L
5 0 0 20nm 付近から 1 7 0 0 n m まで大きくなり,温度に対
9 0 0 8 0 0
7 0 0 また,焼成温度 。
して指数関数的に変化している.
Ca 1 c i n a t i o n T e m p e r a t u r e C C )
F i g . 3 G r a i n s i z e o f t h e P b T i O ) d e t e r m i n e d b y TEM a s a f u n c t i o n o f c a 1 c i n a t i o n t e m p e r a t u r e が 5 0 0
0C 以下では粒径はほぼ一定となりあまり変
39‑
この様子をより明確に表わすため
に,粒径と焼成温度の関係をアレニウスプロット
化していない.
︒ ∞
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