弗化亜鉛の加水分解による 酸化亜鉛単結晶の成長過程
(Ⅱ)
久保為久麿・藤井光広・江上慶記
(昭和42年12月1日受理)
Process of the Crystal Growth of Zinc Oxide by Hydrolysis of Zinc Fluoride (Ⅱ)
Ikumaro KUBO, Mitsuhiro FUJII and Yoshinori EGAMI
Abstruct
Morphological change of ZnF2 film and ZnO crystal in addition to the growth rate of ZnO one are investigated continuouly at temperatures from
400℃ to 1100℃ by means of high‑temperature microscopic study. The ex‑
perimental results confirm the suggestion that ZnO is produced, by hydrolysis of the ZnF2 deposited on the surface of the growing crystal of which tempera‑
ture is near 900℃1).
緒言
竪型白金るつぼの底部に脱水されたZnF2粉末(10g)を装填して加熱する。一方(品提) N2ガスを白金パイプを通してるつぼ内部に導く。長時間るつぼ底部の温度を1100oCに保つ と,るつぼ壁およびパイプ壁の900c
(850‑900)の温度領域にZnO
(znF2)針状結晶が成長する。これは結 晶成長領域に析出したZnF之が ZnF2+H20一事ZnO+2HF‑‑‑CO
の反応によりZnOとなり結晶表面上を拡散再配列することによるらしいと考えられる1)0 本論文においては高温銀線鏡2)のstagechamber内で,加熱温度によるZnFs薄膜の変 化,その薄膜からのZnO針状結晶の成長および久保の方法3)で作製したZnO針状結晶の熟 腐蝕などについての直接観察による結果と従来報告した関連実験の結果と相侯って,ZnOの
*長崎大学教育学部物理教室
轍長崎大学教育学部研究生(久保研究室)
20 久保為久麿・藤井 光広・江上 慶記
結晶成長機構についての推論の実験的裏付けを行う。
実 験 要 領
(1)ZnF。蒸着薄膜の作製
作製の為の装置は前報一)に述べたものを使用した。白金パイプのバッフルに載せた白金片
(0.5×0.50%2)上に薄膜を作る。バッフルの温度を900。C,ZnF2粉末の加熱温度を108G。C に保つと5時問後に観察に適した薄膜(厚さ6μ)が得られる。マイクロアナライザー*によ る分折チャートからこの薄膜はZnF。の結晶化したものであることがわかった。
(2)実験装置
装置の概略図を第1図に示す。 ZnF。薄膜またはZnO針状結晶を高温顕微鏡のstage chamberにセットして加熱しながら連続観察する。試料加熱の温度上昇曲線を第2図に示 す。温度調節は自動温度調節器に依った。
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第1図 高温顕微鏡のstage chamberに 試料をセツトする一方ふんいきのガ スを流入する。
第2図 高温顕微鏡のstage chamber内の 試料の加熱温度上昇曲線。400CCでの 折れ曲りは流入ガスを乾いたArガス から湿ったArガスに切換えることに よって生ずる。
(3)実験の種類
(1) ZnF。蒸着薄膜の相変化の詳細を知るために,乾燥したArガスふんいき中で薄膜 の温度による変化を連続観察する。
(皿) ZnF。からZnOへの変化の様子ならびにできたZnOからZnO針状結晶が成長 する過程を知るために(1)と同様な試料の温度が4000Cのときにふんいきを湿ったArガス
に変えて連続観察する。
(駈) ZnO針状結晶の相変化の模様を知るために,乾燥したArガス中でZnO針状結 晶(久保の方法で作製したもの)の加熱温度を上昇させながら観察する。
実 験 結 果
今回行なった実験の結果と,前報一)までの結果とをまとめたものを図表1に示す。この表中 で実験種(1),(2)は前報に述べたもの,実験種(3)〜(5)は今回の実験に属するものである。便宜上
これから述べる今回の実験種の番号はこの図表1のものを使う。
(1) 実験種(3):第5図に示すように,ZnF。薄膜上にできている島状のZnF。結晶は 約850。Cでその周辺からとけはじめ,900。Cで気化がさかんとなる。
(∬) 実験種(4):第4図に示すように,透明であったZnF。結晶は約600。Cで不透明と なる。(600。Cで加熱温度を下げてstage chamberからとりだした試料のマイクロアナライ ザーの分析チャートはZnF2がZnOに変化したことを示す。)900。Cを越すと島は徐々に 気化しはじめる。更に1000。Cで数十分間放置すると始めの島の形状を偲ばせる斑点だけが残
る。
一方900。C〜1050。Cで白金片の縁からZnO針状結晶が成長する。 このときのZnOの 補給源は白金片上のZnOの島である。結晶の成長速度は2.4μ/卿勉(980。C),20μ/吻n
(1050。C)で0.5観の長さに達するものもある。結晶はその尖端をゆっくり振動させながら伸 びて行く。
高温顕微鏡のstage chamber内で高温下で成長したZnO針状結晶の一例を第5図に示
す。
(皿) 実験種(5):第6図にみられるようにZnO針状単結晶のプリズム面(1010)は約 930。Cで熱的に腐蝕しはじめ,気泡状のものが現われる。11000Cになると側稜がなめらかに
なる。
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図表 真
22 久保為久麿・藤井 光広・江上 慶記
考 察 (図表1参照)
白金るつぼ中に湿ったN。ガスを流し乍らるつぼ底部に装填したZnF。粉末を 000Cに加 熱すると,高温において反応式(α)によってるつぼ壁および白金ノ♀イプ壁の温度9000Cの領 域にZnO針状結晶が成長する一)3)(実験種(1))。
湿ったN、ガスを流す代りに乾いたN、ガスを用いると上と同じ温度領域に羽毛状のZnF。
結晶が成長する )3)(実験種(2))。
実験種(1),(2)何れの場合も900。C以上の高温領域にはZnF。が膜状に附着する。 これはる つぼ中にできる過剰のZnF。蒸気の析出によるものである。8500C以下の低温領域には流入 ガスが(羅3乏)いる場合には(奮亀)granularが附着する。
ZnO針状結晶が反応式(α)によって得られる場合,反応によってできたZnOが寄与す るが,そのZnOは一旦結晶表面に析出したZnF2が反応式(4)によってできたものであ ると前報一)において推論した。これに対して気相で反応式(α)によってできたZnOが結晶 成長に寄与するという反対論*もある。
仮りに実験種(1)においてZnOが気相でできるとすれば,できた過剰のZnOは低温領域か ら1050。Cにも達する高温領域までの壁に析出して存在するであろう。(実験種(5))
更に析出するそのZnOにょって900。C〜1050。Cの領域にZnO針状結晶が成長しなけれ
ばならない。 (実験種(4))
然るに実験種(1)においては,このような高温領域にZnOの層も針状結晶も見出されない。
以上の事実から前述の反論は否定される。
実験種(3)でZnF。薄膜が900。Cに達すると気化しはじめることが示されるが,一方におい て実験種(2)では同じ温度領域にZnF。針状結晶が成長することが示される。 このことは過飽 和の蒸気が結晶成長に寄与するということから当然のことである。液相から気相への相の遷移 点に相当する温度(900。C)領域の壁に析出するZnF。はかなり不安定であるから析出後直
ちにH。0と反応してZnOとなり結晶成長に寄与することは容易に理解される。
本稿を草するあたり,終始激励を賜わった広島大学教授吉田鏑博士に厚く感謝いたします。
また高温顕微鏡の購入にあたり,格別の御援助を賜わった前長崎大学長和泉博士,前長崎大 学教育学部長沢博士,マイクロアナライザー使用の便宜を与えて下さった三菱製綱株式会社長 崎製鋼所に感謝いたします。
参 考 文 献
1) 1.Kubo:Iapan.1.apP1.Phys.4 (1965) 225−226.
久保,戸北:長崎大学学芸学部自然科学研究報告 第16号(1964)25−29.
2)T。Tadami and M,Ohkohchi:Japan.」.apPl.Phys.2(1965)554.
5)1.Kubo:J.Phys.Soc.Japan.16(1961)2558.
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24 久保為久麿・藤井 光広・江上 慶記
第4図
ZnF2+H20・→ZnO+2HF lこよる ZnF2薄膜の変化
×200
(a)
変化前のZnF2薄膜。
(b)
600。C以上で始めのZnF2薄膜の表 面は各所でZnOに変化して粒状化
し,写真では黒くみえる。
麓避 器・鷺
ダ ノ
(C)
9000C以上でZnOは徐々に気化し 始め,10000C以上で始めの島の恰 好を偲ばせる斑点状となる。
第5図
高温顕微鏡のstage chamber内 でZnO薄膜より発生したZnO針
状結晶。
×240
第6図
高温顕微鏡のstage chamber内 でのZnO針状結晶(久保の方法で 作製したもの)の熱腐蝕。
×200 欝
灘1
鰭
(a)
熱腐蝕前の(1010)面。
鞭騰懸鱗w㈱悼 攣 鰐 ㌔讃
ぎ争ず
欝聾
藁
(b)
1050。C以上の加熱温度で(a)と同 じ面に気泡状のものが生ずる。