九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
構造材料の粒界構造とその破壊強度に関する研究
森田, 孝治
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3123078
の
構造材料の粒界構造とその破壊強度に関する研究
森田 孝治
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目 次
ti -- 勺I 00
…的要…景目概…北円のの…の究究論究研研
序研本本
11 ウ担 司コ
章トトト
第
第2章 粒界構造の解析法…H・H・...10 2 -1 幾何学モデル ...10 2 -1 -1 対応格子(CSL)理論.…・...1ωO 2-1-2 0
2-1-3 構造ユニツトモデル...16 2-2 分子動力学法 …・・…・・・・…...18
第3章 実験方法..……H・H・-…H・H・-…H・H・...・H・-…H・H・-…H・H・-・・……H・H・-…H・H・...・H・...・H・.22 3 -1 モリブデン<001>対称傾角粒界...22 3 -1 -1 双結晶試料の作製...・H・...…...・H・...・H・-…H・H・...・H・-…H・H・....・H・-…・22 3 -1 - 2 純化処理…H・H・-…H・H・...・H・-…..…H・H・-……..…...・H・...・H・...・H・...・H・..23 3 -1 -3 粒界エネルギーの測定(Thermal Grooving法)……H・H・-…H・H・-…・25 3-1-4 4点曲げ試験...28 3 -1 -5 透過電子顕微鏡観察…H・H・...・H・...……・・…...・H・-…H・H・-…H・H・...……31 3-2 炭化チタン<110>対称傾角粒界..…...32 3 - 2 -1 単結晶の作製...32 3-2-2 双結晶試料の作製…H・H・...……H・H・...…...・H・...・H・...・H・-…H・H・...…..33 3-2-3 透過電子顕微鏡観察...35
第4章 モリブデンの粒界破壊強度とそのエネルギー…...・H・-…....・H・....・H・....・H・..36
4 -1 緒言…H・H・-…H・H・-…H・H・...……・・...36 4-2 結果および考察 ...・H・...・H・...37 4-2-1 粒界エネルギーの傾角依存性...37 4-2-2 粒界破壊強度の傾角依存性…H・H・...・H・-・・H・H・-…H・H・-…H・H・...・H・..….40 4-2-3 粒界破壊強度と粒界エネルギーの相関.…....・H・-…...・H・....・H・...・H・-・.43
第5章 モリブデンの粒界構造とそのエネルギー.…...・H・...・H・..…...・H・...・H・-…....・H・.46
5 -1 緒言…H・H・-…H・H・-…・・…H・H・...46
5-2 結果および考察...・....・H・..…・…H・H・..…・…・・…H・H・...・H・...・....・H・...・H・-….47 5-2-1 粒界エ不ルギー …・...47
5-2-2 粒界構造(分子動力学法ト...49
5-2-3 粒界構造(透過電子顕微鏡観察)…H・H・-…H・H・-…H・H・-・・H・H・-……H・H・..53
(1) (13 0)2:5対応粒界(戸= 36.87。 ト...53
(2)領域1(戸= 0 -- 36.870 ) --- (150) 2: 13対応粒界 ・・H・H・....・H・...・H・.60 (3)領域II(戸= 36.87 -- 900 )一(120)2:5対応粒界…H・H・...・H・-…61 5-2-4 粒界構造と粒界エネルギーとの相関…・…...・H・...・H・-…...・H・-…...・H・..63
5-2-5 構造ユニットモデルと転位モデルとの相関……H・H・...・H・-…H・H・..67
5 -3 結論…・・...71
第6章 モリブデンの粒界構造とその破壊強度に及ぼす不純物元素 (炭素、 酸素)の効果.…・...73
6 -1 緒言.・……H・H・-…H・H・..…・・…・…H・H・...73
6-2 結果および考察...74
6-2-1 粒界破壊強度…H・H・..."..・H・...・H・..…・...74
6-2-2 粒界構造…H・H・...…...82
(1) [001](13 0) 2: 5対応粒界...・H・..…・...82
(2) [001](12 0) 2: 5対応粒界.…・…H・H・-…・・…H・H・-…H・H・-…H・H・-…H・H・...・H・-…84 (3) [001](140)2:17対応粒界.…・…H・H・-…...85
(4) [11 0](332 ) 2: 11対応粒界 ...88
6目3 結論....・H・-…...93
第7章 炭化チタンの粒界構造…・...94
7 -1 緒言...94
7-2 結果および考察…H・H・...……H・H・...94
7-2-1 粒界構造...・H・...・H・-…H・H・-…H・H・-…H・H・..…・...・H・...・H・....・H・....・H・-…94 7-2-2 粒界構造と粒界エネルギーとの相関…...・H・...・H・..…...・H・...・H・.100 7-3 結論.・……H・H・-…...104
第8章 総 括...・H・-…H・H・..…...・H・-…H・H・-…H・H・...106
謝 若手...110
第l章 序
1 - 1
研究の背景
モ?-.D、
百問
現在使用されている構造材料の大部分は、 多数の結晶粒によって構 成された多結晶体である。 このような多結晶体中に含まれる結晶粒界 は、 一種の欠陥構造であため、 構造材料の諸特性に大きな影響を及ぼ す場合が多い。 た とえば、 bcc金属の多くは低温で粒界破壊し( I )、 材 料の力学的性質を著しく低下させる。 また、 高温では粒界 すべりに起 因した応力集中によって粒界破壊が起き、 材料の高温強度 に大きな影 響を及ぼす(2・5)。 しかし、 これまでの双結晶試料を用いた研究により、
すべての粒界が一様にすべり易く、 また 破壊し易 いわけではなく、 そ の挙動は粒界の種類によって著しく異なることが明らかにされてきた (4・7)。 このように結晶粒界が関与する粒界すべり(3・5)、 粒界破壊強度(6)
(7 )、 粒界移動(8・11)などの諸性質は、 いずれも粒界の微細構造に強く依 存する。
一般に、 粒界構造は粒界の性格、 すな わち隣接する結晶粒の方位関 係や粒界面の方向などの内的(intrinsic)要因( I 2) ( I 3 )や不純物元素の粒 界偏析などの外的(extrinsic)要因( I 4) ( 1 5)によって変化することが知ら れている。 ReadとShockle yは( I 6 ) ( I 7) 、 小傾角粒界が刃状転位の規則的 な配列によって構成されることを幾何学的に示した。 さらに、 彼らは 転位論を用いて傾角粒界のエネルギーを粒界を構成している 格子転位 の自己エネルギーの和として導き、 これ が結晶粒の方位差戸に依存し
粒界を構成する格子転位の芯同士が接し始める戸<15・ 程度の小傾角 粒界の場合に 制限される。 そこで、 その後もRea dとShockleyの転位 モデルを拡張させた戸>15。 の大傾角粒界の構造の記述も試みられた が、 これらはいずれも戸が増加する と粒界が転位芯同士が重なり合っ た板状の構造になると思われたため(1 8 )、 大傾角粒界の構造は方位差戸 に依存しない欠陥構造として考えられた。
しかしながら、 戸>15。 の大傾角粒界についての研究が進むにつれ て、 そのような大傾角粒界においても粒界には周期的な転位列が観察 されること(19)、 また特定の方位関係にある粒界のエネルギーが他の粒 界に比べて極めて低くなり(20)、 そのような方位関係のときに特異な力 学的性質を有する粒界が存在することが徐々に明らかになってきた(3・
7)。 これらの結果は、 大傾角粒界においても規則的な安定構造を有す る粒界が存在し、 その構造が戸に依存して変化すること示唆している。
大傾角粒界においてこのような特殊な粒界の存在 を幾何学モデルを用 いて明らかにし たのが、 Brandonら(21)(22)によって提案された対応格 子(三oincide nce三ite Lattice : CSL)理論である。
対応格子理論では仮想結晶格子を重ね合わせたときにできる原子同 士の重なり合いに注目し、 粒界面がこの共有原子 を密に含むほど粒界 における原子対応が良く、 安定粒界にな ると予想された。 このような 粒界は対応粒界と呼ばれ、 特定の方位関係のときにのみ形成される。
粒界がこの対応方位からわずかにずれた場合には、 小傾角粒界同様、
DSC (旦isplace ment三hi ft三omplete)転位と呼ばれる粒界転位(1 9 )が粒 界に周期的に導入され、 ずれ角が補 償されるが、 このD SC転位に よっ て補償されるずれ角には制限がある(22)。 したがって、 対応方位から大 きくずれた一般粒界の構造はこの理論では説明することができない。
しかし、 そのような一般粒界であっても、 粒界には結晶性を反映した 何らかの周期性を有する構造が存在すると予想される。
粒界における結晶の周期性に注目し、 一般粒界の構造の説明を可能 にしたのが、 Bollmannによって提案された0-格子理論(23・25)である。
対応格子理論が格子点のみの一致に 注目しているのに対して、 0-格子 理論は対応格子理論の考えをさらに拡張させ、 格子点以外のすべての 点の一致にも注目したことによるものである。 その結果、 特殊粒界の みでなく、 一般粒界や異相界面の構造の理解が得られるようになった。
ただし、 こ れら幾何学モデルによる議論は、 いず れも粒界転位列など の周期性までに限定される。 これは、 幾何学モデルが結晶 格子の周期 性にのみ注目し、 原子間に働く相互作用を無視しているためである。
しかしなが ら、 上述の幾何学モデルによって予測された周期構造の間 には、 さらに微細な原子配列の周期構造が存在するはずである。 結晶 粒界が関与する諸現象は、 この微細構造に強く依存すると考えられる。
粒界面におけるそのような 微細な原子配列を幾何学的に予測するこ とを目的に、 SuttonとVi te kによって構造ユニットモデル(26)( 27)が提 案された。 ここで、 彼らは原子間ポテンシヤルを用いた数値計算によ
り粒界の安定構造を求め、 粒界構造がある特定の規則配列を有する原 子集団が周期的に配列することで構成されることを示した。 この原子 の集団が構造ユニットと呼ばれるものである。 さらに、 粒界は原子配 列が異なる種々の構造ユニットの組み合わせで構成されており、 その
割合が結晶粒の方位差に依存 して変化することを見出した。
以上のように、 幾何学モデルに基づく粒界の周期構造の議論から、
原子関相互作用を考慮した原子配列の議 論へと粒界構造を記述する手
て透過電子顕微鏡を用いた構造 観察(28・33)が盛んに行われてきた。 その 結果、 大傾角粒界において観察される粒界転位列が、 幾何学モデルか ら予測される 周期構造と良く一致することが見出された(28・30)。 さらに、
高分解能電子顕微鏡の登場で原子配列を直接的に確認することが可能 となり、 幾何学的に予測された 対応粒界やステップの周期構造の存在 が原子スケールで証明された(31・34)。 また、 この周期構造問には理論的
に導かれた構造ユニットの周期構造が見出され(33)(34 )、 これが 方位差 に依存して変化することが 明らかとなった。
結晶粒界の構造が 原子スケールで明らかにされるなか、 粒界エネル ギーが粒界の微細構造にどのように依存するのかを 明確にすることが 重要である。 粒界エネルギーの測定は、 粒界エネルギ- Y gbと表面エ ネルギ- Y sとの釣り合いで形成される2面角を測定すること により求 めることができる(35)が、 この方法で得られる Y gb はY sに対する 相対 値であり、 絶対値としては 得られない。 一方、 原子間ポテンシヤルを 用いた数値計算により、 Y gbの絶対値を直接求めることができるが、
この方法では計算に用いた 原子間ポテンシャルに依存して粒界エネル ギーの絶対値が変化する。 したがって、 粒界エネルギーに関してはい ずれの方法 も方位差依存性の検討は可能であるが、 その絶対値を比較 する場合には十分な注意が必要である。 上述した2つの方法を用いて 粒界エネルギーの方位差依存性を最初に検討したのは、 Hassonと GoUX(20)のアルミニウムの研究である。 その結果、 いずれの方法にお いても粒界エネルギーには特定の対応粒界の方位において粒界エネル ギーに極小が見出された。 しかし、 粒界エネルギーに関する研究の多 くは粒界エネルギーの方位差に対する 依存性であり、 粒界構造との相 関を検討する必要が ある。
ShinとLi (36) (37 )、 Ge rtsman (38)およびVa lie vら(39)は、 粒界が回位と 呼ばれる欠陥構造の集合体によって構成 されていることを示唆し、 弾 性論を用いて粒界エネルギーの傾角依存性を評価 した。 その 結果、 粒 界エネルギーの傾角依存性や特定の方位で現れるエネルギーの小 さな 極小値の説明を可能にした。 ただし、 彼らは仮想格子を重ねて粒界 構 造を予測したため、 粒界を構成する回位 構造の 評価には誤りがあり、
十分なものではない。
一方、 結晶 粒界の力学的性質に関しては、 方位制御した双結晶試料 を用いた 研究によって、 粒界の 性格と 粒界強度 の 関係が明らかにされ
た。 たとえば、 低温 にお いて問題と なる粒界 破壊に関しては、 図1 -1 に示した栗下ら(7 )や田中ら(40)のモ リ ブ デ ン < 11 0 >対称 傾角粒界に関す る研究によって、 粒界の破壊強度 は結晶の方位差に依存して著しく異 なり、 粒界の対応度 がよい2 1小傾角粒界や23および217b対応粒界 において単結晶並の高い破壊強度 を有することが見出されている。 ま た、 渡辺ら(4)は、 高温における粒界 すべりも 結晶の方位差に依存して
a2 c -
b
,
R 陸t軍g事
2400 2000 1600 1200 800 400
。
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ーーーーーー,ーーーーーーー.ーーーーーー『ーーーーーーマ ー・ーーー--r--ーー-ー.ーーーー- --,ーー ーーーー『ーーーーーー (116) (114) (113) (112) (223)(334) (111) (233) (122) (133) . 1:19a 1:9 1:11 1:3 1:17b 1:3 1:11 1:9 1:19a - ーーーー-
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20 40 60 80 100 120 140 160 180
傾 角、 戸(deg)
著しく異な り、 低2イ直を有する 対応粒界は非常にすべり難く、 これよ り方位がず れるにしたがって容易にすべるようになることを示した。
その後の研究によって、 粒界すべり は粒界面上を運動するDSC転位と 密接に関連した現象(41) (42 )であることが見出された。 これらの 結果に よって、 結晶粒界がいずれも破壊し易く、 すべり易いのではなく、 そ の力学的性質が粒界の性格に依存して著しく異なることが証明された。
さらに、 上述してきた諸性 質は、 外的要因である不純物 元素の粒界 偏析によって著しく変化する。 構造に関しては、 たとえば燐の粒界偏 析によって鉄の粒界構造が変化することが数値計算によって証明され、
粒界の脆化に影響を及ぼすこ とが指摘された (1 4) ( 1 5 )。 また、 モリブデ ンの< 11 0>対称、傾角粒界 の粒界破壊(7)(43)の場合、 図1 - 1に示すように 不純物元素(こ の場合、 炭素と酸素)が粒界に 偏析する と、 粒 界の整合 性が良い粒 界の強度を弱く、 逆に整合性 が悪い粒 界の強度を強くする ことが見出された。 さらに、 粒界移動においては 、 不純物 元素の粒界 偏析によって粒界の移動速度が著しく変化するが、 その影響は不純物 元素の偏析量あるい は対応粒 界か一般粒界かなどの粒界の 性格によっ て著しく異な る(8・11)ことが明らか にされた。 また、 不純 物元素の偏析 量は、 粒 界の性格に依 存して異なる(44)(45)ことが確認され た。 これら の結果は、 不純物元素は粒界 に偏析して 構造やその諸特性 に強く影響 を及ぼすが、 その影響は粒界の性格に依存して著 しく異なることを示
唆している。 これは、 結晶粒 界と不純物元素間に生じる相互作用が、
粒界の性格に起因して著しく異なるためであると予想される。 このよ うな相互作用の相違は、 個々の粒界において不純物元素が偏析し得る すき問、 すなわち粒界の自由体積の相違(46 )に依存していると考えられ
ている。
1 - 2 本研究の目的
上述した ように、 粒界構造や粒界が構造材料の諸性質に及ぼす 影響 は徐々に明らかにされつつある。 しかし 、 これまでの研究は、 粒界構 造に関する もの、 あるいは粒界の力学的 性質に関するものなどいずれ かに偏ったものが多い。 しかし、 これらはそれぞれが独立に存在する のでなく、 ある 特定の相関があるはずで あるが、 粒界の力学的性質と 粒界構造および粒界エネルギーとの相関を系統的に評価した例は少な い。 さらに、 粒界構造や粒界破壊強度は、 外的要因である不純物元素 の粒界への偏析の影響を強く受けることが知られているが、 それらの 影響について系統的に粒界構造の変化を明らかにした 研究はない。 結 晶粒界が関与する諸現象について十分な理解を得 るためには、 これら 内的要因や外的要因が粒界構造とその力学的特性に与える 影響を系統 的に評価する必要がある。
そこで本研究では、 結晶粒界の構造および粒界が関与する諸現象に ついて十分な理解を得るため 、 粒界の性格を制御した双結晶試料を用 い、 以下に示した課題について系統的な研究を行った。
(1 )粒界構造を予測、 評価するための幾何学モデルを構築する。
(2)粒界 の性格の相違による 粒界構造の変化を原子スケールで評価 する。
(3 )粒界の力学的性質と粒界構造の相関を評価する。
(4 )粒界エネルギーと粒界構造の相関を評価する。
(5)粒界構造とその力学的性質に及ぼす不純物元素の影響を評価す る。
1 - 3 本研究の概要
前章で述べた研究目的のもと、 本論文は以下の8章から構成される。
第l章 序論
第2章 粒界構造の解析 法 第3章 実験方法
第4章 モリブデンの粒界破壊強度とそのエネルギー 第5章 モリブデンの粒界構造とそのエネルギー
第6章 モリブデン の粒界構造とその破壊強度に及ぼす侵入型不純 物元素(炭素、 酸素)の効果
第7章 炭化チタンの粒界構造 第8章 総括
第1章の序論では、 結晶粒界に関する研究の背景とその問題点、 本 研究の目的 および論文構成について述べた。
第2章では、 粒界の周期構 造の解析に用いる対応格子理論、 0-格子 理論 および構造ユニットモ デルの3種類の幾何学モデ ルに つい て説明 する。 さらに、 粒界構造の数値計算に用いたFinnis-Sinclair型の多体 間ポテンシャルと分子動力学法およびその計算方法について説明する。
第3章では、 本 研究で用い たモリブデ ンの <001>対 称傾角粒界 およ び炭化チタンの<1 10>対称傾角粒界を有する双結晶試料の作製方法、
不純物元素 を除去するための純化処理、 粒界エネルギー評価に用いた Thermal Grooving法による測定法とその原理、 モリブデンの粒界破 壊強度測定に用いた4点曲げ試験 法 および粒界 構造の観察に用いた透
過電子顕微鏡観察法について述べる。
第4章では、 モリブデン< 00 1 >対称、傾角粒界の 粒界エネル ギー の傾 角依存性をThermal Grooving法を用いて評価した。 さらに 、 純化処
理を施した双結晶試料の粒界破壊強度 を4点曲げ試験により測定し、
傾角依存性 について評価するとともに、 粒界エネルギーとの相関につ いて検討する。
第5章では、 分子動力学 法を用いて粒界エネルギー と粒 界構造の傾 角依存性ついて評価 する。 また、 透過電子顕微鏡観察により得られた 粒界の周期構造に対しては幾何学モデルを用い、 粒界面近傍の原子配
列については分子動力学法 による計算結 果を用い て系統的に 検討し、
幾何学モデルの妥当性につい て評価する 。 さらに 、 得られた結果をも とに 、 粒界エネルギーと粒界構造との相関について検討する。
第6章では、 外的(extrinsic)要因である不純物元素(炭素と酸素)が モリブデン <001>対称傾角粒界の粒界破壊強度に 及ぼす影響を< 110>
対称傾角粒界の場合と比較しながら実験結果を基に検討する。 さらに、
侵入型不純物元素が粒界構造に及ぼす影響につい ても、 粒界の性格ご とに比較 、 検討する。
第7章では、 fc cを基本構造とする炭化チタンのく110>対称傾角粒 界の粒界構造を幾何 学モデルを用いて系統的に解析を行い、 粒界構 造の傾角依存性および粒界構造とそのエネルギーとの相関について
ネ食言すする。
第8章の総括では、 本研究で得られた結果を要約する。
第2章 粒界構造の解析法
2 - 1
幾何学モデル
2 - 1 - 1
対応格子(CSL)理論 (21 )(22)
2つの結晶格子を重ね合 わせ、 片方の結晶をある角度だけ 回転させ ると、 重ね合わせた領域に対応格子点と呼ばれる格子点の一致が周期 的に形成さ れる。 この対応格子点によって新たに形成される結晶格子 が、 対応格子(三oi ncide nce 三i te Lat tice: CSL)である。 また、 この ような方位関係を持つ結晶 間の粒界を対応粒界と呼び、 両結晶の格子 点の対応度を2値として表す。 この2値は、 格子点密度に対する対応 格子点の 密度の逆数であり、 結晶の聞の 回転関係(回転軸と 回転角)が 決まれば一義的に決まる。 たとえば、 図2 - 1 (a )はbccの(001)面の投 影面を紙面に垂直な<001>方向を共通 回転軸とし、 2つの結品の(010) 面を相対的に36.87。 回転して得た25対応方位関係の説明図である。
ここで、 大小の白丸と黒丸(0と.)は、 それぞれの結晶格子 における 上下の(002)面上の格子点位置を示している。 また、 大小の二重丸(⑨) は上下の(0 02)面上 における対応格子点である。 図2-1(a)では、 格子 点5個 に対してl個の割合で対応格子点が存在するので、 この方位関 係は25対応方位であり、 粒界面が対応格子点を通る粒界を2 5対応、粒 界と呼ぶ。 このような 対応粒界は、 粒界面上の対応格 子点 を1周期と する周期構 造を有する。 また、 2値が同じであっても粒界面の方位に よって粒界 面上の対応格子点の周期は異なり、 し たがって粒界構造も 異なる。 たとえば、 図2-1(a) に示した粒界面が(130)面の場合((130) 25対応粒界)、 粒界面上で対応格子点は汀万a/2間隔で周期的に並ぶ。
\E,ノ'hU /'E1、
O-Plane
,-'
- - -
図ふ1 25対応、粒界(戸=36.870 )の(a)対応格子とDSC格子 および(b) 0-格子モデルの模式図.
ここで、 aは格子定数である。 一方、 粒界面が(2To )面の場合((2To)2 5対応粒界)、 ほa間隔で対応格子点が並ぶ。
また、 粒界の方位関係がこのような対 応粒界の方位からずれると、
粒界面上にはDSC転位と呼ばれる粒界転位が導入され 、 ずれ角が補償 される。 このDSC転位の間隔Dは、 次のように表される。
D= I b I /2sin( LJ戸/2) (2-1)
ここで、 I b IはDSC 転位のパーガースベ クトルの粒 界面に垂直な成 分の大きさ、 A戸は対応方位からの傾角のずれ角であ る。 また、 DSC 転位の導入によって対応格子点の位置はDSC転位の並進ベクトル分だ
け相対的に移動するため、 粒界に小さなステップが形成される(22)。
しかし、 対 応格子理論では、 DSC転位の導入によっ て補償でき る範 囲は限られており(22)、 対応方位からの方位差が大きい一般粒界の記述 はできない。 そのような一般 粒界の構造解析を可能にしたのが次に述 べるBollmannの0-格子理論(23)(24)である。
2 - 1 - 2 0-格子理論(23・25)
0-格子理論とは、 重ね合わせた2つの結晶問に生じる最小ひずみ点 (0 -格子点)を求める理論である。 上述した対応格子理論が格子点の一 致のみに注目するのに対し、 この0 -格子理論は結晶中のすべ ての座標 (内部座標)の一致にも注目 したものである。 たとえば、 図2- 2 はbccの (001 )面の投影面を<00 1>方向を共通回転軸とし、 約10。 回転させて 重ね合わせたものである。 このとき得られたモワレパターンには、 対 応度の良い領域と悪い領域が周期的に形成される。 この対応度の良い
図2- 2 bccの( 0 01)投影面を戸=10。 回転させたときのモワレパターン.
領域の中心が0-格子点であり、 必ずしも格子点と は一致しな いことが 分かる。 さらに、 この0・格子点問には、 これ をとり囲むように対応度 の悪い領域が形成される。 粒界がこの領域を横切る場合に は、 そのひ ずみを緩和するため に粒界格子転位が導入される。 した がって、 0-格 子点の周期性を求めることで粒界の周期構造を予測することができる。
つぎに、 0-格子理論に基づく解析法について図 2-3に示した単純格 子を用いて説明する。 原点0 を基準とするX1-Y1直行座標系で与えられ
た 結晶格子1を基準格子 とする 。 これに回 転 変換Aを用いてX 2- Y 2直行 座標系 を持つ結晶格子 2が得ら れるとする。 このと き 、 位置ベ クトル X(I)で表される結晶格子1の任意の点Pは、 A変換によって結晶格子2 の
点Q (位置ベクトルX( 2 ))に変換されることになり X ( 2) = A x( I ) ( 2 -2 )
_'ペ
y 1
� _,./べぐ \
\,
./ \./'/"'\
図2・3 単純格子を用いた0-格子理論の説明図(24)
となる結晶格子1の並進対称、ベクトルをb(L) に一致し X(2) _ x( 1) = b(L) (2-3)
X1
の関係を満足するならば、 結晶格 子 1の点Pに対応する結晶格 子2の点 Qは、 結晶格子1で考えても点Pと同等な点、 すなわち0- 格子点となる ことになる。 このような0-格子点の位置ベクトルとなるx(2)をx(O) で表 すと、 式(2-2)と式(2-3)より0・格子理 論 の基本式が
(I-A-1)x(O) =b( L) (2-4)
で与えられる。 また、 この式(2-4)より、 0-格子点の間 隔Ix(O) Iは
I det(I-A-1) Iの値が小さくなるほど大きくなる。 粒界転位は0- 格子 点の聞に存在するの で、 I det(I-A-1) Iの値が大きいほど格 子転位の 間隔は大きくなり、 その密度は小さくなる。 したがって、 変換マトリッ クスAは、 I det(I- A-1) Iの値が最も 小さくなるようなものを選ぶ必要
両結晶格子を重ねたとき このとき得られる0-格子は、
がある。 また、
回転 そのような変換Aは、
に形成されるモワレパターンと一致する。
しかし、 回 角戸が小さい場合 は回転マトリックスRのみと一致する。
R変換の前に体積変化のない原子対応 転角戸が大きくなると変換Aは、
b c c の< 0 0 1 > 回転 軸 図 2-4は、
を変える変換Uをほどこす必要がある。
を 傾角戸に対してプロ ツ ト I d e t (1 -A -1) I
を 有 する 傾 角粒界の 場合の
ックス Rの このときAo はAと して回車三マトリ
また、
したものである。
(2・5) A 1 ---""'A3は変換Uとしてそれぞれ
0」
」0
一一句3U
一一U
みを、
U1=
( 1 1)
を用いたものである。
(170) (150) (140) (130) (250)(370) (120) (350) (230) (340) :
: 2;
25
2;13
2;17
2;5
2;29
2;5
2;17
2;13
2;25 :
NHhh↓h↓日↓ ; U3 j j j j Uo :μ j
U2j j j、"
� �/'
�:!?でにj--;-一良心一- し_____l__/
j J/↑X\ :;/打、
( I 1- 〉κ ー」� I
li ilj j|
U1
/2
(マ吋th)芯℃
。
90 70 80
60 50
40
角、
30
傾
20
。 10
戸(deg)
たとえば、 (130)25対応粒界の場合、 U変換として変換U2を用いる と、 I det(I-A1・1) I =0 となる。 このとき、 0-格子点の間隔は無限大と なり、 図2- 1 (b) に示した ように0-格子点ではなく、 面になる。 この 面は原子 対応が非常に良い面であり、 特に0-面と呼ぶ。 粒界面がこの 0-面と平行な(130)2:5対応粒界は、 鏡映対称、の関係となっており、 体 積変化なしに両結晶の格子点を対応させることが可能となる。 したがっ て、 0-格子点の間隔が 無限大になると、 粒界には粒界転位は観察 でき なくなる。 一方、 粒界面がこの0-面を横切る(2Io)255対応粒界は、
0-面聞に 周期的に粒界格子転位が伝a間隔で導入される。 この粒界転 位は、 粒界面上にextra half planeを有する欠陥として観察される。
2 - 1 - 3
構 造
ユニットモデル(26・30)(47)(48)上述した対応格子理論と0-格子理論は、 主に粒界構造の周期性を求 める幾何学理論である。 しかし、 これらの周期構造の聞には、 さ らに 微細な周期性を持つ原子配列が存在する。 この粒界面の原子配列を表 す理論が、 構造ユニットモデル (26・30)(47)(48)である。
構造ユニットモデルとは、 粒界面上の原子構造 は、 ある 安定な配列 を有する 原子の集団(以後:構造ユニット)の周期的な配列で構成され ているというものである。 ここで、 基本となる構造ユニットとしては、
図2-5に示すように粒界エネルギーに極小値を示すような安定粒界A とBの構造ユニットが考えられ、 これは基本構造ユニットと呼ばれる。
また、 このような安定粒界 以外の一般粒界C、 DおよびEは、 その方位 関係近傍の2種類の安定粒界AとBの基本構造ユニットの整数比の組み
勺ム111111・BIl
ld'
、‘,/σ。戸しVAu fE1 F¢'
1111111111・C11
A
戸l 傾
也、へ
rl除去峠,H欧州制
角、
構造ユニットモデルの傾角依存性の説明図.
図2-5
粒界CはAとBの基本 たとえば、
合わせ(複合ユニット)で構成される。
し たがって、 構造 構造ユニットが2 : 1の比で構成されることになる。
ユニットモデルの組み合わせは方は無限にあるこ とになる。 このこと
その構造はいかなる方位でも記述可能で は、 対称、傾角粒界であれば、
このような構造ユニットを見出すためには、 原、
あることを意味する。
子配列を直接観察するか 原子聞の相互作用力を用 いた分子動力学法に よって粒界における原子配列を明らかにする必要がある。 本研究では、
後述する 原子間ポテンシャルを用いた分子動力学 法を用いて種々の粒
2 - 2
分子動力学法
モ リ ブ デ ン は遷移金属で あ るため、 分子動力学( Mol ecula r 旦ynamic s:以後MD)法に用いる原子問ポテンシャル には、 電子の状 態密度を考慮したFin nis -S i ncl air ( F-S )型の多体問ポテンシヤル(49 )を 用いた。
F-S型の多体問ポテンシヤルUTo1は、 原子聞の反発力を表す2体問項 Upと電子による凝集力を表す多体問項UNの和として
UTo1 = Up + UN (2-6)
のように表される。 ここで、 2体問項Upはi番目 とj番目 の原 子間距離 Tijの関数として
Up=弓V
(Tjj)(2-7 )
のように表される。 ここで、 V(Tij )は2体問ポテンシャルである。 また、
多体問項UNは、 i番目の原子の周りの電子状態密度Piの関数として UN=-Aヱ!(Pi)
(2申8) Pi=ヱゆかり)
(2-9)
と 表さ れる 。 こ こ で 、 Aは材料固有の定 数、 f(P i ) は 原 子挿入法 (Em bedded Atom 竺e tho d : EAM)(50)(51) に基づく関数であり、 電子 状態密度Pi中に原子を埋め込むのに必要なポテンシャルである。
以上より、 UT01は原子間距離Tijの関数として
UTot=詰V
(rij)ーAエfωi)(2-10)
となる。 図2-6はUT01と原子間距離rijとの関係を示したものである。
ここで、 原子間距離Tijはモリブデンの格子定数(a=0.31472nm )で規格 化して示した。
0.3 0.2
-0.5
0.6 0.7 0.8 0.9
。
ー0.2
噌Ei nu
-0.3 -0.4 ー0.1
rムヘシ・\川入小鳥Eι込山村 〉ω \ 】O 'Hb
1.3 1.4 1.2 1.1 原子間距離、
ハU 唱Ei
r/α
図2-6 モリブデンのFinnis-Sinclair型多体間ポテンシャル(49)
原子の運動を支配す る運動方程 式を数値的に解くこと MD法(52)は、
このとき用いる運動 によって安定な原子状態を導き出す手法 である。
以下にその計 トンの運動方程式である。
古典力学のニュー 方程式は、
算方法について説明する。
上述の F- S型 多 体問ポ テ ン i番目の原子に働く力Fi (=Fx i' Fy i' Fzi)は、
シャルUTOIの各方向の勾配として
(2-11)
ニュートンの運動方程式は F i = ーマUTOI
原子の質量をmとすると、
F av
=ma =m一一 dt で与えられる。
(2-12)
微小時間変 化に tは時間である。
αは加速度であり ここで、
よる速度変化ムvは である。
L\v = F L\t
m (2-13)
であるので、 ムvを差分化すると、 次式が得られる。
判t)=V(t-U)+
z
at (2-14)各時刻tにおける原子の位置は、 時刻tにおけるi番目の原子の速度より 次式で得られる。
rt = rt-ð.t + v(t) .L\t (2-15)
数 値 計算 に 用いた初期原子位置 には、 図 21(( 120 )J55 対応 粒界)に 示すような対応格子理論より求められる幾何学構造を用い、 対応格子 点を1 周期とする 計算セル を用いた。 このとき、 粒界面は 計算セル の 中央に配置 し、 粒界面の両側には少なくとも1 On m程度の単結晶の緩 和領域を設けた。 また、 計算セルの上面と下面および前後には周期境 界条件を適用し、 温度OKの条件下で 計算を行った。
. ・ o 0 1 0 0 ・ .
• • 0 - 0 L O - 0 • •
. ・. 0 - 010 0 1 ・
1 0 0 0 0 I 0 0
0 0 • •
• 0 - 0 I 0
. : _ ' 0 - 0 _ - 0 10 -
_ - 0 - I - '0 - o'
• . 1• 0 0 Q 0 I 軍 o 0 0 0 11 . •
o - 0 T
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o ••
I...:J I.J . .
o - ,...., 0 . _ ・
。 0:1 � . ・
•
。。。
。。。0 0 0 0
• • • • ・• ・• ・
図2・7 数値計算に用いた計算セルの模式図.
例として(120)2: 5対応粒界の計算セルを示した.
粒界エネルギ- / gbは、 MD法による格子緩和を十分に行って得られ た原子位置より原子のポテンシャルエネルギーを求め、 完全結晶の原 子のポテンシャルエネルギーを差引き、 粒界の面積で割る ことによっ
て求めた。 ただし、 初期構造を幾何学構造としたとき、 粒界近傍では 接近しすぎている原子が存在するため、 この原子の一つを取り除き、
さらに格子緩和を行って最も 粒界エネルギーの低い構造を求めた。 図 2-8は、 (130) 2:5対応粒界につ いて、 時間間隔3 fsで5000回緩和して 得られた粒界エネルギーを緩和時間に対してプロ ットしたものである。
その結果、 エネルギーは緩和初期に急激に低下した後、 一定値に達し ており、 十分安定な粒界構造が得られたことを示している。
6.0
3 5 0
、、、
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,
3.0
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t =二二|二二;:::::l二二;::二
一一一一一| 一一一一一ム一一一一一 |一一一一一」一一一一一 一一一一一!一一一一一十一一一一一|一一一一一寸一一一一一
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。
。
1000 2000 3000
40005000
緩 和 時 間
図2-8 粒界エネルギ�
/gbと緩和時間tとの関係((130)25
対応粒界の場合) .
第3章 実験方法
3 -
1 モリブデンく001>対称傾角粒界
3
- 1 - 1 双結晶試料の作製
電子ビーム溶解高純度(純度99.999%)モリブデン多結晶棒 ((株)東芝 製、 不純物濃度;炭素<10、 酸素<10、 窒素く10 m ass ppm)を出発材 とし、 o .25MPa のヘリウムガス(純度 99.9999%)雰囲気下で高周波浮 遊帯域溶融回転(以後: FZと記す)法(7 )によりく001>対称傾角粒界を有 する直径約10mm戸の円柱状(透過電子顕微鏡観察用:長さ約15mm、
破壊強度測定用:長さ約32mm)モリプデン双結晶を作製 した。 なお、
本研究では粒界を挟む両結晶の(010)面同士のなす角度で傾角戸 を定 義した。 作製手順を図3・1の説明 図を用いて簡単に説明する。
まず、 図3 -1①に示すように、 く100>方位が戸/2の角度差を持つよ うに 傾いた単結晶を作製する。 作製した単結品の一端をつば付き研磨
冶具(40
)を用いて平滑になるよう機械研磨した後、 モリブデンの多結晶 棒上にセットし (図3 -1②)、 高周波加熱による固相接合を行い、 種結 晶棒を作製する。 接合条件は、 0.25MPaのヘリウムガス(純度6N)雰囲 気中、 温度約23 00K、 保持時間7 . 2k sである。 次に、 得られた種結晶 棒を上 側に、 モリブデン多結晶榛を下側にセットし、 FZ法により目的 方位を有する単結晶を育成する(図3 - 1③-④)。 その後、 育成した単結晶の一部を再溶融 させ、 下側のロ ッドを1800 (lrrad)回転させた後 、 徐冷、 凝固させること で傾角戸を有する<001>対称傾角粒界を作製し た(図3 -1⑤-⑥)。 その後、 再度別の箇所で図3 -1⑤ー⑤の操作を繰り
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…10iÞ 1L , k
…/101
/ 10<∞1>
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。。。17
Symmetric、
。o0 I I 0 0 0 I I ti1t boundary
図3 - 1 浮遊帯域溶融回転法(7)によるモリブデン<001>双結晶試料の作製手}ll貢.
返して、 同じ傾角戸を有する粒界を数個作 製した(図3 - 1⑦)。
得られた モ リ ブ デ ン双 結 晶 試料 の方位関係は、 X線背面反射ラウ工 法を用いて測定した。 なお、 測定は一つの試料に対し5回以上行い、
その平均値を用いた 。 また、 このときの測定値は、 その後高分解能観 察を行った試料については、 格子像から得られた傾角と比較し、 誤差 が+ 0.50 以内であることを確認した。
3 - 1 - 2
純化処理
侵入型不純物元素である炭素と酸素を除去するため、 一部の試験片
ラジウムイ?令jjE jti ll只をj凶した111j示lljJLノkぷ(示'�)i99.9り999%以". )を)I jい、
約2370KでjJ111ノkぷ九流'1'10.8ks-.. '吃ぷぷ気流'1'で21.6 k sのlfJj j114 法}JI J然
を行った。 以後、 純化�Jlj!を胞した,�Arlを純化材、 そうでないものを ぷ純化材と11子ぶ。
|ヌ13-2(a)と(b )は、 例として(3I 0 )ご5刈),いれ;採のよ純化材と純化材 の粒界市政Ifriの7tfjf:凶行投。γッfLをIJょしたものである。 |χ13-2(a)の米主,�イヒ イオの粒採には、 í& 1 (1 i - .'1 (1 iにがよ化物(MoヲC)と以われる析,'1',物がligめられ
る。 -ープj、 |三13-2(b)の純化材の料;採には、 _1.'. J必のような析,'1',物はlitめ られず、 平j竹なあt洲市であった。
(a)未来,nイヒイオ (b)純化材
200 f1 m
図3-2 付与平破而の〉E42:以微鋭'/}た(<1)未来,�化材と(b)純化��'.
例としてい30)ご5),nじ;N:J�のれliA4を示す.
主らに 、 長3 - 1は111,発材、 米系I�化材および純化材のバルクの不純物
冗京(炭素,椴主jd,宅京)blt皮の化学分析の結果を不したものである。 モ リブデン中の炭素、 限表および3R-;ぷb12伎の分析ーには、 それぞれ微iit元 京分析に過した燃焼ー赤外科(吸収法、 ィーi1îfl:.ガス搬送!被W'í:-JJ�外紋l吸収 112および不活性ガス搬j三日出Wþ-熱伝j与j止法を仙川した。 その結果、 京,� 化 処理により炭素波j文は、 公ii",�の検,'11,限界(5ppm)以ドまで低下している。
表3-1 モリブデン中の不純物濃度.
試 料 不純物濃度(ppm)
C 。 N
出発材 < 10 < 10 < 10
未純化材 10.8 13.8 3.4
純化材 < 5.0 2.0 2.2
また、 酸素と窒素の 濃 度も著しく低下し、 この純化処理に よって 不 純 物が十分除去できていることがわかる。 さらに、 この純化条件はすで に栗下ら(43)が行 った純化条件(約2300Kで湿水素気流中5.4ks、 乾水素 気流中10.8ks)よりさらに純化が進行する条件である。 したがって、
本研究で用いた双結晶試料の純化材における 不 純 物元素の粒界偏析は、
無視できる程小さい (43)と考えられる。
3 - 1 - 3 粒界エネルギーの測定( Thermal G rooving法)
粒界エネルギーの測定には、 Thermal Grooving法 (40)を用いた。 測 定方法とその原理を以下に簡単に説明する。
上述した純化処理の際、 粒界を含む試料を高温で、長時間保持するこ とにより原子の拡散が起こり、 試料 表面には粒界エネルギ- '/ gbと表 面エネルギ- '/ sとの釣り合いによって図3-3(a) に示すような粒界溝
/<(00 1)..././ ・
\..心
-、\J\〈\ぐ.,(00'. " ・・. ・ I 、)父、, ,
'" "'" "" '-. '"、
, '- ".'
、1,/a 〆''t、、
yピ|、
図3 - 3 (a)粒界?llj:の校ょに|χiと(h)繰り返し反射干渉i:|-を月jしIて観察した 粒界W}の干渉主iJi (77:fυま戸= 400 粒界の結果をIFした)
よび粒界溝の2面角2グとの聞には
Y gb = 2 Y s co s fJ (3 -1 )
の関係が成り立つ。 式(3 - 1 )より、 形成された粒界 溝の2面角2 fJを 測定することにより粒界エネルギーを表面エネルギーに対する相対 値(Ygb/YS)として求めることができる。
本研究では、 2面角2グの測定に繰り返し反射干渉計 (溝尻光学工 業所製)を用いた。 試料表面に図3-3 (a) のような凹凸(粒界溝)があ る場合、 反射干渉計によって得られる干渉縞にもそれに対応して図
3-3(b)に示 すような不連続な干渉縞が観察される。 図3・3( b) は、
<001>対称傾角粒界の戸=40。 の結果である。 このと き、 干渉縞の2 面角2βと実際の粒界溝の2面角2グとの聞には次式の関係が成り立
つ。
グ= tan-1{(2 a/).) tan β} (3・2)
こ こで、 σは得られた干渉縞の間隔、 Jは観察に用いた光源の波長 (本研究ではHgの5.461X 10・7 m) である。 したがって、 αと;3の値 を求め式(3-1 )と式(3・2)より粒界エネルギーの相対 値(Ygb/YS)を求
めることができる。 本研究では、 gと;3の値は一つの粒界に対して 2 00 本以上の干渉縞を測定し、 その平均値を用いた。
図3-4は、 2面角2;3を測定することにより求めた粒界エネルギー の相対値(Ygb/YS)の分布を ヒストグラムで示したものである。 こ こで、 図3・4は(310) 25対 応 粒界の結果である。 得られたヒストグ ラムはほぼ対称な正規分布を示して いることから、 粒界エネルギー の相対値(Ygb/YS)としてその平均値(矢印)を使用した。 また、 測定 したいずれの粒界 も、 図3・4同様、 ほぼ対称、な正規分布を示した。
80 N= 25 2
60ト J (会) = 0.070
ま話
題 40
断ミ
20
。
CN 〉 げ
。、 でCTコ VC〉3 k c c
コ 。t'"'、 。cc
コ 。
C コ\ ...t F圃司 N てF、
o ...t ,_・4 守ー司
Cコ Cコ o 。 o o o Cコ Cコ o Cコ
7gb/γs
図3-4 粒界エネルギーの相対値(ねb/YS)分布を示したヒストグラム . 例として(130) �5対応粒界の結果を示す .
3 - 1 -
4 4点曲げ試験
粒界破壊強度の測定は、 4点曲げ試験によって行った。 以下に曲 げ試験片の作製手)11夏、 試験法および破壊強度の評価法について説明 する。
曲げ試験片は、 得られた円柱状双結晶(直径約10mm戸、 長さ約 3 .2m m)を3軸ゴニオメーターにセットし、 X線背面反射ラウ工法を 用いて方位制御を行った後、 共通回転軸と粒界面に垂直になるよう にSi C切断砥石を用いて切断した。 その後、 図3・5 (b )に示すような 試験片形状となるよう、 つば付き研磨冶具(53)に取り付け、 試験片の
(a)
\EEノhu /'E1、
図3・5 (a) 4点曲げ冶具と(b)曲げ試験片の模式図.
長軸方向に平行な4面をSiC耐水ペーパー(#240--2000)による機械 研磨を行った後、 ダイヤモンドペ ーストによるパフ研磨を行い、 鏡 面に仕上げた。 試験片の寸 法は、 1.2mmX 1.7mm X 32mm(+ 30μ m)である。
純化材は、 純化処理後試料表面には粒界溝が形成される。 この粒 界溝は、 4点曲げ 試験の際に応力集中源となるため、 つばイ寸き研磨
冶具に取り付けSiC耐水ペーパーによる機械研磨で 取り除い た後、
同様の手順で目的寸法(図3づ(b) )に仕上げた。
粒界破壊強度の測定は、 図3-5(a) に示すような曲げ冶具(40)を用 い、 4点曲げ試験により行った。 また、 測定には一種類の粒界に対
してそれぞれ3--4本の試験片を用い、 荷重の 負荷方向が常に図3-5 (b) に示したような方位関係となるよう統ーした。 曲げ試験には島 津オートグラフAG-I0TAを用いた。 なお、 測定は試料の塑性変 形 の効果をできるだけ抑えるため、 液体窒素中(77 K) で一定時間 (0.9ks )保持した後、 クロスヘッドスピード約4. 2μm /sの条件の下 で行った。
4点曲げ試験は、 冶具上部の2つの支点聞に均ーな曲げモーメント を負荷する ことができる。 したが って、 この支点聞に粒界が位置す
れば均一な外力を負荷することができる。 そこで、 粒界破壊強度は 次式のような最大繊維応力σとひずみ εを用い て評価した(40)。
σ-4dw
x2y (3-3)
ε= 27生
68d2 (3-4)
ここで、 dは内部 支点間距離、 wは荷重、 xは試験片の厚さ、 yは試 験片の幅、 hは試験片中央部の変位であり、 クロスヘッドの変位を
用いた。
また、 破面形態を観察するため、 破壊強度試験後、 破面の光学顕 微鏡観察を行った。 このとき、 破 壊が粒界を起点として起こってい ること、 および純化材についてはその破面に 炭化物等の析出物がな いことを確認した。
3 - 1 - 5
透過電子顕微鏡観察
透過電子 顕微鏡観察 用薄膜試料の作製法は以下の通りである。 ま ず、 双結晶試料(直径約10mm戸、 長さ約1.5mm)を3軸ゴニオメーター にセットし、 X線背面反射ラウ工法を用いて方位制御を行った。 そ の後、 低速ダイヤモンドカッターを用いて共通回転軸<001>方向に
垂直、 すなわち粒界面に垂 直に厚さ約500μmの薄板を切り出した。
さらに、 つば付き研磨冶具(53)を用いて非240---#800のSiC耐水ペー パーで 厚さ 約100μm になるまで機械 研磨を行った後、 放電加工機 を用いて 3mm併の円盤状に打ち抜いた。 その後、 twin-jet電解研磨 法を用いて薄膜化した。 電解研磨液には、 メタノール、 硫酸、 塩酸 が容積比で7 3:20:7の混合液を用い、 電圧20V、 電流40mA、 温度約 250Kの条件下 で電解研磨した。 なお、 電解研磨液の冷却は、 研磨
液中に液体窒素を直接投入して行った。
また、 一部の試料に対しては不純物元素(炭素と酸素)の有無によ る粒界構造の変化を調べるため、 純化処理を行った。 試料は双結晶 より切 り出し、 厚さ約200μmまで機械研磨を行った。 その後、 前
透過電子顕微鏡 観察には、 九州大学総合理工学研究科のトップエ ントリー型のJEOL-JEM2000EX/T(加速電圧200kV)を用いた。 高 分解能観察は、 共通回転軸<001>方向に平行、 すなわち電子線を粒 界面と平行となる方向から入射し、 粒界を挟む両結晶が同時にプラツ グ条件を満足する条件で行った。 また、 粒界面上の転位列の観察は、
試料を可能な限り傾斜させ、 結晶粒のいずれか一方のみが二波励起 状態になるような条件 下で行った。
また、 微少領域電子線回折法によって粒界面上の原子配列の周期 性の検討を行った。 用いた電子顕微鏡は、 九州大学超高圧電子顕微 鏡室の電界放出型電子銃を装着した JEOL-JEM201 OF(加速電圧 200kV)である。 電子線回折図形は、 高分解能観察同様、 電子線を 共通回転軸である<001>方向に平行となる方向から入射し、 粒界面 上でビームを約3nm程度まで絞ることによって得た。 なお、 回折図
形の撮影には、 イメージングプレートを用い、 撮影時間約0.3 sの条 件下で行った。
3 - 2
炭化チタンく110>対称、傾角粒界
3 - 2 -
1 単結晶の作製
炭化チタンの単結晶試料 の作製はFZ法(54)により行った。 以下に 作製手)11買を簡単に説明する。
日本新金属株式会社より供与された平均粒度1 .2μmのTiC 1.0粉末 (純度97.3%)を静水圧プレスにより圧縮成形し、 直径約12mm、 長 さ約170mmの丸棒圧粉体を作製した。 得られた圧粉体は、 水分およ
ぴガス除去を兼ねて真空中、 温度約1 500 Kの条件 下で7.2 ksの予備 焼結を行った。 その後、 高周波誘導 加熱凝固装置(国際電気(株)梨、
最高出力40kW)を用いて、 約0.3MPaの高純度ヘリウムガス(純度 99.99 99%)雰囲気中、 温度約3000K(0.8T m : T mはTiCの融点)の条 件下で本焼結を行った。
TiCの単結晶の育成(54)は、 高周波誘導加 熱凝固装置を用い、 上述 の高純度Heガス約0.3MPaの雰囲気中 でFZ法により行った。 このと きの単結品の育成は、 最初の10.8ksは種結晶を育成さ せるために 約
5mm/hの速度で移動させ、 その後約10mm/hの速度で行った。
また、 TiC-1Omol %Mo固溶体単結晶試料は、 上述の日本新金属株 式会社より供与されたTiC 1.0粉末に、 高純度Mo粉末(純度99.9%)を 目的組成となるよう添加し、 乳鉢で十分撹祥混合し 後、 上述した TiCと同じ手順で圧縮成形、 予備焼結、 本焼結を行い、 FZ法により 単結晶を育成した。
3 - 2 - 2
双結晶試料の作製
< 11 0>対称、傾角粒界を有する炭化チタン双結晶 試料は、 固相加圧
接合法により作製した。 以下に、 その作製手順を説明する。
まず、 FZ法により得られた単結品試料をゴニオメーター上にセッ トし、 低速ダイヤモンドカッターを用いてl組の面が(110)となる ように直 方体を切り出した。 その後、 この(1 10)面 に垂直な(1 10)面 が、 接合面と戸j2(戸は目的傾角)となるように接合面を切り出した。
た。
以上のようにして方位制御した単結晶試料は、 圧縮面と接合面の 平行性、 平滑性を良くするため、 つば付き研磨冶具(53)に固定し、
Si C耐水ペーパーで機械研磨した。 その後、 粒径1 .0μmのダイアモ ンドペース トを用いてバフ研磨を行い、 鏡面仕上げした。 得られた 接合用試料は、 接合直前に10%程度のフッ酸水溶液中で、 接合面の 酸化物や不純物の除去を行った後、 アセトンで洗浄し、 温風で乾燥 させた。 その後、 直ちに界面を重ね合わせ、 メンデイングテープで 固定し接合に供した。
接合には、 電気油圧式圧縮 試験機(島津製作所製サーボパルサ
EHF2型) を用いた。 図3- 6に示すような接合用の 試験片をTiC製 (TiC-8.5mol%Mo ・3.5mol%WC焼結体)の圧縮冶具にセットした。
加熱 は、 タング ステン裂のサ スセプター を用い、 高周波誘
導加熱により間接的に行った。
試料 温度は、 サスセプターの 表面温度を2色式光高温計(千 野製作所製)を用いて測定した。
接合は、 約3.0mP aの真空中、
温度約2270Kで25--30M Pa (降伏応力(55)の約1/2 ) の負荷
状態で1.8 K s間保持した。 そ の後、 加 圧によるひずみを除 去するとともに粒界 を熱平衡
状態にするために、 温度約
粒界 ( 110)
合p
図3・6 炭化チタンく110>双結晶試験片.
2270 K で除荷後、 さらに約 7.2 ksの焼なましを行い 、 双結晶試料を 作製した。
3 - 2 - 3
透過電子顕微鏡観察
透過電子顕微鏡観察用薄膜試料作 製のため、 得られた双結晶試料 から両結晶の膜面が(110) 面となるように[1 10]回転軸に垂直に低速 ダイヤモンドカッターで約100μmの厚さの薄板を切断した。 その 後、 粒界が直径を通るように放電加工機で3mm併の円盤状に打ち抜 き、 これをつば付き研磨冶具(53)に固定し、 #240のSi C耐水ペーパー
で約50μmの厚さになるまで機械研磨し、 さらにTwin-jet電解研磨 法で薄膜化した。 電解研磨液には、 過塩素酸、 ブタノール、 メタノー
ル、 を容積比で1: 4: 1 0の割合で混合したものを用い、 電流30mA、
電圧30...40V、 温度230Kの条件で電解研磨した。
透過 電子顕 微鏡 観察に は、 JE 0 L - J E M 2 00 0 E X /T (加速電圧 200kV )を用いた。 高分解能観察および低倍に おける粒界転位列の観 察は、 上述のモリブデンと同様の方法 で 行った。
第4章 モリブデンの粒界破壊強度とそのエネルギー
4 - 1
緒言
遷移金属であるモリブデンは、 室温以下で著しく脆化する(1)ため、
構造材料としての用途が著しく制限される。 この低温脆化は、 主に 結晶粒界における粒界脆性破壊に起因したものであることが知られ ている。 しかし、 すべての粒界が一様に 脆性破壊し易いというわけ ではなく、 その強度は粒界によって異なる。
これまでの<110>回転軸の双結晶試料を 用いた研究(7)(40)(56・57)で
は、 粒界破壊強度は粒界の性格に著しく依存し、 粒界エネルギーと の間に比較的良い相関 がある(40)ことが報告されている。 すなわち、
粒界面における原子の対応度 が比較的良く、 安定粒界と考えられる 小傾角粒界や(112)2:3対応粒界は、 単結晶並の高い破壊強度を有 す る。 このことは、 結晶粒界の微細構造の相違が 、 モリブデンの粒界 の力学的性質に強く影響を及ぼしていることを示唆している。
そこで本章では、 純化処理を施し、 不純物元素を十分に除去した (表3・1参照)モリブデンの<00 1 >対称傾角粒界を有する双結晶試料 を作成し、 粒界破壊強度と粒界エネルギーの傾角依存性および粒界 破壊強度とそのエネルギーの相関について検討する。 こ こで、 本研 究にく001>方位の対称傾角粒界を選択した理由は、 この<001>方位 では後述する高分解能電子顕微鏡観察において二次元格子像観察が
< 1 10>回転軸の場合より容易であり、 粒界構造と破壊強度との相関 をより詳細に検討することが可能であるためである。
4 - 2
結果および考察
4 - 2 - 1
粒界エネルギーの傾角依存性
図4- 1 (a) は、Thermal Grooving法によって求めた粒界エネル ギーと表面エネルギーの相対値('/gb/,/S)を傾角戸に対してプロ ット したものである。 また、比較のため図4・1 (b)にWo lfによるモリブ
デン<001>対称傾角粒界の計算結果(60)も示した。 ここで、図4 - 1 ( a )中のO印は図中に示した試験片の回転軸に平行な方向、すなわ ち観察面が常に(.001)面となる方向から観察したもの、 口印はこれ と垂直な 面方向 から観察したも のであ る。 0印は観察面が常に (001)面に統ーされるため、表面エネルギーの面方位依存性を考慮 する必要がなく、'/gbの傾角依存性を検討できる。 一方、口印は試 料によって観察面となる表面が変わるため、表面エネルギ- y sが面 指数に依存性する場合、粒界エネルギーの傾角依存性はO印のもの と異なることになる。 そこで、以後前者の場合を('/gb/'/(OOI))、後 者の場合を('/ gbl '/ s)として区別する。 また、エラーパーは統計処理 を施して得られた平均誤差である。 エラーバーを示していないもの
は、その誤差がいずれもそのプロ ット点の大きさ程度であることを 意味する。 さらに、図中の2値は対応粒界理論(21) (22)に基づく値で あり、�値上の指数 は粒界面の面指数である。
図4-1(a)において、('/ gbl '/ (001))は傾角戸に明瞭に依存しており、
戸に対して上に凸となる傾向が認められる。 さらに、(1:30)�5と (120) �5対応粒界において大きなエネルギーの極小が、 また非常に 小さいが(150)�13対応粒界においてもエネルギーの極小が認めら