• 検索結果がありません。

金属とセラミックスの粒界構造と粒成長の相関に関 する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "金属とセラミックスの粒界構造と粒成長の相関に関 する研究"

Copied!
71
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

金属とセラミックスの粒界構造と粒成長の相関に関 する研究

池田, 賢一

Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University

https://doi.org/10.11501/3180463

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

(2)

4・1 緒言

第4章 モリブデン対称傾角粒界の 粒界破壊強度と粒界エネルギー

モリブデン(Mo)は延性・脆性 遷移温度が室温付近にあり、 b.c.c.金属特有の遷 移温度以下では著しい粒界破壊を示すことが知られている(49)。 しかし、 全ての 粒界が一様に破壊しやすいわけではなく、 破壊強度は粒界性格に強く依存する ことが双結品試料を用いた研究(1)・(3)によって明らかにされてきた。 第3章で述

べたように、 粒界近傍の原子構造と粒界エネルギーは粒界性格に強く依存して いることが明らかになった。 したがって、 粒界の諸特性を粒界性格で系統的に 評価することは重要である。 また、 粒界は不純物元素の偏析サイトとなること が多く、 主に侵入型不純物元素が粒界破壊強度に及ぼす影響について議論する 必要がある。 森田ら(30)は Mo のく001>対称傾角粒界の高分解能電子顕微鏡観察 を行い、 不純物元素により粒界の原子構造は変化し、 また、 粒界性格によって その挙動が大きく異なることを明らかにした。 との結果は、 粒界の原子 ・ 電子 構造だけでなく不純物元素も粒界の諸特性に影響を与えることを示唆するもの であった。 第3章では粒界の電子構造解析を DV-Xα法を用いて行い、 侵入型 不純物元素である炭素(C)、 窒素(N)および酸素(0)の中で、 C が最も Mo との結 合力が強く、 粒界を挟む Mo 原子聞の結合力を弱めること、 粒界性格によって 不純物元素の影響が変わることを明らかにした。

そこで、 本章では種々の傾角を有する Mo の<001>対称傾角粒界を作製し、

Thermal Grooving法を用いて粒界エネルギーの評価を行い、 分子動力学法に よるシミュレーション結果との比較を行った。 また、 4点曲げ試験による粒界

- 42 -

(3)

破壊強度の傾角依存性と不純物元素 の影響について検討を行い、 DV-Xα法の結 果との比較も行った。

4-2

実験方法

4・2・1

双結晶試料の作製

電子ビーム溶解高純度Mo多結晶棒((;株)東芝製;炭素10、酸素10、窒素10mass

ppm以下 )を出発材とし、 0.25MPa の高純度ヘリウムガス(純度99.9999%)雰囲 気下で高周波浮遊帯域溶融回転法(2)により<001>対称傾角粒界を有する円柱状 の双結晶 (直径約10mm、 高さ約32mm)を作製した。

粒界破壊強度測定用曲げ試験片は、 得られた 円柱状双結晶を3軸ゴニオメー ターに固定し、 X線背面反射ラウ工法を用いて、 共通回転軸に垂直な面である (001)面が試験片の側面になるように方位制御を行い、 SiC 切断砥石を用いて切 断した。 その後、 図 4・1に示す試験片形状になるように、 長軸 方向に平行な 4 面を#240"-' #2000の SiC耐水ペーパーによる機械研磨 、 並びにダイヤモンド

ペーストによるパフ研磨を行い、 鏡面に仕上げ た。 得られた試験片の最終形状 は、 <110> を共通回転軸とした対称傾角粒界の研究(3)と同様に、 約 1.2X1.7X

32mm3に統ーした。

(a) (b)

立すd

:

-d

J主d-一ー:

図4・1 (a) 4点曲げ試験治具と(b)試験片形状

(4)

4・2・2 純化処理(3)

粒界の力学的特性は C、 NおよびO等の侵入型不純物元素の影響を強く受け る。 したがって、 力学的特性が純粋な粒界構造のみに受ける影響を調べるため には、 不純物元素を除去する必要がある。 そこで、 作製した粒界の一部の試料 に対して、 .以下に示す純化処理を行った。 得られた双結晶試料から曲げ試験片 寸法よりも大きな約1.5 X 2 X 32mm3の試験片を切り出し、 長軸方向に平行な 4面のうち、 垂直関係にある 2面を鏡面に仕上げ、 純化処理用試料とした。 純 化処理は、 水素拡散精製装置のパラジウム合金透過膜を通した高純度水素(純 度99.99999%以上)を用い、 約20000Cで湿水素気流中で10.8ks、 乾水素気流中 で21.6ks の高周波加熱により行った。 以後、 純化処理を施した試料を純化材、

施していない試料を未純化材とする。

こ の純化処理により、 炭化物等の析出物は光学顕微鏡観察においては全く確 認されなかった。 表 4-1 に出発材、 未純化材および純化材の不純物元素の濃度 分析の結果を示す。 Mo中のC、 NおよびOの濃度分析には、 それぞれ燃焼ー赤 外線吸収法、 不活性ガス搬送融解-赤外線吸収法および 不活性ガス搬送融解-熱 伝導度法を用いた。 これら の結果より、 純化材では C は分析装置の検出限界 C5ppm)以下まで、 0とNはそれぞれ無視できる程度まで低下していた。

表4・1 出発材、 未純化材および純化材の不純物元素の組成

Impurity contents (ppm) Sample

C 。 N

Starting material < 10 く10 く10 Not-purified specimen 10.8 13.8 3.4

Purified specimen く5.0 2.0 2.2

- 44国

(5)

4・2-3 粒界エネルギーの評価

粒界エネルギーの測定には Thermal Grooving法を用いた。 その測定法につ

いて、 以下に説明する。

純化処理の際、 鏡面加工を施した 2つの側面には、 粒界エネルギ- Yg.bと表 面エネルギ- YSの釣り合いによって粒界溝が形成される。 このときγg.b、 YSお

よび粒界溝の2面角2θの間には次式の関係が成り立つ。

γg.b. = 2ys cos 8 (4・1)

したがって、 28を測定することによって粒界エネルギーを表面エネルギーに対 する相対値(γg.b. Iγs)として求めることができる。 28の測定には、 繰り返し反射

干渉計を用い、 干渉縞の間隔αと干渉縞の 2 面角 2ßを測定し、 次式により0を 求めた。

=

吋 守

tanß

)

(4・2)

ここで、 λは観察に用いた光源の波長(Hg: 5.461 x 10・7m)である。 各粒界につ いて200本以上の干渉縞を測定し、 式(4・1)と式(4・2)によって(γg.b. Iγs)を決定し

。た

4・2・4 4点曲げ試験

粒界破壊強度の測定は、 図4・1に示した4点曲げ試験用治具を用いて行った。

測定は純化材、 未純化材ともに各粒界に対して3""'4本の試験片を用いた。 こ のとき、 荷重を負荷する方向は図 4・1の方位関係になるように統ーした。 4点 曲げ試験には島津オートグラフ AG-10TAを用いた。 なお、 試験は試料の塑性 変形をできるだけ抑えるために、 試料を含む治具全体を液体窒素中(77K)に投 入し、 O.9ks保持した後、 クロスヘッドスピード約4.2μm/sの条件下で行った。

(6)

本研究で用いた 4点曲げ試験機は、治具上部の2つの支点聞に均ーな 曲げモ ーメントを付加することができるので、粒界をこの2つの支点問に位置させる ことにより、破壊時に粒界 に負荷された最大応力の評価が可能である。 ここで、

破壊強度は次式に示す最大繊維応力とひずみを用いて 評価した。

ω一bM一2α

σ (4-3)

(4-4)

ここで、dは内部支点間距離、ω は 破壊時の荷重、α は試験片の厚さ、bは試 験片の幅、hは試験片中央部の変位量である。 な お 、hにはクロスヘッドの変 位量を用いた。

試験後、直ちに破面の光学顕微鏡観察を行った。 このとき、 各試験片で 破壊 が起こっている起点と純化材の破面に析出物がないことを確認した。

4・3 結果および考察

4-3・1 粒界エネルギーの傾角依存性

図4・2 はThermal Grooving法によって得られた粒界エネルギーの表面エネ ルギーに対する相対値( r g.b. /γs)の傾角依存性を示した図ものである。 また、 同 時に分子動力学法によって得られた粒界エネルギーの傾角依存性を示す。 図4- 2(a)より、(γg.b. /九)は全体的に傾角に対して上に凸の依存性を示したが、(130) L5と(120) L 5対称傾角粒界において(γg.b. /九)の大きなエネルギーカスプ(エネ ルギーの極小)が、(150) L 13対称傾角粒界において小さなエネルギーカスプ が

- 46-

(7)

4-2(b)の分子動力学法から得られた結果とよくー この結果は、 図

確認された。

対称傾角粒界のカスフに対応した実験結果は得られな 実験結果とシミュレーション結果はほぼ一致していたと言える。

(350) L 1 7 致していた。

かったが、

0.1

0.04 0.08

0.06

0.02

\.A.f hh切lHω口同hlHd力ロロ。凶ロ5・HOmwKL百円。尚

2.5

2.0

0.5 1.0 1.5

(NE\町).AJhn

h切』ω口同 ..0

90 80 70

Misorientation Angle, ø (deg)

60 50 40 30 20

10

モリブデン の<001>対称傾角粒界の粒界エネルギーの傾角依存性 (a) Thermal Grooving法による実験結果(b)分子動力学法による計算結果

図4-2

(8)

4・3-2

粒界破壊強度の傾角依存性

図4-3に 4点曲げ試験による純化材と未純化材の粒界破壊強度の傾角依存性

を示す。 純化材では、 全体的に下に凸の傾角依存性を示すことが明らかになっ た。 また、 破壊強度の最大値は未純化材では傾角が 15"-'500の粒界においてほ ぼ一定値となり、 傾角依存性が小さくなることが分か った。 Kobylanskiと

GOUX(47)は室温において<001>対称傾角粒界の破壊強度を求めた結果、傾角が15

"-'700の大傾角粒界の領域でその強度がほぼ一定になることを示している。 ま た、 <110>対称傾角粒界の研究においてもほぼ一定の値を示す領域が見られて おり、 不純物元素は大傾角粒界の傾角依存性を小さくする効果があることが明 らかになった。

2000

2;25 2;13 2;17

↓↓↓

2;5 2;29 2;5 2;17 2;13

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

fヘ LJ 戸『 一 一 _ _ 一 一 一 _ -_ | ; ー - - - � _.� - P印刷speclmen

1600

-

4

- - -

i

- -

十l

w|

…一

一 一 /一一 同〕 ハ‘

[- 2一一'

一 喝 .

一ー

-

J柄引R O | 「 ー

‘、 一

一 h-

il「ll「

-w・0 h∞∞むし【パヤ∞ωト阿ロパヤυ吋lHF陶

一 一 一 一 一 l 一 一 一 γ 一 一 一 一 一 | 一 一 ー 一 一 一 | 一 一 一 | 一 一 一 一 一 一 一 一 ! 一 一 一 一 一 . 一 一 . 一 一 一 一 一 | 一 一 一 | 一 一 一 一 一 一 一 一 l 一 一 ー - . --l 一 一 一 | 一 一 - _)_ 一 一 一 | 一 一 一 | 一 一 一

o 10 20 30 40 50 60 70 80 90

Misorientation Angle,ゆ(deg)

図4・3 モリブデン<001>対称傾角粒界の粒界破壊強度の傾角依存性

- 48 -

(9)

ところで、 未純化材の強度にばらつきが見られた(130)L 5、 (370)L 29およ び(2 30)L 13対称傾角粒界では、 各試料の破面の光学顕微鏡観察の結果、 析出 物の量が大きく異なっており、 粗大な析出物が観察された試料ほど、 破壊強度 が低かった。 これは、 粒界面上の析出形態がその破壊強度に大きな影響を及ぼ し、 粗大な析出物ほど大きな応力集中が生じ、 破壊強度を低下させることを示

唆している。 以下の節では未純化材については破壊強度の最大値で評価を行う。

4・3・3 粒界破壊強度と粒界エネルギーの相関

粒界破壊に関するGriffithの理論(84)によれば、 粒界破壊強度の二乗は破壊に より新たな 2 つの表面を形成するのに必要な仕事量(2ys -γg.b.) と塑性変形に必 要な仕事量九の和と比例関係にあり、

σ

?

民(2ys -γg.b

)

+γp (4-5)

の関係が成り立つ。 <110>対称傾角粒界の研究(2)(3)において、 Yg.bが他の粒界に 比べて異常に低い(112)L3対称傾角粒界は、σfは単結晶並の強度を示しており、

σfと九bの聞に式(4-5)の関係が成り立つことが明らかになった。 しかし、 く001>

対称傾角粒界では、 σf とYg.bの聞には比較的良い相関は認められるが、 γg.bの傾 角依存性に極小が見られた(130)L 5 と(120)L 5対称傾角粒界において、 σfの傾 角依存性には極大を確認できなかった。 ただし、 (130)L 5対称傾角粒界から傾 角が約30ずれた、 400から(120)L 5対称傾角粒界の領域の粒界で粒内破壊が頻 繁に起きたことは、 粒界破壊強度が強いため とも考えられる。 また、 <110>対

称傾角粒界においても比較的大きなエネルギーカスプが見られた(332)L 11対 称傾角粒界にσfの極大は見られないことから、 Griffith の理論に基づく式(4・5) が実験的に成り立つには(112)L3対称傾角粒界のようにYg.bにきわめて大きな 極小を示す場合に限られる といえる。

(10)

4・3・4 不純物元素が及ぼす粒界破壊強度への影響

<001>対称傾角粒界の純化材と未純化材の粒界破壊強度は、 ほぼ同様な下に 凸の傾角依存性を示した。 この結果は、 <110>対称傾角粒界で得られた純化材 と未純化材の傾角依存性の大きな相違とは異なっており、 <110>ねじり粒界の 場合と類似している。 これは、 回転角の変化に伴う粒界の微細構造の変化が

<110>対称傾角粒界に比べて<001>対称傾角粒界の方が少ないからであると考 えられる。 微細構造変化を評価するパラメータとして粒界の自由体積がある。

自由体積とは、 単位体積当たりに占める原子の割合の逆数であり、 粒界近傍で は原子配列が単結晶のそれとは大きく異なる。 また、 粒界性格にも依存するパ ラメータである。 森田(85)はく001>対称傾角粒界の破壊強度が不純物元素に影響 されにくい理由として、 自由体積の傾角の変化に伴う変化量が<110>対称傾角 粒界に比べて小さいことが影響していると述べている。 さらに、 第3章でDV­

Xα法を用いて粒界を挟む原子聞の結合性を不純物元素の偏析の有無によって どのように変化するかを検討した。 その結果、 各粒界とも粒界を挟む原子聞に おいてC等の不純物元素の偏析により結合力が低下することが明らかになった。

また、 粒界性格によって粒界を挟む原子問の結合力が変化し、 (130) L 5対称傾 角粒界は、 他の粒界に比べて不純物元素の偏析による結合力の低下が少ないこ とが分かった。 これは、 (130) L 5対称傾角粒界において、 不純物元素の偏析に よる粒界強度の変化が少ないことを示唆するものである。 実験結果では、 (130) L5対称傾角粒界については純化材と未純化材の強度がほぼ一致しており、 計 算結果を支持しているが、 他の粒界でも同様の結果を示しており、 粒界性格に よる破壊強度の違いは明瞭には現れなかった。 すなわち、 DV-Xα法で得られた 結果は、 原子 ・ 電子レベルの結合力を議論しているため、 実験で求めた破壊強 度には現れず、 各粒界における不純物元素による結合力の変化量はどの粒界も

- 50 -

(11)

ほぼ同様であると考えられる。 したがって、 純化材と未純化材の破壊強度に大 きな違いが現れなかったのであろう。

以上の考察より、 <001>対称傾角粒界の破壊強度において不純物元素の効果 が顕著に現れなかった理由は、 自由体積の変化が粒界性格の変化に対して小さ いこと、 粒界を挟む原子問の結合力が粒界性格によらずほぼ一定であることが 考えられる。

4-4 結言

モリブデンの種々の傾角を有する<001>対称傾角粒界を含む双結晶を作製し、

Thermal Grooving法を用いて粒界エネルギーの評価と 4点曲げ試験による粒 界破壊強度の測定を行い、 以下の結論を得た。

(1) 粒界エネルギーの表面エネルギーに対する相対値の傾角依存性は全体的

には上に凸の依存性を示したが、 (1否0)L 5、 (120) L 5および(150)L 13 対 称傾角粒界で極小を示した。 この結果は分子動力学法による粒界エネルギ ーの傾角依存性とよく一致していた。

(2) 粒界破壊強度の傾角依存性は全体的に見ると下に凸の依存性を示したが、

粒界エネルギーの傾角依存性に極小が見られた(1否0) L 5 と(120)L 5および (150) L 13対称傾角粒界で破壊強度の傾角依存性に極大は現れなかった。

( 3) <001>対称傾角粒界の破壊強度の傾角依存性が不純物元素の有無によっ

て大きな変化を示さないのは、 傾角の変化による自由体積の変化が小さい こと、 不純物元素が入ることによる原子問の結合力の低下が粒界性格に依 存しないことが考えられる。

(12)

第5章 モリブデン非対称傾角粒界の微細構造

5・1 緒言

粒界近傍の原子構造の研究は幾何学理論を用いたシミュレーションから始ま り、 電子顕微鏡の分解能の向上とともに原子構造の直接観察へ発展していった。

金属、 セラミックスを対象とした粒界の原子構造観察には主に対称傾角粒界を 有す る双結晶試料が用いられてきた。 これは、 高分解能電子顕微鏡法により粒 界における原子配列が直接観察しやすいためである。しかし、多結晶中には様々 な性格の粒界が混在しており、 より一般的な 粒界に対する知見が必要である。

そこ で、 本研究 では対称傾角粒界よりも一般粒界に近い、 非対称傾角粒界に着 目し、 その原子構造について検討を行った。

非対称傾角粒界の原子構造の研究は 1980年代から行われるようになった。

Brokman ら(86)は、 <001>.L; 5非対称傾角粒界のシミュレーションを行い、 そ の構造は、 対称傾角粒界面のみにファセット化する可能性があるこ とを指摘し た。 その後、Ichinose ら(22)(23)やMer・kle ら(26)(27)によって種々の材料の非対称 傾角粒界が高分解能電子顕微鏡法を用いて観察されるように なった。 しかし、

これらの観察に用いた試料は NaCl上に蒸着させた試料を用いてコラム状の結 晶を作製し観察したもので、 双結晶試料を用いた研究は Niの報告(51)がな され ているだけで、 その他はほとんど行われていない。 また、 非対称傾角粒界の幾 何学理論や粒界エネルギーについてはPaidar(87)の研究やMer・kle とWolfロ7)の

研究が報告されている。 これらの研究は主にf.c.c.金属のアルミニウム(Al)、 銅 (Cu)および金(Au)に ついて行われており、 b.c.c.金属の高分解能観察に ついて はIchinose ら(23)の鉄(Fe)の研究が報告されているだけである。 また、 いずれ

- 52 -

(13)

の非対称傾角粒界の研究も不純物元素の効果については検討されていない。

このように 、 非対称傾角粒界の原子構造については、 まだ明らかにされてい ないことが多く残っている。 そこで、 本研究では対称傾角粒界で系統的な評価

がなされているモリブデン( Mo)を用いて、<001>2:5非対称傾角粒界を作製し、

透過型電子顕微鏡に よる高分解能観察を行った。 また、 不純 物元素の効果につ いても 検討を行った。

5-2 実験方法

5・2・1 双結晶試料の作製

電子ビーム溶解高純度Mo多結晶棒(株)東芝製;炭素10、酸素10、窒素10mass

ppm以下)を出発材とし、 0 .25MPa の高純度ヘリウムガス(純度99. 9999%)雰囲 気下でく001>軸を共通回転軸とした非対称傾角粒界を有する双結晶試料 を作製 した。 粒界を挟む2つの結晶の方位関係は、 2:5対応方位をもつように 2つの 結晶の(010)面同士のなす角で表す傾角を 36.87。とした。 2:5対応方位を有する 傾角粒界では 2つの結晶の粒界面がとも に { 130}面と{ 120}面になる粒界が対称 傾角粒界であるが、 非対称傾角粒界では2つの結晶における粒界面の面指数が 異なる。 そこで本研 究では、 {130}対称傾角粒界面と非対称傾角粒界面のなす 角度αを非対称成分(inclination)として定義し、 非対称傾角粒界を表記した。

図5・1 に 双結晶試料作製法の概略図を示す。 はじめに モリブデン多結晶棒か ら高周波浮遊帯域溶融法によって単結品棒 を作製した。 得られた単結晶棒から 約20mm のロッドを切り出し、 接合面が目的 の非対称傾角粒界面になるように X線背面反射ラウ工法 に よって方位制御を行ったあと、 低速ダイヤモンドカッ

ターで切り出した(図5・l(a))。 次に 2つの単結晶の共通回転軸であるく001>方

(14)

向に切り込みを入れ、 多結晶モリブデン板で これら2つの結晶を固定した(図 5・1(b))。 この固定した2つの単結晶を炉内で2本の多結晶棒の聞に取り付けた。

その後、 O.25MPa のヘリウムガス(純度99.99990/0)雰囲気下で約2000tまで昇 温し、 2つの単結晶と下の多結晶棒を接合した(図5-1-(c))o さらに、 上の多結 品棒を約26000Cの温度で溶融して2つの単結晶と溶融接合した(図5-1-(d))。

最後に、 固定した2つの単結晶の界面を溶融し、 徐冷すること によって凝固し た部分を非対称傾角粒界とした (図5-1・(e))。 また、 作製した全ての粒界におい て安定な構造を観察するために炉内で20000C、 10.8ksの熱処理を施した。

)/s\

ω自

(c)

[j,

E.B. melted (d) 。。o。00 JIO. \ 00。

bべ

。。。 (e) polycηTstal

W or king coil

性イ

。。。。OO�OO。

b4

。。。

/ M

く001> Asymmetic

。。。

レ1

000 tilt boundary

。00 r-100。

図5・1 非対称傾角粒界作製法

- 54 -

(15)

透過型電子顕微鏡観察用 試料は、 得られた双結晶試料から低速ダイヤモンド カッターを用いて、 共通回転軸である<001>に垂直 、 す なわち粒界面に垂直に 厚さ約500μmの薄板を切り出した。 この中の数枚の薄板を前節と同様の条件 で純化処理を施し、 純化材とした。 純化材、 未純化材ともに約100μmの厚さ になるまでSiC耐水ペーパーを用いて機械研磨を行った後、 放電加工機を用い て 3mm<)>の中心に粒界が通るように打ち抜いた。 その 後、 twin-jet電解研磨法 を用いて薄膜化した。 電解研磨液には、 エタノール、 硫酸および塩酸を容積比 で 73 : 20 : 7の混合液 を用い、 電圧20V、 電流40mA、 温度約・150Cの条件で 電解研磨を行った。

5・2-2 透過型電子顕微鏡(TEM)観察

TEM観察はトッフエントリー型のJEOLJEM-2000EX/Tを用い、 加速電圧 200kV で行った。 高分解能観察は、 電子線 を共通回転軸方位<001>に平行 、 す

なわち粒界面 が電子線に平行になるように入射し、 粒界を挟む 2 つの 結晶が同 時にブラッグ条件を満足するようにして行った。

5・3 結果および考察

図5・2に本研究で作製した2;5 非対称傾角粒界を2;5対応格子図中に示す。

二重丸で示した点が対応格子点であり、 白丸で示した結晶A と黒丸で示した結 晶 B の面指数を各 粒界に示している。 以下、 各非対称傾角粒界をI(結晶Aの

粒界面指数) 1 ( 結晶Bの粒界面指数)粒界」と記述する。 作製した3つの粒界は、

α = 18.43。の(340)/(010) 2; 5非対称傾角粒界、 α = 26.570の(110)/(170) 2; 5非対 称傾角粒界およびα = 33.690の(970)/(3 110) 2; 5 非対称傾角粒界である。 なお、

(16)

この表記法では、 2 つ の 対 称 傾 角粒界は(130)/(1 30) L 5 対 称 傾 角 粒 界、

(210)/(120) L 5対称傾角粒界と表される。

@ @

@

@

@

@

@

@

・"--0

�ち~

0 0

o 0ーベ〉 ⑨

@

@

01@10

⑨0--0 0

o 0 0 @

0 ⑨ O

@ 0 0 0

0 0 0 ⑥

o @ 0

⑨ 0 0 0

o 0 0 @ 図5-2 <001> L 5非対称傾角粒界の幾何学的模式図

5-3-1 純化材の粒界構造

(a) (340)/(010) };

5非対称傾角粒界

図5-3 傾角のずれが約2.6::i:0.50の(340)/(010)L 5 非対称傾角粒界の(a)高 分解能像、 (b) (a)の四角で囲んだ領域の拡大像および(c)この非対称傾角粒界面 と 2 つの対称傾角粒界面と調密面の幾何学的方位関係を示す。 高分解能像は、

- 56 -

(17)

(c)

一(170) (1τ0)

5nm

2nm

(010) (340)

図5・3 (340)/(010) 2;5非対称傾角粒界(純化材)の高分解能像

(18)

( c)の太線で示した方位関係になるように示した。 すなわち、 スケールバーと平 行な面が下側の結晶では(340)面、 上側の結晶では(01 0) 面となるように示した (以下、 全ての高分解能像で同様に示す)。

非対称傾角粒界とは、 粒界面で 2つの結晶が鏡面対称の関係にない粒界であ り、 幾何学的には平滑な界面を描くことができる粒界である。 しかし、 実際に 作製した粒界は、 図5-3( a)に示すようにジグザグ構造をとっており、 ある特定 の面にファセット化することが明らかになった。 詳細に解析するために、 図5- 3(b)で示しているように、 最近接の原子同士を線で結ぶとカイト型構造ユニッ

トが見出される。 これはく001>対称傾角粒界の基本構造ユニットの一つであり、

このユニットのみで構成されているので、 ファセット面は(130)/(130)L 5対称 傾角粒界であることが確認された。 この構造は、 図3-6 に示した分子動力学法 で得られた(130)/(130)L 5対称傾角粒界と同様にカイト型構造ユニットのみで 構成されており、 観察結果とシミュレーション結果がよく一致していることが ここでも確認された。 また、 同じファセット面において、 図5-3(b)の矢印で示 したようにステップが観察された。 ステッフ高さは約0. 3nmで、 ステップ間 隔は約2.5nmである。 この 粒界は傾角が36.87。のL5対応 粒界であるが、 前述 したように傾角のずれが背面反射ラウエ法による解析の結果約2. 6::i:: 0.50あり、

こ れら の ス テ ッ プ は 傾 角 の ず れ を 補償 す る た め に 導 入 さ れ た DSC( Displac ement Shift Complete)転位に起因しているもの と考えられる。

図5-4はL5対応格子図中にDSC格子を示したものである。 この図より 0.3nm のステップ高さを生じる DSC 転位は弘であることが分かる。 したがって、 こ のファセット面のステップは弘転位が導入されることによって傾角のずれを補 償し、 ステップ間で(130)/( 130)L 5対称傾角粒界を形成していると考えられる。

逆に

転位が導入されたときに観察されたステッフ間隔と九転位のファセット

国58 -

(19)

面に垂直な成分の大きさから、 式(2 ・2)を用いて対応方位のずれ角を求めると約 2.3。となり、 背面反射ラウ工法を用いた傾角のずれの測定結果( 約2.6:::!:: 0.50)と

ほぼ一致する。 DSC転位は、 対称傾角粒界の傾角のずれを補償するために導 入される転位として報告されているが、 非対称傾角粒界においてもファセット 化した対称傾角粒界面に導入されることが示された。

また、 図5-3(b)には(110)/(170)面にファセット化している領域も見られた。

図5・3(c)から考えると、 幾何学的に予想された(340)/(010)非対称傾角粒界面と 片側の結晶の調密面である(110)/(170)面は約80しか角度差がなく、 (110)/(170) 面が低エネルギー界面であれば、 容易にファセット化することが予想される。

以上の結果より、 (340)/(010)L 5 非対称傾角粒界は、 対称傾角粒界面と調密面 にファセット化するジグザグ構造を有することが分かった。 また、 非対称傾角 粒界においても DSC転位が対称傾角粒界面に導入されることで傾角のずれが

補償されることも明らかになった。

Z

zg

IEO]

[訂O]B

zf

IZO]

[120]号

zf

[ロ0]

[百仙

図5-4 (1否0)/(130)L 5対称傾角粒界のDSC転位モデル

(20)

(b) (110)/(170)L5非対称傾角粒界

図 5-5 に (110)/(170) 1;5非対称傾角粒界の (a)"'" (c)高分解能像と(d)非対称傾 角粒界面と 2つの対称傾角粒界面の幾何学的方位関係を示す。 この 粒界は片側 の結晶が調密面となる粒界であり、 (340)/(0 10) 1; 5非対称傾角粒界で も観察さ れたように安定な粒界であることが予想される。 しかし、 実際の 粒界を 観察す ると、 他の 2つの対称傾角粒界面に もファセット化するジグザグ構造を とるこ とが明らかに なった。 図5・5(a)の四角で囲んだ領域の拡大像を (b)と(c)に示す。

これらの対称傾角粒界面において最近接 の原子同士を線で結ぶと、 (130)1 (130) 1;5 と (210)/(120) 1; 5対称傾角粒界の構造ユニットが見出され、 分子動力学法 で得られた結果ともよく一致していた。 また、 (110)/(170)面にファセット化し ている領域においても最隣接原子同士を線で結ぶと構造ユニットが描かれ、 2 つの対称傾角粒界ユニットの複合で表されることが分かった。 この (110)/(170)

1;5非対称傾角粒界は、 図5-2に示したように (1否0)/(130) 1; 5と(210)/(120) 1; 5 対称傾角粒界が1 : 2 の割合で幾何学的に構成されると考えられ、 構造ユニッ

トの配列もこれに一致していた。 すなわち、 (130)/(130) 1; 5対称傾角粒界の構 造ユニット(右向きカイト型構造ユニットX 2) 1組に対して、 (210)/(120) 1; 5対 称傾角粒界の構造ユニット(左向きカイト型構造ユニット+ライン型ユニット) 2 組の割合で構成されていた。

以上の結果より、 (110)/(170) 1;5非対称傾角粒界は、 片側の結晶が安定に存 在すると考えられる欄密面粒界であるに もかかわらず2つの対称傾角粒界面に ファセット化することが明らかになった。 これは、 対称傾角粒界面の界面エネ

ルギーが調密面の界面エネルギーよりも低いことを示唆するもの である。 また、

観 察結 果 よ り 、 全て の フ ァ セット 面 は (130)/(130) 1; 5 対 称 傾 角 粒 界 と

(210)/(120) 1; 5対称傾角粒界の構造ユニットで記述できることも示された。

圃60 -

(21)

10nm

、‘,,,,LU

(d) 3nm

(170) (110)

図5・5 (110)/(170) 2;5非対称傾角粒界(純化材)の高分解能像

(22)

(c) (970)/(3110)

2;5非対称傾角粒界

図 5-6に (970)/(3110) 2; 5 非対称傾角粒界の(a)高分解能像と(b)非対称傾角粒 界面と 2つの対称傾角粒界面と調密面の幾何学的方位関係を示す。 この粒界は 3種類の非 対称傾角粒界の中でも最も(210)/(120)2; 5対称傾角粒界に近い粒界 であり、 高分解能像においても(210)/(120) 2; 5対称傾角粒界面へのファセット 化が顕著に見られた。 しかし、 粒界作製時に粒界面が僅かに傾斜したため、 す なわち粒界面が電子線に平行でなくなったため、 粒界近傍でモワレパターンが

形成され、 詳細な原子配列については解析できなかった。

、‘,,,,Lυ

(a)

--- lム戸�

10nm

(170) (110)

42L

(示。)

O - 一的 一1-一7コJ - Qu

no-it

図5-6 (970)/(3110)2;5非対称傾角粒界(純化材)の高分解能像

-62 -

(23)

以上の結果より、 純化材における非対称傾角粒界はいずれの粒界においても 対称傾角粒界面か片側の結晶の欄密面にファセット化することが明らかとなっ た。 Mer・kle とWolf(27)は非対称傾角粒界の粒界エネルギーを系統的に評価する ために AuとCuの種々の<110>.06 9非対称傾角粒界の粒界エネルギーを求め、

片側の結晶の澗密面で構成される非対称傾角粒界のエネルギーが低くなること を報告している。 これまで、 Mo の<001>軸の非対称傾角粒界についての粒界 エネルギーの理論計算は行われていないが、 調密面粒界の粒界エネルギーは他 の非対称傾角粒界よりも低くなっており、 それよりも安定な対称傾角粒界面と ともにファセット化したと考えられる。 また 、 各ファセット面は.065対称傾角 粒界の構造ユニットで記述可能であることが示され た。 したがって、 各対称傾 角粒界の粒界特性を用いれば、 非対称傾角粒界においても特性の予測が可能と なるであろう。

5-3・2 未純化材の粒界構造

(a) (340)/(010) ,2; 5非対称傾角粒界

図5・7(a)と(b)に(340)/(010).06 5非対称傾角粒界の未純化材の高分解能像を示 す。 図中の線は図5・3(c)の色と対応した面を表す(以下、 同様に表示する) 。 図5・7(a)より、 未純化材においても 2 つの対称傾角粒界面へのファセット化が

生じて い る こ と が確認さ れ た 。 詳細に解析 す る と 、 図 5-7(b)の よ う に (210)/(120) .06 5対称傾角粒界面近傍にファセット化した領域で、 不純物元素の 偏析に起因するひずみコントラストが観察された。 しかし、 このようなコント ラストは(130)/(130) .06 5対称傾角粒界面へファセット化した領域では確認され なかった。 すなわち、 ファセット化する面によって不純物元素の偏析挙動が異 なることが明らかになった。

(24)

10nm

3nm 図5・7 (340)/(010) L 5非対称傾角粒界(未純化材)の高分解能像

図5-8(a)と(b)に、 同じ粒界の異なる領域について観察した結果を示している が、 図5-7の観察結果とは大きく異なっていた。 図5-8(b)より、 母相の Mo と は異なる第2相が (130)/(130) L 5対称傾角粒界面に沿って析出していることが 観察された。 未純化材の不純物元素は主に炭素、 窒素および酸素であり、 格子 定数と存在する可能性がある化合物を検討した結果、 この析出物は NaCl構造 を有する MoC であると考えられる。 この析出物と Mo の界面は粒界を挟む 2 つの結晶において整合であり、 析出物同士の界面が存在することが確認された。

母相と析出物界面の方位関係は、

ρu nu nv

nv M

M

、、,ノ

、‘,/

。1U 1i 噌i 噌i 唱i 噌i

,,目、、JaE、、

,,I

,rJ

,,r

,,I 0

0 M M

、、,,〆、、,,,,

ハU ハU 言。

マi ti 噌i

,,az、

,,at、

円U 円U 0 0 M M

、•••

•• d 司E・E・-4 ハU nu

一司i

τi ti 噌i

FEa--z』FE・E・-hF

,FJ

,r'

,,r

,,I 0 0 M M

、,,.Ed、EE--J

噌i 唱i ハU ハU nu nu

r---kr・--L

(5・1) (5-2) である。

- 64-

(25)

5nm

2nm

図5・8 (340) 1 (010) }; 5非対称傾角粒界(未純化材)の高分解能像

この結果は、 森田ら(30)が観察した(130)/(130) }; 5対称傾角粒界の未純化材の 結果とよく一致していた。 しかし、 式(5・2)の方位関係は本研究で初めて観察さ れたものであり、 母相と析出物の椀密面同士の界面が存在することが明らかに なった。

(26)

(b) (110)/(170) }; 5非対称傾角粒界

図5・9は、 (110)/(170) 2;5非対称傾角粒界の未純化材の高分解能像である。

また、 内挿図には、 この非対称傾角粒界面と対称傾角粒界面の方位関係を示す。

図5-9より、 この粒界は幾何学的に予想される粒界面よりも大きく湾曲した構 造となっており、 詳細な解析の結果、 (120)/(210) 2;5対称傾角粒界面にファセ ット化していることが分かった。 このファセット面は、 これま で観察されてい た(210)/(120) 2; 5対称傾角粒界面と 90。の角度をなすが、 構造ユニットの配列 は同じである。 すなわち、 大きく湾曲した粒界においても非対称傾角粒界は、

対称傾 角 粒 界 面ヘファ セ ット化することが示され た。 ま た 、 図 5-9では (130)/(130) 2; 5対称傾角粒界面で不純物元素の偏析と考えられるコントラスト が観察された。 この結果は、 前項の図5・?と5・8の不純物元素の挙動とは異な

っていた。

5 nm

図5-9 (110)/(170)}; 5非対称傾角粒界(未純化材)の高分解能像

- 66-

(27)

(c) (970)/(3110) 2;5非対称傾角粒界

図5-10に(970)/(3 110) L 5 非対称傾角粒界の高分解能像を示す。 この粒界で も対称傾角粒界面へのファセット化が生じている。 詳細に解析すると、 各フア セット面近傍で不純物元素の偏析によるひずみコントラスト と、 格子湾曲が観

察された。

10nm

図5-10 (970)/(3 110) L 5非対称傾角粒界(未純化材)の高分解能像

(d) 不純物元素が及ぼす粒界構造への影響

未純化材の粒界構造は、 純化材と同様に 2つの対称傾角粒界面にファセット 化していたが、 (130)/(1 30)面と(2 10)/(120)面で不純物元素の挙動が異なること

が明らかになった。 また 、 同じ ファセット面であってもその挙動が異なってい た(図5-7�5・9)。 これは、 粒界作製時に局所的な濃度分布が生じたためである と考えられる。 このような不純物元素の挙動に相違が生じた理由は、 各ファセ

(28)

ット面において、 不純物元素の偏析量が異なるからであると推察される。

第4章で述べた自由体積は、 (210)/(120) }; 5対称傾角粒界の方が(130)1 (130) };5対称傾角粒界よりも大きいため、 偏析サイトが 多く不純物元素は最初に (210) 1 (120)面に偏析する。 したがって、 偏析許容量を越えると偏析サイトの少 ない(130)1 (130)面へも偏析するようになるが、 さらに多くなると(130)/(130)面 近傍から第2相を析出するようになると考えられる。 したがって、 図5-7"'-'5-9 の(130)/(130)}; 5対称傾角粒界面における不純物元素の挙動が異なっていたの であろう。

ところで、 未純化材のファセット化は、 主に対称傾角粒界面へ生じており、

純化材で観察された網密面へのファセット化が減少していた。 これは、 不純物 元素の偏析に起因すると考えられる。 Lejcekら(88)は粒界偏析の 異方性を調べ るために、 α-Fe の<001>};5非対称傾角粒界への炭素、 燐およびシリコンの偏 析量を測定し、 系統的に評価している。 元素によって偏析量の非対称成分(α)

依存性は異なるが、 全体的に調密面への偏析は起こりにくいことを示している。

Mo の非対称傾角粒界についてのこの ような研究は報告されていないが、 調密 面では片側の結晶の原子が粒界面上に最も 多く存在しており、 不純物元素の偏 析サイトが少ないと考えられる。 すなわち、 調密面は不純物元素の偏析により 界面エネルギーが上昇し、 対称傾角粒界面ヘ偏析した方が系全体でエネルギー 的に安定になるため、 調密面へのファセット化が減少したのであろう。

- 68圃

(29)

5-4 結言

モリブデンの<001 >非対称傾角粒界を作製し、 高分解能電子顕微鏡法を用い て粒界近傍の原子配列の解析、 不純物元素の効果について検討を行い、 以下の

結論を得た。

(1) 純化材のく001>..65非対称傾角粒界は、 ..65対称傾角粒界面と片側の結

晶の調密面へファセット化することが明らかになった。 また、 いずれのフ ァセット面についてもく001>(1否0)/(130)..6 5と(210)/(120) ..6 5対称傾角粒 界の構造ユニットで記述することができた。 した がって、 非対称傾角粒界 の諸特性は、 個々の対称傾角粒界の特性を用いて予測可能になると考えら れる口

( 2 ) 不純物元素が 非対称傾角粒界に及ぼす影響は、 各ファセット面によって

異なってい た。 これは、 各ファセット面における不純物元素の偏析サイト の数に起因しており、 不純物元素の量が多くなるにつ れて、 I (210)/(1 20) 面への偏析j→I(130) 1 (130)面への偏析」→I (130) 1 (130)面近傍への第2

相の析出Jの現象が起きるためである。 また、 調密面へのファセット化は 純化材に比べると減少しており、 偏析による界面エネルギーの上昇が示唆

された。

(30)

6-1 緒言

第6章 高純度アルミニウム箔の 立方体集合組織形成過程

これまでの章では、 双結晶試料を用いて粒界構造、 粒界エネルギーおよび破 壊強度について検討し、 個々の粒界の特性が予測可能であることを述べた。 本 章と次章では、 実際に用いられる多結晶材料で、 結晶方位や粒界性格がどのよ

うに組織制御に影響を及ぼすかについて検討を行った結果について述べる。

陽極高圧下の電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔は、 良好なエッチング 特性(89)をもっ立方体集合組織にすることで静電容量を上げて使用されている。

ここで、 立方体集合組織とは圧延方向にく100>、 圧延面に{001}近傍の方位を有 する結晶粒(立方体方位粒)の集合体である。 厚さ約100μm の箔の場合、 再結晶 粒が成長し箔を貫通する現象が起こり、 立方体方位粒の集積度が上昇しないこ とが問題となっていた。 しかし、 アルミニウム合金板の研究(90)において製造工 程の冷問圧延と最終焼鈍の聞に部分的に再結晶させる部分焼鈍と付加的な軽圧 延を施すことによって、 立方体方位粒が優先的に成長し、 その集積度が95%以 上に増大することが明らかとなった。 これらの処理をアルミニウム箔にも適用 することによって立方体集合組織を鮮鋭化させることに成功した。 しかし、 な ぜ立方体方位粒が優先的に成長するのかについては様々な見解(91)があり、 明ら かにされていないのが現状である。

最近、 高純度アルミニウム箔における立方体集合組織の形成過程に関して多 くの報告(92)・(95)がなされているが、 立方体方位粒とその他の方位を有する結晶 粒の方位関係や部分焼鈍、 付加的圧延が及ぼす集合組織形成への効果等、 未だ

ー70 -

(31)

不明な点が多い。 したがって、 立方体方位粒の成長過程ならびに集合組織の形 成過程における部分焼鈍、 付加的圧延の効果を明らかにすることは重要である。

一般に、 再結晶粒の成長速度は、 その素過程である粒界の移動速度に依存し、

その速度はひずみや粒界エネルギーによる駆動力と粒界の易動度によって決定 される。 銅やアルミニウム合金厚板の立方体方位粒の成長に関しては、 付加的 圧延で生じる粒内のひずみを駆動力とした粒界移動が起こると 報告(90)(91)され ているが、 アルミニウム箔に関しでも同様の現象が起きているかどうかは明ら かにされていない。 また、 粒界を挟む 2つの結晶粒の方位関係によって粒界性 格が決定されるが、 この粒界性格は力学的性質や電気的性質だけでなく、 粒界 の易動度にも大きな影響を与えることが知られている。 一次再結晶における粒 界の易動度は、 小角粒界よりも大角粒界の方が大きい(96)と言われている。 また、

立方体方位粒とその他の方位粒と の粒界がく111>軸を中心に 400の回転関係を 有していれば移動しやすいということも報告(91)されているが、 高純度アルミニ ウム箔について粒界性格を詳細に検討した研究はほとんどない。 箔の再結晶現 象は板等のバルク材とは異なることが予想、され、 特に結晶粒が箔を貫通した場 合などの粒界性格の効果を検討すべきである。 したがって、 再結晶において最 も重要な要因となる粒内に蓄積するひずみと粒界性格を個別に調べることは再 結晶集合組織形成過程を解明する上で重要である。

そこで本研究では、 「粒内のひずみJと「粒界性格」に着目し、 立方体方位 粒の成長における部分焼鈍と付加的圧延が及ぼす効果を明らかにし、 立方体集 合組織形成過程について検討を行った。 なお、「粒内のひずみ」と「粒界性格」

の解析には、 SEM-EBSP法を用いた。

(32)

6-2 実験方法

6-2・1 試料

試料は、 電解コンデンサ用高純度アルミニウム(99.99%) 箔 (東洋アルミニウ

ム株式会社製)を用いた。 この箔は、 主な不純物元素として、 鉄:8ppm、 シリコ ン:8ppm、 銅:50ppmを含んでいる。 SEM-EBSP法による結晶方位解析用試料 は、 電解コンデンサ製造工程 の冷問圧延後、 部分焼鈍後、 付加的圧延後の箔を

用いた。 図6・1 に電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔 の製造工程を示す。

各工程後に採取した試料をそれぞれ、 冷問圧延材 、 部分焼鈍材および付加的圧

延材と呼ぶ。 冷問圧延材は、 厚さ約6'"'-'7mm の熱間圧延板を約400μmまで冷 間圧延後、 さらに約130μmまで冷問圧延を施している試料である。 ま た、 部 分焼鈍材は冷間圧延材を大気中、 約2t/min の昇温速度で 2300Cまで昇温し、

6hr 保持の焼鈍を施した試料である。 付加的圧延材は部分焼鈍後、 約110μm まで軽圧延を施した試料である。

,... 》ー

熱問圧延板 冷問圧延 l部分焼鈍

(板厚6""'-'7mm) (板厚130μm) \ (523K前後)

》ー

》ー ーーーーーーー

付加的圧延 l 最終焼鈍 (板厚110Jllll) J (773""'-'823K・20hr)

》ー

)j_)jイ本方位再結晶集合組織 (表面積の拡大)腐食 酸化膜形成

図6・1 電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔 の製造工程

- 72 -

(33)

各試料とも、 圧延方向が長手方向になるように約 10 X 5mm2の板状試験片を 切り出した。 立方体方位粒の成長過程を明らかにするために、 部分焼鈍材と付 加的圧延材は約 2 X 10・3Paの真空中、 約300C /min の昇温速度で 3000Cまで昇 温し、 種々の時間保持する熱処理を施した。 その後、 試料表面に電解研磨を施 して方位解析に供した。 なお、 電解研磨液は過塩素酸、 エチレングリコール、

およびエタノールを容積比で 1 : 2 : 7の電解液を使用した。 電解研磨条件は温 度約2"'--'30C、 電圧23Vで液を携梓しながら行った。

6-2-2 EBSPを用いた結晶方位解析と粒界性格解析

本研究では、 電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔の立方体集合組織形成 過程の解析に SEM・EBSP法を用いて結晶方位解析と粒界性格解析を行った。

EBSP( 後方電子線回折図形)の形成機構は第2章で述べた。

測定には、 TSL社製のSEM-EBSP解析装置OIM™ を用いた。 SEMの電子 線の走査ステッフ幅を冷間圧延材では1 μm、 部分焼鈍材、 付加的圧延材は2 μm と5μmとして、 スキャン領域を圧延方向に約0.5mm、 その垂直方向に約3 mm とって測定を行った。 走査ステッフ幅 の違いは、 各試料において結晶粒径を考 慮したためである。 結品方位の情報は E uler 角で得ることができるので、 三次 元的な結晶方位と粒界性格を測定できる。 なお、 結晶方位の信頼性の 評価には OIM™で定義されたCI ( C onfidence Index)値を用いた。 CI 値は得られたEBSP と測定する試料 の点群と格子定数から予想されるシミュレーション像との対応 度を評価する値で、 0 から 1 の範囲で与えられる。 一般には0.2 から0.3以上 の CI値があれば、 その方位測定は正確に行われていると考えられる。 また、

データ解析には得られた EBSPの鮮明度で定義したIQ(Im age Quality)イ直を用 いてコ ントラストをつけたIQマップ、 任意の 結晶粒のみを色付けできる

(34)

CO(Crystal Orientati on)マッフ、 任意の試料方向でどのような方位の結晶が 配向しているかを表す IPF(Inverse Pole Figure)マップ、 正極点図等を用いた。

粒界性格の解析 は、 第2章で述べた解析法を基に作成したフログラムを用いて 小角粒界、 対応粒界およびラン夕、ム粒界 の分布を調べることにより行った。

6・3 結果および考察

6-3-1 立方体方位粒分布の変化

図 6-2 に冷問圧延後試料の(a)圧延面 IPF マッフ、 (b)IQマップ上に示した立 方体方位粒の CO マッフおよび(c){111}正極点図 を示す。 図中に示したように IPF マップ、 CO マッフではスケールバーと垂直方向が 圧延方向になるように 示した。図6-2(b)中の CO マッフでは赤で塗られた粒は立方体方位粒を示す (以

下、 この様に表示する) 。 また、 立方体方位粒の理想方位({100}く001>)からの ずれが 150以内の方位を有する結晶粒を立方体方位粒と定義した。

この冷問圧延材 は約 95%の強加工を施されている ので、 圧延集合 組織は Bra ss(B)方位({110}<112>)やCu(C)方位({121}<111>)が主方位となる日方位群 の集合組織を形成していた。 これは、 図6・2(c)の{111}極点図にも示されている。

また、 図 6・2(b)に示したように、 この視野では少数の立方体方位粒が確認され た。 冷間圧延材における立方体方位粒の存在は、 これまでの極点図法(92)や微分 干渉顕微鏡(93)等を用いた観察では確認されていない。 これは、 立方体方位粒が 非常に微細な粒として存在するために観察できなかったためだと考えられる。

この立方体方位粒のみが成長して試料全体を埋め尽くすとは考えにくいが、 冷 問圧延材表面にも立方体方位粒が存在すること を S EM-EBSP法を用いて初め て明らかにすることができた。

圃74 -

(35)

111

001 101

(c) 111

a掴降最守忌詞B353h

r..r ・箇・・・・・・・・If!'��."

苅 覆

-dーーー-ー�

E fik 1老衰 3 F

..豊島晶E・1"':;:・-SF RD

図6・2 冷間圧延材の SEM・EBSP解析結果

50μm

TD

(a)圧延面IPFマップ(b)立方体方位COマッフ(c){ lll}極点図

図6・3(a)に部分焼鈍材の立方体方位CO マッフを示す。 また、 立方体方位粒 の成長挙動を明らかにするために、 3000C -lmin と 300t・60min の熱処理 を施 した試料の立方体方位CO マッフを図6・3(b)、 (c)にそれぞれ示す。 部分焼鈍に よって部分的に回復、 再結晶が起こり、 その後の熱処理によって各再結晶粒は

約50μm の初期結晶粒径が約200μmまで成長することが確認された。 図6・4 に図6-3と同じ視野の圧延面IPFマッフを示す。 緑系の色で示されるB(Brass) 方位と紫系の色で示されるC(Cu)方位がそれぞれバンド状に存在していること が図6-4(a)から確認された。 また、 図6・4(b)と (c)から再結晶は立方体方位粒だ

(36)

けでなく、 他方位粒でも起きて粒成長することが分かった。 以上の結果を各方 位(立方体(W)方位、 B方位、 C方位およびS({123}<634>)方位)粒の占有率と熱 処理保持時間の関係としてまとめると、 図 6-5のようになった。 ここで、 W、

BおよびC方位の占有率は理想方位から15。以内の角度誤差を含めてプロット したが、 S 方位は BやC方位に近いため角度誤差を5。としてプロットした。

また、 立方体方位粒の各点に添えた数字は立方体方位粒の平均粒径を示してい る。 各結晶粒と も熱処理を施すこと によって急激な占有率の変化は起きておら ず、 3000C-60min の熱処理を施しでも立方体方位粒の占有率は 30%程度までし か上がらなかった。 以上のことより、 部分焼鈍のみだけでは BやC方位など の再結晶粒が立方体方位粒と同じように成長してしまうので、 立方体方位粒の 占有率は上昇しないことが明らかになった。

300μm

図6-3 部分焼鈍材の立方体方位coマップ

(a)熱処理なし (b)3000Cー1min熱処理後(c)3000C-60min熱処理後

国76 -

(37)

園 - 浮 い つ�Î.� !:.;f: " :': . J � � ' �.) ; 7.� 涼 ; 滞 汚 2DZI

F冒? サ ペ可 、...穴 ρ い s 沿 川I

l

�沼圃里膏 炉 L二ココI プ I 、�I 毛亀 :

. 陸�. .. 玲�ぐ. 、、i汁吋"‘.ぜ寸wij ‘、?、トIIU!Iド‘ iiI1φ咽,汽ρ白白�足:tr.iIB!パ.i 2同目

E凪 � ι =ν ぷ i♂I竺空令 � だだ.手 I γ 手 ; !ミ . ζ M'J 必: ふれよ ・ . 下¥IPJ 必 イl

300μm 部分焼鈍材の圧延面IPFマップ

(b)300t・lmin熱処理後(c)300t -60min熱処理後 図6-4

(a)熱処理なし

1.0

T=3000C

0.9 0.8 0.7 0.6 0.5

0.2 0.4 0.3

0.1

回。右υω・阿』伺ω』〈

1∞00 1∞ 1∞o

time (sec)

10

部分焼鈍材の各方位の占有率と焼鈍時間の関係 図6-5

(38)

図6・6は(a)付加的圧延材と(b)、 (c)その熱処理材の立方体方位 co マップで ある。 図6-3と比較すると付加的圧延のみでは立方体方位粒の大きさは部分焼 鈍のみの試料とそれほど変わらないが、 熱処理を施すことによっ て立方体方位 粒の占有率が急激に上昇することが明らか になった。 立方体方位粒は 3000Cー 3min の熱処理で試料全体をほぼ埋め尽くし、 立方体集合組織が鮮鋭化するこ とが確認された。

川WA陪l

- ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 ・トプ�. 。 -.・

・・・

\U} �‘,

:\ -J

" �.o\

- r

.,

fxJJC十. ヰ圃a

. �# .... f ... � � "t ..

ぞらーー

....... � ...... � w� ..... . ��� 骨

一一一

- ・訟.、:‘= ・・『

; .J -ur γ \.L7v J.

・二lfJに

-

jハバピ圃 ー

.

圃1、り h‘ , λ ペ..、ぃ,・κ九i 圃

.、 I占e二 J忌 �

E与」とιよ旦�辺 国圃圃圃 圃 圃 圃圃圃 圃・

� ーデ 弓 ­

園田 iY二- 柑-

、電 r.ぜ‘♂A 2

aE吋Ifi 園-

-xEa •

4量

120μm 図6-6 付加的圧延材の立方体方位coマップ

(a)熱処理なし(b)3000C -lmin熱処理後(c)3000C -3min熱処理後

図6-7に図6・5と同様の各結晶方位の占有率の変化をまとめた 図を示す。 こ れより、 1"-' 3min の熱処理で急激に立方体方位粒の占有率が上昇していること が分かる。 また 、 B、 C およびS方位粒は熱処理を施すことで徐々に占有率が

- 78 -

(39)

減少し、3000C・3minの熱処理で5%以下に減少していることが分かった。図6・5

と図 6・7を比較すると、 部分焼鈍では全ての再結晶粒がほぼ同様に成長するの に対し、 付加的圧延後の熱処理により立方体方位粒のみが急速に成長すること が明らかとなった。付加的圧延材の3000C・lminから3minの熱処理において、

急速に立方体方位粒の占有率が上昇しているが、 これは熱処理によって立方体 方位粒が粗大化するための潜伏期が存在することを示唆するものである。

1.0 0.9 0.8

h苦�

伺』4

0.7 0.6 0.5 0.4

0.3

0.2 0.1

1

T=3000C

W: {100}く001>

企B: {110}く112>

C: {121}く丘1>

S: {123}く634>

10 1∞ 1∞o

time (sec)

図6・7 付加的圧延材の各方位の占有率と焼鈍時間の関係

6-3-2 結晶粒内のひずみの評価

1∞00

再結晶粒の成長過程を明らかにするには、 粒界移動の駆動力となる粒内のひ ずみを評価する必要がある。 これまで、 SEM-EBSP法を用いたひずみの評価 法にはIQ(Image Quality)値の大小を利用した研究(53)があるが、IQ値はビー ム電流量の低下、 ビーム焦点のずれおよび酸化皮膜の付着等の影響を受けるの で、 IQ値の大小でひずみを評価するには問題があるという報告(97)もなされて

(40)

いる。 また、 結晶方位によってもIQ値が変化することから統一的な解釈は困 難である。 そこで本研究では、 測定点聞の方位差でひずみを評価した。 これは、

結晶粒内にひずみが蓄積している場合、 同じ結晶粒内でも方位に微小な変化が 生じるため、 この微小方位差を基にひずみを評価できると考えられるからであ る。

図6・8に部分焼鈍材と付加的圧延材の圧延面IPF(Inverse Pole Figure)マッ プを示す。 また、 マップ内には測定点聞の方位差が10'-"'-150未満のものを細線 で、 150以上を太線で線を引いた。 ここで細線は、 同一結晶粒内ではひずみも しくは亜粒界を、 異なる結晶粒問では小角粒界を表すことになる。 一方、 太線 は150以上の角度差を有する粒界を表す。 図6-8(a)より、 部分焼鈍材では粒内 にひずみがほとんどない立方体、 B、 CおよびS等の方位を有する再結晶粒と 粒内にひずみを有する冷間圧延組織が混在していることが分かる。 この結果は、

部分焼鈍によって生じる再結晶において、 立方体方位粒が他方位粒に比べて特 別な優位性をもたないことを示している。 図6・8-(b)の 付加的圧延材の結果で は、 約20%程度の軽圧延を施しているので、 部分焼鈍材に比べて細線の量が多 くなっていることが確認できる。 また、 立方体方位粒は、 周りの結晶粒と比べ ると粒内の細線の量が少なく、 ひずみ量も他方位粒よりも少ないことが分かる。

この結晶方位によるひずみの差は粒成長の駆動力として作用すると考えられる。

また、 図6-7の潜伏期は、 このひずみが回復するのに要する時間に相当すると 考えられる。

ところで、 田上ら(98)は高純度アルミニウム単結晶の引張試験を行い、 <001>

方位を応力軸とする単結晶の変形応力は、 その他の方位の単結晶よりも小さい ことを示した。 この結果より、 彼らは交差すべりを起こすことにより変形中に 導入された転位が過度に集積しないためと結論している。 これが、 本研究で立

- 80 -

(41)

方体方位粒にひずみが蓄積しにくいことの原因の一つであると考えられる。

一一

1

"

�15 一一15

v

� 50μm

一一

l

V

�15 一一 15

v

50μm

図6・8 部分焼鈍材と付加的圧延材の粒内のひずみ分布 (a)部分焼鈍材(b)付加的圧延材

6・3・3

立方体方位粒の成長に及ぼす粒界性格の効果

本研究で用いた高純度アルミニウム箔は、 主方位が立方体(W)、 B、 C およ びS方位であることが、 前節までの結晶方位解析により明らかになった。 した がって、 W方位粒の成長過程を解析するには、 前節で検討した粒内のひずみの

図 6-2 に冷問圧延後試料の(a)圧延面 IPF マッフ、 (b)IQマップ上に示した立 方体方位粒の CO マッフおよび(c){111}正極点図 を示す。 図中に示したように IPF マップ、 CO マッフではスケールバーと垂直方向が 圧延方向になるように 示した。図6-2(b)中の CO マッフでは赤で塗られた粒は立方体方位粒を示す (以 下、 この様に表示する) 。 また、 立方体方位粒の理想方位({100}く001&gt;)からの ずれが 150以内の方位を有する結晶粒を立方体方位粒と定義した。

参照

関連したドキュメント

色で陰性化した菌体の中に核様体だけが塩基性色素に

aripiprazole水和物粒子が徐々に溶解するのにとも ない、血液中へと放出される。PP

を塗っている。大粒の顔料の成分を SEM-EDS で調 査した結果、水銀 (Hg) と硫黄 (S) を検出したこと からみて水銀朱 (HgS)

当社は「世界を変える、新しい流れを。」というミッションの下、インターネットを通じて、法人・個人の垣根 を 壊 し 、 誰 もが 多様 な 専門性 を 生 かすことで 今 まで

(ア) 上記(50)(ア)の意見に対し、 UNID からの意見の表明において、 Super Fine Powder は、. 一般の

原子炉格納容器圧力が限界圧力に達する前、又は、原子炉

 次に、羽の模様も見てみますと、これは粒粒で丸い 模様 (図 3-1) があり、ここには三重の円 (図 3-2) が あります。またここは、 斜めの線

夏季:オキシダント対策として →VOC の光化学反応性重視 冬季:粒子状物質対策として →VOC の粒子生成能重視. SOx