博士(工学)王 振宇 学位論文題名
ポーラスコンクリートの耐凍害性に関する研究 学位論文内容の要旨
近年、自然環境の悪化が進みつっあり、自然環境の再生;保全は急務の課題となって いる。本研究は河川護岸などの水辺環境に注目して、環境になじみの良い材料であると 同時に自然災害を防ぐことができる構造材料としてポーラスコンクリートの研究開発 に 着 手 し 、 自 然 環 境 の 持 続 的 な 保 全 の 一 端 を 担 う こ と を 目 的と し て いる 。 現在、ポーラスコンクリートは研究が始まったばかりであり、その性能のみならず耐 凍害性を主体とする耐久性の問題が未解決のままである。寒冷地においてポーラスコン クリートを有効に活用し、水辺空間はもとより歩道、道路などに適用を広げるためには 基 本 課 題 と な っ て い る 耐 凍 害 性 に 関 す る 研 究 が 必 要 と な っ て い る 。 本論文の各章の内容は以下の通りである。
第一章では本論文の研究背景、研究目的、論文構成および論文の位置付けを述べてい る。
第二章では、既往の研究による一般的なコンクリートの凍害メカニズムについて水圧 説、限界飽水度説、氷とコンクリートの膨張差説などについて説明し、それに関連する コンクリート空隙による氷点降下、毛細管の吸水挙動などについて言及し、ポーラスコ ン ク リ ー 、 ト の 耐 凍 害 性 を 調 べ る た め の 基 礎 理 論 に つ い て 整理 し て いる 。 これまで 、耐凍害 性を調べ る試験にはアメリカの規準であるASTM C666のA法と B法があり、日本の規準もほば同様のものである。一方、10年前よルヨーロッパで開 発されたRILEMの基準のCIF法(純水 )、CDF法(塩 水)があ る。これらの試験の 大きな違いは、RILEM法は凍結する最低温度をー20土0.5℃と厳しく制御し、ー20℃ の凍結温度に誤差があると劣化に大きな差が出てくることを抑制している点である。ま た、水のコンクリートヘの供給は毛細空隙の吸引と考えて、コンクリートの下面より水 を 吸 引 さ せ る 方 法 を 用 い て い る 点 な ど の 違 い を 明 ら か に し て い る 。 耐凍害性を評価するために重要なAE剤による気泡はその径と気泡間隔係数が重要 と な る が 、 測 定 に 用 い た り ニ ア ト ラ バ ー ス 法 に つ い て 述 べ て い る 。 第三章では、ポーラスコンクリートの配合と作製方法について述べている。ポーラス
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コ ンク リー トの フ レッ シュ の状 態が ポー ラス コン クリートの性能に大きく影響を受け る。まず 、フレッシュポーラスコンクリートの性状について分類 し、固相、液相、気相
(連続空 隙)が連続し、見た感触では、ねばねぱした状態が良好 な状態であることを把 握してい る。配合方法はこれまでの経験的な方法を用いて、透水 係数を決めるための粗 骨材粒径 、強度を決めるマトリックス量、水セメント比およぴ耐 凍害性を確保するため の空気量 などを決めている。製作は振動締固め法により成型し、湿潤養生を1日問行い、
脱型後は 所定の養生を行うことなどの供試体を作製する手順を述 べている。また振動締 固 め法 の違 いに よ って ポー ラス コン クリ ート の性 能に影響があることを明らかにして いる。
第 四 章 で は 、ASTM法 によ る凍 結融 解試 験に おい て、 ポー ラス コ ンク リー トの 凍結 融解によ る劣化が激しく現れ、現場での劣化との違いが大きいこ とを指摘している。損 傷はスケ ーリングが主体であることから試験法の違いによる検討 が必要であると考え、
ASTM (AIB)法 、RILEM法 の 凍 結 融 解 作 用 に よ る 劣 化 の 違 い を 検 証 し て い る 。 一方、 .現場暴露試験の損傷とこれらの試験法による劣化損傷と比較して、適切な試験 方 法を 検証 した 結 果、RILEM法 によ る損 傷と 暴 露試 験に よる 損傷 とが ほば 対応してい る こ と か ら 、 RILEM法 が よ り 適 当 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第五 章で は、RILEM試験を用いて ポーラスコンクリートのマトリックス中の空気量、
気 泡間 隔係 数お よ び水 セメ ント 比の 凍害 に対 する 影響をスケーリング量および動弾性 係 数な どに よっ て 評価 した 結果 、マ トリ ック ス中 の空気量は4〜6%程度、水セメント 比 は 強 度 を 考 慮 し な が ら25〜35% の も の が 適 当 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る。
また連 続空隙率が大きいほど透水係数が大きく、圧縮強度は低 下するが凍結融解試験 による劣 化は小さい傾向があることが分かった。凍結融解回数お よび混和材の影響につ いても明 らかにしている。
第 六 章 で はRILEM法 の 普 通 コ ン ク リ ー ト に 対 す る劣 化規 準を 基 にポ ーラ スコ ンク リートの 劣化について言及している。スケーリング量、内部損傷 の基本となる動弾性係 数比、( あるいは超音波速度変化率)および長さ変化などについ て検証し、ポーラスコ ンクリー トに対応する劣化規準を明らかにしている。
第七 章は 総括 で あり 、ポ ーラ スコ ンク リー トの 耐凍 害性 を評 価す るの にRILEM試験 法 が有 効で ある こ と、 マト リッ クス 中の 空気 量は4〜6%程度が適当なこと、水セメン ト 比は 強度 を考 慮 して 決められるが、25%〜 35%適当であること、ポーラスコンクリ ー トの 劣化 はス ケ ーリ ング 量と 超音 波伝 播速 度の 変化率などによって評価できること などを総 括している。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査
副 査 副 査 副 査
教 授 佐 伯 教 授 大 沼 教 授 千 歩 助教授 堀口
学 位 論 文 題 名
昇 博志 修 敬
ポ ー ラ ス コ ン ク リ ー ト の 耐 凍 害 性 に 関 す る 研 究
コン クリート は、土、 水、大 気などに 接し、 自然災害から守り、快適な生活、産業空 間を造 るため に大きな 役割を 果たして いる。 土、水、 大気などは生物にとって連続した 空間であり、コンクリートなどによって強く遮断されることは生態系のバランスを崩し、
持続可 能な自 然環境を 保てな ぃ。本論 文では 、生態系 あるいは自然環境に馴染の良いコ ンクリ ートと して透水 性の機 能を持っ ポーラ スコンク リートの研究を取り挙げている。
さらに 、寒冷 地に有効 に利用 するには 、耐凍 害性を主 体とする耐久性の問題を解決する ことが 必要と なってい る。
本論 文は、ポ ーラスコ ンクリ ートの耐 凍害性 を調べる試験法、凍害損傷の特性、耐凍 害 性 を 確 保 す る た め の 配 合 、 施 工 法 な ど に つ い て 研 究 を 行 っ た も の で あ る 。 第1章では 本論文の 研究背 景、研究 目的、 論文構成 および論 文の位 置付けを 述べてい る。
第2章では 、既往の 研究に よる一般 的なコ ンクリー トの凍害 メカニ ズムにつ いて水圧 説、限 界飽水 度説、氷 とコン クリート の膨張 差説など について説明し、それに関連する コンク リート 空隙によ る氷点 降下、毛 細管の 吸水挙動 などについて言及し、ポーラスコ ン ク リ ー ト の 耐 凍 害 性 を 調 べ る た め の 基 礎 的 理 論 に つ い て 整 理 し て い る 。 こ れ ま で、 耐 凍 害 性を 調 べ る試 験 に はア メ リ カの規 準であ るASTM C666があり、 日 本 の規 準 も ほぼ 同 様 の もの で あ る。 一 方 、10年 前よル ヨーロ ッパで開 発され たRILEM TC−117の 規 準 が あ る 。 こ れ らの 試 験 の大 き な 違い は 、 後 者は 凍 結 する 最 低 温度 を
‑20土0.5℃ と 厳 しく 制 御し、一20℃の凍 結温度に 誤差が あると劣 化に大き な差が 出て く るこ と を 抑制 し て いる 点である 。前者 は、その 温度を‑18土2℃とし ている 。また、
水のコ ンクリ ートへの 供給は 毛細空隙 の吸引 と考えて 、コンクリートの下面より水を吸
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引させる方法を用いている、前者は浸漬によっている。これらの違いなどについて明ら かにしている。
第3章では、ポーラスコンクリートの配合と作製方法について述べている。ポーラ スコンクリートのフレッシュの状態がポーラスコンクリートの性能に大きな影響を受 ける。まず、フレッシュポーラスコンクリートの性状について分類し、固相、液相、気 相(連続空隙)が連続していることが良好な状態であることを把握している。配合方法 はこれまでの経験的な方法を用いて、透水係数を決めるための粗骨材粒径、強度を決め るマトリックス量、水セメント比および耐凍害性を確保するための空気量などを決めて いる。製作は加圧式振動締固め法により成型し、湿潤養生を1日間行い、脱型後は所定 の養生を行うことなどの供試体を作製する手順を述べている。また、練混ぜ、締固め法 の違い がポーラ スコンクリ ートの性能に影響を及ばすことを明らかにしている。
第4章で は、ASTMC666法に よる凍結融 解試験に おいて、 ポーラスコンクリート の凍結融解による劣化が激しく現れ、現場の劣化と違いが大きいことを指摘している。
現場での損傷はスケーリングが主体であることから試験法の違いによる検討が必要で あると考え、各試験法による検証を行っている。一方、現場暴露試験の損傷とこれらの 試験法による劣化損傷と比較して、適切な試験方法を検証した結果、RILEMTC―117 法による損傷と暴露試験による損傷とがほば対応していることから、ポーラスコンクリ ートが 浸漬状態 でない限りRILEM TC一117法がよ り適当で あることを明らかにし ている。
第5章では、ポーラスコンクリートのマトリックス中の空気量、気泡間隔係数および 水セメント比の凍害に対する影響をスケーリング量および相対動弾性係数などによっ て評価した結果、マトリックス中の空気量は4〜6%程度、水セメント比は強度を考慮 し な が ら25‑‑‑35% の も の が 適 当 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 第6章では普通コンクリートに対する劣化規準を基にポーラスコンクリートの劣化 規準について言及している。スケーリング量、相対動弾性係数などについて検証し、ポ ーラスコンクリートの耐凍害性を確保するための配合、練混ぜ、締固めなどについて明 らかにしてkヽる。
これを要するに、著者はポーラスコンクリートの耐凍害性を確保するための配合、施 工などについて新知見を得たものであり、コンクリート工学における新機能材料の実用 化の向上に貢献するところ大なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)
の学位を授与される資格があるものと認める。
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