• 検索結果がありません。

博士(工学)王 宝臣 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(工学)王 宝臣 学位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(工学)王   宝臣 学位論文題名

浅い湖沼におけるりンの動態と富栄養化制御 学位論文内容の要旨

水環境は、我々の飲料水源をはじめとする生活用水として必須であるばかりでなく、水生 の動植 物さらには我々も含めた陸生生物の生存環境であり、将来への貴重な資源として 管理し、保全対策を講じておくことは、現代に生きる我々の重要な課題である。しかし都市 化や工 業の進歩そして農地開発は、良好な水環境を変貌させつっある。都市環境から発 生する 排水は、自然の水質環境を劣化させ、本来の生態系を消滅させた。日本において は、工 場排水の法的規制、汚濁負荷の低滅などの環境対策により、河川・湖沼の水環境 は最近改善されつっある。このような背景にあっても、生活排水が流入する都市周辺の湖 沼など の閉鎖性水域では、アオコの発生などに見られる富栄養化の改善はなかなか進ま ない。

富栄養 化を引き起す原因は栄養塩の流入にあることは自明のことであり、閉鎖性水域に おける 栄養塩の動態や藻類増殖に関する研究は数多く見られる。しかし現場での観測例 から富 栄養化機構を解析した研究は少ない。著者らの研究グループは藻類増殖と栄養塩 類の関連について,実際の湖沼を対象として調査研究を長期にわたって行った結果、溶存 態リンよりも懸濁態リンを含む全リンが藻類増殖に密接に関係するという新知見を得てい る。従 って、アオコの発生など藻類の異常増殖に至るまでの湖沼の富栄養化機構を解明 するには、懸濁態リンを含む懸濁態栄養塩の動態を明らかにすることが最重要課題である と考えられる。

本研究 では、都市近郊の浅い富栄養湖である茨戸湖を研究対象として、懸濁態リンの動 態に影 響する底泥の舞い上がり現象および湖内循環に関する研究を行った。その結果、

浅い湖 沼における底泥の舞上がりによる懸濁態栄養塩の湖水への回帰が、富栄養化とそ れに伴う藻類増殖の大きな要因であることを明らかにした。また、鉄成分を卜レ―サ一物質 として、これらの循環量を定量的に明らかにすると共に、懸濁態栄養塩の藻類による摂取 と増殖機構について解明した。

本 論 文 は 7章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 以 下 に 各 章 の 概 要 を 略 述 す る 。 第1章 では 、水域に おける 富栄養化 問題の 背景、湖 沼など閉 鎖性水 域におけ る富栄 養 化の研究および防止対策の現状や問題点について述べた。栄養塩としてのりンを中心に、

懸濁態 栄養塩と藻類増殖の関連性について考察を行い、本論文の目的と構成を示した。

第2章 で は 、1997年6月 〜1999年6月 に お け る 対 象 水 域 の 水 質 の 季 節 変 化 を 検 討

‑ 56 ‑

(2)

し、 水質変化 を引起 す要因について考察した。1月〜3月の水質は、主に底泥からの溶出 物質 の影響を 受ける こと、お よび4月‑12月の水質 は、主 に藻類増 殖と底 泥からの舞い 上 が り に よ る 懸 濁 物 質 や懸 濁 態 栄養 塩 の 動態 に 影 響さ れ る こと を 明 らか に し た 。 第3章で は 、 実際 の 浅い湖 沼にお ける懸濁 態栄養 塩と藻類 増殖の 関連を解 明するこ と を目 的とし、 湖水中 の懸濁物質の化学組成に着目した。底泥の舞い上がり現象や藻類増 殖は 湖水中懸 濁物質 の化学組成へ与える影響を検討し、さらに懸濁態リンの形態と藻類 増殖 の関係に ついて 検討した。舞い上がった底泥成分の懸濁物質中に占める割合が大き い時に、藻類増殖量が多くなること、および懸濁態リンの形態別組成分析結果に基づき、

懸濁態反応リンが藻類増殖に大きく寄与することを明らかにした。これらの結果を総合する と、 底泥の舞 い上が りが湖水中の懸濁態反応リンの起源であり、底泥の舞い上がり現象 が藻類増殖畳を決定することが判明した。

第4章では、浅い湖沼での懸濁物質の動態を解明することを念頭に、セジメントトラップ を用 いて、湖 水中で の懸濁物質の沈降量を調査した。捕集物の化学分析を行い、その化 学組成を明らかにするとともに、捕集物中に含まれる底泥由来物質の鉄やりンなどの含量 を求めた。鉄成分を底泥成分のトレーサーとして、沈降捕集物中の舞い上がった底泥成分 を定 量する方 法を提 案し、舞 い上が った底泥 成分由 来の懸濁 物質量と 藻類生 産由来物 質の 沈降量の 季節変 化を明らかにした。その結果に基づぃて、それぞれの成分の湖内で の動態について考察を加えた。

第5章で は 、 前章 の 研究成 果を基 礎に、舞 い上が った底泥 および 増殖した 藻類の沈 降 プロセスを明らかにするとともに、底泥と藻類に含まれるりンや窒素の湖内での動態を解明 した。また、懸濁態リンおよび窒素の沈降量の季節変化に基づいて、舞い上がりによる底 泥からの懸濁態栄養塩負荷を定量的に評価した。

第6章で は 、 舞い 上 がった 底泥成 分に含ま れる無 機態リン の藻類 による摂 取機構の 解 明を目的とし、懸濁物質および底泥からの無機態リンの溶出と吸着現象について検討した。

その 結果、低pHで底泥 に吸着さ れてい た無機態 リンがpHの上昇に 伴って 溶出すること が明 らかにな った。 藻類の光 合成に よるpHの上 昇は低 泥からの 無機態 リンの溶出を促 進し、藻類による懸濁態リンの摂取が可能であることが判明した。本章で得られた結果は 懸濁 態リンが 藻類増 殖に必要な重要なりン供給源であり藻類増殖機構を解明する上で極 めて重要な知見を与えている。

第 7章 は 結 諭 で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 主 な 知 見 と 成 果 を ま と め た 。

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    清水達雄 副査    教授    太田幸雄 副査    教授    朝倉國臣 副査   助教授   橘   治国

学 位 論 文 題 名

浅い湖沼におけるりンの動態と富栄養化制御

  水環境は、我々の飲料水源をはじめとする生活用水として必須であるばかりでなく、水生の動 植物さらには我々も含めた陸生生物の生存環境であり、将来への貴重な資源として管理し、保全 対策を講じておくことは、現代に生きる我々の重要な課題である。しかし都市化や工業の発達そ して農地開発は、良好な水環境を変貌させつっある。都市生活から発生する排水は、自然の水環 境を劣化させ、本来の生態系を消滅させた。日本においては、工場排水の法的規制、汚濁負荷の 低減などの環境対策により、河川・湖沼の水環境は最近改善されつっある。このような背景にあ っても、生活排水が流入する都市周辺の湖沼などの閉鎖性水域では、アオコの発生などに見られ る富栄養化の改善はなかなか進展していない。

  富栄養化を引き起す原因は栄養塩の流入にあることは自明のことであり、閉鎖性水域における 栄養塩の動態や藻類増殖に闃する研究は数多く兄られる。しかし現場での観測例から富栄養化機 構を解析した研究は少ない。著者らの研究グループは藻類増殖と栄養塩類の関連について,実際 の湖沼を対象として調査研究を長期にわたって行った結果、溶存態リンよりも懸濁態リンを含む 全リンが藻類増殖に密接に関係するという新知見を得ている。アオコの発生など藻類の異常増殖 に至るまでの湖沼の富栄養化機構を解明するには、懸濁態リンを含む懸濁態栄養塩の動態を明ら かにすることが最重要課題である。

  本研究では、都市近郊の浅い富栄養湖である茨戸湖を研究対象として、懸濁態リンの動態に影 響する底泥の舞い上がり現象および湖内循環、さらにその藻類増殖への影響に関する研究を行っ た。そして、浅い湖沼においては、底泥の舞上がりによる懸濁態栄養塩の湖水への回帰が、富栄 養化とそれに伴う藻類増殖の大きな要因であることを明らかにした。また、鉄成分をトレーサー 物質として、舞い上がった底泥成分の循環量を定量的に明らかにするとともに、これらに含まれ て い る 懸 濁 態 栄 養 塩 の 藻 類 に よ る 摂 取 と 増 殖 機 構 に つ い て 解 明 し た 。   ホ 論 文 は7章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 以 ・ 卜 ・ に 各 章 の 概 要 を 略 述 す る 。   第1章では、水域における富栄養化問題の背景、湖沼など閉鎖性水域における富栄養化の研究 および防止対策の現状や問題点について述べた。栄養塩としてのりンを中心に、懸濁態栄養塩の

58―

(4)

動態、さらに藻類亅ニ曽殖との関連性につ いて考察を行い、本論文の目的と構成を示した。

  第2章で は、1997年6月〜1999年6月 における対象水域の水質の季節変化から、水質変化を 引起す要因にっいて考察した。1月〜3月の水質は、主に底泥からの溶出物質の影響を受けるこ と、4月〜12月の水質は、主に藻類増殖と底泥からの舞い上がりによる懸濁物質や懸濁態栄養塩 の動態に影響されることを明らかにした。

  第3章では、浅い湖沼における懸濁態栄養塩と藻類増殖の関連を、湖水中の懸濁物質の化学組 成に着目して解明した。底泥の舞い上がり現象や藻類増殖が懸濁物質の化学組成に与える影響を 検討し、さらに懸濁態リンの形態と藻類増殖の関係について検討した。舞い上がった底泥成分の 懸濁物質中に占める割合が大きい時に藻類増殖量が多くなること、および懸濁態反応リンが藻類 増殖に大きく寄与することを明らかにした。これらの結果から、底泥が湖水中の懸濁態反応リン の 供 給 源 で あ り 、 底 泥 の 舞 い 上 が り 現 象 が 藻 類 増 殖 量 を 決 定 す る こ と が 判 明 し た 。   第4章では、浅い湖沼における懸濁物質の動態を解明するために、湖水中での懸濁物質の沈降 量を、セジメントトラップを用いて調査した。捕集物の化学分析を行い、その化学組成を明らか にするとともに、捕集物中に含まれる底泥由来物質の鉄やりンなどの含量を求めた。鉄成分を底 泥成分のトレーサーとして、沈降捕集物中の舞い上がった底泥成分を定量する方法を提案し、舞 い上がった底泥成分由来の懸濁物質量と藻類生産由来物質の沈降量の季節変化を明らかにした。

こ れ ら の 結 果 か ら 、 そ れ ぞ れ の 成 分 の 湖 内 で の 動 態 に つ い て 考 察 を 加 え た 。   第5章では、前章の研究成果を基礎に、舞い上がった底泥および増殖した藻類の沈降プロセス を明らかにするとともに、底泥と藻類に含まれるりンや窒素の湖内での動態を解明した。また、

懸濁態リンおよび窒素の沈降量の季節変化に基づぃて、舞い上がりによる底泥からの懸濁態栄養 塩負荷を定量的に評価した。

  第6章では、舞い上がった底泥成分に含まれる無機態リンの藻類による摂取機構の解明を目的 として、懸濁物質および底泥からの無機態リンの溶出と吸着現象について検討した。その結果、

低pHで底泥に吸着されていた無機態リンがpHの上昇に伴って溶出することが明らかになった。

藻類の光合成によるpHの上昇は底泥からの無機態リンの溶出を促進し、藻類による懸濁態リン の摂取が可能であることが判明した。本章で得られた結果は懸濁態リンが藻類増殖への主要なり ン供給源であることを示しており、藻類増殖機構を解明する上で極めて重要な知見を与えている。

  第 7章 は 結 諭 で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 主 な 知 見 と 成 果 を ま と め た 。   以上要するに、著者は浅い湖沼では、風による底泥の舞い上がりに伴う懸濁態栄養塩の湖水へ の回帰が富栄養化および藻類増殖を加速する大きな要因であることを解明したものであり、水環 境 工 学 な ら び に 水 質 保 全 工 学 の 発 展 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よ って 著者 は、 北海道大学I専士( 工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

‑ 59 ‑

参照

関連したドキュメント

地上高2.8m がそれぞれ一個体平均値を用いた予測値(全樹幹平均値)土3

[r]

[r]

般に成立しないことを明らかにした。次に、障害物知覚の物理的要因となると考えられる

[r]

  

    In this work, challenge was made to establish a computational model which enables to analyze

[r]