博士(工学)金 明煥 学位論文題名
矩形容器内リキッドアイスの融解熱伝達に関する研究
学位論文内容の要旨
生活が 豊かになると共に,快適な室内環境への要求から,一般家庭における冷房装置の 普及が進んでいる.一方,冷房装置の運転と共に,エネルギ―源とする電気需要も急増,し,
夏期昼夜 間または季節間の電力需要格差は,さらに広がっている.このような電力需要格 差は,夏期昼間に発生する一時的な最大電力需要量を満足するための発電設備投資の増加,
年平均設備稼働率の低下などをも たらレ,さらに省工ネルギ―という面からも大きな問題 になっている.
このよ うな電力需要を平準化することの要求より,冷房装置の場合,安価な夜間電カを 用いて氷 を製造し,その融解時の潜熱を利用して,昼間の冷房を行うという氷蓄冷熱シス テムが使 用されている.一般に蓄冷熱材としては,融解潜熱が大きい固形氷が利用されて いるが, 製氷の高効率化,採冷熱時の負荷応答性,および運搬性などの,さらに高度な要 求から, 現在,新たな蓄冷熱材としてエチレングリコ―ルやプロピレングリコ―ル水溶液 な ど を 凍 結 さ せ て 得 ら れ る , シ ャ ー ベッ ト状 のり キ ッド ァイ スが 注目 され てい る.
リキッ ドアイスは,微細な氷粒子と氷粒子間の接合を防ぐ潤滑荊の役割を有するエチレ ン グ リ コ ― ル ま た は プ ロ ピ レ ン グ リ コ ー ル 水 溶 液 な ど の 混 合 物 で あ る . リキッ ドアイスを利用する蓄冷熱システムにおいては,冷熱の貯蔵方法および採冷熱方 法に関連 する蓄冷熱材の凍結および融解に関する相変化特性を,詳細に把握する必要があ る.その 蓄冷熱材の相変化は,二成分物質の相変化問題であり,温度・濃度の二重拡散に よって大きく影響される.
二成分 物質における二重拡散問題は,近年,二成分物質を相変化材とする蓄冷・蓄熱シ ステムの みでなく,多成分の合成および濃縮を目的とする化学,鋳造合金および溶接の均 質性問題 に関連する金属学,海水の凍結および海水中の流氷融解に関連する海洋学,火山 および溶 岩の流動および凝固に関連する地質学,血液および生体の凍結保存および凍結解 除に関連する医学,および食品の冷凍および解凍に関連する食品工業などの様々な分野で,
研究がなされている.
リキッ ドァイスの製作方法と関連する凍結を伴う二重拡散問題に関しては,従来から様 々な条件 の下で,凍結界面,凍結量,および熱伝達率などについて検討した数多い実験的 および解析的研究がある.
一方, リキッドァイスの採冷熱方法と関連する融解を伴う二重拡散問題に関しては,主 に海洋環 境問題の側面から,海水中の流氷融解に関する研究,すなわち,二成分物質の液 相部に置 かれた単成分物質の融解に関しては研究がなされているが,二成分物質の蓄冷熱 材に関する融解問題を検討している研究は,数少ない.さらに,リキッドアイスのような,
固 液 共 存 眉 の 二 成 分 物 質 に 関 す る 研 究 は , ほ と ん ど な さ れ て い な い . しかし ながら,リキッドァイスを利用する高効率熱交換器の開発および採冷熱量特性の 能動的制御などのためには,リ.キッドァイスの融解特性に関する詳細な基礎資料が必要と なる,
このよ うな現状に基づき,本研究では;リキッドアイスの融解メカニズムとその融解熱
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伝達特性に関する基礎資料を得るため,エチレングリコール水溶液と微細氷粒の混合物を 供試リキッドアイスとし,矩形容器内のりキッドアイスが,側面加熱を受ける場合,上向 き加熱を受ける場合,および下向き加熱を受ける場合の融解に関して実験的研究を行い,
リキッドアイスの融解に及ぼす加熱面熱流束,初期水溶液濃度の影響に関して詳細な検討 を行った.また,リキッドアイスの融解時の特性を予測できる解析モデルの開発を試み,
側面加熱の場合におけるりキッドアイスの融解に関して数値計算を行い,実験結果と比較 することにより解析モデルの妥当性の検討を 行った.
本 論文は,7章より構成されている.第1章は,序論であり,リキッドアイスの融解に 関する研究の意義と本研究の概要を述べてい る.
第2章では,リ キッドアイスの融解に関連する従来の研究について,単成分物質の融解 と,二重拡散の影響がある二成分物質の融解に分けて述べると共に,本研究の目的および 位置づけを明らか,にしている,
第3章では,矩 形容器内に充満しているりキッドアイスが片面の垂直加熱壁によって融 解される場合,加熱面熱流束およびエチレングリコール初期水溶液濃度の条件が,融解挙 動,加熱面における局所・平均熱伝達率,および融解量に及ぼす影響に関して実験的に検 討を行っている,実験においては,シャドウグラフ法を用いて融解界面の形状,融解液相 部における成層模様,および流れ模様を可視化している.また,側面加熱の場合における りキッドアイスの融解メカニズムを把握し,さらに融解量に関して無次元整理を行い,無 次元変数に関する整理式を与えている.
第4章では,矩 形容器内の下部加熱面によってりキッドアイスが融解され,融解界面が 加熱面から離れるようになる場合について実験を行い,加熱面熱流束および初期水溶液濃 度が,融解挙動,加熱面における平均熱伝達率,および融解量に及ぼす影響に関して検討 を行っている.第3章と同様にシャドウグラフ法を用いて融解界面の位置,融解液相部に おける成層模様,および流れ模様の可視化を行っている,また,上向き水平加熱面による りキッドアイスの融解メカニズムを把握し,融解量の無次元整理を行い,無次元整理式を 与えている.
第5章では,矩 形容器内に充満しているりキッドアイスが,融解液に対するりキッドア イスの密度差による浮カによって,容器の上部加熱面に接触した状態で融解する場合につ いて実験を行い,加熱面熱流束および初期水溶液濃度の条件が,融解挙動,加熱面におけ る局所・平均熱伝達率,および融解量に及ぼす影響に関して検討を行っている,実験にお いては,シャドウグラフ法を用いてりキッドアイスの上部への移動およびりキッドアイス の下部界面における水溶液の流下模様を可視化し,下部界面の近傍に発生する針状の凍結 眉の写真撮影を行っている.また,リキッドアイスの温度分布をトラバース装置を用いて 連続的に測定を行っている.さらに,下向き水平加熱面によるりキッドアイスの接触融解 メカニズムを把握すると共に,融解量の無次元整理を行い,無次元整理式を与えている,
第6章では,矩 形容器内のりキッドアイスが,片方の垂直加熱壁によって融解される場 合に関して数値解析を行い,加熱面熱流束および初期水溶液濃度が,融解挙動および加熱 面における平均熱伝達率に及ぼす影響に関して検討を行っている.解析モデルおよび実験 観察に基づく仮定の導入,界面移動を伴う相変化問題の解法としての境界固定法の適用,
および界面位置の決定に関する準静的近似など,本解析に用いた数値解析方法について述 べている,また,第3章における実験結果と比較検討を行うことによって,リキッドアイ ス の 融 解 時 の 特 性 を 予 測 で き る 解 析 モ デ ル の 妥 当 性 に 関 し て 検 討 し て い る . 第7章は結論で あり,本研究において得られた結果を要約して述べており,リキッドア イスの融解に関する実験的および解析的研究の結果は,リキッドアイスを利用する蓄冷熱 システムのみでなく,二成分物質の融解問題が存在する様々な分野で,その融解特性を解 明する重要な指針となることを述べている,
ー481一.
学位論文審査の要旨
主 査 ′ 教 授 福 迫 尚 一 郎
学 位 論 文 題 名
矩形容器内リキッドアイスの融解熱伝達に関する研究.
亀力 需要を平準化することの要求より,冷房装置の 場合,安価な夜間電カを用いて氷 を 製造 し,その融解時の潜熱を利用して,昼間の冷房 を行うという氷蓄冷熱システムが 使 用さ れている.一般に蓄冷熱材としては,融解潜熱 が大きい固形氷が利用されている が ,製 氷の高効率化,採冷熱時の負荷応答性,および 運搬性などの,さらに高度な要求 か ら, 現在よ新たな蓄冷熱材としてエチレングリコー ルやプロピレングリコール水溶液 な どを 凍結させて得られる,シャ―ペット状のりキッ ドアイス(微細な氷粒子と氷粒子 間 の接 合を防ぐ潤滑荊の役割を有するエチレングリコ ールまたはプロピレングリコール 水溶液などの混合物) が注目されている,
本研 究では,リキッドアイスの融解メカニズムとそ の融解熱伝達特性に関する基礎資 料 を得 るため,エチレングリコ―ル水溶液と微細氷粒 の混合物を供試リキッドアイスと し,矩形容器内のりキ ッドアイスが,側面加熱を受ける場合,上向き加熱を受ける場合,
お よび 下向き加熱を受ける場合の融解に関して実験的 研究を行い,リキッドアイスの融 解 に及 ぼす加熱面熱流束,初期水溶液濃度の影鬢に閲 して詳細な検討を行った.また,
リ キッ ドアイスの融解時の特性を予測できる解析モデ ルの開発を試み,側面加熱の場合 に おけ るりキッドアイスの融解に関して数値計算を行 い,実験結果と比較することによ り解析モデルの妥当性 の検討を行った,
本論 文は ,7章 より 構成 され てい る. 第1章 は, 序論 であ り,リキッドアイスの融解 に関する研究の意義と 本研究の概要を述べている・
第2章で は, リ キッ ドア イス の融解に関連する従来 の研究について,単成分物質の融 解 と, 二重 拡散 の影1があ る二 威分物質の融解に分け て述べると共に,本研究の目的お よび位置づけを明らか にしている・
第3章で1ま,矩形容器内に充満しているりキッドア イスが片面の垂直加熱壁によって 融 解さ れる場合,加熱面熱流束およびェチレングリコ ール初期水溶液濃度の条件が,融 解 挙動 ,加熱面における局所・平均熱伝達率,および 融解量に及ぼす影蕃に関して実験 的 に検 討を行っている.実験においては,シャドウグ ラフ法を用いて融解界面の形状,
融 解液 相部における成層模様,および流れ模様を可視 化している.また,側面加熱の場 合 にお けるりキッドァイスの融解メカニズムを把握し ,さらに融解量に関して無次元整 理を行い,無次元変数 に関する整理式を与えている.‐
第4章で は, 矩 形容 器内 の下 部加熱面によってりキ ッドアイスが融解され,融解界面 が加熱面から離れるよ うにナょる場合について実験を行い,加熱面熱流束および初期水溶 液 濃度 が,融解挙動,加熱面における平均熱伝達率, および融解量に及ぼす影響に関し
ー482一
一
二
澄
誠 亮
田
黒
藤
飯
石
落
授
授
授
教
教
教
査
査
査
副
副
副
て検討を行っている.第3章と同様にシャドウグラフ法を用いて融解界面の位置,融解 液相部における成層模様,および流れ模様の可視化を行っている.また,上向き水平加 熱面によるりキッドアイスの融解メカニズムを把握し,融解量の無次元整理を行い,無 次元整理式を与えている.
第5章では,矩形容器内に充満しているりキッドアイスが,融解液に対するりキヅド アイスの密度差による浮カによって,容器の上部加熱面に接触した状態で融解する場合 について実験を行い,加熱面熱流束および初期水溶液濃度の条件が,融解挙動,加熱面 における局所・平均熱伝達率,および融解量に及ぼす影響に関して検討を行っている.
実験においては,シャドウグラフ法を用いてりキッドアイスの上部への移動およびりキ ッドアイスの下部界面における水溶液の流下模様を可視化し,下部界面の近傍に発生す る針状の凍結層の写真撮影を行っている.また,リキッドアイスの温度分布をトラバー ス装置を用いて連続的に測定を行っている.さらに,下向き水平加熱面によるりキッド アイスの接触融解メ,カニズムを把握すると共に,融解量の無次元整理を行い,無次元整 理式を与えている.
第6章では,矩形容器内のりキッドアイスが,片方の垂直加熱壁によって融解される 場合に関して数値解析を行い,加熱面熱流束および初期水溶液濃度が,融解挙動および 加熱面における平均熱伝達率に及ぼす影薯に関レて検討を行っている.解析モデルおよ び実験観察に基づく仮定の導入,界面移動を伴う相変化問題の解法としての境界固定法 の適用,および界面位置の決定に関する準静的近似など,本解析に用いた数値解析方法 について述べている.また,第3章における実験結果と比較検討を行うことによって,
リキッドアイスの融解時の特性を予測できる解析モデルの妥当性に関して検討している.
第7章は結諭であり,、本研究において得られた結果を要約して述べており,リキッド アイスの融解に関する実験的および解析的研究の結果は,リキッドアイスを利用する蓄 冷熱システムのみでなく,二成分物質の融解問題が存在する様々な分野で,その融解特 性を解明する重要な指針となることを述べている.
これを要するに,著者は,二成分物質の固液共存層であるりキッドアイスの融解挙動 および融解熱伝達特性を明らかにしたもので,.リキッドアイスを利用する高効率熱交換 器の開発および採冷熱特性の能動的制御などに重要な基礎資料を提供し,二重拡散相変 化問題に対して有用な多くの知見を与えており,伝熱工学の進歩に貢献するところ大な るものがある.
よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める,
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