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博士(工学)棗 千修 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)棗   千修 学位論文題名

Phase‑field 法を基盤とした合金の 凝固組織予測に関する研究

学位論文内容の要旨

  鋳造は,数ある金属成形法の中で最も容易に複雑形状の製品を作り上げることのできる 優れた成形法であり,製品重量の制限がほとんど無く,少数多品種生産から大量生産まで 多種多様な製品の製造が可能である.そのため,人類は古来より鋳造技術を会得し様々な 金属製品の製造を行い,より高品質なものへの要求が高まってきた.しかし,鋳造品の高 品質化に伴う鋳造欠陥の抑制には,新製品の開発や品質制御などにおいて大きなコストが かかり,必然的に高級化が進んでしまう.そこで,コスト削減のために鋳造工場でもコン ピュータの導入が進められ,製品の管理,装置・機械の制御ばかりでなく,コンピュータ に よ る 支 援設 計(CAD),支 援 製 造(CAM),さら には,支 援エン ジニアリ ング(CAE)によ っ て製品 行程の解 析や設 計が行わ れてい る.このCAEでは ,従来 の経験やデータをコン ピュータに取り込み,データベース化して利用することによるエキスパートシステムの利 用の検討や,鋳造・凝固の過程をコンピュータの中で再現して結果を予測する凝固プロセ スシミュレーション法の開発が行われている.特に,凝固プロセスシミュレーションでは,

凝固伝熱シミュレーション,湯流れシミュレーションを初めとして多様なシミュレーショ ン法の研究が進められている.

  そこで,本研究ではこのプロセスシミュレーションの中で,近年,重要とされている凝 固組織形成シミュレーションに主眼を置き,中でもミクロ‐メソスケールのシミュレーシ ヨン手法として発展しているPhase‑field (PF)法に注目した.PF法は凝固組織の基本とも 言えるデンドライトを非常に簡単にかつ自然な形態で再現できる手法として発展してきた が,凝固現象に対する複合的な計算例があまり報告されていない.そのため,本研究では,

PF法の種々 の凝固現 象への 幅広い適 用性の 検討を目 的とし 研究を進めた.本論文は全7 章から構成されており,概要は以下の通りである.

  第1章 は,序論であり,工学的背景及び凝固プロセスシミュレーションの現状について まとめ,本研究の目的について述べた.

  第2章 では,PF法について説明した.凝固問題に対するPF法の基本的な考え方を述べ,

定 量的なPF計算を行う上で重要となるPhase‑fieldパラメータMにおけるSharp interface limitモデルとThin interface limitモデルを純物質のPFモデルにより簡潔に説明すると共 に,合金系及び多相系のPFモデ′kについても説明した.そして,PF法での計算例として,

Al‑Si合 金 に お け る デ ン ド ラ イ ト 成 長 及 ぴ 一 方 向 凝 固 の 計 算 結 果 を 示 し た .   第3章 では,凝固組織形成過程において重要となる溶湯流動の影響を考慮した解析モデ     ―905―

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ルを 開発し,溶湯流動下でのデンドライト組織形成及び偏向現象について検討した.溶湯 流動 が伴うことでデンドライトの周りの溶質拡散層が非奸森となり,その結果デンドライ トの 形態も非対称となること,流れの上流側に20〜30゜程度 傾いて成長する結晶が最も 成長 しやいことが明らかとなった.これらの結果を踏まえ,溶湯流動によって引き起こさ れる 特徴的な組織である偏向組織の形成メカニズムについて検討し,デンドライト偏向及 ぴ結 晶粒偏向メカニズムを以下のようにまとめた.

・デ ンドライト偏向は,溶湯流動によってデンドライト先端 近傍の溶質拡散層が非対称   に 変化することで,上流側のデンドライト側面の成長速度 が増加したために引き起こ   さ れる.

・結 晶粒偏向は,流れに対して垂直の方向に成長するデンド ライト群の先端近傍に分断   遊離 な どで 形成 され た遊 離等 軸晶 が付 着し ,そ の遊離結 晶の中で成長方向が20〜30   ? 程度傾いた結晶が選択され生き残った結果として起こる .

  第4章では,一方向凝固時のセ ルとデンドライトの成長方向を,成長速度の関数として 検討 した.これらの検討のためにサクシノニトリルを用いた直接観察と,PF法によるFe‑C 系合 金での数値計算を行った.その結果,無次元化成長方向 ガと無次元化成長速度VI Ve の導 入により,いくっかの条件で得られた成長方向に関する実験結果及び計算結果を一貫 して 説明することができることが明らかとなった.また,PF法による計算結果は実験で 得ら れた関係と定性的に一致し,観察困難な金属での実験を 行わなくても,PF法による 計算 を行うことで必要な合金に対する成長方向と成長速度の関係を見いだすことが可能で ある ことがわかった.  t

  第5章 では ,PF法の1次元 モデ ルをTLP接 合に 適用 し, 長時 間プ ロセ スの 計算 を行い その 適用性及び有効性を検討した.PF法での解析モデルは, 実験及び従来の移動境界値 モデ ルから得られた結果と良い一致を示し,長時間プロセスヘの適用が可能であり,さら にPF法では非平衡過程が計算可能であるため,昇温過程にお ける非平衡な母材溶解現象 に対 応できることが明らかとなった.

  第6章では,PF法とCellular Automaton (CA)法を連成させ た2元系及び多成分系合金の マク ロ鋳造組織予測モデルを開発し,実験結果と比較することで本モデルのマクロ鋳造組 織予 測法としての妥当性について検討した.本モデルではCA法におけるデンドライト先 端成 長動力学にPF法を導入し,さらに伝熱計算にエンタルピ ー法を採用することで多成 分系 合金への拡張を試みた.また,核生成モデルには,核生成速度を表す過冷度の門乗関 数を 用いることで,核生成モデルの簡便化を図った.その結 果,AI‑Si2元合金での計算 で は,PF‑CAモデ ルとKGT‑CAモデルの両モデルで一方向凝固 組織が再現できた.また,

エン タルピー法を適用した伝熱計算により,鋳造時の多成分系合金の冷却曲線を非常に良 く 再現 で き, 多成 分系 合金に拡 張したPF‑CAモデルが,主要 合金成分を対象とした実用 合 金 の 鋳 造 組 織 予 測 法 と し て 有 効 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た .   第7章は本論文の総括である.

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    成田 敏夫 副査    教 授    工藤 昌行 副査    教 授    毛利 哲夫 副査   助教授   大笹憲一

学 位 論 文 題 名

Phase‑field 法を基盤とした合金の 凝固組織予測に関する研究

  近年, 鋳造品の高品質化に伴う鋳造欠陥の抑制のために,鋳造・凝固の過程をコンピュ ータの中 で再現して結果を予測する凝固プロセスシミュレーション法の開発が行われてい る,凝固 プロセスシミュレーションでは,凝固伝熱シミュレーション,湯流れシミュレー シ ョ ン を 初 め と し て 多 様 な シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 法 の 研 究 が 進 め ら れ て い る ,   本研究 ではこのプロセスシミュレーションの中で,近年,急速に発展してきた凝固組織 形成シミ ュレーションに主眼をおき,中でもミクロ.メソスケールのシミュレーション手 法として発展してきたPhase‑`・leld(PF)法に注目した,PF法は凝固組織の基本とも言える デンドラ イトを非常に簡単にかっ自然な形態で再現できる手法として発展してきたが,凝 固現象に 対する複合的な計算例があまり報告されていない,その ため,本研究では,PF 法の種々 の凝固現象への幅広い適用性の検討を目的とし研究を進めた,本論文は全7章か ら構成されており,概要は以下の通りである.

  第1章は,序論であり,工学的背景及び凝固プロセスシミュレーションの現状につし`て まとめ,本研究の目的について述べた.

  第2章では,PF法について説明した ,凝固問題に対するPF法の基本的な考え方を述べ,

定量的なPF計算を行う上で重要となるPhaSe‐fleldパラメータMにおけるSharpinterface limitモ デル とThinintemcelimitモデルを純物質のPFモデ ルにより簡潔に説明すると共 に,合金系及び多相系のPFモデルについても説明した,

  第3章では,凝固組織形成過程にお いて重要となる溶湯流動の影響を考慮した解析モデ ルを開発 し,溶湯流動下でのデンドライト組織形成及び偏向現象について検討した,溶湯 流動が伴 うことでデンドライ卜の周りの溶質拡散層が非対称となり,その結果デンドライ トの形態 も非対称となること,流れの上流側に20〜30°程度傾い て成長する結晶が最も 成長しや いことが明らかとなった,これらの結果を踏まえ,溶湯流動によって引き起こさ れる特徴 的な組織である偏向組縦の形成メカニズムについて検討し,デンドライ卜偏向及 び結晶粒偏向メカニズムを以下のようにまとめた.

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・ デンドラ イト偏 向は,溶湯流動によってデンドライト先端近傍の溶質拡散層が非対称   に 変化する ことで ,上流側のデンドライト側面の成長遼産が増加したために引き起こ   される,

・ 結晶粒偏 向は, 流れに対して垂直の方向に成長するデンドライト群の先端近傍に分断   遊 離などで 形成さ れた遊離 等軸晶 が付着し ,その 遊離結晶 の中で成 長方向が20〜30   °程度傾いた結晶が選択され生き残った結果として起こる,

  第4章では,ー方向凝固時のセルとデンドライトの成長方向を,成長速度の関数として 検討した,これらの検討のためにサクシノニトリルを用いた直接観察と,PF法によるFe‑C 系 合金での 数値計 算を行った.その結果,無次元化成長方向ガと無次元化成長速度〃比 の導入により,いくっかの条件で得られた成長方向に関する実験結果及び計算結果を一貫 し て説明す ること ができることが明らかとなった.また,PF法による計算結果は実験で 得t.られた関係と定性的に一致し,観察困難な金属での実験を行わなくても,PF法による 計算を行うことで必要な合金に対する成長方向と成長速度の関係を見いだすことが可能で あることがわかった.

  第5章 で は ,PF法の1次元 モデルをTLP接 合に適用 し,長時 間プロ セスの計 算を行 い その適用性及ぴ有効性を検討した. PF法での解析モデルは,実験及び従来の移動境界値 モデルから得られた結果と良い一致を示し,長時間プロセスーの適用が可能であり,さら にPF法では非 平衡過 程が計算可能であるため,昇温過程における非平衡な母材溶解現象 に対応できることが明らかとなった.

  第6章では,PF法とCellular Automaton (CA)法を連成させた2元系及び多成分系合金の マクロ鋳造組織予測モデルを開発し,実験結果と比較することで本モデルのマクロ鋳造組 織 予測法と しての 妥当性について検討した.本モデルではCA法におけるデンドライト先 端 成長動力 学にPF法 を導入し,さらに伝熱計算にエンタルピー法を採用することで多成 分系合金への拡張を試みた,また,核生成モデルには,核生成速度を表す過冷度のn乗関 数 を用いる ことで ,核生成モデルの簡便化を図った.その結果,Al‑Si2元合金での計算 で は,PF‑CAモデル とKGT‑CAモデ ルの両モ デルで 一方向凝固組織が再現できた,また,

エンタルピー法を適用した伝熱計算により,鋳造時の多成分系合金の冷却曲線を非常に良 く再現でき,多成分系合金に拡張したPF‑CAモデノレが,主要合金成分を対象とした実用 合 金 の 鋳 造 組 織 予 測 法 と し て 有 効 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た .   第7章は本論文の総括である.

  これを要するに,著者はPhase‑field法の実際の凝固現象ーの新しい適用法を提案し,凝 固組織予測法としての高いポテンシャルを実証したもので,材料工学に対して寄与すると ころ大なるものがある,よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格 あるものと認める.

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参照