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博士(工学)望月 明 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(工学)望月   明 学位論文題名

軟質媒体の超大変形接触および非線形力学モデル解析と ハンドリング機器開発への応用

学位論文内容の要旨

  近年大きく発展している情報機器の中で、軟質媒体としての紙を扱う情報端末装置 として、プリン夕、複写機、印刷機、現金自動取扱装置(Automated Teller Machine: ATM)が 広 く 普 及 し てい る。 それ らに おける 紙の ハン ドリ ング 技術 が、 その 製品 の 信頼性や性能にとって重要な技術である。しかし、紙のような軟質媒体は変形が非常 に大きく、幾何学的非線形性が強く、物性が複雑であり、されに材料非線形性も強い。

そのため、これらを十分考慮した紙の大変形に関する研究は非常に少ない。また、後 述するようべージめくり挙動は、紙の座屈現象に対応し、座屈後の変形(ポストバッ クリング変形)をも考慮しなければならないため、その解析はほとんど行われていな い。

  前述 の情 報端 末機 器の うち、 プリ ンタ や複写機などでは、1枚1枚のカット紙に印 字するため、紙を薄板の剛体に近い扱いをすることができるが、通帳プリンタのよう に、冊子に印字するプリンタでは、複数のべージにまたがって印字するため、ベージ をめくって印字するぺージを表面に出す必要がある。通常はゴム口ーラなどの接触に よルページをめくる機構を採用しているため、紙と口ーラとの間の大変形における接 触問題の解析が重要である,また、ぺージめくりに要する時間の短縮が課題であり、

こ の た め 、 ミ ス 無 く べ ー ジ を め く る こ と の で き る 機 構 が 必 要 と さ れ る 。   また、紙などの軟質媒体ではしわの発生を避けて通ることはできない.しわを有す る 紙 を 使 用 し た 場 合、 上記 現金 自動 取扱装 置(ATM)やプ リン 夕機 器内 で紙 の搬 送 中にジャム(紙詰まり)が発生する可能性がある.紙のジヤムは、一旦発生すると、

自動的にジャムを取り除くことは現状では不可能である.処理時間の短縮と機器保守 の観点から、可能な限ルジャムの頻度を少なくする必要がある。このため、これらの 機器では、しわを伸ばす機構についても考える必要がある。

  本論文では、幾何学的非線形性を考慮するとともに、摩擦などの接触問題も非線形 理論を応用して、構造が簡単で従来に比べ高速なべージめくり機構を開発に関する研 究について述べる。また、プリン夕、複写機、印刷機などで扱う紙は一般的にはしわ や 折れ が存 在し ない 、平 らな紙 であ る。 しか し、 現金 自動 取扱 装置 (ATM)などに おいては、市中で流通した紙幣を取り扱うため、しわや折れ、破れがある場合があり、

(2)

本要 因がジャ ムや破損などのトラブルの原因になる。そこで、しわを伸ばす機構を開 発し 、その効 果につい ても検討 した。

本論文の構成は以下のようである。

  第1章は緒言 であり、 従来のべ ージめく り機構の技術と問題点および、しわ伸ばし 機 構 の 技 術 と 問 題 点 に つ い て 述 ベ 、 本 論 文 の 意 義 を 述 べ て い る 。   第2章は、大 変形を扱うための増分理論のうち、Updated Lagrangian Approach(超 大 変形理論 )につい て式を定式化した。さらに、接触問題の取り扱いを可能とするよ う 、Penalty法によ る接触理 論を適用 し、有限 要素法のアルゴリズムを示し、それに 基 づいた解 法を提案 した。この解法を用いて、軟質媒体である紙の超大変形挙動を解 析 し、その 座屈およ び座屈後の変形を求めた。また、中実および中空のゴム口ーラと の 接触によ り、紙が 変形する過程を示し、ぺージめくり挙動における紙の基本的な変 形挙動を求め、その妥当性の検討を行なった。

  第3章は、ベ ージめくり技術の開発について述べている。第2章で示した結果より、

ぺ ージめく りに最適 な新口ーラを提案し、実機での試験により、ベージめくりの信頼 性 が飛躍的 に向上し 、また、ベージめくりに要する時間も短縮できることを示した。

  第4章は、紙 のしわ仲 ばし技術 の開発に ついて述べている。しわを有する紙の引張 試験を行なって、その機械的特性を調ベ、変形が3つの領域に分かれることを示した。

こ の変形領 域を検討 すること により、 それらの 領域が、1)引張りの初期段階に見ら れ る繊維間 のすべり に支配さ れる変形 が大きな 領域、2)繊維の弾性変形に支配され る 引張カと 変形が比 例関係を 有する領 域、およ び3)破断直前に見られる繊維の塑性 変 形に支配 される領 域、であることを見出した。次に、しわを有する紙に加えた熱が 機 械的特性 に及ぼす 影響を検討し、加圧しながら加熱することによりしわを伸ばすと き の圧縮量 と変形量 との関係を近似式として提案した。この近似式を用いた紙のしわ 伸 ばしのメ カ二カル モデルを提案し、それによる解析結果と実験結果が一致すること を示した。

  第5章は結言 であり、 本研究で 得られた 結果を要約し、将来の展望について述べて いる。

  本 論文で, 著者は、軟質媒体である紙の超大変形接触問題の解析手法を提案し、そ の 結果等に より新た なぺージめくり機構としわ伸ばし機構の開発を行った。また、そ の 性能が従 来の機器 に比ベ格段に向上していることを実機により確かめており、情報 端 末 装 置 に お け る 紙 の ハ ン ド リ ン グ 技 術 に 新 た な 道 を 拓 い た 。

(3)

学位論文審査の要旨 主査   教授    佐々木一彰 副査    教授    山田    兀 副査    教授    上田正生

学 位 論 文 題 名

軟質媒体の超大変形接触および非線形力学モデル解析と ハンドリング機器開発への応用

  近 年 大 き く 発 展 し て い る 情 報 機 器 の 中 で , 軟 質 媒 体 と し て の 紙 を 扱 う 情 報 端 末 装 置 と し て , プ リ ン 夕 , 複 写 機 , 印 刷 機 , 現 金 自 動 取 扱 装 置(Automated Teller Machine ATM)が 広 く 普 及 し て い る . そ れ ら に お け る 紙 の ハ ン ド リ ン グ 技 術 は そ の 製 品 の 信 頼 性 や 性 能 に と っ て 重 要 な 技 術 で あ る . し か し , 紙 の よ う な 軟 質 媒 体 は 変 形 が 非 常 に 大 ぎ く , 幾 何 学 的 非 線 形 性 が 強 く , 物 性 が 複 雑 で あ り , さ ら に 材 料 非 線 形 性 も 強 い , そ の た め , こ れ ら を 十 分 考 慮 し た 紙 の 大 変 形 に 関 す る 研 究 は 非 常 に 少 な い . ま た , 紙 の 座 屈 現 象 で あ る べ ー ジ め く り 挙 動 は , 紙 の ハ ン ド リ ング に必 要不 可欠 なも ので ある が,

座 屈 後 の 変 形 ( ポ ス ト バ ッ ク リ ン グ 変 形 ) を も 考 慮 し な け れ ば な ら な い た め , そ の 解 析 は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い .

  前 述 の 情 報 端 末 機 器 の う ち , プ リ ン タ や 複 写 機 な ど で は ,11枚 の カ ッ ト 紙 に 印 字 す る た め , 紙 を 薄 板 の 剛 体 に 近 い 扱 い を す る こ と が で き る が , 通 帳 プ リ ン タ の よ う に , 冊 子 に 印 字 す る プ リ ン タ で は , 複 数 の べ ー ジ に ま た が っ て 印 字 す る た め , ペ ー ジ を め く っ て 印 字 す る べ ー ジ を 表 面 に 出 す 必 要 が あ る . 通 常 は ゴ ム 口 ー ラ な ど の 接 触 に よ り ぺ ー ジ を め く る 機 構 を 採 用 し て い る た め , 紙 と 口 ー ラ と の 間 の 大 変 形 に お け る 接 触 問 題 の 解 析 が 重 要 で あ る . ま た , ぺ ー ジ め く り に 要 す る 時 間 の 短 縮 が 課 題 で あ り , こ の た め , ミ ス 無 く ぺ ー ジ を め く る こ と の で き る 機 構 が 必 要 と さ れ る .   ま た , 紙 な ど の 軟 質 媒 体 で は し わ の 発 生 を 避 け て 通 る こ と は で き な い . し わ を 有 す る 紙 を 使 用 し た 場 合 , 上 記 現 金 自 動 取 扱 装 置 (ATM)や プ リ ン 夕 機 器 内 で 紙 の 搬 送 中 に ジ ャ ム ( 紙 詰 ま り ) が 発 生 す る 可 能 性 が あ る . 紙 の ジ ャ ム は , 一 旦 発 生 す る と , 自 動 的 に ジ ャ ム を 取 り 除 く こ と は 現 状 で は 不 可 能 で あ る . 処 理 時 間 の 短 縮 と 機 器 保 守 の 観 点 か ら , 可 能 な 限 ル ジ ャ ム の 頻 度 を 少 な く す る 必 要 が あ る . こ の た め , こ れ ら の 機 器 で は , し わ を 伸 ば す 機 構 に つ い て も 考 え る 必 要 が あ る .

  本 論 文 で は , 幾 何 学 的 非 線 形 性 を 考 慮 す る と と も に , 摩 擦 な ど の 接 触 問 題 も 非 線 形

(4)

理論を応用して解析を行い,構造が簡単で従来に比ベ高速なぺージめくり機構を開発 した.また,プリン夕,複写機,印刷機などで扱う紙は一般的にはしわや折れが存在 し な い , 平ら な 紙 で あ る . し かし ,現 金自 動取 扱装 置(ATM)など にお いて は,市 中で流通した紙幣を取り扱うため,しわや折れ,破れがある場合があり,本要因がジ ヤムや破損などのトラブルの原因になる.そこで,しわを伸ばす機構を開発し,その 効果についても検討した.

  本論文の構成は以下のようである.

  第1章は 緒言 であ り, 従来のべージめくり機構の技術と問題点および,しわ伸ばし 機 構 の 技 術 と 問 題 点 に つ い て 述 ベ , 本 論 文 の 意 義 を 述 べ て い る .   第2章は,大変形を扱うための増分理論のうち,Updated Lagrangian Approach(超 大変形理論)について式を定式化した.さらに,接触問題の取り扱いを可能とするよ う,Penalty法による接触理論を適用し,有限要素法のアルゴリズムを示し,それに基 づいた解法を提案した.この解法を用いて,軟質媒体である紙の超大変形挙動を解析 し,その座屈および座屈後の変形を求めた.また,中実および中空のゴム口ーラとの 接触により,紙が変形する過程を示し,ページめくり挙動における紙の基本的な変形 挙動を求め,その妥当性の検討を行なった,

  第3章は,ベージめくり技術の開発について述べている.第2章で示した結果より,

ページめくりに最適な新口ーラを提案し,実機での試験により,ページめくりの信頼 性が飛躍的に向上し,また,ぺージめくりに要する時間も短縮できることを示した.

  第4章は ,紙 のし わ伸 ばし技術の開発について述べている.しわを有する紙の引張 試験を行なって,その機械的特性を調ベ,変形が3つの領域に分かれることを示した.

この 変形 領域 を検 討する ことにより,それらの領域が,1)引張りの初期段階に見ら れる 繊維 間の すべ りに支 配される変形が大きな領域,2)繊維の弾性変形に支配され る引 張カ と変 形が 比例関 係を有する領域,および3)破断直前に見られる繊維の塑性 変形に支配される領域,であることを見出した.次に,しわを有する紙に加えた熱が 機械的特性に及ぼす影響を検討し,加圧しながら加熱することによりしわを伸ばすと きの圧縮カと変形量との関係を,実験結果に基づいた近似式として提案した.さらに,

この近似式を用いた紙のしわ伸ばしのメカ二カルモデルを提案し,それによる解析結 果と実験結果が一致することを示した.

  第5章は 結言 であ り, 本研究で得られた結果を要約し,将来の展望について述べて いる.

  これを要するに,著者は,軟質媒体である紙の超大変形接触問題の解析手法を提案 し,その結果等により新たなぺージめくり機構としわ伸ばし機構の開発を行なうとと もに,その性能が従来の機器に比ぺ格段に向上していることを実機により確かめてお り,機械工学,特に情報端末装置における紙のハンドリング技術の発展に貢献すると ころ大なるものがある.よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資 格あるものと認める,

参照

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