財政論 I/II
no.9 麻生良文
内容
• 個別物品税の帰着
•
基本モデル(部分均衡分析)• 死重損失
• 需要・供給の価格弾力性
• 死重損失の公式
• 独占市場での物品税の帰着
• 応用問題
個別物品税の帰着
•
部分均衡分析• 競争的市場を前提
• 他財と比較した当該財の価格(相対価格)がどう変化するか
• 誰が租税を負担するか,社会的余剰はどう変化するか,…
•
重要な関係消費者支払価格
(p) =
生産者受取価格(q) +
物品税(t)
• 消費者(需要側)の行動: p=MB
• 生産者(供給側)の行動: q=MC
• 物品税( t )の分だけ p と q の間にくさび (tax wedge) が埋め込まれ る
•
一般消費税(付加価値税)全ての財が一様に値上がり• 特定の財の相対価格は不変 消費者,生産者の行動は不変
• 非課税品,市場で取引されない財・サービス(家事サービスなど)
,レジャーは異なる
個別物品税の帰着 (2)
消費者の支払価格
(p)=
生産者の受取価格(q)
+物品税(t) Q
p
D S E
重要な関係
S’
F
G p
0p
1q
1Q
0Q
1t ここでの価格 p は,他の財と比 較した相対価格であることに注 意
個別物品税の帰着 (3)
•
課税の効果• p の上昇(消費者の負担), q の下落(生産者の負担)
• Q (数量)の減少,死重損失の発生
•
消費者と生産者の負担割合• 需要・供給の価格弾力性に依存
• 市場の競争条件にも依存(後述)
•
消費者側に課すか,生産者側に課すかは無関係• p=q+t だけが重要
• もちろん,納税のコストの違いはあるかもしれない
• 従量税か従価税かによって 分析方法が異なることはない
•
よくある間違い• 納税義務者が消費者の場合需要曲線が下にシフト,納税義務者が生産者な ら供給曲線が上にシフト
• 一般消費税(付加価値税)の導入によって,消費財の供給曲線が上方にシ フト
個別物品税の死重損失 dead weight loss
Q p
D S E
S’
F
G p
0p
1q
1Q
0Q
1t
DWL CS
消費者余剰
PS
生産者余剰税収
個別物品税の導入社会的余剰が三角形 EFG だけ減少
個別物品税の帰着 (4)
縦軸を消費者価格にした場合の分析
Q D
S E
S’
F
G p
0q
1Q
0Q
1t
消費者の支払価格 需要曲線 D
消費者の支払価格と 需要量の関係課税後 も不変
供給曲線 S
生産者の受取価格と 供給量の関係 これ 自体は課税後も不変
生産者が q1 受け取
るためには消費者は q1+t 支払う必要
あたかも供給曲線が 税額分だけ上方にシフ トしたかのような効果
p
1=q
1+t
個別物品税の帰着 (5)
縦軸を生産者価格にした場合の分析
Q D
S E
F
G p
0=q
0p
1q
1=p
1−t
Q
0Q
1t 生産者の受取価格
D’
供給曲線 S
生産者の受取価格と 供給量の関係課税後 も不変
需要曲線 D
消費者の支払価格と 需要量の関係 これ 自体は課税後も不変
生産者が q1 受け取
るためには消費者は q1+t 支払う必要
あたかも需要曲線が 税額分だけ下方にシフ トしたかのような効果
個別物品税の帰着 (6)
• 課税前
• 課税後
Q : 数量
pd(Q): 需要関数(逆需要関数)
Qからの追加的1単位に消費者は最大限いくら払う用意があるか(=限界便益)
ps(Q): 供給関数(逆供給関数)
Qからの追加的 1単位について生産者が売っても良いと思う最低限の価格(=限界費用)
pd 消費者価格, ps 生産者価格, t 物品税
•
価格弾力性
• 需要(供給)の価格弾力性
•
価格が 1% 変化した場合に,需要(供給)が何 % 変化するか
• ここでは絶対値で定義
• 符号をつけて定義する場合もあり
• 需要の価格弾力性はマイナス
• 供給の価格弾力性はプラス
• 単位(円,ドル; kg, ポンド)に依存し ない
• 需要・供給量を測る期間の長さにも依 存しない
•
Q p
非弾力的
弾力的
需要の価格弾力性
他財との代替性が強い
生活費需品等,他財との代替性が弱い財
価格弾力性と物品税の帰着
Q p
Q p
Q p
Q p
S
D E
p0=p1 t q1
S
D S’
t
E
Q0 Q0
p1 p0
D S t S’
F
F
E
S S’
D E
F p0=p1 t
q1
Q0 Q0
Q1 Q1
p0 p1
生産者が 100% 負担 消費者が 100% 負担
消費者が 100% 負担 生産者が 100% 負担
価格弾力性と物品税の帰着 (2)
Q p
S
D E
p0 t q1
S’
p1 F
G Q
p
S
D t E
p0 q1
S’
F p1
G
供給曲線が相対的に非弾力的 需要曲線が相対的に非弾力的
生産者側が多く負担 消費者側が多く負担
価格弾力性と物品税の帰着 (3)
• 非弾力的
• 消費者側: 代替財が存在しない
• 生活必需品,喫煙者にとってのタバコ
• 生産者側: 生産要素を増やすことも減らすこともできない
• 再生産不可能; 土地,ゴッホの絵
• 特殊な生産要素; 他財の生産に生産要素を転用できない(その逆も)
• 弾力的
• 消費者側: 密接な代替財の存在
• 生産者側: 他の財の生産に容易に生産要素を振り向けられる
• 代替的な選択肢の存在しない方が物品税を多く負担する。
• 価格弾力性は,財の範囲に依存する。
• 同一の財を広く定義すれば価格弾力性は低くなる。
• 一般的には,長期の価格弾力性>短期の価格弾力性
• 死重損失 (deadweight loss) は 価格弾力性が高いほど大きい。
死重損失の公式
より
また,より
税率 : t ,需要の価格弾力性 :
•
Q p
S
D p0 E
F S’
p1
G
DWL
Dp=tp0
DQ=eD(Dp/p0)Q0 Q0
供給曲線が水平な場合
供給曲線が水平なので,消費 者が 100 %税を負担する
死重損失の公式 (2)
• DWL:
税率の平方に比例
税率の平準化が望ましい• 今期 10% ,来期 30% の税率よりも,今期も来期も 20% の税率に平 準化した方が死重損失の合計が小さい
• 所得税に適用課税平準化 (tax smoothing)
• DWL:
需要の価格弾力性に比例• 効率性の観点からは価格弾力性の低い財に重い課税,価格弾力性 の高い財に軽い課税が望ましい
• しかし,一般的には
生活必需品:需要の価格弾力性 低
奢侈品 :需要の価格弾力性 高
効率性と公平性のトレードオフ•
狭い範囲の財に税を課すよりも広い範囲に課した方が死重 損失は小さい(価格弾力性はその財の代替性に関係)死重損失の公式 (3)
•
Q p
D S S’
E F
G
q 1-q
Q
0p
0消費者の負担割合を q ,生産者 の負担を 1-q とすると
qeD=(1-q)eS
が成り立つ(需要と供給の変化 は同じ)。これより
q=eS/(eD+eS)
が成立。後は, FG の長さが近似 的に tp0 に等しいことを利用して 導出する。
一般的なケース
数式による導出
t の微小な変化を考える
t=0 で評価して整理すると( p=q が成り立つ )
•
独占市場での物品税の帰着 (1)
•
独占企業の行動
需要曲線上の点(価格と数量の組合 せ)で利潤の最大化•
物品税の存在しない場合p(Q): 需要関数
• 利潤最大化の条件
• 限界収入 =限界費用
マークアップ率 3.0, 2.0, 1.5, 1.33
•
独占市場での物品税の帰着 (2)
• 物品税は従量税
• 従価税の場合,結果が少し変わる
• 独占企業の行動
q=p(Q) −t : 生産者受取価格
• 利潤最大化の条件より
• 特に,限界費用が一定で,需要の価格弾力性が一定の場合
• 消費者価格は物品税以上に上昇,生産者受取価格も上昇
• (完全競争市場の場合は 100% 消費者が負担)
• 生産量は減少死重損失の増加
• 注意:消費者に 100% 以上の転嫁という命題は,需要曲線の形状が 異なると成立しない。
•
独占市場での物品税の帰着 (3)
• 従価税の場合
• 独占企業の行動
t : 従価税税率
• 利潤最大化の条件より
• 限界費用が一定で,需要の価格弾力性が一定の場合
• 生産者価格は不変,消費者価格は物品税分だけ上昇 ( 消費者に 100% の転 嫁)
• 生産量は減少死重損失の増加
•
独占市場での物品税の帰着 (4)
• 需要曲線: (a,b は正の定数),独占企業の限界費用はcで一定のケース
• 従量税の場合の利潤
利潤最大化の条件 これから
となる。最後の式税の 50% が消費者に転嫁される 従価税の場合は省略
•
応用
•
補助金 (subsidy) の効果消費者支払価格 (
p
) + 補助金 (s
) = 生産者受取価格 (q
) マイナスの物品税と考えてもよい•
補助金導入後に,価格(p
とq
)および数量はどう変 化するか,資源配分の効率性に与える影響どうか ?•
補助金は消費者と生産者のどちらに帰着するか• 需要と供給の価格弾力性
• 生活必需品に対する補助金( or 消費税の軽減税率)
• 奢侈品に対する補助金
• 土地の購入に対する補助金
• 生産に固定的な生産要素の投入が欠かせない製品と,そうでない製 品に対する補助金
•
補助金の帰着
p
(消費者価格)+s
(補助金)=q
(生産者価格)Q p
S
D
E s
p0 p1
F S’
q1
G
Q p
S’
D
E s
p0
p1
S q1 F
G
供給曲線が相対的に非弾力的 需要曲線が相対的に非弾力的
生産者側により多くの利益 消費者側により多くの利 益
死重損失が生じることに注意
応用 (2)
•
租税平準化• 税率を平準化した方が死重損失の割引価値の合計を小さくできる
•
最適課税論(最も単純なケース:逆弾力性ルール)• n 種類の財,各財の需要は独立,消費者価格は所与,代表的消費者
• 税収制約のもとでの死重損失の最小化
一階の条件
最適税率
•
個別物品税と消費税(消費型付加価値税)
y
O x
u1 u0 E
G 物品税の死重
損失
H
課税前の予算線
物品税導入後の予算線 F
I J
x に対する個別物品税 x の相対価格の上昇 F 点を選択
消費税(消費型付加価 値税)
原則として全ての財に 課税(所得効果のみ)
G 点を選択
等しい効用の低下をも たらす二つの税を比較 すると,個別物品税の 税収が FJ 分少ない 死 重損失
消費税導入後の予算線
租税の歪みは代替効果に関連した効果