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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

印鑑とは何か

七戸, 克彦

九州大学大学院法学研究院 : 教授

http://hdl.handle.net/2324/1485030

出版情報:ふくおか : 会報. 120, pp.5-8, 2015-01. 福岡県土地家屋調査士会 バージョン:

権利関係:

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印鑑とは何か

不動産登記と印鑑証明

不 動 産 登 記 令 16条 2項 は 「 申 請 情 報 を 記 載 した書面には,法務省令で定める場合を除き,

同 項 の 規 定 に よ り 記 名 押 印 し た 者 ( 委 任 に よ る 代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地 の 市 町 村 長 ( 特 別 区 の 区 長 を 含 む も の と し , 地 方 自 治 法 第 252条の 19第 1項 の 指 定 都 市 に あ っ て は , 市 長 又 は 区 長 と す る 。 次 条 第 1項 に お いて同じ。)又は登記官が作成するものに限る。

以下同じ。)を添付しなければならない。」旨を 規 定 し , 同 条 3項 は 「 前 項 の 印 鑑 に 関 す る 証 明 書 は , 作 成 後 3月 以 内 の も の で な け れ ば な ら な い。j旨 を 規 定 す る 。 代 理 権 限 証 明 情 報 , 第 三 者 の同意・承諾証明情報についても同様である(不 登 令 18条 2項・ 3項, 19条 1項・ 2項)。

と こ ろ が , 上 記 不 登 令 の 委 任 を 受 け た 法 務 省 令 ( 不 動 産 登 記 規 則 48条 ) の 見 出 し 書 は , 不 登 令 に い う 「 印 鑑 に 関 す る 証 明 書 」 を 「 印 鑑 証 明 書 」 と 表 現 し て お り ( も っ と も , 不 登 規 則 48 条, 49条, 55条 の 本 文 の 表 記 は , 不 登 令 と 同 様「印鑑に関する証明書」である),不動産登記 事 務 取 扱 手 続 準 則 34条 2項, 35条 3項 1号, 46条 1項・ 2項, 49条 2項 4号, 104条 2項 で は , も っ ぱ ら 「 印 鑑 証 明 書 」 の 用 語 が 使 用 さ れている。

印鑑証明制度の沿革

印 鑑 証 明 の 制 度 は , 江 戸 期 以 来 の わ が 国 固 有 の 公 証 制 度 に 由 来 す る 。 現 在 の 公 証 制 度 の 担 い 手 は , 明 治 期 に 西 洋 法 ( 正 確 に は フ ラ ン ス 法 ) を 継 受 し た 公 証 人 で あ る が , 江 戸 期 の 公 証 制 度 の 担 い 手 は , 名 主 ・ 庄 屋 と い っ た 村 役 人 ( 都 市

学術顧問・九州大学大学院法学研究院教授

七 戸 克 彦

部 に お い て は 町 役 人 ) で あ っ た 。 一 方 , 契 約 自 由 の 原 則 も , 明 治 期 に 西 洋 か ら も た ら さ れ た も の で , 江 戸 期 以 前 に お い て は , 当 事 者 の 「 意 思J ではなく,「形式」が,法律効果(権利義務)を 発 生 さ せ る 要 件 と 認 識 さ れ て い た 。 そ し て , 不 動 産 取 引 に 限 ら ず , お よ そ 社 会 的 に 重 要 な 契 約 一 般 に 関 し て , そ の 法 律 効 果 を 発 生 さ せ る 「 形 式」とは,①当事者の押印と,②村役人(名主・

庄屋)・町役人による公証であった。

こ の う ち , ① 押 印 に つ い て い え ば , 江 戸 期 よ り 前 の 時 代 に は , 戦 国 大 名 の 花 押 の よ う に , 当 事 者 は 「 署 名 」 の み を 行 う の が 通 常 で あ り , こ れ に 代 わ っ て 「 押 印 」 が 一 般 化 す る の は , 江 戸 期 に 入 っ て か ら の こ と で あ る 。 た だ し , こ の 場 合 に 当 事 者 が 使 用 す る 印 は , あ ら か じ め 村 役 人 ・ 町 役 人 に 届 け 出 た も の で な け れ ば な ら な か っ た ( 印 の 登 録 の 仕 方 に は , 五 人 組 帳 や 宗 門 帳 に 直 接 押 印 さ せ る 方 法 と , 押 印 し た 書 面 を 提 出 させる方法とがあった)。そして,この印を用い た 契 約 証 文 を 当 事 者 が 作 成 し て 村 役 人 ・ 町 役 人 の と こ ろ へ 持 ち 込 む と , 村 役 人 ・ 町 役 人 は , 証 文 の 印 影 と あ ら か じ め 届 け 出 ら れ た 印 影 と を 照 合 す る と と も に ( そ れ ま で の 時 代 に お け る 「 署 名(サイン)Jの筆跡鑑定に代わるもの),契約 内 容 が 不 動 産 取 引 な ら ば , 土 地 の 表 示 や 所 有 者 が 公 簿 ( 検 地 帳 ) と 合 致 し て い る か 等 を 審 査 し たうえ,不都合がなければ証文に連署証印し,

あ る い は 証 文 の 末 尾 に 奥 書 証 印 す る こ と に よ っ て , よ う や く 契 約 が 成 立 し て , 権 利 変 動 の 効 果 が 発 生 す る こ と と な る 。 こ れ が 上 記 ② 江 戸 期 の 村役人(名主・庄屋)・町役人による公証制度で あって,この制度(名主加判の制と呼ばれる)

は , 全 国 の 検 地 が 完 了 し 検 地 帳 が 整 備 さ れ た 江

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戸 初 期 末 期 か ら 中 期 初 期 (18世 紀 初 頭 ) に 一 般 化したといわれる。

明 治 政 府 は , 土 地 の 所 有 権 移 転 に 関 し て は , 地 券 の 書 換 を 成 立 要 件 と し た が , し か し , 建 物 の 所 有 権 移 転 や , 土 地 ・ 建 物 の 質 入 ・ 書 入 ( さ

ら に い え ば 不 動 産 取 引 に 限 ら ず 社 会 的 に 重 要 な 契 約 一 般 ) に 関 し て は , 江 戸 期 の 公 証 制 度 を そ のまま承継し,旧幕時代の村役人(名主・庄屋)・

町 役 人 を 戸 長 に 任 命 し て , そ の 屋 敷 を 戸 長 役 場 と し て 公 証 事 務 に 当 た ら せ た 。 し か も , 地 租 改 正 事 業 に 目 処 が 立 っ た 明 治 13年 に は , 土 地 の 所 有 権 移 転 の 要 件 に つ い て も , 地 券 書 換 か ら 江 戸期以来の公証制度に立ち戻ったのである。

だ が , 旧 幕 時 代 に は 村 役 人 ・ 町 役 人 で あ っ た 戸 長 に つ い て は , そ の 資 質 に 問 題 が あ り , 不 確 実 な 公 証 が 頻 発 し た 。 そ こ で , 明 治 政 府 は , ① 明治 19年 8月 13日法律第 1号「登記法」(旧 登 記 法 。 日 本 で は じ め て の 「 法 律Jであり,ま た , 不 動 産 登 記 だ け で は な く , 船 舶 登 記 ・ 商 業 登 記 を も 規 律 す る 総 合 的 な 登 記 法 で あ る ) と ② 向 日 付 法 律 第 2号 「 公 証 人 規 則Jに よ っ て , ① 不 動 産 ・ 船 舶 ・ 法 人 ( 会 社 ) に 関 し て は , 登 記 制 度 を 創 設 し て 裁 判 官 ( 区 裁 判 所 判 事 ) の 審 査 に 委 ね る 一 方 , ② 会 社 ( 法 人 ) の 公 証 事 務 に つ い て は 登 記 と 同 じ く 区 裁 判 所 , 自 然 人 に つ い て は公証人の審査に移行させることとした。

今 日 , 会 社 ・ 法 人 に つ い て の 印 鑑 証 明 が 登 記 所 の 事 務 と な っ て い る の は , 上 記 ① 明 治 19年 旧 登 記 法 以 来 の 沿 革 で あ り , 要 す る に , 登 記 と 印 鑑 証 明 は , 歴 史 的 に は 同 一 物 で あ る と こ ろ の 一体的な実質的審査制度だったのである。

一 方 , 上 記 ② 明 治 19年 公 証 人 規 則 で 企 図 さ れ た プ ラ ン が 首 尾 よ く 運 べ ば , 自 然 人 に 関 す る 戸 長 の 公 証 制 度 も , フ ラ ン ス と 同 様 , 公 証 人 に よ る 私 署 証 書 の 認 証 制 度 に 置 き 換 わ っ て い た こ と だ ろ う 。 し か し , 実 際 に は , 公 証 人 に 私 署 証 書 の 認 証 を 依 頼 す る 者 は 少 な く , 結 局 , 明 治 21 年 4月 25日法律第 1号「市制J「町村制Jによ

っ て 戸 長 役 場 の 事 務 は 市 町 村 に 引 き 継 が れ , や が て , 印 鑑 照 合 の 方 法 を 用 い た 契 約 の 実 質 的 審 査 と い う , 制 度 が 本 来 有 し て い た 機 能 を 喪 失 し て,現在の印鑑証明制度へと連なる。

「印鑑に関する証明書」「印鑑証明書』

上 記 の よ う な 沿 革 を 有 す る 現 在 の 印 鑑 証 明 制 度 の 問 題 点 に 関 し て , 論 ず る べ き 点 は 数 多 く 存 在 す る が , 以 下 で は , さ し あ た り , 冒 頭 で 触 れ た , 登 録 印 で あ る 旨 の 証 明 書 の 名 称 の 不 統 一 について述べておこう。

上 記 の よ う に , 不 登 令 で は も っ ぱ ら ① 「 印 鑑 に 関 す る 証 明 書Jの 用 語 が 使 用 さ れ , 不 登 準 則 で は も っ ぱ ら ② 「 印 鑑 証 明 書 」 の 用 語 が 使 用 さ れ , 不 登 規 則 で は ① ・ ② の 2通 り の 用 語 が 使 用

される。

① 「 印 鑑 に 関 す る 証 明 書 」 一 一 こ の 表 現 を 用 い る 法 令 は , 上 記 不 登 令 ・ 不 登 規 則 の ほ か , 自 動 車 登 録 令 16条 , 企 業 担 保 登 記 登 録 令 8条 2 項 2号・3項,企業担保登記規則 6条 2項など,

計 10法 令 が あ る 。 た だ し , 公 証 人 法 は , 不 登 規則と同様,①「印鑑又ハ署名ニ関スル証明書」

の 用 語 と , ② 「 印 鑑 証 明 書 」 の 用 語 の 両 方 を 使 用 し て お り ( ① に つ き 32条 2項・ 36条 6号,

②につき 28条 2項),地方公共団体の特定の事 務 の 郵 便 局 に お け る 取 扱 い に 関 す る 法 律 ( 平 成 13年 法 律 第 120号) 2条 5号は「印鑑に関する 証明書(以下この号において「印鑑登録証明書」

〔=後記③の用語法〕という。)Jとする。

② 「 印 鑑 証 明 書 」 一 一 こ の 用 語 を 用 い る 法 令 は,上記不登規則・不登準則・公証人法のほか,

登 録 免 許 税 法 施 行 規 則 2条の 2第 1項 1号(2) そ の 他 21法令である。

③ 「 印 鑑 登 録 証 明 書 」 一 一 こ の 用 語 を 用 い る 法 令 に は , 上 記 地 方 公 共 団 体 の 特 定 の 事 務 の 郵 便 局 に お け る 取 扱 い に 関 す る 法 律 の ほ か , 戸 籍 法 施 行 規 則 11条の 2第 2号 イ , 旅 券 法 施 行 規 則 2条 1項 2号イ,古物営業法施行規則 15条 3 項 1号 .4号 , 電 子 署 名 及 び 認 証 業 務 に 関 す る 法 律 施 行 規 則 5条1項 1号 な ど25法令がある。

の み な ら ず , 以 下 の よ う な 用 語 も 存 在 す る 。

④ 「 印 鑑 の 証 明 書 」 一 一 登 記 手 数 料 令 1条・

10条,商業登記法 12条・ 13条・ 52条・ 87条・

91条 , 限 定 責 任 信 託 登 記 規 則 3条 3項 な ど 13 法令が用いる用語である。

⑤ 「 印 鑑 証 明J一 一 土 地 区 画 整 理 法 施 行 規 則

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16条 2項 1号 は 「 借 地 権 申 告 書 に 署 名 し た 者 の 印 を 証 す る 印 鑑 証 明 」 を 添 付 「 図 書 」 と し て 要 求し, 23条 3項 1号 「 借 地 権 以 外 の 権 利 の 申 告 書 に 署 名 し た 者 の 印 を 証 す る 印 鑑 証 明 」 を 添 付

「 図 書 」 と し て 要 求 す る 。 こ の ほ か 都 市 再 開 発 法 施 行 規 則 1条の 3・24条 2項 , マ ン シ ョ ン の 建 替 え の 円 滑 化 等 に 関 す る 法 律 施 行 規 則 30条 2項 等 合 計 6法令の用いる表現である。

「証明を得た印鑑

J

以 上 の ほ か , 法 令 の 中 に は , 市 区 町 村 役 場 あ る い は 登 記 所 の 「 証 明 を 得 た 印 鑑 」 の 提 出 ・ 添 付を要求しているものもある。

た と え ば 鉱 業 登 録 令 57条(印鑑の添附) 1項 は 「 鉱 業 権 の 移 転 又 は 共 同 鉱 業 権 者 の 脱 退 の 登 録 の 申 請 を す る と き は , 第 14条 , 第 41条の 4 又 は 第 51条 の 規 定 に よ り 申 請 す る 場 合 及 び 国 又 は 地 方 公 共 団 体 が 登 録 義 務 者 で あ る 場 合 を 除 き , 申 請 書 に 市 町 村 長 又 は 区 長 の 証 明 を 得 た 登 録 義 務 者 の 印 鑑 ( 法 人 に あ っ て は , 法 人 の 登 記 に 関 し て 印 鑑 を 提 出 し た 登 記 所 の 証 明 を 得 た 代 表者の印鑑)を添附しなければならない。」旨を 規 定 し , 同 条 3項 は 「 鉱 業 権 の 放 棄 に よ る 消 滅 の 登 録 の 申 請 を す る と き は , 申 請 書 に 市 町 村 長 又 は 区 長 の 証 明 を 得 た 登 録 名 義 人 の 印 鑑 ( 法 人 に あ っ て は , 法 人 の 登 記 に 関 し て 印 鑑 を 提 出 し た 登 記 所 の 証 明 を 得 た 代 表 者 の 印 鑑 ) を 添 附 し なければならない。」旨を規定する。さらに,下 位 法 令 で あ る 鉱 業 登 録 令 施 行 規 則 8条の 3(印 鑑 証 明 の 有 効 期 限 ) も 「 鉱 業 登 録 令 第 57条 第 1 項 又 は 第 3項 の 規 定 に よ り 申 請 書 に 添 付 す べ き 市 町 村 長 若 し く は 区 長 又 は 登 記 所 の 証 明 を 得 た 印 鑑 は , そ の 証 明 の 日 か ら

3

月 以 内 に 到 達 し た ものに限るものとする。」と規定している。

こ こ に い う 「 印 鑑 」 と は , 印 頼 ( = 印 章 ( 無 体 物 た る デ ザ イ ン ) が 彫 刻 さ れ た 印 材 の こ と ) で は な く ( い う ま で も な い こ と だ が , 印 頼 そ の も の を 提 出 ・ 添 付 し て し ま う と , 業 務 に 差 し 支 える),印の鑑(かがみ)のことである。

そ も そ も 「 鑑 」 の 文 字 の う ち 「 監 」 の 部 位 は

「盤に水をはり,自分の顔容を映す意の字

J

で,

「もと水盤を用いたが,のち鏡鑑〔きょうかん〕

が 作 ら れ たJ(白川静『(新訂)字統』(平凡社,

2004年)「鑑J139頁)。つまり,ここにいう「鑑

〔=鏡〕」とは,およそ一般に実体を映し出すも の の こ と を い い , そ の 素 材 は , 水 鏡 で あ る と 金 属 鏡 ( 銅 鏡 な ど ) で あ る と ガ ラ ス 鏡 で あ る と を 問 わ な い 。 上 記 「 印 鑑 」 の 用 例 も , 同 様 に , 印 を 映 し た 鑑 ( 鏡 ) で あ っ て , そ の 素 材 は , 紙 で あ ろ う と ポ リ エ ス テ ル フ ィ ル ム で あ ろ う と 電 子 デ ー タ で あ ろ う と 関 係 が な い 。 も っ と も , 従 来 の 大 半 の 法 令 は , 印 の 「 鑑 」 の 素 材 と し て , 紙 であることを求めている。

な お , こ の 点 は , 印 鑑 証 明 制 度 を 構 成 す る 2 つの要素一一①印鑑の「登録」と②登録印の「証 明 」 一 ー の う ち , ① 「 登 録 」 手 続 に 関 し て も 同 様 で あ っ て , た と え ば 商 業 登 記 規 則 9条 ( 印 鑑 の提出等) 1項 柱 書 前 段 は 「 印 鑑 の 提 出 は , 当 該 印 鑑 を 明 ら か に し た 書 面 を も っ て し な け れ ば ならない。」旨を規定する。この書面は,旧商業 登 記 規 則 ( 昭 和 26年 法 務 府 令 第 112号 ) に お い て は 「 印 鑑 紙Jと呼ばれ(旧

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条 「 印 鑑 の 提 出 は , 附 録 第 13号 の 様 式 に よ り 作 成 し た 印 鑑 紙をもってするものとする。J),この「印鑑紙」

を編綴して「印鑑簿

J

が調製された(旧 9条「印 鑑 簿 の 調 製 の 様 式 及 び 印 鑑 紙 の 貼 附 の 方 法 等 は , 法 務 局 又 は 地 方 法 務 局 の 長 が 定 め る も の と す

る。」)。なお,法人の印鑑証明については,磁気 デ ィ ス ク 帳 簿 に 移 行 し た 際 ( 平 成 10年 法 務 省 令 第 29号 に よ る 第 15次改正),「印鑑簿」の用 語 が 「 印 鑑 フ ァ イ ル 」 に 置 き 換 え ら れ ( 登 記 に 関 し て , 磁 気 デ ィ ス ク 移 行 後 も 「 登 記 簿 」 の 用 語が残ったのと異なる),旧規則 9条 の 「 印 鑑 紙 」 の 用 語 も 消 失 し た が , し か し , 上 記 現 行 規 則 9条 が 規 定 す る よ う に , 登 録 の た め の 「 印 鑑 の 提 出 」 が 「 当 該 印 鑑 を 明 ら か に し た 書 面 」 に よって行われる点は,旧規則と同様である。

以上述べたように,「印鑑」の語は,そもそも は 印 を 映 し た 鑑 ( 鏡 ) の 意 で あ り , 上 記 鉱 業 登 録 令 そ の 他 の 法 令 に い う 「 証 明 を 得 た 印 鑑

J

と い う 用 語 法 も ま た , 結 論 的 に い え ば , 不 動 産 登 記 令 ・ 不 動 産 登 記 規 則 に い う 「 印 鑑 に 関 す る 証

明書」「印鑑証明書Jと,まったく同義というこ

とになる。

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直接証明方式・間接証明方式

と こ ろ で , 水 鑑 や 鏡 鑑 で 実 体 を 映 し 出 す 目 的 は , 身 繕 い ・ 化 粧 等 の た め で あ る が , 印 の 鑑 を 市 区 町 村 ・ 登 記 所 に 備 え 置 き , 登 録 さ れ た 印 の 鑑 を 当 事 者 に 交 付 す る 目 的 は , 一 定 の 文 書 ( た と え ば 登 記 申 請 書 ) の 押 印 と の 間 の 異 同 を 対 比 ・ 照 合 す る こ と に あ る 。 つ ま り , こ こ に い う

「印鑑」の用例は,「図鑑Jや「名鑑」の用伊!と 同 様 の も の で あ る ( 昆 虫 図 鑑 の 目 的 も , 捕 獲 し た昆虫との対比・照合にある)。

で は , あ ら か じ め 登 録 し た 印 章 と の 対 照 を 行 う 目 的 は ど こ に あ る か と い え ば , そ れ は , 江 戸 期 の 公 証 制 度 ( 名 主 加 判 の 制 ) に あ っ て は , 本 人 確 認 の み な ら ず , 人 ・ 物 ・ 意 思 の す べ て に 関 する有効性の実質的審査にあった。

一 方 , 審 査 の 方 法 に 関 し て , 江 戸 期 の 公 証 制 度 は , 上 述 し た よ う に , 当 事 者 が 押 印 し た 証 文 を 名 主 の と こ ろ に 持 ち 込 ん で , 名 主 が 手 許 に あ る 印 鑑 簿 と 直 接 対 比 ・ 照 合 し た う え , 相 違 な け れ ば 奥 書 押 印 を す る も の で あ っ た 。 こ の 印 鑑 証 明の方法を「直接証明方式」という。

と こ ろ が , 明 治 期 以 降 の 印 鑑 証 明 制 度 は , 審 査 の 対 象 に 関 し て , も っ ぱ ら 印 章 の 同 一 性 の み を 審 査 す る 制 度 へ と 形 骸 化 し た ( 一 方 , 明 治 19 年 旧 登 記 法 に よ っ て 導 入 さ れ た 登 記 制 度 に お い て も , 登 記 官 は 形 式 的 審 査 し か 行 わ な い も の と

さ れ た た め , 諸 外 国 と 比 較 し て , 登 記 が 実 体 関 係を反映する蓋然性が極端に低下した)。

の み な ら ず , 印 鑑 証 明 に 関 し て は , 第 2次 世 界 大 戦 後 の 昭 和 49年旧自治省(現・総務省)「印 鑑 登 録 証 明 事 務 処 理 要 領Jに よ っ て , 審 査 ・ 証 明 の 方 法 も ま た 大 き く 変 質 し た 。 そ れ ま で 文 書 の 押 印 を 市 区 町 村 役 場 ・ 登 記 所 が 直 接 審 査 ・ 証 明 し て き た 手 続 ( 直 接 証 明 方 式 ) を 改 め , 市 区 町村・登記所が交付した印鑑証明書を用いて,

提 出 部 署 ( た と え ば 登 記 官 ) の 側 が 文 書 の 押 印 を 照 合 ・ 審 査 す べ き も の と さ れ た の で あ る 。 こ の 現 行 の 印 鑑 証 明 の 方 法 を 「 間 接 証 明 方 式 」 と 呼 ん で い る が , こ こ に 至 っ て , 江 戸 期 以 来 の 公 証 制 度 の 有 し て い た 権 利 関 係 の 実 質 的 審 査 の 制 度趣旨は,見る影もなく消失した。

「印章

J「印影』「実印」

平 成 26年 10月 1日現在,日本には 8.034の 法 令 が あ る が , こ の う ち 「 印 鑑 」 の 語 が 登 場 す る法令は 132法令である。そして,その中には,

上 述 し た よ う な 印 の 鑑 ( 多 く は 紙 素 材 ) の 意 味 の ほ か に , 印 章 が 彫 刻 さ れ た 印 材 ( 印 頼 ) の 意 味 で 「 印 鑑 」 の 語 を 用 い る 法 令 も あ る 。 た と え ば 船 員 法 施 行 規 則 16条の 2(貯蓄金の管理)第 2項 2号 ハ は 船 舶 所 有 者 の 管 理 す べ き も の と し て 「 通 帳 , 印 鑑 等 」 を 挙 げ , マ ン シ ョ ン の 管 理 の 適 正 化 の 推 進 に 関 す る 法 律 施 行 規 則 87条(財 産の分別管理) 3項 2号・ 4項 は 「 管 理 組 合 等 の 印 鑑 , 預 貯 金 の 引 出 用 の カ ー ド そ の 他 こ れ ら に類するもの」の管理について規定する。

ちなみに,「印鑑」と同様,「印章」という用 語 ( こ の 語 を 用 い る 法 令 は 33法 令 あ る ) も ま た 多 義 的 で あ っ て , ① 無 体 物 た る 抽 象 的 な デ ザ インの意味のほか,②印鑑証明と同じ意味で「署 名 又 は 印 章 の 証 明 」 と い う 表 現 を 用 い る 法 令 も あ り ( 領 事 官 の 徴 収 す る 手 数 料 に 関 す る 政 令 1 条 1項 24号など),さらに,③有体物たる印頼 の 意 味 で 「 印 章 」 の 語 を 用 い る 法 令 も あ る ( 割 賦 販 売 法 施 行 令 別 表 第 一 ( 第 1条関係) 13号, 商 標 法 施 行 規 則 別 表 ( 第 6条 関 係 ) 第 16類 8 号「文房具類」(四)など)。

以上のほか,法令の中には,「印鑑〔印章〕J

の届出ではなく,「印章の印影」の届出を要求す る も の も あ る ( 中 小 企 業 退 職 金 共 済 法 施 行 規 則 74条 1項 5号・ 104条 2項など)。「印影」の語 を 用 い る 法 令 も 33法 令 を 数 え る が , 多 く の 法 令では,「印章」は「署名」の対概念,「印影」

は「筆跡」の対概念として用いられる。

そ の 他 , 一 般 に は , 印 鑑 登 録 の さ れ た 印 章 の こ と を 「 実 印Jと 呼 ん で い る が , し か し , こ の 語 を 用 い る 法 令 ( 国 税 徴 収 法 と 民 事 執 行 法 の 2 法 律 の み で あ る ) は , い ず れ も 「 実 印 そ の 他 の 印 で 職 業 又 は 生 活 に 欠 く こ と が で き な い も の 」 を 差 押 禁 止 財 産 ・ 差 押 禁 止 動 産 と す る も の ( 国 税 徴 収 法 75条 1項 6号 ・ 民 事 執 行 法 131条 7 号 ) 一 ー す な わ ち 有 体 動 産 で あ る 「 印 頼 」 の 意 味で「実印」の語を用いるものである。

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