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学 位 の 種 類 博士(歯学)

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Academic year: 2021

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ふ り が な

氏 名

いまたき りえ

今瀧 梨江

学 位 の 種 類 博士(歯学)

学 位 記 番 号 甲 第 858 号 学 位 授 与 の 日 付 令和 2 年 3 月 6 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項に該当

学 位 論 文 題 目 Mechanical and Functional Properties of a Novel Apatite-Ionomer Cement for Prevention and Remineralization of Dental Caries

(新規アパタイトアイオノマーセメントの齲蝕予防と再石灰 化に対する機械的および機能的特性)

学 位 論 文 掲 載 誌 Materials 第 23 巻 第 12 号 令和元年 12 月 2 日

論 文 調 査 委 員 主 査 有田 憲司 教授 副 査 三宅 達郎 教授 副 査 橋本 典也 教授

論文内容要旨

アパタイトアイオノマーセメント(AIC)は,従来型グラスアイオノマーセメント(GIC)にハイドロ キシアパタイト(HAp)を含有して開発した高強度・高機能を有する新規齲蝕予防・治療材料である。

これまでに,AIC は曲げ強さや各種イオン溶出量が GIC よりも優れていることを報告してきたが,いま だ AIC の特性や機能に関して不明な点が多く残されている。今回,AIC 中での HAp が担う役割を解明す ることを目的とし,粉および添加物の配合条件の違いが機械的および機能的特性に及ぼす影響につい て検討を行った。

材料は,対照群および実験群の基材として小窩裂溝予防填塞用従来型 GIC,FujiⅢ(ジーシー)を使 用した。対照群として粉液比を 0.9 または 1.2 とした GIC-0.9 群および GIC-1.2 群とした。一方,実 験群は,FujiⅢ粉末 0.76g または 1.00g に平均粒径 20µm の多孔質球形 HAp(太平化学産業,以下,HApS)

をそれぞれ 0.24g添加し,AIC 中の FujiⅢの粉液比(ⅢP/L)を 0.9 または 1.2 となるようにし,AIC- 0.9 群および AIC-1.2 群とした。すべての群は FujiⅢ液 0.83gで練和してセメント泥とし,各種試験 用モールドに填入して試料を作製した。1)機械的特性として,3 点曲げ強さ,圧縮強さおよび破壊靭 性を測定した。また,2)機能的特性としてフッ化物イオン溶出量,崩壊率,牛歯エナメル質に対する 接着強さ,セメント表面の pH 変動および酸緩衝能を測定した。なお,統計分析は t -test を用いて有 意水準 5%で検定を行った。

1)機械的特性に関する結果は,3 点曲げ強さ,圧縮強さおよび破壊靭性値は,ⅢP/L が同じ群間(GIC-

0.9 と AIC-0.9, GIC-1.2 と AIC-1.2)において,AIC 群の方が GIC 群よりも有意に高い値を示した。

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2)機能的特性に関する結果としては,フッ化物イオン溶出量および崩壊率については,AIC-0.9 は総 粉液比が等しい GIC-1.2 に比べて有意に高い値を示したが,ⅢP/L が同じ群間における有意差は認め なかった。牛歯エナメル質に対する接着強さについては,24 時間後および 1 か月後においては GIC 群 と AIC 群との間に有意差を認めなかったが,3 か月保存した結果,AIC-0.9 群は GIC-0.9 群よりも有意 に高い接着強さを示した。また,セメント表面の pH 変動に関しては,練和後 1 週間までの試料表面 pH は,GIC,AIC 群共にⅢP/L が小さい群(-0.9)の方が大きい群(-1.2)よりも低く,AIC 群よりも GIC 群の方が pH が高い傾向を認めたが,2 週間以降は,AIC 各群で試料表面 pH の上昇が顕著にみられ,3 週間以降はⅢP/L が同じ GIC および AIC 群間において AIC 試料表面の有意に高い値を示した。さらに,

AIC 群は GIC 群よりも乳酸溶液の pH を速やかに有意に上昇させることが示された。

以上の結果から,1)機械的特性について:AIC 中の HAp は,セメント内に微細粒子として分散し,

かつ GIC の硬化反応に参加してマトリックスを強化することにより,強度の向上だけでなく,靭性(粘 り強さ)も向上することが示唆された。また,AIC は,長期保存後においてエナメル質への接着強さが GIC よりも有意に強くなったことから,HAp に含まれるカルシウムの溶出が歯質との接着の向上に影響 していると考えられた。2)機能的特性について:フッ化物イオン溶出能と崩壊率は,基材の粉液比に 依存し,HAp の影響は生じないことが明らかとなった。また,HAp は硬化反応時にマトリックスに Ca イ オンを溶出し,AIC マトリックス中のセメント表面 pH の動向や酸緩衝能の向上に影響を及ぼしている ことが示唆された。

論文審査結果要旨

本論文は,従来型グラスアイオノマーセメント(GIC)にハイドロキシアパタイト(HAp)を含有して 開発されたアパタイトアイオノマーセメント(AIC)に関する研究で,AIC のこれまで未解明であった 新たな特性と,HAp が GIC の強度と機能を向上させるメカニズムとを解明することを目的としている。

材料には,市販の小窩裂溝予防填塞用従来型 GIC,FujiⅢを使用し,粉および HAp の配合条件の違い が機械的および機能的特性に及ぼす影響について検討を行っている。本研究の特色は,対照群(GIC 群)

と実験群(AIC 群)をそれぞれ 2 群ずつ設定し,①総粉液比(粉末(FujiⅢ粉末と HAp)量:FujiⅢ液 量)を等しくした場合と②FujiⅢ粉液比(ⅢP/L;FujiⅢ粉末量:FujiⅢ液量)を等しくした場合に分 けて比較を行ったことであり,1)機械的特性として,3 点曲げ強さ,圧縮強さおよび破壊靭性,2)機 能的特性としてフッ化物イオン溶出量,崩壊率,牛歯エナメル質に対する接着強さ,セメント表面の pH 変動および酸緩衝能に関して比較・検討を行っている。

その結果,1)機械的特性に関しては,3 点曲げ強さ,圧縮強さおよび破壊靭性値は,ⅢP/L が同じ群 間において,AIC 群の方が GIC 群よりも有意に高い値を示した。2)機能的特性に関しては,AIC 群の フッ化物イオン溶出量および崩壊率については,総粉液比が等しい GIC 群の値に比べて有意に高い値 を示したが,ⅢP/L が同じ AIC 群と GIC 群との間における有意差は認めなかった。牛歯エナメル質に対 する接着強さについては,24 時間後および 1 か月後においては GIC 群と AIC 群との間に有意差を認め なかったが,3 か月保存した結果,AIC 群の接着強さはⅢP/L が同じ GIC 群よりも有意に高い値を示し た。また,セメント表面の pH 変動に関しては,練和後 1 週間までの試料表面 pH は,GIC,AIC 群共に

ⅢP/L が小さい群の方が大きい群よりも低く,AIC 群よりも GIC 群の方が試料表面の pH が高い傾向を

認めたが,2 週間以降は,AIC 各群で試料表面 pH の上昇が顕著にみられ,3 週間以降はⅢP/L が同じ GIC

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および AIC 群間において AIC 試料表面の有意に高い値を示した。さらに,AIC 群は GIC 群よりも乳酸溶 液の pH を速やかに有意に上昇させることが示された。

これらの結果によって,1)機械的特性に関して,AIC 中の HAp は,セメント内に微細粒子として分 散し,かつ GIC の硬化反応に参加してマトリックスを強化することにより,強度の向上だけでなく,

靭性(粘り強さ)も向上すること,また,AIC は長期保存後にエナメル質への接着強さが有意に強くな ることを示し,さらに機械的特性の向上には HAp に含まれる Ca の溶出が関与することを明らかにして いる。2)機能的特性に関して,フッ化物イオン溶出能と崩壊率は,基材の粉液比に依存し,HAp の影 響は生じないことを示し,HAp は硬化反応時にマトリックスへ Ca イオンを溶出することによって GIC 表面の pH 動向に影響与え、酸緩衝能を向上させることを明らかにしている。

以上,AIC の新たな特性と HAp が GIC の機械的および機能的特性の向上させるメカニズムとを解明

した点において,本論文は博士(歯学)の学位を授与するに値すると判定した。

参照

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