The Global Status of CCS: 2011
世界の CCS の動向: 2011 年
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The Global Status of CCS: 2011
世界の CCS の動向: 2011 年
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「世界の CCS の動向: 2011 年」は、利用者の便宜のために―The Global Status of Carbon Capture and Storage:2011‖を英語から日本語に翻訳したものです。グローバル CCS インスティテュー トは日本語版のいかなる内容についてもその正確性、信頼性又は完全性について保証しま せん。
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iii 目次 序文 ... vi 略語 ... vii 要旨 ... x 1 序章 ... 2 1.1 本報告書のスコープ ... 2 1.2 CO2 排出削減における CCS の役割 ... 3 1.3 CCS とは何か ... 6 2 プロジェクト ... 10 2.1 重要プロジェクトの開発 ... 11 2.2 プロジェクトの詳細 ... 20 3 技術 ... 47 3.1 回収 ... 47 3.2 輸送 ... 66 3.3 貯留及び利用 ... 77 3.4 技術コスト及び課題 ... 93 4 政策、法律及び利害関係者に関する課題 ... 101 4.1 政策、法律及び規制の状況 ... 102 4.2 資金援助の状況 ... 128 4.3 市民関与... 137 5 CCS に関するビジネス事例の構築 ... 144 付属資料 付属資料A データ分析プロセス総説 ... 152 付属資料B プロジェクトライフサイクルモデル ... 154 付属資料C 大規模統合プロジェクト ... 157 付属資料D 2010 年動向報告書以降のプロジェクトの変更(移行)に関する照合 ... 170 付属資料E 政策状況 ... 173 付属資料F 市民関与の質に関する要因 ... 195 参考資料 ... 197
iv 表 表1 「操業」及び「実施」段階にある LSIP ... 15 表2 NER300 のため欧州委員会へ提出された CCS プロジェクト申請 ... 28 表3 地域別、技術別及び産業別 LSIP ... 41 表4 技術成熟度(TRL) ... 49 表5 CCS 実証プロジェクト(2.5Mtpa)の輸送コスト推定... 77 表6 大規模ネットワーク(20Mtpa)の輸送コスト推定 ... 77 表7 ZEP による貯留コスト推定 ... 83 表8 最近完了した CCS 設計コスト研究の要約 ... 96 表9 ZEP による CCS コスト推定 ... 97 表10 各国の排出削減目標の状況 ... 104 表11 各国の国際的グループ分類 ... 116 表12 CCS 政策の状況 ... 117 表13 政策上の質問に対するプロジェクト調査回答 ... 126 表14 法規制に関する質問に対するプロジェクト調査回答 ... 126 表15 市民関与に関する資料 ... 140 表16 操業中又は建設中の LSIP の重要な特徴 ... 146 表17 新設 CCS 実証発電プロジェクトと従来の発電プロジェクトのリスク比較 ... 148 表C‑1 2011 年大規模統合 CCS プロジェクト ... 158 表D‑1 2010 年動向報告書との LSIP 照合 ... 170 表E‑1 ハイレベルの政策、法律及び規制における課題に関する質問への各プロジェク トの回答 ... 192 図 図1 世界の CO2大気中濃度及び気温 ... 3 図2 世界の CO2排出量及びGHG 排出削減量 ... 4 図3 発電部門の技術による CO2の削減コスト ... 6 図4 CO2の地層貯留の選択肢 ... 8 図5 プロジェクトライフサイクル別及び地域/国別 LSIP ... 11 図6 プロジェクトライフサイクル別及び年別 LSIP ... 12 図7 「精査」及び「評価」段階にある LSIP の最終投資判断タイミング ... 13 図8 2010~2011 年における LSIP の変化... 18 図9 地域別及び年別 LSIP ... 20 図10 地域別又は国別の潜在的 CO2貯留量 ... 21 図11 産業別 LSIP 世界地図 ... 22 図12 北米の産業別 LSIP 地図 ... 25
v 図13 欧州の産業別 LSIP 地図 ... 27 図14 産業部門別及び年別の LSIP ... 34 図15 産業部門別及び年別の CO2回収量 ... 35 図16 回収タイプ別及び回収プロジェクトライフサイクル段階別の CO2回収量 ... 36 図17 回収タイプ別及び地域別 LSIP ... 37 図18 貯留タイプ別及び地域別 CO2 量 ... 38 図 19 回収のプロジェクトライフサイクルと EOR 及び深部塩水層貯留又は枯渇油ガ ス田貯留の進捗状況の比較 ... 40 図20 Gorgon CO2圧縮機列の配置 ... 44 図21 石炭火力発電所からの CO2回収の技術選択肢 ... 48 図22 回収技術に関する TRL の要約 ... 50 図23 回収技術の LSIP への適用状況 ... 51 図24 発電における典型的な燃焼後回収プロセス ... 52 図25 燃焼後回収の TRL 順位 ... 53 図26 燃焼後回収技術の予測性能 ... 54 図27 燃焼前回収の構成要素の TRL ... 56 図28 CO2回収に起因するエネルギー損失を回復するためのIGCC 開発 ... 57 図29 酸素燃焼の構成要素に関する TRL ... 59 図30 CO2回収に起因するエネルギー損失を回復させるための酸素燃焼の開発 ... 61 図31 回収技術に関する CO2削減コスト ... 64 図32 北米における既存及び計画中の CO2パイプライン ... 68 図33 欧州 CO2輸送回廊及び輸送量、CO2Europipe の 2050 年参考シナリオ ... 70 図34 カナダ西部における CCS の可能性 ... 73 図35 CO2輸送船:船舶による直接海底圧入システムの構成例 ... 76 図36 国家レベルでの貯留絞り込み評価の現状 ... 78 図37 ブラジルの堆積盆地 ... 79 図38 貯留プロジェクトに関するリスクプロファイルの概略図 ... 88 図39 CO2利用技術、供給濃度及び恒久性 ... 92 図40 政策状況の範囲 ... 102 図41 UNFCCC、CEM 及び G8 間の関連 ... 110 図42 CCS 政策指数 ... 113 図43 国別 CCS 実証に対する公的資金による支援の関与 ... 129 図44 大規模 CCS 実証プロジェクトに対して約束された公的資金 ... 132 図45 大規模プロジェクトに対する公的資金 ... 134 図B‑1 プロジェクトライフサイクルモデル ... 154
vi
序文
2009 年以降、グローバル CCS インスティテュートは、二酸化炭素(CO2)回収貯留プロジェ クト及びその技術の開発状況並びにこれらの技術の大規模な実証を促進するための各国政 府による活動状況に関する包括的かつ世界的な概観を示すことを目的とする一連の報告書 を作成してきている。 本報告書はそれらの最新版であり、2011 年 8 月までの開発状況を網羅している。また、 世界の主要な CCS プロジェクトの主導的な提案者が回答した、当インスティテュートの年 次プロジェクト調査の結果に依拠している。なお、この調査結果は、対象とした多くのプ ロジェクトの要員への聞き取り調査と、当インスティテュートのスタッフによる調査で補 完している。 調査のためのアンケートへの回答及び聞き取り調査に参加していただいたプロジェクト 提案者各位のお力添えに特に感謝の意を表する。さらに、非常に大きな協力をしていただ いたことにも感謝申し上げたい。 本報告書の作成には Edlyn Gurney 率いる当インスティテュートの多くのスタッフが各節 の執筆又は文書の評価に貢献した。回収技術、政策的側面及び法規制の策定に関する各節 の内容に関しては、それらの節において詳述されるとおり、本報告書の作成を目的として 特別に委託した他の組織による研究結果にも依拠している。また、本報告書の草稿に際し、 外部の評価者各位から数多くの参考となる御意見をいただいたことにも感謝する次第であ る。vii
略語
用語 原文 説明
AGR Acid gas removal 酸性ガス除去 ASU Air separation unit 空気分離装置 AWG Ad-Hoc Working Group 特別作業部会
CCEP Climate Change and Energy Package 気候変動・エネルギー政策パッケージ CCS Carbon capture and storage CO2回収貯留
CCS-R CCS Ready CCS レディ
CDM Clean Development Mechanism クリーン開発メカニズム CEM Clean Energy Ministerial クリーンエネルギー大臣会合 CER Certified emission reduction unit 認証排出削減量
CMP Conference of the Major Parties 京都議定書締約国会議
CO2 Carbon dioxide 二酸化炭素
CO2-e CO2 equivalent CO2換算
CO2CRC Cooperative Research Centre for Greenhouse Gas Technologies
温室効果ガス技術共同研究センター
COP Conference of Parties 締約国会議 CPU CO2 purification unit CO2精製装置
CSLF Carbon Sequestration Leadership Forum 炭素隔離リーダーシップフォーラム
CTL Coal-to-liquids 石炭液化
EB CDM Executive Board CDM 理事会 EC European Commission 欧州委員会 EEPR European Energy Programme for
Recovery
回復のための欧州エネルギープログ ラム
EIB European Investment Bank 欧州投資銀行 EOR Enhanced oil recovery 石油増進回収 EPA Environmental Protection Agency 環境保護庁
EPRI Electric Power Research Institute 米国電力中央研究所 ETS Emission trading scheme 排出量取引制度
EU European Union 欧州連合
FGD Flue gas desulphurization 排ガス脱硫 FID Final investment decision 最終投資判断
viii
用語 原文 説明
IEA International Energy Agency 国際エネルギー機関
IEAGHG IEA Greenhouse Gas R&D Programme IEA 温室効果ガス研究開発プログラム IGCC Integrated gasification combined cycle 石炭ガス化複合発電
IPCC Intergovernmental Panel on Climate Change
気候変動に関する政府間パネル
kW Kilowatt キロワット
km Kilometre キロメートル
LSIP Large-scale integrated project 大規模統合プロジェクト MENA Middle East and North Africa 中東・北アフリカ METI Ministry of Economy, Trade and Industry 経済産業省 MMV Monitoring, measurement and verification 監視・測定・検証 Mtpa Million tonnes per annum; million tonnes
a year
100 万トン/年
MW Megawatt メガワット
MWe Megawatts electrical capacity or output 電気容量又は電気出力メガワット MWth Megawatt thermal 熱出力メガワット
NDRC National Development and Reform Commission
国家発展改革委員会
NER New Entrants‘ Reserve 新規参入者用排出枞 NGO Non-government organisation 非政府組織
NOx Nitrogen oxides 窒素酸化物
OECD Organisation for Economic Cooperation and Development
経済協力開発機構
PCC Post-combustion capture 燃焼後回収
psia Pound-force per square inch absolute ポンド/平方インチ(絶対圧) ppm Parts per million 百万分率
R&D Research and development 研究開発 SACCCS South African Centre for Carbon Capture
and Storage
单アフリカ CO2回収貯留センター
SBSTA Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice
科学及び技術の助言に関する補助機 関
SCR Selective catalytic reduction 選択触媒還元 SNG Synthetic natural gas 合成天然ガス SO2 Sulphur dioxide 二酸化硫黄
ix
用語 原文 説明
SOx Sulphur oxides 硫黄酸化物
TRL Technology readiness level 技術成熟度 UNFCCC United Nations Framework Convention
on Climate Change
気候変動に関する国際連合枞組条約
UNIDO United Nations Industrial Development Organization
国際連合工業開発機関
ZEP European Technology Platform for Zero Emission Fossil Fuel Power Plants
欧州ゼロエミッション化石燃料発電 技術プラットフォーム
x
要旨
二酸化炭素(CO2)回収貯留(CCS)は、地球規模の温室効果ガス排出量の削減に不可欠な役割
を果たす。国際連合気候変動に関する政府間パネル(United Nations Intergovernmental Panel on Climate Change)による勧告に従い、2050 年までに予想される気温上昇を 2℃に抑えるレベル で大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるためには、低炭素技術のポートフォリオの一 部として CCS が必要となる。 CCS 業界にとっての具体的な課題は、一連のチェーン(すなわち、大規模な点排出源から の CO2回収、CO2圧縮、適切な貯留サイトへの輸送及び圧入又は恒久的な排出量削減に結 びつく利用)を商用規模で実証することである。
進捗状況
2011 年、CCS 産業は着実な進展をみせ、現在操業中又は建設中の大規模統合プロジェク ト(LSIP)の件数が増加し、さらには、開発計画が進んだ段階にあるプロジェクトも多数存在 している。 現在、世界で 8 件の大規模プロジェクトが操業中であり、更に 6 件が建設中である。これ らのプロジェクトのうち 3 件は最近建設を開始した。さらに、これらのプロジェクトには 二番目の発電プロジェクトであるカナダの Boundary Dam 及び深部塩水層内に CO2を貯留す る米国初のプロジェクトとなるイリノイ州産業向け CO2 回収隔離(ICCS)プロジェクトが含 まれている。 現在操業中又は建設中の全 14 件のプロジェクトの CO2貯留容量の合計は年間 3,300 万ト ンを超える。この貯留容量は、毎年 600 万台を超える自動車からの排ガスを大気中へ排出 するのを防止することにほぼ相当する。 当インスティテュートによる 2010 年の年次プロジェクト調査では、10 件のプロジェクト が今後 12 ヶ月以内に最終投資判断を行い、建設に移行すべきかどうかを決定する状況とな る可能性があると報告している。これらのプロジェクト群では発電プロジェクトが目立っ ており、これにはカナダの Project Pioneer、米国のテキサス・クリーン・エネルギー(Texas Clean Energy)プロジェクト及び欧州の ROAD プロジェクトが含まれている。多くの発電プロジェクトが来年にも最終投資判断に移行する見込みであることは前向き な展開であるが、これは、大規模なプロジェクトの計画が不足している鉄鋼やセメントな どの他の大規模排出産業とは対照的である。 本報告書では合計 74 件の LSIP が記載されているが、「世界の CCS の動向:2010 年(Global Status of CCS: 2010)」報告書では 77 件であった。これらの CCS プロジェクトは継続して北 米、欧州、豪州及び中国に集中しており、発展途上国での大規模プロジェクトの計画はほ
xi とんどない状態である。最終的に発展途上国が CCS を展開できるようにするためには、先 進国における実証プロジェクトから得られた教訓を発展途上国に伝えること、そして人材 開発活動及びカスタマイズされたプロジェクト支援に着手することが極めて重要である。
プロジェクトの成功に影響を与える要素
ほとんどの産業プロジェクトと同様に、CCS 実証プロジェクトのための有効なビジネス事 例を構築することは複雑かつ時間のかかるプロセスであり、最終投資判断の前にプロジェ クトの経済的要素とリスクの両方を理解することが必要である。 現在操業中のすべてのプロジェクトは、既に確立された工業プロセスの一部として CO2 分離技術を採用しており、さらに、石油増進回収(EOR)を通じた収益創出のための CO2の利 用及び/又は過去の資源探査により得られた情報と既存の地質情報に基づくより低コストな 貯留サイトの利用を行っている。操業中の 8 件のプロジェクトのうち、6 件は天然ガス精製 におけるもので、他の 2 件は合成燃料生産及び肥料生産におけるものである。さらに、こ れらのプロジェクトのうち 5 件で EOR を用いている。 現在操業中又は建設中の多くのプロジェクトは、より長期の気候変動政策及び/若しくは 将来見込まれるカーボンオフセット市場に対応するため又はこれらを見込んで、CCS に着 手している。これは明るい兆しである一方で、特にプロジェクトが EOR やその他いずれの 収益源も利用できない場合又は CO2回収が工業プロセスの一部として未だ確立されていな い場合には、ビジネス事例を開発するのは困難となる。 当インスティテュートの 2010 年報告書発行以降、11 件の LSIP が保留又は中止になった と考えられ、そのうち 8 件が米国、3 件が欧州のプロジェクトであった。プロジェクトを保 留又は中止した理由には、現行の形態及び政策環境では不経済であるとみなされたことが 最も多く挙げられた。プロジェクト提案者にとり、プロジェクト開発を次の段階まで継続 する資金援助の欠如並びに CO2削減政策及び規制への不確実性が、投資の優先順位を CCS ポートフォリオ内に置くか代替技術へ置くかを判断する重要な要素となっていた。 以上のことは、CCS を実証し展開するためには、炭素価格というシグナルを含む、実質的 でタイムリーかつ安定した政策支援が必要となることを明確に示している。そのような支 援は、産業界が継続的に物事を前に進め、CCS への投資を行う際の確信を与えることにな る。そして、この投資は、最終的に資本コスト及び操業費を低減するのに役立つ、継続的 な革新を保証することになるであろう。 政府及び民間部門は共に、CCS の実証が進展し、関連する教訓及び利益が実現するよう、 ビジネス事例における課題を解決し、その透明性を高める上での役割を有する。xii
発電部門における CCS
発電部門におけるプロジェクトは、回収技術のスケールアップと、参考にするべき適用事 例がないという点で、多大な追加的コストとリスクを有する。気候変動政策及び炭素価格 制度が既に制定されている場合でも、電力市場はこうしたコストとリスクに対応していな いのが現状である。CCS に関する主なコストは、技術の適用に伴うエネルギー損失や所内 動力の増加である。このため、発電所(及びその他の産業応用)に適用される燃焼前回収、燃 焼後回収及び酸素燃焼による CO2回収において、このコストを低減させる研究に大きな重 点が置かれるようになってきている。 こうした課題があるにもかかわらず、燃焼後回収プロジェクト(カナダの Boundary Dam) 及び石炭ガス化複合発電(IGCC)プロジェクト(Kemper County)の建設が進行している。これ は、追加的コストをレートベースに含めることの容認及びその他のインセンティブなどの 他の条件が適切であれば、これら技術の適用に関するリスクは管理可能であり、技術的障 害も克服不可能ではないことを示している。両プロジェクトは政府からの支持を受けてお り、さらに、EOR 向けに CO2を売却する予定である。すなわち、別の収益源を確保するこ とになる。また、これらのプロジェクトでは、排ガス流からの CO2回収率を比較的低くする(Kemper County の場合)こと又は比較的小規模な発電装置から CO2を回収する(Boundary
Dam の場合)ことによってプロジェクト設計上のいくつかのリスク緩和要素を実証する予定 である。 上述の実証プロジェクト及びその他計画中のプロジェクトを、実際の電力卸売市場が存在 する中で、十分な貯留容量を確保した統合的な CCS として商用規模で成功させることは、 将来 CCS を広範に展開する確証と指標を提供する上で非常に重要である。
回収、輸送及び貯留における課題
天然ガス精製、合成燃料生産及び肥料生産産業で 8 件の CCS プロジェクトが操業してい ることは、これらの用途で回収技術が既に確立されていることを立証している。上述のと おり、発電部門では建設に移行中のプロジェクトが存在するが、適用可能な種々の回収技 術を実証するためには更に多くのプロジェクトが必要である。鉄鋼部門における回収技術 の実証に関する最近の発展は限定的である。セメント部門での回収技術は依然として初期 の段階にある。両産業とも CO2の主要な排出源であり、更なる発展が期待かつ要求される。 パイプラインによる CO2輸送は既に実証済みで整備された技術であるが、将来的に必要と なる CO2 輸送の規模に対応するためには強力な投資支援が必要となる。パイプラインは費 用対効果の高い解決策として期待される。一方で、長距離の輸送や、ある特定の状況下で は、船舶輸送が価格競争力を有する可能性がある。船舶輸送は多数の CO2排出源及び吸収 源(シンク)に対応する柔軟性も備えている。輸送インフラの共有によりスケール・メリットxiii を格段に高めることが可能である。しかし、初期のプロジェクトにとってネットワークの 整備は大きなリスクをもたらす可能性のある大規模投資となる。各国政府が実証のために インセンティブを提供する際には、特にこれらのリスクについて理解しておく必要がある。 現在操業中のプロジェクトは深部塩水層及び EOR の両方で CO2の貯留を実証しており、 これは、有効な貯留は実現可能であることを示している。貯留に関する今後の課題は、圧 入量の増大、サイトごとの経験の蓄積及び効果的で適切な規制環境下での貯留の測定・監 視・検証の設計と手法の継続的な改良である。 プロジェクト提案者からの情報によると、貯留の評価と特性把握には多大な投資が必要で あり、さらに、未開発の貯留サイトの場合、当該サイトの既存の地質情報によっては 5~10 年又はそれ以上の長期のリードタイムを要する可能性がある。政策立案者は、これらのリ ードタイムをプロジェクト進捗状況評価の中に組み入れる必要がある。また、積極的な貯 留評価をまだ開始していないプロジェクトは、2020 年までの操業が困難となる可能性があ る。 貯留と同様に、市民関与は状況及びサイトごとに特有のものであり、プロジェクトの全側 面(見込みの及び潜在的な影響と利益を含む)に地域レベルで対処しなければならない。プロ ジェクト提案者は、潜在的な課題を特定及び緩和するため、市民関与手法の見直しを継続 的に行う必要がある。
政策及び法律関連の展開
新規かつ大規模に行われる CCS は実証段階にあり、相当な政策上及び資金上の支援が必 要である。各国政府は商業展開に向けたこうした初期の移行段階を支援するため、強力か つ首尾一貫した持続的な政策シグナル(インセンティブ、法律及び規制枞組を含む)を送り続 けるべきである。政策の不確実性はプロジェクトの開発にとって大きなリスクであると認 識しているプロジェクト提案者もいる。特に、各国政府が実現を伴わない政策意図を表明 した場合にこの不確実性が懸念される。 昨年も CCS に関する法整備が継続しており、いくつかの国・地域では法的枞組が完成し、 二次的な規則及び手引きの施行を開始している。CCS プロジェクトがグローバルに展開す る上で、国レベルでの効果的な規制制度が重要な役割を果たすことになる。こうした尽力 にもかかわらず、プロジェクト提案者は、場合によっては依然として適切に取り組むべき 多くの課題を認識しており、これには規制の不完全性又は遅延が含まれている。いくつか の国・地域では、規制当局及び政策立案者が、このような課題に取り組むための多くの提 案、改正及び見直しを実施している。これらの活動がプロジェクトの懸念事項に十分に対 応できるかどうかは、今後の重要な検討事項である。 CCS に関する法律及び規則制定を主導しているとされる多くの国・地域は、その役割を継 続している。昨年は、いくつかの欧州連合加盟国、豪州、米国及びカナダのいずれもが自xiv 国の法整備継続的に実施しており、多くの新たな法案、法律、規則及びイニシアチブを実 現している。効果的な規制の重要性は、CCS 関連法令の立法国の第二世代となる多くの国々 によって認識されている。その一例が韓国である。これらの国々の多くは依然として法律 の制定又は規制枞組の設計を完了していないが、その展開を促進するための重要な措置が 講じられつつあることは明確である。この点は、CCS を将来の気候変動緩和戦略に組み入 れることに熱心ないくつかの発展途上国において特に顕著である。 今 年 は 、单 アフ リ カのダ ー バ ンで 開催 さ れる気 候 変 動に 関す る 国際連 合 枞 組条 約 (UNFCCC)第 17 回締約国会議(COP17)において、CCS の制度を規定する、将来の UNFCCC の仕組みに基づく国際的枞組み及び/又は各国政府の政策策定における採択に基づく国際的 枞組みが確立される可能性がある。クリーン開発メカニズム(CDM)又は京都議定書の第一約 束期間(2008~2012 年)後における将来の仕組みに CCS を含めることは、発展途上国での将 来的な CCS の実証に特に重要である。 大規模な CCS 実証プロジェクトへの政府の資金援助には、2011 年も引き続きほとんど変 化は見られなかった。各国政府は総額約 235 億米ドルを提供している。各国政府は、プロ ジェクトを財政的に実現可能にするために必要な「ギャップ」を測定し融資する、競争的 資金プログラムを幅広く採用している。この手法は欧州連合の NER300 プログラムにも採 用され、65 件の革新的な再生可能エネルギープロジェクトとともに、13 件の CCS プロジェ クトが、2012 年後半に予定される資金配分の対象として次段階に進む基準を満たしている と判断された。 短期的には、政府の政策及び融資レベルが実証プロジェクトの進行速度及び全体的な実現 可能性に多大な影響を与えることになる。これらを効果的に実施するためには、先行 CCS プロジェクトを確立する上での複雑な課題に対処し、政府と産業界が継続して協力するこ とが必要である。長期的には、CCS 実証プロジェクトによる価値は、将来の CCS 利用を下 支えする持続的で前向きな気候変動政策と炭素価格に係る政策シグナルによってのみ実 現・支援される。
1
1 序章
1.1 本報告書のスコープ ... 2
1.2 CO
2排出削減における CCS の役割 ... 3
1.3 CCS とは何か ... 6
2
1 序章
1.1
本報告書のスコープ
化石燃料の生産又は使用による二酸化炭素(CO2)の大気中への排出を防止又は最小化する 技術は、温室効果ガス(GHG)の排出を制限する総合的な努力において主要な役割を果たす可 能性がある。CO2 回収貯留(CCS)技術の研究開発(R&D)に対して多大な努力が投入されてお り、世界中で各国政府が大規模な CCS 技術の実証を援助するための資金提供を確約してい る。このような大規模な実証は、幅広い技術に及び、かつ、異なる操業環境が含まれてお り、CCS の商業的利用に必要な先行事例となる。 本報告書は、CCS 技術の大規模な実証を目指すプロジェクトの現状を、世界的な規模で総 説することを目的としている。そのため、大規模実証に向けた努力過程でのギャップに加 え、様々な産業及び国々でのプロジェクトの拡大について詳述している。 現在、様々な技術が開発されており、CCS チェーンの各段階(回収、輸送及び貯留若しく は利用)において実証を行うことが計画されている。これらの様々な技術の現在の開発動向 についてもとりまとめ、今後の研究又は実証努力のための優先順位を示している。 CCS の実証は、技術だけでなく適切な資金提供及び政府によるその他の支援、CCS のた めのビジネス事例を構築する上での資金的及び商業的な考慮事項、社会的受容性、大規模 で長期的な投資に結びつく政策、法律及び規制の環境にも左右される。そのため、これら の要素もすべて網羅している。 本報告書では、CCS 技術の動向及びその根底にある政策環境と事業環境に関する今回の総 説に基づき、CCS が CO2削減目標を達成する上で、その役割を果たすために必要な要素に ついても明記している。CCS の大規模実証を制約する主な要因は、技術開発のレベルでは なく、プロジェクト開発を次の段階まで継続するための資金援助が不適切であることと、 主要国・地域における炭素削減政策に関する不確実性などの、投資判断を制約する原因と なる課題の存在であることが明らかとなってきている。本報告書ではこれらの課題を抽出 している。 本章の残りの部分では、GHG 排出量削減努力における CCS の潜在的な役割についての簡 卖な背景、CCS 技術の概要、最終的に大規模な CCS 利用が期待される発電部門における他 技術のコストと CCS コストの比較を示した。 第 2 章では、最終的な商業化に必要な規模で CCS を実証することを意図するプロジェク トであり、CO2の回収、輸送、貯留又は利用を結びつける統合プロジェクトを含む大規模統 合プロジェクト(LSIP)の現状について論じている。また、過去の動向報告書(WorleyParson ら 2009; Global CCS Institute 2011a)以降の当該プロジェクトの種類と件数の変化を説明した。 さらに、国別、産業別、開発段階別及び技術の種類別のプロジェクトの特徴と分布も解説 している。3 第 3 章では、CCS チェーンを構成する諸要素についてそれぞれ解説及び検討した。各プロ ジェクト提案者及び政府にとっては、CCS を構成する個々の技術の開発状況だけでなく、 これらの構成要素をリンクさせて統合プロジェクトに組み入れる際の考慮事項についての 理解も重要である。第 3 章の最後では CCS 技術のコストについての現在理解されている状 況を論じている。 第 4 章では、CCS に影響を与える政府の政策、法律、法令及び規則に関する最近の展開に ついて概説した。政策に関しては CCS の展開だけでなく、より広範な気候変動、エネルギ ー及び革新関連分野における政策の展開も含んでいる。また、プロジェクトが利用可能な 資金及びその他の財政上のインセンティブと支援についても要約した。第 4 章の最後では、 新技術としての CCS への社会的認知度及び社会的受容性の重要性を考慮して、市民関与に 関する課題も簡卖に論じている。 結論として、CCS の現在のビジネス事例に関するいくつかの見解及び更なるプロジェクト が建設段階又は操業段階に入るのを促進するために必要なステップをまとめている。
1.2
CO
2排出削減における CCS の役割
人為起源の CO2排出量は過去 150 年余りにわたって大幅に増加しており、その結果 CO2 の大気中濃度が顕著に増加している(図 1)。この増加に伴い、世界の平均気温も顕著な上昇 を示している。 図 1 世界の CO2大気中濃度及び気温出典:Brohan ら(2006 年)、MacFarling ら(2006 年)、Tans 及び Keeling(2011 年)からのデータ
年 気温(RHS) 大 気中 CO 2 濃度 (pp m ) 世界 の温度 偏差 (℃ )
4 2010 年には、気候変動に関する国際連合枞組条約(UNFCCC)第 16 回締約国会議(COP16) において、世界の平均気温上昇を最大で 2℃に抑える旨の法的拘束力のない約束が承認され た。2℃の上昇は、大気中の CO2換算(CO2-e)濃度レベルの上限を 2050 年までに 450ppm に 抑えることと一致するとみなされている(IPCC 2007)。ハワイのマウナロア観測所で測定さ れた 2010 年の世界の大気中 CO2の平均レベルは 390ppm であり、同年だけで 2.42ppm の上
昇となった(ESRL 2011)。CO2排出は現在の概算 CO2換算(CO2-e)濃度レベルである 430ppm
の主な要因であり、勧告目標の 450ppm にわずか 20ppm で達してしまう。 現在の予測では、450ppm の上限を満たすためには 2050 年までに「何も対策を講じなかっ たケース(BAU)」のレベルはもちろんのこと、現在のレベルも大幅に下回るような CO2排出 量の削減を行わなければならない。これは、特に化石燃料(石炭、石油及び天然ガス)からの CO2排出に言えることである。 国際エネルギー機関(IEA)が作成したエネルギー排出シナリオ(IEA 2010a)は、最小のコス トでの GHG 排出削減経路を提示している(図 2)。また IEA は、排出量を 2050 年までに現在 のレベルの 1/2 に削減するためには低炭素技術のポートフォリオが必要であることを示し ている。これらの技術にはエネルギー利用効率の向上、再生可能エネルギー、燃料転換及 び原子力が含まれる。今後 10 年間は、最も費用対効果が高い削減の大部分はエネルギー利 用効率によるものになるであろう。その後は再生可能エネルギー技術がより重要な役割を 果たすようになり、風力、ソーラー(太陽光発電及び太陽熱システムの両方)、バイオマス、 そしてそれらよりも規模は小さいが、地熱などの新エネルギー技術による削減分が大部分 を占めると予想される。 図 2 世界の CO2排出量及び GHG 排出削減量 ベースライン排出量 57Gt BLUE Map 排出量 14Gt WEO 2009 450ppm のケース ETP 2010 分析 年 CCS 19% 再生可能エネルギー 17% 原子力 6% 発電効率及び燃料転換 5% 最終使用燃料転換 15% 最終使用燃料及び電力効率 38% 出典:IEA(2010a、p.75)
5 2025~2030 年においては、再生可能エネルギー技術の利用及びエネルギー最終使用効率 向上の急速な伸びが継続する見込みがある一方で、IEA の最低コストシナリオでも CCS の 役割が急速に高まることが予測されている。高効率エネルギー利用及び再生可能エネルギ ー技術に関する低コストな選択肢が実施されれば、CCS の競争力は高くなる。2050 年まで には、CCS は IEA の最低コスト排出量削減シナリオの 19%に寄与していることになる。こ の寄与度は再生可能エネルギーよりも高く、更には原子力の寄与度の 3 倍以上である。 GHG 削減のための主な努力はどれも、現在又は将来のエネルギー生産、エネルギー集約 型産業並びに GHG を排出するプロジェクト及び投資に対して、コスト上の重大な課題を加 えることとなる。しかし、IEA は CCS なしで 2050 年までに 50%の排出量削減を達成するに は、CCS を実施した場合と比べて 70%のコスト増になると見積もっている。 この結果については、特に発電部門における CCS と他の低炭素技術の現在のコストを比 較すると理解しやすい。
CCS の相対的なコスト
今後数十年間に必要となる低炭素技術の多くは初期の開発段階又は展開過程にあり、これ らの低炭素技術の能力を証明し、かつコストを削減するためには R&D 及び実証に対する多 大な注力が必要になる。現在、CO2を発生させるいくつかの工業プロセスには、排出量を削 減又は低減するために利用可能な選択肢がほとんどない状態である。CO2 又はその他の GHG による環境への影響を反映させた排出の適切な価格設定は、すべての排出量削減技術 の R&D、実証及び本格的な利用を支援することになるであろう。 当インスティテュートは、発電部門における低炭素技術コストの比較を提示するために、 IEA(2010b)、IPCC(2011)、米国エネルギー情報局(EIA 2011)、米国エネルギー省国立再生可 能エネルギー研究所(DOE NREL 2010)、米国エネルギー省国立エネルギー技術研究所(NETL 2010)及び WorleyParsons(2011)による技術コスト研究の評価を実施した(2011b)。これらの研 究は、重要な経済的及び技術的な基準に関して異なる方法及び仮定条件を用いているため、 同じ経済的基盤及び同等の質の情報源を有するデータを比較するように注意した。 発電部門において将来的な削減のほとんどを占めることが予想される技術は、比較的コス トが高い(図 3)。大規模に適用される新技術のほとんど、特に CCS 及びソーラー技術に関し ては、革新努力の拡大に伴い、コストが大幅に低下することが予想される。風力及び原子 力などの商業的に成熟している技術に関しては、達成可能ないかなるコスト削減も、新た な技術におけるコスト削減ほどではないことが予想される。 CO2排出の抑制という点において、CCS は発電部門における将来の大規模削減の他の選択 肢と比較して、コスト競争力を有する技術であることが今回の分析において示されている。 例えば、石炭焚火力発電及び天然ガス焚火力発電において CCS が用いられた場合の CO2削6 減コストは、それぞれ 68~123 米ドル/トン及び 108~224 米ドル/トンである。対照的に、 太陽光発電(PV)及び太陽熱システムの CO2削減コストは、それぞれ 184~307 米ドル/トン及 び 219~273 米ドル/トンである。 図 3 発電部門の技術による CO2の削減コスト 1 1 本表に示されるコストは米国で操業中の技術に関するものであり、当インスティテュートによる幅広い 研究の評価に基づいて導き出されたものである。技術のコストは、資源の入手可能性、労働コスト及び資 本投入を含む幅広い局地的要素により地域ごとに異なる。さらにいくつかの選択肢は、特に各サイト特有 のものとなる(例えば、地熱及び水力)。
出典:Global CCS Institute(2011b);IEA(2010b)、IPCC(2011)、EIA(2011)、DOE NREL(2010)、 DOE NETL(2010a)、WorleyParsons(2011)からのデータ
1.3
CCS とは何か
CCS とは、発電所及びその他の産業において化石燃料の使用により大気中に排出される CO2量を削減することができる技術である。CCS には以下が含まれる。 ・ 化石燃料(石炭、石油及びガス)又はその他の炭素系燃料(バイオマスなど)を用いる大規 模な工業施設で生成された CO2の収集及び回収 ・ 適切な貯留サイトへの CO2の輸送 ・ 大気中から離れた場所に安全かつ恒久的に貯留することを目的とした、地下深部の岩石 内への圧入 米 ドル /CO 2 1 トン 風力 (陸域) 原子力 バイオマス CCS (石炭) 太陽熱 風力 (沖合) CCS (天然ガス) 太陽光発電 地熱 水力7
CO
2の回収
工業プロセスから排出された CO2の回収は、CO2を多く含む排ガスを施設内で回収できる 大規模な工業施設で最も容易となる。CO2の分離は、多くの産業で標準的な工業プロセスの 一部として既に実施されている。例えば天然ガスの生産では、ガス精製過程で天然ガスに 随伴する CO2を分離する必要がある。同様に、アンモニア又は水素を生産する工業施設で は、生産プロセスの一部として CO2が除去される。 CO2排出の最大の要因となるのは、特に発電における化石燃料の燃焼であり、石炭又はガ スを用いる発電所から CO2を回収するために主に以下の三つのプロセスが開発されている。 ・燃焼後回収 ・燃焼前回収 ・酸素燃焼による CO2回収 これらの回収プロセス及び現在の開発動向についての詳細を第 3.1 節に示す。 石油精製及びセメント生産などの他の産業において回収プロセスは十分な規模での実証 がまだ行われていないが、ほとんどの場合、既存の回収法を特定の生産プロセスに適合さ せることが可能である。例えば、石油精製所における CO2回収では燃焼後回収が利用可能 であり、セメント工場では酸素燃焼技術が利用可能である。さらに、特に鉄鋼製造に特化 した回収法も開発されている。CO
2の輸送
排ガスの他の成分から分離された CO2は、輸送・貯留に適するよう圧縮され、適切な貯留 サイトに輸送される。現在、CO2は主に工業用及び石油及びガスの増進回収(EOR/EGR)を目 的として、パイプライン、船舶及びタンクローリーによって既に輸送されている。CCS の 広範な展開に必要となる輸送規模は、現在よりもはるかに大きく、加えて高密度の純粋な 又はほぼ純粋な CO2の輸送が関わることになる。CO
2の貯留
CCS プロセスの最終段階は、深度が 1km 以深となることが多い地下深部岩層内への CO2 圧入である。この深度では、温度と圧力により CO2 は高密度流体として保持される。CO2 はゆっくりと多孔性岩石内を移動し、孔隙空間と呼ばれる狭い空間を満たすことになる。 適切な貯留サイトには枯渇した油ガス田又は水を含有する岩石(塩水層)が含まれる(図 4)。 一般的にこれらの貯留サイトは不浸透性の岩石(「シール」とも呼ばれる)によって覆われて いる。当該シール及びその他の地質的特徴は CO2が地表に戻るのを防止する。 これらの貯留サイトは流体及び気体(石油、天然ガス及び自然発生 CO2など)を何百万年も8 の間安全に封じ込めてきており、慎重な選定を行うことにより、圧入された CO2を同じく らいの期間にわたって安全に貯留できることが期待される。一度 CO2が圧入されると、岩 石層内での CO2の動きを監視するために様々な検知技術が使用される。監視・測定・検証 (MMV)プロセスは CO2が安全に貯留されていることを、公衆及び規制当局に保証する上で 重要である。 CO2は工業用として利用することも可能であるが、恒久的な貯留につながるものでなけれ ば、CO2のいかなる利用も GHG 緩和に寄与することにはならないであろう。 図 4 CO2の地層貯留の選択肢 画像:CO2CRC 提供 CO2の地層貯留選択肢 1 枯渇した油ガス田 2 石油増進回収における CO2の利用 3 未使用の深部塩水飽和貯留岩 4 深部の採鉱不能の炭層 5 炭層メタン増進回収における CO2の利用 6 その他の選択肢案(玄武岩、油頁岩、空洞) 生産された石油又は ガス 圧入された CO2 貯留された CO2
9
2 プロジェクト
2.1 重要プロジェクトの開発 ... 11
2.2 プロジェクトの詳細 ... 20
10
2 プロジェクト
概要
■ 昨年の CCS 産業は全体的に着実な進展をみせており、建設が完了して操業に移行した プロジェクトが 1 件、建設を開始したプロジェクトが 3 件あり、また、更に多くのプロ ジェクトが開発計画を進行中である。 ■ 全世界における 74 件の大規模な統合 CCS プロジェクトのうち 14 件が現在建設中又は 操業中であり、年間の総 CO2貯留容量は 3,300 万トンを超えている。■ 米国の Kemper County に加え、二番目の発電プロジェクトであるカナダの Boundary Dam が現在建設中である。また、米国では、深部塩水層に CO2を貯留する同国初のプロジェ クト、イリノイ州産業向け CO2回収隔離(ICCS)プロジェクトが建設中である。 ■ 当インスティテュートによる 2011 年の年次プロジェクト調査によれば、開発計画が進 んでいる数件のプロジェクト(数カ所の発電所を含む)が、今後 12 ヶ月の間に最終投資判 断の決定ができる状態にある。 ■ CCS の適用が必要とされる鉄鋼、セメント及びその他の大量排出産業において、開発中 の大規模実証プロジェクトが不足している状況は現在も変わらない。 本章では、LSIP の世界的な動向を概観する。そのほとんどは 2011 年 5~8 月に実施され た当インスティテュートの年次調査(付属資料 A)に基づくものであり、プロジェクトの動き、 課題及び機会の分析を含む、詳細な LSIP 動向評価を示している。同評価には、当インステ ィテュートの 2010 年動向報告書及び 2009 年動向報告書(Global CCS Institute 2011a、 WorleyParsons ら 2009)との比較が含まれている。 LSIP とは、以下の規模での CO2の回収、輸送及び貯留を含むプロジェクトである。 ・石炭火力発電所の場合-年間 CO2量 80 万トン以上 ・その他の排出集約型産業施設(天然ガス焚火力発電を含む)の場合-年間 CO2量 40 万トン 以上 世界には、上述のプロジェクトよりも小規模なもの又は CCS チェーンの一部のみに焦点 を合わせたプロジェクトが数多く存在する。これらのプロジェクトは、R&D、CCS の個々 の要素の実証又は局地的能力の構築にとって重要である。しかしながら、CCS が世界の GHG 削減において大きな役割を果たすためには、回収から恒久的貯留又はその他の隔離に至る CCS チェーンのすべてを含む、大規模なプロジェクトを実証し、また、展開することが不 可欠である。当インスティテュートのプロジェクト調査が LSIP に焦点を合わせているのは、 このような理由によるものである。
11
2.1
重要プロジェクトの開発
当インスティテュートの集計では、2011 年には世界中で 74 件の LSIP があった(図 5)。こ の件数は、2010 年報告書よりも正味 3 件尐なく微減となっているが、最初の報告書である 2009 年報告書における LSIP 件数の 64 件よりも依然として多い(図 6)。なお、LSIP の開発 段階の分類に用いた「プロジェクトライフサイクルモデル」に関する説明を付属資料 B に 示し、さらに全プロジェクトのリストを付属資料 C に記載した。 図 5 プロジェクトライフサイクル別及び地域/国別 LSIP プ ロ ジ ェ ク ト 件数 米国 特定 評価 精査 実施 操業 合計 豪州・ニュージーランド カナダ 中国 中東 その他のアジア諸国 アフリカ 合計 欧州12 図 6 プロジェクトライフサイクル別及び年別 LSIP 開発段階を通じてのプロジェクト動向における、最近の最も顕著な展開は以下のとおりで ある。 ・ 2010 年末にテキサス州の Century Plant の最初のガス精製系統が「操業」段階に移行した。 この最初の系統は年間約 500 万トン(5 Mtpa)の CO2回収能力を有する。現在建設中の第 2 系統は 2012 年に操業可能になると予想され、さらに約 3.5Mtpa の CO2回収能力が加わ ることになる。ただし、同施設が「操業」段階に加わっても、この段階のプロジェクト 件数は、正味では 2010 年報告書と変わらないことに留意されたい。これは、前回含ま れていた Rangely and Salt Creek (EOR)プロジェクトが、現在は共通の回収源である Shute Creek ガス精製施設として示されているためである。
・ 「実施」段階にあるプロジェクト件数は、2009 年の 2 件から 2010 年には 4 件に増加し、 2011 年現在では 6 件となっている(図 6)。直近に実施段階に追加されたプロジェクトは、 カナダの Boundary Dam 発電プロジェクト、イリノイ州産業向け CO2回収隔離(ICCS)プ
ロジェクト及び Lost Cabin ガス施設(両プロジェクトとも米国)である。
・ 「精査」段階にある 10 件のプロジェクトは、最終投資判断を下し「実施」段階に移行 させるかどうかを今後 12 ヶ月以内に決定できるとしている(図 7)。これらのプロジェク ト群では発電プロジェクトが多く、欧州の ROAD プロジェクト、カナダの Project Pioneer 及び米国の Texas Clean Energy(テキサス・クリーン・エネルギー)プロジェクトが含まれ る。これらの発電プロジェクトの CCS 構成要素は、既に「実施」段階にある Kemper County の石炭ガス化複合発電(IGCC)及び Boundary Dam プロジェクトとともに、広範囲な政府 支援、特に資本金補助によって支えられている。同プロジェクト群に属する北米の回収 プロジェクトにおいても、開発促進を確保する上での複数の収益源[及び、特に石油増 進回収(EOR)目的の CO2の再利用]の重要性が示されている。 ・ 多くの発電プロジェクトが翌年最終投資判断に移行可能な見通しであるのは明るい展 開である一方で、この展開は、大規模なプロジェクトが不足する鉄鋼などの他の大量排 操業 実施 精査 評価 特定 プロジェクト件数
13 出産業とは対照的である。このような代表事例の欠如は複数の要因が重なり合った結果 であり、例えば、多くの国では政府による発電への融資配分がより高いこと、不景気が 原因でコアビジネスの収益性改善に注力せざるを得ないことなどが挙げられる。 ・ 「特定」段階のプロジェクト件数が尐ないことは、必ずしも悪い方向への展開とみなす べきではない。数件のプロジェクトは、プロジェクトライフサイクルを通じて前進し、 「特定」段階から抜け出している。同時に、発電、鉄鋼及びセメント製造などの重要部 門における大規模 CCS は、プロジェクト開発資金が常に補給される状況にはまだなっ ていない。このため、政府に多額の継続的な資金援助が要求されるであろう。 図 7 「精査」及び「評価」段階にある LSIP の最終投資判断タイミング1 1 「評価」又は「精査」段階にある 52 件のプロジェクトのうち、24 件から回答が得られた。 「操業」及び「実施」段階にある 14 件のプロジェクトを表 1 に示した。これらすべての プ ロ ジ ェ ク ト 件 数 精査 評価 精査 評価 精査 評価 12 ヶ月以下 13 ヶ月~24 ヶ月 24 ヶ月超 最終投資判断までの推定期間
14 プロジェクトの CO2貯留容量は合計で約 33Mtpa である。この貯留容量は、毎年ほぼ 600 万 台を超える自動車の排出量に相当し、CCS が GHG 削減に顕著な寄与をすることが可能であ ることを示している(換算係数は、米国環境保護庁(EPA)から引用、ホームページ閲覧 2011 年 7 月)。 表 1 で「操業」又は「実施」と示されている回収プロジェクトのほとんどすべてが、CO2 EOR 関連及び/又はガス精製に基づくものである(唯一の例外はイリノイ州の ICCS プロジェ クトであるが、同プロジェクトでは、一定期間深部塩水層へ貯留した後に、EOR 目的の CO2 から収入を得る機会を追求することを明らかにしている)。このことは、EOR による収入が 得られないプロジェクト及び/又はガス精製のように回収が既存の工業プロセスの一部にな っていないプロジェクトが現在直面している課題を示している。この点は、特に炭素に関 する国内法の成熟度が低い国に当てはまる。3 次的な炭化水素生産の機会がある場合には、 先行する大規模回収プロジェクトの多くは、良好なビジネス事例を裏づけするため、EOR 目的の CO2をプロジェクトに含める可能性がある。 CO2 EOR システムは、特に米国において、石油の確認埋蔵量の増大を目的とする探査及 び開発掘削の代替策となる。この方法の普及率の上昇により、様々な石油会社、ガス会社、 パイプライン事業者及び CO2排出源となっている企業が、互いに魅力的なビジネス機会を 創出するために関心を寄せている。米国では、「CO2 EOR にとって適切な」油田が利用可能 であり、さらに石油価格が当該投資を促進する水準にとどまる限りこの勢いは継続するで あろう。米国では過去数年間にわたり、Denbury や Kinder Morgan などの企業が CO2排出源、
パイプライン及び EOR 油田を組み合わせた強力なポートフォリオを構築してきており、投 資家への説明では投資拡大の機会が強調されている。
15 表 1 「操業」及び「実施」段階にある LSIP 名称 所在地 回収タイプ CO2量 (MTPA) 貯留タイプ 操業年 「操業」段階 Shute Creek ガス精製施 設 米国 燃焼前(ガス 精製) 7 EOR 1986 年 Sleipner CO2圧入 ノルウェー 燃焼前(ガス 精製) 1 深部塩水層 1996 年 Val Verde 天然ガス施設 米国 燃焼前(ガス 精製) 1.31 EOR 1972 年 Great Plains 合成燃料工 場及び Weyburn-Midale プロジェクト 米国/カナダ 燃焼前(合成 燃料) 3 MMV を用い た EOR 2000 年 Enid 肥料工場 米国 燃焼前(肥料) 0.7 EOR 1982 年 In Salah CO2貯留 アルジェリア 燃焼前(ガス 精製) 1 深部塩水層 2004 年 Snøhvit CO2圧入 ノルウェー 燃焼前(ガス 精製) 0.7 深部塩水層 2008 年 Century Plant 米国 燃焼前(ガス 精製) 5( 及 び 建 設中 3.5)2 EOR 2010 年 「実施」段階 Lost Cabin ガス施設 米国 燃焼前(ガス 精製) 1 EOR 2012 年 イリノイ州産業向け CO2回収隔離(ICCS)プ ロジェクト 米国 産業(エタノ ール生産) 1 深部塩水層 2013 年 CCS 実証付き Boundary Dam カナダ 燃焼後(発電) 1 EOR 2014 年 ACTL を用いる Agrium CO2回収 カナダ 燃焼前(肥料) 0.6 EOR 2014 年 Kemper County IGCC プ
ロジェクト 米国 燃焼前(発電) 3.5 EOR 2014 年 Gorgon CO2圧入プロジ ェクト 豪州 燃焼前(ガス 精製) 3.4~43 深部塩水層 2015 年
1 当インスティテュートでは、Val Verde 天然ガス施設への天然ガス供給の一部は Century Plant に転用され ていると理解している。本報告書の出版時点では、この転用が Val Verde からの CO2回収に対して及ぼす 影響(もし、存在するならば)を検討中である。
2 CO2量を用いるすべての図及び計算では、「操業」段階に関して 5Mtpa、「実施」段階に関して 3.5Mtpa を 用いた。
3 CO2量を用いるすべての図及び計算において、3.4Mtpa を用いた。
「操業」及び「実施」段階にある 14 件のプロジェクトのうち 6 件(Sleipner、Great Plains/Weyburn-Midale、In Salah、Snøhvit、Illinois-ICCS 及び Gorgon)は、恒久的な貯留を実 証する上で十分な MMV システム及びプロセスを使用して CO2の回収、輸送、恒久的貯留
16 を実証するという点で「完全な」CCS プロジェクトとみなされる。これら 6 件のプロジェ クトは、深部塩水層に貯留するプロジェクト及び MMV を用いて EOR を行うプロジェクト として表 1 に記載されている。その他のプロジェクトは、CO2の回収、輸送及び圧入は示さ れているが、恒久的貯留の実証と一貫する更なる MMV システム及びプロセスを実施する ことが必要であろう。さらに、開発計画段階にある多くのプロジェクトについても適切な MMV システムの実施の強化が、同様に必要である。 恒久的貯留を実証する完全な MMV 制度を含まない操業中又は建設中のプロジェクトで も、特に回収における経験上、将来の展開が極めて有望と判断できることを理由に、当イ ンスティテュートのプロジェクトリストに含めている。通常、CCS の回収要素は CCS 実証 にかかる絶対的なコストのうち圧倒的に最大の構成要素である。この回収要素は最もコス ト削減及び生産の習得効率が必要となるところである。2 件の発電プロジェクトが「実施」 段階に移行しており、その他数件のプロジェクトが最終投資判断を下すべきかどうか間も なく判断可能ということは、回収技術の大規模実証にとって重要な節目である。現在、こ れらの多くの発電プロジェクトにとって、EOR 目的(及び、時としてその他の追加的収益源) の CO2は、ビジネス事例の進展の主要な要素の一部になっている。 習得は、回収要素のみから得られるわけではない。米国(さらに、最近ではその他の場所) における 40 年に及ぶ CO2 EOR 操業経験から、現在遂行されている他の貯留選択肢に適合さ せることが可能な一連のツール、技法及び経験的手法が開発されている。例えば、サイト の特性把握のための作業工程、圧入及び坑井の完全性に関する手引き、詳細な貯留層予測 シミュレーションモデル、CO2圧入中・圧入後の様々な監視技法が挙げられる。
したがって、CO2 EOR の実践は、EOR の可能性を有する地域での CCS 実証において初期
の「促進剤」のような役割を果たすとみなすのが最も好ましい。この役割は、圧入された CO2の MMV と併せて、実用的な法律及び規制制度の確立、地域社会による受け入れの促進
並びに恒久的な貯留の実証にとって重要である。これらの課題は、当インスティテュート による最近の CO2利用に関する報告書(Global CCS Institute and Parsons Brinckerhoff 2011)に
おいて検討されている。
天然ガス産業及び化学工程産業において 8 件の CCS プロジェクトが操業中であることは、 これらの産業での回収技術の有効性が証明されていることを示している。発電部門では回 収プロセスのスケールアップ及びエネルギー利用効率の向上という課題が存在するが、燃 焼後回収プロジェクト(Boundary Dam)及び IGCC プロジェクト(Kemper County)の建設が進 行中である。この事実は、これらの用途に関する技術リスクは管理可能であり、技術的障 害は克服可能であるということを示している。同様に、操業中のプロジェクトでは、深部 塩水層での CO2貯留及び EOR が実証されており、貯留は安全かつ達成可能であることが証 明されている。貯留に関する今後の課題は、圧入量の増大、個別サイトごとの経験の蓄積 及び有効かつ適切な規制環境における MMV の継続的な改善である。 世界の大規模 CCS の勢いが全般的に「着実な進展」として示される一方で、プロジェク
17 トの展開並びに政策環境及び事業環境は地域ごとにそれぞれ異なる。これら地域ごとの特 徴は、以下のように要約することができる。 ・ カナダ-支援を得られる環境に力強い進展がある。 ・ 米国-工業プロセスに既存の CO2分離と CO2再利用の機会(特に EOR)が組み合わされて おり、CCS プロジェクトの機会が得られやすい。しかしながら、国全体での炭素削減義 務が無いため、政府による多額の資金援助が存在していても発電プロジェクト及び石炭 ガス化プロジェクトの展望は 2008 年又は 2009 年よりも現在のほうが不確実である。 ・ 欧州-現在の新規参入者用排出枞(NER300)による資金提供の結果が注目されており、結 果は 2012 年後半に判明することが予想される。 ・ 豪州-政府の CCS フラッグシッププログラム(CCS Flagships Program)において適格とさ れる全プロジェクトで貯留の特性把握に注力している。 ・ 中国-CCS 技術の国内での研究開発に注力し、特に CO2利用に重点を置いている。 ・ 中東・北アフリカ(MENA)-現時点ではプロジェクトはほとんど存在しないが、特に EOR 目的の CO2利用で、長期的には機会が見込まれる。
2011 年における LSIP の変化
2010 年動向報告書以降に保留又は中止となったとみなされている LSIP は 11 件存在し、8 件が米国、3 件が欧州のものである(図 8)。名称の変更を含む、2010 年報告書以降の詳細な プロジェクトの変更の照合結果を付属資料 D に示した。 プロジェクトが保留又は中止された理由として最も多く挙げられたものは、現在の形態及 び政策環境では不経済であるとみなされたことであった。数件のプロジェクト提案者にと っては、プロジェクト開発の次の段階まで継続するための資金援助がないことと、CO2削減 政策及び規制に関する不確実性が、CCS ポートフォリオ内での投資を優先させるか代替技 術への投資を優先させるかの判断に影響する重要な要素となっていた。例えば Shell は、(現 在「精査」段階にある)カナダでの Quest プロジェクトの開発に集中するためにミシシッピ 州での Shell CO2プロジェクトを取り消した。Rio Tinto は、現時点で英国の Lynemouth 発電所(以前は North East CCS クラスターの中で定義されていた)を CCS 用に改修することをや めてバイオマスに転換する決定をした。
米国では、Boise White Paper 製紙工場及び CEMEX セメントプロジェクトの両方が、米国 エネルギー省による第 2 段階の融資対象として選出されず、その後に保留となった。その 結果、現在世界のいずれの地域においてもパルプ・製紙産業及びセメント産業での開発中 の大規模 CCS プロジェクトは存在しない。Mountaineer 発電プロジェクトの場合は、American Electric Power により、「実施」段階に前進しない主な要因として、規制及び政策の不確実性 が挙げられた。
18 図 8 2010~2011 年における LSIP の変化
新たに特定された大規模な CCS プロジェクトは、以下の 8 件である。
1. Medicine Bow 石炭液化(CLT)施設(米国-「精査」段階)-Medicine Bow Fuel and Power LLC によって開発されたワイオミング州の石炭から輸送用燃料を製造する工場であり、EOR 目的で最大 3.6Mtpa の CO2回収を提案している。
2. Kentucky NewGas(米国-「評価」段階)-ConocoPhillips 及び Peabody Energy によって共 同開発された石炭ガス化合成天然ガス(SNG)施設であり、陸域の塩水層内への貯留のた め最大 5Mtpa の CO2回収を目指している。
3. Riley Ridge ガス施設(米国-「評価」段階)-Denbury によって開発中のガス精製プロジ ェクトであり、EOR 目的で約 2.5Mtpa の CO2回収を計画している。
4. UK Oxy CCS Demo(英国-「評価」段階)-Alstom UK Ltd、Drax Power Ltd 及び National Grid plc によって開発されたノースヨークシャーに所在する新設の酸素燃焼火力発電所 であり、沖合塩水層内への貯留を目的とした 2Mtpa の CO2回収を目指している。
5. C. GEN North Killingholme Power(英国-「評価」段階)-C. GEN によって開発された、 ノースリンカンシャーを本拠とする新設の IGCC 発電所であり、沖合塩水層内への貯留 のため、2.5Mtpa 超の CO2回収を計画している。 6. Pegasus Rotterdam(オランダ-「評価」段階)-ロッテルダム気候イニシアチブ(RCI)の一 プ ロ ジ ェ ク ト 件 数 2010 年プロジェクト 取り消し 保留 再分類 新たに特定 2011 年プロジェクト
19 環 と して 、SEQ International BV によって開発予定の酸素燃焼天然ガス焚燃焼器 (340MWe)から、沖合の枯渇した油ガス層における貯留を目的とした 2.5Mtpa の CO2回 収を計画している。 7. Maritsa TPP CCS(ブルガリア-「特定」段階)-深部塩水層内での貯留を目的とした 2.5Mtpa の CO2回収を目指して改修する発電プロジェクトである。
8. Sinopec 胜利油田 EOR(中国-「評価」段階)-EOR のため、胜利(勝利)発電所から 1Mtpa の CO2を回収して、胜利(勝利)油田に輸送する計画である。
多くのプロジェクトを再分類した(付属資料 D)。分類の重要な変更点は、以下のとおりで ある。
・ 欧州、カナダ及び中東地域におけるプロジェクトの集まり(クラスター)又は拠点(ハブ) は、現在は卖独では表示されていない。各クラスターは、それを構成する個々のプロジ ェクトに分けられている。例えば、Masdar CCS クラスターは、現在は、Emirates Steel Industries プロジェクト(「精査」段階)及び Emirates Aluminium CCS プロジェクト(「評価」 段階)に分けられている。同様に、カナダの Enhance Energy EOR プロジェクト及び英国 の North East CCS クラスターは、プロジェクトを構成していた個別の回収プロジェクト に分けられている。このような形での分類変更が行われても、クラスター又はハブの開 発が世界的な CCS の展開に与える影響の重要性は何ら低下しない。
・ 米国における Rangely 及び Salt Creek EOR プロジェクト(両プロジェクトとも「操業」段 階)は、現在、卖一の回収源(Shute Creek ガス精製施設)に統合され、EOR を目的とする 人為起源の CO2をこれらの油田及びその他の油田に供給している。この再分類は、他の
プロジェクトのリストで CO2回収施設が強調されることについての当インスティテュ
ートによる説明とも一致する。重要な点として、この変更の結果、貯留可能と考えられ る総 CO2量が増加している。これは、Shute Creek 施設の回収能力(7Mtpa に拡大)が、既
述の Rangely 及び Salt Creek EOR 操業を併せたオフテイク(取引量:統合後の CO2量は約
3.5Mtpa)よりも大きいためである。今回の再分類の結果、「操業」段階へ新規に追加され たプロジェクト(Occidental の Century ガス精製施設)があるにもかかわらず、同段階にあ るプロジェクト件数は 8 件のままとなる。
・ Rotterdam CCS Network(オランダ-「評価」段階:CO2 3.4Mtpa)は、構成する主要な大規
模プロジェクトが既に当インスティテュートのデータベース内に存在していたため削 除されており、重複して集計されていた。
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