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公益財団法人 がん研究会

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令和元年度

事業報告書

平成31年4月1日から 令和2年3月31日まで

公益財団法人 がん研究会

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はじめに

公益財団法人がん研究会はその創設以来100余年、わが国のがん医療・がん研究の両 分野において常に先駆的役割を果たしてきた。そして、近年においても医療に関わる内外の 環境変化や医療の均てん化、また国際化等にも、その先駆的役割が求められつつある。

当会が平成17年に有明へ移転して以来14年以上が経過したが、職員の献身的な努力 により、令和元年度の正味財産増加額は約7億円を確保するなど、財務的健全性の保持に努 めた。しかしながら医療を取り巻く様々な財政的下方リスクや、当会の医療のクオリティー を支える機器等の整備にかかる投資を継続的に実行していくことを鑑みると、更なる財政 基盤の強化が必要である。

このような中、令和元年度には、平成30年度~令和2年度の中期経営計画の2年目と して、臨床、研究双方において、質的、量的な目標達成にむけた取組みを進めた。結果、

年度の計画を上回り、臨床と研究分野共に大きな成果を上げることができた年となった。

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令和元年度事業報告

〈 事業活動 〉

1.がんその他の腫瘍に関する基礎から臨床までの体系的研究

当会には、基礎的ながん研究を推進している「がん研究所」に加えて、「がん化学療法セ ンター」と「がんプレシジョン医療研究センター」という開発型研究や橋渡し研究の推進に 特化した2つの研究センターが設置され、これらが、国内有数のがん医療機関であるがん研 究会有明病院と一体となってがん研究拠点を形成し、基礎から臨床までの体系的がん研究 を推進している。これらの研究の成果は、学術雑誌への論文発表や関連学会の学術集会にお ける発表等を通じて公開されており、当会からは令和元年度も710報の論文発表が行わ れ、そのうちの467報が英文学術雑誌への論文発表であった。

具体的な体系的がん研究として、遺伝子やタンパク分子レベルから、動物モデルを用い た個体レベルまで、各種の先進的な生命科学の手法を用いて、がんの発生と進展の分子機構 の解明を行うとともに、国内随一のがん臨床症例数を誇る当院の患者さんに由来するがん 組織等の臨床サンプルの解析を通じて、新規診断法の開発等が進められた。

令和元年度、がん研究所においては、がん生物部が、長期内分泌療法に非感受性となっ て再発した乳がん由来の細胞の解析を通じて、タンパク質をつくらない非コードRNA分 子であるエレノアが、乳がん細胞の増殖のために機能するESR1遺伝子の発現を持続させ ることで、がん細胞の細胞死の抑制に働いているという、再発乳がんの増殖を支えている 全く新たな分子メカニズムを明らかにした。これにより、エレノア分子をターゲットにし た核酸医薬や化合物の開発が、再発乳がんの新たな治療法につながると期待される。また 研究所のがんゲノム研究部では、がん研有明病院婦人科およびCPMセンターとの共同研究 により、発生早期の子宮体がんの網羅的ゲノム・トランスクリプトーム解析を行い、子宮 体がんの発がんプロセスは、子宮内膜増殖症を母地として発生するものと、正常上皮が直 接がん化するものの二つに大別されることを確認し、それら二つプロセスでは、全く異な る分子メカニズムが動いていることを明らかにした。前者の発生プロセスを経る子宮体が んが難治性であることも示され、これらのがんでは、子宮内膜増殖症の時点ですでにがん 遺伝子・がん抑制遺伝子の変異が積み重なっていることが明らかとなり、ゲノム診断によ りその悪性化リスク評価が可能であると期待される。研究所病理部では、がん研有明病院 とともに内閣府AIホスピタルプロジェクトに参画し、先進的AI技術の応用によるがん病 理診断の高機能化を目指している。令和元年度は、多数のがん症例の病理組織像をデジタ ル化して、この情報を用いて病理診断の基盤となる各種要素技術の開発を行ない、その一 部は知財の獲得のための特許申請を終えた。

がん化学療法センターでは、分子薬理部がSBIファーマ株式会社との共同研究として、

がんの光線力学診断・治療に利用されている5-アミノレブリン酸(5-ALA)から生合成され るプロトポルフィリンIXの細胞外排出に、細胞のエンドサイトーシスとエキソサイトー シスに機能するダイナミン2が重要な役割を果たしていることを発見した。この結果は、

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5-ALA を用いる光線力学診断や治療の効率を高める方法としてダイナミン2阻害剤の応用 の可能性を示唆している。

また、当会では、国内全体のがん研究を支える基盤的研究事業も実施されている。即ち、

同意を得られた後に当院の患者さんから採取されるがんのサンプルや各種の治療に対する 臨床情報は、国内の多くのがん研究者の研究に用いられている。また、令和元年度も、当会

は AMED の次世代がん医療創生事業(P-CREATE)において、そのサポート機関として、

国内の多くの研究事業の推進支援を行った。また、その他、がん研究所で作製するがんの動 物モデルや各種ヒトがん由来の培養細胞は、公的な機関(理研バイオリソースセンター等)

を通じて、国内外のがん研究者の手に渡り、その研究に用いられた。このように、当会にお いて推進している研究事業は、当会内の研究のみならず、国内外のがん研究推進を支える基 盤的研究事業ともなっている。

2.がんその他の腫瘍に関する先進的な医療の推進

新たながんの診断法や治療法を始めとする次世代がん医療を開発し、これを確立するた めの研究推進には、現在のがん医療における最高レベルの標準化医療を数多くの患者さん に対して行う診療施設の存在が不可欠である。当会には、がん診療にほぼ特化した医療機関 であるがん研究会有明病院(686床、以下「当院」)が設置されており、約350名の医 師・臨床研究者(常勤)が、先進的がん医療とがんの臨床研究の推進に従事している。

当院には、27の診療科が設置されており、全てのがん患者さんに対して、診断および 治療に関与する部門の医師全てが参画して、先進的診断法で得られる各種情報をもとに、最 適な治療法を決定する「キャンサーボード」方式を国内で最初に導入している。さらに、そ の実際の治療に当たっても、臓器がんの種類に対応して機能する専門診療部門と、その治療 法の種類に対応して機能する一般診療部門が、相互に密接に連携して治療に当たる診療体 制を確立しており、こうした医療システム上の多くの工夫により、つねに先進的かつ高度な がん医療の推進が、当院においては担保されている。また、診療規模においても、国内で最 大規模、即ち、他のいかなる施設と比べても、より多くのがん患者さんの診療が行われてお り、令和元年度の実績は、外来延患者数は427,396人、入院延患者数は224,94 8人であった。現在、がん患者さんの殆どは、いわゆる三大治療法により治療されるが、令 和元年度に当院で治療を受けられた患者さんは、手術が8,818件、放射線治療患者数は 36,911人、化学療法治療患者数(外来)は37,080人にのぼり、いずれにおいても 国内ではトップレベルの実績を上げた。さらに、当院には健診センターが付設されており、

がんの二次予防としてのがん検診を実施することで国民に対するがん医療の開始点となっ ている。一方、先進的ながん治療にも関わらず不幸な転帰をたどる患者さんに必須である緩 和医療に関しても、これを専門とする緩和ケア病棟(25床)を有している。平成26年に 設置した緩和ケアセンターをさらに拡充・発展させ、すべての患者・家族に情報提供・支援 等を届ける仕組みとしてトータルケア部門を令和元年度4月に設置した。これにより

「困った

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ら受けるケア」から「困らないようにするケア」を目指す仕組みを構築し、すべての患者・

家族にこれから困ることや心配になることに早めに気付いてもらい、適切なケアにつなげ る体制の整備を進めた。このような仕組みの一環として、外来 1 階にはコンシェルジュが 配置されている。

また、平成30年4月にロボット手術の保険適用範囲が多くの術式に拡がって以来、平 成30年12月から手術支援ロボット「ダビンチ Xi」2台体制で月40件の手術を当院で は行ってきたが、それから1年足らずで3台目の導入が決定し、令和2年1月から稼働を開 始した。手術支援ロボットによって鏡視下手術の拡大視野に加えて多関節による細かな剥 離や吻合操作が容易になったことから、引き続きそのメリットを活かせる症例に適応拡大 を図っていく。

さらに当院は、令和元年9月19日付けで厚生労働大臣より、がんゲノム医療を提供す る「がんゲノム医療拠点病院」に指定された。当院では、すでに「ゲノム診療部」を新設す るなど、がんゲノム医療を推進するための体制の整備を行ってきており、今回の指定に伴い、

国立がん研究センターに設置されている「がんゲノム情報管理センター(C-CAT)」との連 携等について準備を進めている。

このように、当院では、数多くの患者さんに様々ながん医療を提供しているため、診療 現場で得られた情報や問題点が研究部門に還元され、新たな研究テーマとなり、次世代がん 医療の確立に向けた研究に大きく寄与するいわゆるリバースTR(逆橋渡し研究)促進とな るなど、病院と研究所が一体となって、当会のがん研究拠点としての高機能化にも大きく貢 献している。

・令和元年度における先進医療

(1)パクリタキセル静脈内投与(一週間に一回投与するものに限る。)及びカルボプラチ ン腹腔内投与(三週間に一回投与するものに限る。)の併用療法

上皮性卵巣がん、卵管がん又は原発性腹膜がん【当院での新規登録は終了)】

(2)ペメトレキセド静脈内投与及びシスプラチン静脈内投与の併用療法

肺がん(扁平上皮肺がん及び小細胞肺がんを除き、病理学的見地から完全切除された と判断されるものに限る。)【当院での新規登録は終了】

(3)FOLFIRINOX療法

胆道がん(切除が不能と判断されたもの又は術後に再発したものに限る。)

(4)マルチプレックス遺伝子パネル検査

固形がん(根治切除が不可能又は治療後に再発したものであって、治療法が存在しな いもの又は従来の治療法が終了しているもの若しくは従来の治療法が終了予定のも のに限る。)【令和2年2月18日付で終了】

3.がんその他の腫瘍に関する調査研究及び出版等による情報発信

今後のがんの予防やがん医療の推進のためには、現在のがん発生の動向やがん医療推進

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の効果を正確に知るための調査研究が重要であると同時に、これを国内外のがん研究推進 に役立てるためには、その情報の発信も重要である。

当会では、自らの病院の治療実績に関して、1985年から、独自に調査を実施し、デ ータベース化している。また、そうした、がん登録をはじめとするデータは、「患者動向」

や「年報」として公表されており、その患者総数は現在までに10万例を優に越えている。

現在、この院内がん登録は、全てのがん患者さんの診断・治療に加え、予後に関する情 報までが保存され、がん診療連携拠点病院および全国がんセンター協議会に所属する医療 機関として、国立研究開発法人国立がん研究センターのがん対策情報センター及び全国が んセンター協議会の担当施設に送付・登録しており、これらのデータは全て公開されている。

こうした、がん登録により、5年生存率、10年生存率等を調査研究することで、がん治療 の質を評価することができる。

令和元年度には、広報機能をさらに強化し、テレビ、新聞、雑誌等のマスコミや、内部・

外部で行った講演会の内容等の広報コンテンツを広報部門に集中・蓄積し、法人全体の共有 資産とし、広く一般の社会に還元した。

・平成30年の院内がん登録数:8,866件

4.がんその他の腫瘍に関する検診及びがん予防に関する普及啓発

当会では、当院内に健診センターを設置し、一人でも多くのがん患者さんを早期に発見 することを目指して、がん検診事業を推進している。この健診センターにおけるがん検診は、

当院の各診療科との密接な連携のもとで行われ、現在、発見されるがん患者さんの殆どは、

当院において治療を受けている。実際のがん検診には、PETや CTを用いた検査から、内 視鏡による検査まで、各種の異なる検査法が実施されており、対象となる方により、その組 み合わせも様々であるが、令和元年度は、23,844人の方々が健診センターにおいてが ん検診を受診した。また、平成25年10月から1泊2日の入院ドックも開始し、令和元年 度は175人の方々が受診した。

また、がんの早期発見・早期診断を、一層、充実させるためには、当会のようながん研 究拠点で明らかにされる、がん発生の分子機構に関する新しい知見を、いち早く、がん検診 の手法に取り入れることが重要である。実際には、その知見を検証するために、まず健診セ ンターにおいて蓄積されている、正常者も含めた方々の各種データを用いた解析が行われ ている。さらに、がん検診のための標準的診断手法として認められるためには、橋渡し研究 の実施が必須であり、そこにも健診センターの参画は必須である。そのような観点から、健 診センターの事業は、当会が、がん研究拠点として、がん予防の研究を推進するためにも必 須な事業となっている。

一方、がん予防は、がん検診のみにて実現するものではなく、幅広い層の方々を巻き込 んで、教育・広報から医療まで各種の異なる分野の活動を幅広く推進することが必要である が、その活動の基盤となるのが、患者さんと健常人、即ち、一般市民に対する啓発活動であ

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る。このため毎年度市民公開講座を開催しており、がん研究・がん医療の現状を、広く市民 の方々にお知らせし、がん予防の重要性を訴えている。令和元年度は、一般市民を対象とし た公開講演会を5回開催するとともに、小中学生を対象としたブラック・ジャックセミナー

(外科手術の体験研修)や江東区の高校生を対象としたがんセミナーなどを昨年度に引き 続き開催した。また、当会に所属する医師・研究者は、積極的に、各種団体が主催する会合 や行事への参加を通した、あるいは、新聞や雑誌の記事を通した、がん予防に関する啓発活 動を行っている。

・令和元年度の健診センターにおける検診実施:23,844件

・令和元年度開催の市民公開講座(主なもの):

令和元年7月31日 がんを知る サマーセミナー in がん研有明病院 参加者(江東区高校生)10名

令和元年5月24日 がん研有明病院の専門医によるがんの話~早期に見つかれば、

がんは治る 参加者100名

令和元年10月27日 がんとうまく付き合うためのエッセンス 参加者111名

5.がんその他の腫瘍に関する研究の奨励及び研究活動の支援

当会は、がんに関する研究活動を行うと同時に、国内外におけるがん研究の奨励や研究 活動の支援を行っている。

UICC(Union for International Cancer Control 国際対がん連合)は、世界約170カ 国、約1100の組織が参加している民間対がん運動組織であり、その活動の一部として、

世界規模でのがん研究支援を行っている。当会は UICC 国内委員会を通じて、その研究支 援プログラムの1つである、がん研究者間の国際的共同研究を支援するためのtravel grant である、Yamagiwa-Yoshida Memorial International Cancer Study Grantの実施を支援し ている。令和元年度も選考に参画の上、受賞者5名に対して、例年通り資金の一部提供を行 った。

また、国内の各種の公的ながん研究支援事業に参画し、その実施の補助を行った。文部 科学省では従来から、特定領域研究等の科学研究費補助金により、国内のがん研究者に対し て広く各種の研究支援事業を行っているが、当会はその支援拠点として、各種の支援業務を 実施することにより、その研究支援に大きく貢献してきた。令和元年度も、平成27年から 5ヵ年の計画で推進されている、文部科学省新学術領域研究学術研究支援基盤形成事業の 中の「先端モデル動物支援プラットフォーム(代表者:東京大学医科学研究所井上純一郎教 授)」において、当会は、その支援実施拠点を引き受け、当会の研究者が中心となって、各 種シンポジウム・ワークショップの開催やがん研究者の国際交流支援のほか、国内の研究機 関の要望に対応して、各種化学療法剤スクリーニングの実施や発がんモデル動物の作製・提

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供等の活動を行い、国内のがん研究推進の支援を行った。

6.がんその他の腫瘍に関する研究及び医療の推進又は普及のための人材の育成

高度ながん研究や先進的ながん医療の推進・普及には、人材の育成が欠かせない。当会 は、長年にわたって、国内の指導的立場に立つ医学生物学研究者やがん臨床研究者を育成し てきており、輩出された研究者の多くが、現在も国内の大学、研究機関や医療機関において 活躍している。当会では、多種に亘る人材育成のシステムが機能しているが、がん研究推進 のための人材育成システムの根幹となっているのは、研究系における連携大学院制度と研 究生制度である。当会は、現在、国内の8つの大学と提携して、その機関の連携大学院とな っている(機関名については下記参照)。具体的な制度設計は、各々の機関で若干異なって いるものの、いずれの場合も、基本的には各機関所属の大学院生を当会が受け入れ、その教 育を担当する形となっている。令和元年度は、計28名の大学院生が、当会において、担当 教官(当会の研究者が兼務)の指導のもと、がん研究に従事した。また、当会の研究系の各 部門(がん研究所、がん化学療法センター、がんプレシジョン医療研究センター)において、

国内外の大学や研究機関、あるいは、企業等からの、多くの学生や研究者が、研究生あるい は研修生の身分で一定期間滞在して、当会の研究者の指導のもと、がん研究を行った。この 研究生制度(無償)も、国内のがん研究推進のための人材育成に大きく貢献している。

・がん研究会(あるいは、その部局)が連携大学院となっている大学

(1)東京大学大学院医学系研究科病因病理学専攻

(2)東北大学大学院医学系研究科

(3)東京大学大学院新領域創成科学研究科

(4)徳島大学大学院医学系研究科

(5)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科

(6)明治薬科大学大学院薬学研究科

(7)横浜市立大学大学院医学研究科

(8)東京理科大学大学院理工学研究科

一方、当院でも、国内のがん医療およびがん臨床研究の発展に貢献するため、数多くの 人材育成のための制度が機能している。中でも、その根幹を成すのは、がん専門医養成のた めの後期研修医制度(レジデント制度、医師免許取得後3−5年)であり、令和元年度にお いては11名が、がん専門医となるための研修を受けている。医師を対象としたものとして は、その他、初期臨床研修指定病院として、東京大学医学部附属病院や東京逓信病院などと の連携のもと、医師の初期臨床研修を行っている。また、当院では、その国内をリードする 治療実績を基盤に、国内の医療機関に所属する医師を対象に、年に数回、がん医療専門家育 成のための短期間の教育講座を開催している。その代表的なものとして、令和元年度は、が

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ん研BC Academia(乳がん治療に関する研修、4泊5日のコース)が開催され、3名が参 加した。がん対策基本計画に示されている緩和ケア研修会(厚生労働省の標準プログラムに 基づく研修)も主催しており、令和元年度は2回開催され、計46名の医師他が参加した。

その他、がん医療に関わる医師以外の医療従事者をも対象とした専門家養成事業も数多 く行った。東京都がん診療連携協議会の研修部会を担当しており、令和元年度は医師、薬剤 師、看護師、診療放射線技師等を対象に、各種研修を4回企画開催し、計369名が参加し た。さらに、各種のがん医療に関する専門看護師および認定看護師の資格取得のための実習 病院として、研修の受け入れを行った。

最後に、当院内の細胞検査士養成所において、令和元年度は13名の臨床検査技師が約 7ヶ月間の研修を修了した。本養成所の卒業生は、日本臨床細胞学会の認定試験に合格の後 に、全国のがん医療機関に戻り、細胞検査士としてがん医療に携わっている。

このように、当会では、がん研究およびがん医療に関わる人材の育成のための事業を広 く推進している。

7.がんその他の腫瘍に関する学術集会の開催又は優秀なる業績に対する表彰

当会では国内外のがん研究の振興を目的として、セミナー等の学術集会の開催や、がん 研究で優秀な業績を収めた研究者の表彰等を行っている。

当会では、日本の抗がん剤開発の諸問題を討議し、より効果的な研究開発を推進するこ とを目的として「抗悪性腫瘍薬開発フォーラム」を開催している。本フォーラムでは、大 学等の基礎研究者、企業における開発研究者、審査当局の関係者など、各々異なる立場に ある関係者が一堂に介し、諸問題を客観的に討議するが、令和元年度も1回の開催を行い

(令和元年6月22日)、これまでの開催は通算27回となった。150人を超える参加 者があり、活発な討論がされた。さらに、当会が日本の癌分子標的治療研究の推進を目的 として立ち上げた「がん分子標的治療研究会」は、平成20年に「日本がん分子標的治療 学会」へと発展し、令和元年度は第23回総会が開催されたが、当会はその開催支援を行 った。

がん研究所では、長年にわたって、国内外の著名ながん研究者を招聘し、その研究成果 を発表して頂くために、公開でがん研セミナーを開催している。本セミナーは、令和元年度 も18回に亘って開催され、これまでの開催は通算500回を超えた。さらに、平成24年 度から実施している、専門性の高い最新知見を議論する「先端研究セミナー」、先進的解析 技術を紹介する「先端技術セミナー」、さらには、臨床と基礎をつなぐ研究成果を発表する

「臨床研究セミナー」という3つのセミナーを開催しているが、令和元年度は、計9回開催 された。

また、当会では、当会に所属する研究者・医師が主催する学術集会の開催業務の支援を 行っている。令和元年度は、藤田直也化学療法センター長が代表者を務める、文部科学省 科学研究費補助金の新学術領域研究「細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御」

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が主催した2回の公開シンポジウム(第1回「1細胞解析と数理モデリングの融合がもた らす細胞社会ダイバーシティーの理解」、令和元年6月27日於理化学研究所、および、

第2回「多面的1細胞解析技術が解き明かす細胞社会ダイバーシティー」、令和2年1月 29日於がん研究会吉田富三講堂)の開催支援を行なった。さらに、第60回日本臨床細 胞学会総会(春期大会)、The ILROG Tokyo Educational Symposium in 2019(国際リンパ 腫放射線腫瘍グループ 教育シンポジウム)、第45回肺癌診断会、形成外科BCアカデミ ア、第7回日本眼形成再建外科学会学術集会、第5回日本がん口腔支持療法学会・学術大 会、第100回日本病理組織技術学会、第101回日本病理組織技術学会、第38回東京 都臨床細胞学会総会・学術集会、第78回細胞検査士ワークショップなどの臨床的研究ま で、幅広く学術集会や研修会の開催を支援した。

また、当会では、国内外で優れた業績を収めた研究者を表彰するための事業も行ってい る。まず、名誉総裁である常陸宮殿下の業績にちなんで、ヒト以外の生物を用いたがん研究 で優れた業績をあげた研究者を表彰するため、平成8年に、比較腫瘍学常陸宮賞を創設し、

その運営を行ってきている。令和元年度、本賞は第22回を迎え、東京大学薬学部教授の三 浦 正幸 博士の「アポトーシスの遺伝学と生理機能(Genetics and physiological roles of

apotosis)」に対して授与され、5月14日に講演会を開催するとともに授賞式を行った。

また、当会は日本癌学会の学会賞の1つで、がんの臨床研究や疫学研究で優秀な業績を収め た研究者に贈られる長與又郎賞の創設を支援し、毎年、副賞としての賞金を負担することに より、その運営を支援しているが、令和元年度も100万円の支援を実施した。なお令和元 年度の日本癌学会長與又郎賞は、長年外科医として活躍し、難治性消化器がんをがん幹細胞 の視点から研究してきた、森 正樹・九州大学大学院 主幹教授(消化器・総合外科(第二外 科))に授与された。

8.がんその他の腫瘍に関する研究・医療のための国際交流

当会は、がん研究・医療推進のための国際交流として、人事交流を中心とした各種事業 を行っている。がん研究所を始めとする研究部門には、諸外国の研究者が在籍している。ま た、ハーバード大学MGHがんセンターとの研究交流、北京大学深圳医院などと人材派遣・

研修生の受入れ等の提携に基づく国際交流も活発に行っている。さらに、当会では、国際交 流を通じて日本における抗がん剤開発研究を促進するため「がん研-国際がん化学療法シ ンポジウム」を年に1回開催しており、令和元年度には24回目の開催となった。今年度も 令和元年12月11、12日の2日間に亘って、本分野をリードする国内外の研究者16名

(内海外演者7名)を招聘して、東京都江東区青海において開催した。これには大学や公的 研究機関の研究者に加え製薬企業の研究者が多く参加しており、例年300人近くの参加 者がある。また、令和元年度には、平成30年度に続いて、新たながん診断バイオマーカー の開発を目指して、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)および米国国立癌研 究所(NCI)が、令和2年1月26、27日の2日間に亘って、東京大学の伊藤国際学術研

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究センターにおいて共同で開催したワークショップの開催支援を行った。

9.国内および国際的な対がん運動への参加協力

UICC(国際対がん連合)は、代表的な国際的民間対がん運動組織であり、現在、世界 約170カ国の約1100組織余りが参加し、“がんの研究、診断、治療および予防に関 する科学的及び医学的知識を進歩させ、全ての局面において世界中の対がん運動を促進す る”ことを目的に活動している。当会では、令和元年度もUICCに対して活動資金の提供 を行うとともに、当会内に設置されたUICC日本委員会の事務局およびUICCアジア支局 の業務支援を通じて、国際的な対がん運動のサポートを行った。具体的には、令和元年7 月27日に日本委員会総会を開催し各種活動報告を行った。

また、ワールドキャンサーデーの行事として、令和2年2月4日に、東京都のカレッタ 汐留において、「I AM AND I WILL-私は今、そしてこれから私は」をテーマとするライ トアップイベントを開催した。なお、このイベントは10社を超える各種メディアにも掲 載、報道された。

10.その他

より良い医療の提供には、経営の安定と財政基盤の確立が前提となる。令和元年度にお いても平成30年3月の理事会において承認された中期経営計画に沿って、より良い研究・

医療の推進のために、職員一体となって経営・財務の改善に取り組んできた。地震、風水害 に加えて感染症のリスクが顕在化しているが、事業の持続性を確保すべくこれらリスクに 備えるとともに、経営・財務の改善に取り組む。

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〈管理部門〉

1.評議員会・理事会等 平成31年4月24日

・第90回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B

決議事項:研究本部部長(プロジェクトリーダー)人事について、3月度診療実績お よび2018年度診療実績報告について、2018年度第4四半期決算 報告及び2018年度決算報告(決算整理後-監査前)について、ダビン チ手術の実績報告(婦人科ダビンチ手術について)

令和元年5月30日

・第91回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B

決議事項:2018年度事業報告書並びに2018年度決算等承認の件(内閣府提 出)、第18回評議員会の日時、場所及び目的である事項の件、評議員・理 事の選考に関する評議員会への付議について、定款の一部改正について、

職制の一部改正について(ゲノム診療部の設置等)

報告事項:2019年4月度診療実績報告について、外国人患者に関する実績と収支 について(治療/健診)

令和元年6月20日

・第18回評議員会

開催場所:経団連会館2階 国際会議場

決議事項:議事録署名人の指名の件、評議員の選任及び退任の件、評議員会会長の選 定の件、理事の選任及び退任の件、監事の選任の件、定款の一部改正の件 報告事項:2018年度事業報告書ならびに2018年度決算等について、2019

年度事業計画書ならびに2019年度予算等について、寄付の状況につ いて、理事会決議事項について、研究所現況報告について、病院現況報告 について

令和元年6月20日

・第92回理事会

開催場所:経団連会館2階 国際会議場

決議事項:理事長の選定の件、代表理事及び業務執行理事の選定の件、退職理事への 退職手当支給の件

報告事項:今後の日程について など

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令和元年8月1日

・第93回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B 決議事項:職制の一部改正について、常勤理事年俸表改定の件

報告事項:病院本部部長人事について、月次報告・第1四半期 稼働実績報告、第 1四半期 決算報告、がん研有明病院と赤羽病院・旗の台病院との関係 について

令和元年10月2日

・第94回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B

決議事項:2019年度 会計監査人(監査法人エムエムピージー・エーマック)に対 する監査報酬の件、職制の一部改正、NEXT-Ganken プログラムの立ち 上げの件、がん研サテライトラボの設置の件、コージェネレーションシス テム(CGS)の更新の件、人事の件

報告事項:病院本部部長人事について、経営本部部長人事について、公益財団法人 がん研究会 行動指針制定の件、2019年度上期末 医薬品購入価格交 渉の件、東京會館とのテナント契約更新について、がんゲノム医療拠点 病院の指定について、8月診療実績報告、がん研有明病院と赤羽病院・

旗の台病院との関係について(継続)

令和元年10月29日

・第95回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B

決議事項:内部監査規程改定の件(組織変更等による)、コンプライアンス推進規程 改定の件(組織変更等による)、理事の退職金の件

報告事項:病院本部部長人事について、公益財団法人がん研究会 行動指針制定の件、

監事監査規程改定の件(組織変更等による)、2019年度上期末医薬品 購入価格交渉の件、東京會館とのテナント契約更新について、2019年 度 9月診療実績・上期診療実績報告、2019年度第2四半期及び上期 決算報告

令和元年11月28日

・第96回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B

(14)

決議事項:第19回評議員会の日時、場所及び目的である事項の件、医学研究に関す る利益相反マネジメントポリシーについて

報告事項:赤羽病院問題の原因と対策、就業規則(および関連規程)改定の件、外来 狭隘化に伴うスペース拡張・変更の件、2019年度 10月診療実績績 報告、2019年度 上期実績と下期見直し計画について

令和元年12月24日

・第19回評議員会

開催場所:クラブ関東(大手町パークビルディング6F)

決議事項:議事録署名人の指名の件

報告事項:赤羽病院問題について、NEXT-Gankenプログラムの立ち上げ及びサテライ トラボ開設について、がんゲノム診療の開始について、2019年度 上 期実績と下期見直し計画について理事会決議事項について、研究所現況 報告について、病院現況報告について

令和元年12月24日

・第97回理事会

開催場所:クラブ関東(大手町パークビルディング6F)

決議事項:公益財団法人がん研究会 評議員候補者及び理事候補者選考委員会規程の 改正の件、公益財団法人がん研究会 評議員・理事・理事長各候補者選考 委員会の設置の件

報告事項:経営本部部長人事について

令和2年2月26日

・第98回理事会

開催場所:公益財団法人がん研究会 研究棟1階セミナー室A・B

決議事項:職制改定の件、2020年度 収支計画案と投資計画案及び内閣府提出事 業計画書の件、放射線治療機器更新の件

報告事項:経営本部部長人事について、NEXT-Gankenプログラムのプログラムディレ クター(PD) 副プログラムディレクター(APD)の発令について、単一健康 保険組合設立の進捗について、特定資産の使途制約解除に係る件につい て、2019年度 1月診療実績及び第3四半期実績報告について

2.各種届出に関する事項

1)平成30年度事業報告書等届出

令和元年6月25日付で平成30年度の事業報告書、貸借対照表、正味財産増減計

(15)

算書、キャッシュフロー計算書、財産目録及び収支計算書を内閣府に電子申請した。

2)変更の届出

令和元年9月30日付で小路真理事が退任、令和元年10月2日付で櫛山博理事 が退任したので、その登記を行い、令和元年11月5日付で内閣府に対し電子申請し た。

3)変更の届出

任期満了に伴う評議員12名、理事5名の辞任、及び評議員7名、理事3名の就任 のため、令和元年11月29日付で内閣府に対し電子申請した。

4)変更の届出

令和元年6月20日付で髙橋規評議員が退任したので、その登記を行い、令和2年 2月10日付で内閣府に対し電子申請した。

5)令和2年度事業計画書・収支予算書等の届出

令和2年3月30日付で令和2年度の事業計画書及び収支予算書並びに付属書類 を、内閣府に対し電子申請した。

3.公益財団法人の運営等に関する情報公開

令和元年6月に行政庁に報告した「平成30年度事業報告等」及び「平成31年度 事業計画等」の定期提出書類を、Web サイトで公開した。情報公開としては、上記以 外に、定款、役員及び評議員の報酬等並びに費用に関する規程等をホームページに掲載 している。

4.内部管理体制の整備

1)業務の適正を確保するための体制

平成27年10月28日開催の理事会において、一般社団法人及び一般財団法人 に関する法律に基づき、業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)が、

次の通り再決議された。現在、これに基づき運用されている。

(理事会決議及び運用状況の概要)

① 理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

理事会並びに経営会議は、法令、定款、評議員会決議、「理事会運営規則」、「経営会 議規程」等に従い、経営上の重要事項を決定するとともに、内部統制システムを整備 し、理事の職務の執行を監督している。理事会は、コンプライアンス委員会及び内部

(16)

監査室・コンプライアンス室を設置し、法令の遵守と公益法人としての倫理に反する 行為の防止に努めるとともに、外部理事の経営参加により、外部の識見の導入と経営 の透明化を図っている。

② 理事の職務の執行に係わる情報の保存及び管理に関する体制

理事は、その職務の執行に係わる重要な情報及び文書、又は電磁的媒体を法令及び 各種規程に基づいて保存、管理を行い、理事、監事並びに会計監査人が必要に応じて 閲覧できる体制を整えている。

③ 損失の危険の管理に関する規程その他の体制

各本部を統括する理事及び使用人は、自部門に係わるリスク管理を適切に行うとと もに、必要に応じて理事会及び経営会議において管理状況の報告を行っている。医療 安全については、「医療安全マニュアル」の遵守を基本として、医療安全管理部、院内 感染対策部、クオリティーインプルーブメント部、高難度新規医療技術管理部、未承 認新規医薬品等管理部の五部からなる医療クオリティーマネジメントセンターが総 合的に管理、推進している。個人情報保護については、「個人情報保護規程」及び「患 者個人情報に関する院内規則」に基づき、適正な管理体制を整えている。公的研究費 については、文部科学省のガイドラインとそれに基づく当会の事務取扱基準に従い、

適切な運用に努めている。震災や新型インフルエンザ等の大規模災害に対しては、災 害対策マニュアルを定め、事業継続のための計画を明確化している。

④ 理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

理事会は、定款及び理事会運営規則に基づき、業務執行に係わる重要な意思決定を 行っている。経営会議は、経営会議規程に基づき、業務執行に関する迅速な意思決定 を行うとともに、理事会に上程される案件を事前に審議し理事会の効率的な意思決定 を確保している。各本部の業務運営については、経営会議における予算管理や事業進 捗管理により、適切に点検を行っている。

⑤ 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

コンプライアンス強化のため、コンプライアンス委員会を設け、定期的に委員会を 開催している。内部監査室は、内部監査結果をコンプライアンス委員会と被監査部門 に報告し、コンプライアンス室は、コンプライアンスに関する諸活動について、コン プライアンス委員会に報告している。また、内部通報制度(がん研なんでも相談所)

と外部通報窓口を整備し、法令違反行為等に関する相談、通報に対応している。

⑥ 理事及び使用人が監事に報告をするための体制その他の監事への報告に関する体制

(17)

及び監事への報告をした者が当該報告を理由として不利な取扱いを受けないことを 確保するための体制

理事会は、監事が理事会に加え、経営会議その他の重要な会議に出席し、理事及び 使用人から報告を受けるとともに、必要な意見を述べる体制を確保している。監事は、

いつでも必要に応じて、理事及び使用人に対して報告を求めることができる体制とな っている。また、理事長との意見交換会、理事及び各本部長との意見交換会等を通じ て、相互に意思疎通を図り、業務執行の適法性と効率性について適正な監査に努めて いる。著しい損失や重大なコンプライアンス違反の発生のおそれがある場合は、理事 及び使用人は、遅滞なく監事に報告を行っている。監事への報告者は当該報告を理由 として不利な取扱いを受けることはない。

⑦ その他監事の監査が実効的に行われることを確保するための体制

監事は、会計監査人、内部監査部門と情報交換に努め、三者の監査の実効性と効率 性の向上を図っている。理事及び使用人は、監事が有効な監査を行うことができる環 境の整備に配慮している。監事の職務の執行について生ずる費用は、当会が負担して いる。

2)コンプライアンスの推進

平成24年度の中期経営計画より、経営課題のひとつとして、コンプライアンスの 強化に取り組んでいる。コンプライアンス委員会を研究・病院・経営の3本部長を中心 メンバーとする委員会に再編、コンプライアンス推進体制を一元化して、迅速な合意形 成に努めている。コンプライアンス委員会の審議事項は、公正性と透明性を高めるため 監事会への報告と経営会議への上申、報告が行われている。ヘルプラインと内部通報窓 口の役割を担って平成24年11月に開設した「がん研なんでも相談所」も7年半を経 過して、運営に対する職員の信頼も高まってきている。また、医療法の改正にともない、

平成28年9月付けで、医療安全管理の適正な実施に疑義が生じた場合等の「情報提供 窓口」を「がん研なんでも相談所」が兼ねることとしている。平成29年6月より当会 各部門のリーダー的役割を担う者をコンプライアンス推進委員として2年間の任期で 任命してきたが、令和元年6月には第2期のコンプライアンス推進委員として約13 0名を任命した。これら推進委員を対象に、コンプライアンス研修を年に1回継続開催 している。加えて、令和元年度は研究・病院・経営の3本部の部長以上にある役職者や 課長、看護師長等への研修も行った。更に、経営会議メンバーを対象に講演会を実施し、

公益法人制度改革の背景及び意義、公益法人のガバナンスと機関の役割、及び役員の義 務と責任等についての知識共有を図った。

3)内部監査の充実と三様監査の連携強化

(18)

内部監査については、監査計画に基づき、重点監査を行った。監査結果は、被監査 部門へフィードバックするとともに、理事長、コンプライアンス委員会のほか、監事会、

経営会議に報告を行っている。また、指摘事項に対する改善・措置状況を年次報告とし て取り纏め、報告している。三様監査の連携強化については、会計監査人との情報交換 を緊密に行うとともに、監事会への情報開示と監事意見の経営へのフィードバックを 行い、監査体制全体の活性化と実効性の向上に努めている。

5.庶務事項

1)第22回比較腫瘍学常陸宮賞授賞式挙行

令和元年5月14日、第22回比較腫瘍学常陸宮賞授賞式が挙行され、東京大学 薬学部教授の三浦正幸博士が受賞した。受賞対象となった研究業績は「アポトーシ スの遺伝学と生理機能(Grnetics and physiological roles of apoptosis)」。

2)5-アミノレブリン酸から合成される光感受性物質 プロトポルフィリンIXの細胞外 排出に細胞膜タンパク質ダイナミン2が機能していることを発見

がん化学療法センター分子薬理部(部長 旦慎吾)とSBIファーマ株式会社・研

究開発本部・川崎研究所は、同部で樹立したJFCR39がん細胞株パネルを用いて、

がんの光線力学診断や治療に利用されている5-アミノレブリン酸(5-

aminolevulinic acid, 5-ALA)から生合成されるプロトポルフィリンIX(PpIX)の 細胞外排出に、細胞のエンドサイトーシスとエキソサイトーシスに機能するダイナ ミン2が重要な役割を果たしていることを発見した。本研究成果は、SBIファーマ 株式会社との共同研究として、Scientic Reports誌に令和元年6月17日に公開さ れた。

3)凸版印刷と共同で抗がん剤開発を支援するラボを開設

令和元年6月25日、がん化学療法センター内にがん研究のための共同ラボを凸 版印刷株式会社と設立した。3D細胞培養技術を活用し、ヒトに近い人工細胞組織を 構築 抗がん剤の効果検証への利用を目指して共同研究を推進する。

4)ROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する新薬候補化合物DS-6051bの共同研究成果を 公表

がん化学療法センター基礎研究部(部長 片山量平)と第一三共株式会社との共 同研究において、次世代ROS1/NTRK阻害薬として創製したDS-6051bが、ROS1チロ シンキナーゼとNTRKチロシンキナーゼ(NTRK1, NTRK2, およびNTRK3)を低濃度

(数nMから十数nM)で阻害し、試験管内および動物実験において、腫瘍縮小効果

を発揮することが示されました。また、DS-6051bはクリゾチニブへの高度耐性を示

(19)

すROS1-G2032R耐性変異体にも有効であることも実験的に明らかにしたことを、令 和元年8月9日に発表しました。

5)キョウ 博 基礎研究部特任研究員が、第23回日本がん免疫学会において若手 研究奨励賞を受賞

令和元年8月、がん化学療法センター基礎研究部キョウ博特任研究員が、この 度、第23回日本がん免疫学会において若手研究奨励賞を受賞。研究課題は、分泌

型PD-L1 スプライシングバリアントを介した免疫チェックポイント治療薬耐性機構

の発見。

6)有明病院 平出誠(薬剤師)が日本腫瘍循環器学会チーム医療賞を受賞

令和元年9月21日~22日、第2回日本腫瘍循環器学会学術集会において、薬 剤師としてのがん関連血栓症(CAT)治療に関わるエビデンスの蓄積に寄与したと して、有明病院薬剤部の平出誠薬剤師が受賞した。

7)がん化学療法センター 基礎研究部の片山量平部長が、2019年度日本癌学会 学術賞「JCA-Mauvernay Award」を受賞

令和元年9月、がん化学療法センター基礎研究部の片山量平部長が、2019年 度日本癌学会学術賞「JCA-Mauvernay Award」を受賞した。

8)希少な子宮・卵巣がん肉腫のゲノム異常パターンに基づく新しい分類法を開発 令和元年10月31日に公表。がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん 研究シーズ育成プロジェクトの森誠一プロジェクトリーダーらは、予後が不良な子 宮・卵巣がん肉腫における、新たな分子型分類法を確立し、腫瘍の中で、肉腫成分 が生じる分子機構を発見した。これらの知見はがん肉腫の治療戦略を変えることに つながるものである。

9)ゲノムDNAの構造をこわれやすくして遺伝子の転写を制御するしくみを解明 令和2年2月11日に公表。東京大学定量生命科学研究所の胡桃坂仁志教授、が ん研究所がん生物部の斉藤典子部長らの研究グループは、早稲田大学、熊本大学と の共同研究により、核内のノンコーディングRNA にはヌクレオソームをこわれやす くして転写をコントロールする、という新しいはたらきがあることを発見した。

なお、令和元年度事業報告には、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規 則」第34条第3項に規定する「事業報告の内容を補足する重要な事項」が存在しないの で、附属明細書を作成していない。

(20)

令和2年6月

公益財団法人 がん研究会

参照

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