4 政策、法律及び利害関係者に関する課題
4.3 市民関与
市民関与の有効な管理に対する継続的な必要性
市民関与は、引き続き CCS プロジェクトにとってのリスクと好機となる。この分野は、
プロジェクトの前進と成功に影響を与え得る利害関係者(例えば規制担当者、地元の地域 社会、マスコミとNGOを含む公衆)との交流を対象としている。CCS産業は、プロジェ クトに関するコミュニケーションがより効果的となる一般市民の認識の度合いと、懸念事 項を理解・対処するための地域社会との協力の、最適なバランスを模索している。
多くのプロジェクトが開発の最終段階を通過するのに従い、市民関与における潜在的な 課題を特定・軽減する手法を継続的に検討することが重要となってくる。これは、市民関 与におけるリスクの軽減・管理のために膨大な作業が行われる段階である。これはまた、
CCS プロジェクトが、他の CCS プロジェクトから、そして、利害関係者の関与を効果的 に計画・実践し公衆のあらゆる懸念事項に包括的に対処するためのツールから、引き続き 支援を必要とする段階でもある。
既存のプロジェクトから学んだ教訓の特定・利用は、他プロジェクトの提案者又は発展 途上国政府が、より有効な手法を実施する一助となる。
ケーススタディ
Collie South West Geosequestration Hub -地域社会との協議
西オーストラリア州单西部に位置する Collie South West Geosequestration Hub (Collie Hub)は、市民関与に関する手法の一環として、地域社会協議ワークショップの援助を
CSIROに依頼した(Jearnneretら 2011)。同ワークショップの目的は、以下のとおりであっ
た。
1. 気候変動科学及び低排出エネルギー技術、特に CCS に対する公衆の知識及び姿勢を 評価する
2. Collie Hub構想に関する研究及び評価への将来的な市民関与のための枞組みを確立す
る
3. 気候変動科学及びエネルギー技術の選択肢に関する課題及びリスクについて、より多 くの情報が提供された状態での対話を可能にするための 1 日間の参加型ワークショ ップの有効性を調査する
上述のワークショップの成果のまとめから、Collie Hubは、対象分野に関する事実に基 づき作成される適切な戦略の開発に必要な、地域社会の認識と姿勢についての深い理解 を得ることができた。さらにCSIROは、豪州全土で実施された他のワークショップから
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の情報を照合することで、異なる地域・地域社会間の比較ができ、気候変動への見解や 低炭素エネルギー技術をより全体的に理解することができた。この種の情報は、どのよ うなコミュニケーション手法が、異なる聴衆からの同意の取得とCCSへの姿勢の変化に 影響するかを政府及びプロジェクト提案者が評価する上で重要である。
市民関与のための活動の当インスティテュートの更なる観察
当インスティテュートの今年のプロジェクト調査では、市民関与戦略についての理解を 深めるために、具体的な情報の提供をプロジェクト提案者に求めた。その目的は、産業界 が品質戦略の指標を特定し、関連する手法の品質を検証し、さらに産業の総合的な進歩と リスクへの曝露についてのより正確な評価のため、こうした指標の奥行きについて共有す ることである。
市民関与の戦略を「実施中」、「策定中」、「依然として必要」又は「必要なし」であるか を質問したプロジェクトのうち、75%が、「実施中」又は「策定中」と回答した。これは前 向きな結果である。
以下の四つの主要分野に重点を置いた、更なる質問を行った。
・ 貯留サイトの地域社会の理解
・ 有効な戦略的計画のためのデータ解析
・ リスク緩和のための活動
・ 市民関与によるリスクの継続的な監視
これら分野では、貯留サイトの地域社会に主な重点が置かれており、その理由は、利害 関係者にとって最大の不確実性が存在しており、関係及び信頼の構築に係るリスクがしば しば最大になるためである。各プロジェクトには、各品質係数に対応する一連の成果を特 定し、自己評価するよう要請した。これらの品質係数及び一連の成果の詳細は、付属資料 F に示している。この結果から、各プロジェクトの地域社会ごとの特別な手法が要求され る分野では、結果の一般化が困難であることがよく分かる。このため、プロジェクトごと の詳細な活動の比較には限界がある。しかし、高いレベルでのプロジェクトの推進に関わ るデータを提供すること及び市民関与に関する活動に利用可能なツールと支援手段を更に 進歩させるために利用可能なその他の見解を示すことはできる。
最後に、発展途上国でのプロジェクトに関するデータ収集が初期段階であることは明ら かである。発展途上国でのプロジェクト件数の増加に従い、プロジェクトを成功に導く技 能と資源には、市民関与を考慮に入れることが必要になる。
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ケーススタディ
ScottishPower – 主要な対象者層に CCS に関する知識の普及を図る
ためのユニークな手法
ScottishPower は、市民関与戦略の一環として、気候変動緩和及びエネルギーポートフ
ォリオとしてのCCSの知識を拡大するため、地域社会の特定層への草の根活動の支援を 行った。ScottishPowerとスコットランド政府は、CCSに焦点を合わせた高等学校教育プ ログラムの創設プロジェクトに共同出資した。同プログラムは、エディンバラ大学のス コットランド地球科学教育フォーラム(SESEF)が開発した地球科学教育プログラムに基 づいて構築されたものであり、以下の二つの目的がある。
■ Longannet発電所(ScottishPowerのフラッグシップCCS実証サイト)付近の地域社会の
CCSへの理解の深化
■ 先端科学技術の事例を用いることで、化学、数学、物理学、地理学などを、将来の研 究課題を選択する高校生にとっての生きた学問にする
同プログラムの最も重要な要素の一つは、SESEF チームを、プログラムの独立したパ ートナーとして活用することであった。すなわち、学生には、CCS は数多くある気候変 動緩和策の一つとして紹介し、その後、発電所のCCSチームの専門知識を得られるよう にした。
市民関与に関する戦略の策定援助のための資料
CCS産業が発展を続けると共に、CCS利害関係者が様々な対象層に関与する際の助力と して、当インスティテュートを含む様々な機関が開発した手法・資源も、目に見えて発展 してきている。
プロジェクト提案者及び他の利害関係者への情報提供及び援助を目的とする最近の発行 物を表15に示した。
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表15 市民関与に関する資料
発行物 説明 関与組織 入手先
Communications & Engagement Tool for CCS Projects
プロジェクト提案者が市民関与を より効果的に計画することを援助 するための実践ガイド。CCS 実証 の成功に必要な社会的考慮事項に 対 処 す べ く 市 民 関 与 の 様 々 な 手 法・活動を紹介する。
CSIRO、ECN、
Pacific Northwest Laboratory、イリ ノイ大学、グロ
ーバルCCSイン
スティテュート (Ashworthら 2010)
グ ロ ー バ ル CCS イ ン ス テ ィ テ ュ ー ト ウ ェ ブ サ イト
Public Engagement Self Assessment Tool
プロジェクト提案者が質の高い利 害関係者の関与を効果的に計画し 実施することを援助する。プロジ ェクトが開発サイクルの各段階で 推奨する成果を特定することで、
市民関与手法を自己評価できる。
Global CCS Institute (2011d)、世界資 源研究所
グ ロ ー バ ル CCS イ ン ス テ ィ テ ュ ー ト ウ ェ ブ サ イト
Public Engagement: Lessons Learned from European CCS Demonstration Projects Network
CCS プロジェクト提案者が、これ までに行われた市民関与活動と、
コミュニケーション活動の有効性 を理解し、各プロジェクトが、ど のように市民関与についての包括 的手法を構築するかを援助する報 告書。
European CCS Demonstration Project
Network(2010)-
欧州委員会
欧州 CCS 実 証 ネ ッ ト ワ ー ク ウ ェ ブ サイト
Social Site Characterisation Report プロジェクト開発者が貯留サイト の社会的特性把握を行う理由及び 方法の検討を始めている。
CSIRO, AJW Inc. (Wade and Greenburg 2011)
グ ロ ー バ ル CCS イ ン ス テ ィ テ ュ ー ト ウ ェ ブ サ イト
The Management of Public Engagement at the Local, State and Federal Levels for the Tenaska Trailblazer Energy Center Project
Tenaska Trailblazer エネルギーセン ターは、米国テキサス州において 現在開発中の石炭火力発電所であ る。この報告書は、Tenaskaが公衆 教育、事実の伝達及びプロジェク トへの支援獲得に講じた手段が説 明されている。
Tenaska Inc.(2010)
グ ロ ー バ ル CCS イ ン ス テ ィ テ ュ ー ト ウ ェ ブ サ イト
Special Eurobarometer Report – Public Awareness and Acceptance of CO2 Capture and Storage
欧州委員会は、2011 年 5 月に(27 の加盟国のうちの)12カ国でのCO2
回収貯留の認知度及び受容性に関 する世論調査結果を公表した。
TNS Opinion &
Social(2011)(エ ネルギー総局が 依頼)
欧 州 委 員 会 ウ ェ ブ サ イ ト
CCS and Community Engagement:
Guidelines for Community Engagement in Carbon Dioxide Capture, Transport, and Storage Projects
この報告書は幅広く協議され、今 後実施されるCCSプロジェクトの 意思決定に関与するプロジェクト 開発者、規制担当者及び地域社会 に対する手引きを示すよう設計さ れている。
世界資源研究所 (Forbesら 2010)
世 界 資 源 研 究 所 ウ ェ ブ サイト
この表はすべてを網羅したものではなく、このほかにも、市民関与の理解に役立ち、CCS に関する能力及び共有知識の構築に利用可能な報告書や参考文献が数多く存在する。
表15から分かるように、最近は、気候変動及びエネルギー技術に関するより広範な社会 認識の調査及び指標作り(例えば、EurobarometerによるCCS認識調査)に焦点が合わされて いる。こうしたことはプロジェクト提案者がメッセージを伝達し、地域社会に関与する手