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レール傷検知性能向上への取り組み

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Academic year: 2022

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キーワード: レール探傷車,探触子,シェリング,拡幅

連絡先 : 〒105-0023 東京都港区芝浦 1-10-1 伊岳ビル 6F TEL 03-3452-9381 FAX 03-3451-4106

レール傷検知性能向上への取り組み

日本機械保線株式会社 正会員 ○遠藤 哲矢 日本機械保線株式会社 下前 卓

1. はじめに

東海道新幹線では年 2 回走行する超音波レール探傷車(以下、「レール探傷車」という。)により、レールの傷を検 知し、レール折損事故を未然に防いでいる。このレール探傷車のレール傷検知性能をさらに向上することができれば、

いままで以上に高品質な線路の提供と安全・正確・快適な輸送サービスに貢献できると考え本取り組みを行った。

2. レール探傷車測定における問題点 (1) シェリング傷の未検知事象と対策

H19年度測定において、レール探傷車でフィールドコーナ ー(以下、「FC」という。またゲージコーナーを以下、「GC」と いう。)側に発生したシェリング傷を検知できない事象が発生 した。JRとメーカーにより調査した結果、当時使用していた丸 型探触子(写真-1)は、超音波が端部に行くほど弱くなる特 性であることが判明した。対策として端部でも超音波が強い 角型探触子がH19年度下期測定より導入された(写真-2)。

写真-1 丸型探触子 写真-2 角型探触子 (2) 角型探触子で未検知となったシェリング傷

角型探触子導入後のH20年度の測定において、再びFC 側に偏るシェリング傷の未検知事象が発生した(図-1)。こ の原因は探触子の走査位置に対してFC側に外れた位置に シェリング傷が発生したためであった(図-2)。

(3) シェリング傷がFC側に偏る理由

シェリング傷はレールと車輪との接触面が起点となり発生す る。東海道新幹線では、H24年度より走行安定性をより向上さ せるために、レールと車輪との接触面がレール中心より FC 側になるようにレール削正車で削正を行っている。そのため 今まで以上にシェリング傷がFC側に偏って発生することが予 想された。

図-1 角型探触子導入後に発生した未検知のシェリング傷

図-2 シェリング傷の発生位置と探触子の走査位置 3. 対策の検討

FC側に偏って発生する傷を検知するために以下の案を検 討した。

(1) 探傷感度の増幅

探傷感度を増幅する案を検討した。小さな傷を敏感に検知 できると予想し増幅を試みたが、同時にノイズが多発し、傷と ノイズの区別が困難なため不採用とした。

(2) FC側へ走査位置を変更

走査位置をレール中心からFC側へ変更する案を検討した。

しかし、これはFC側への探傷位置の移動でしかなく、GC側 の探傷範囲が狭くなり、今まで検知できていた傷を見落とす 可能性があり不採用とした。

(3) FC側に探触子を追加

FC側に頭部傷検知用の探触子を追加する案を検討した。

しかし、現状のレール探傷車には新たに探触子を追加する スペースがなく、探傷器の測定チャンネルも全て埋まってい た。探触子の追加には測定台車の大幅な改修が必要となる ため、不採用とした。

進行方向

10 14 レール中心

FC側 GC側

5 探触子 20

15 7

30

(単位:mm)

土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

‑867‑

Ⅵ‑434

(2)

(4) 探触子をFC側に拡幅

探触子の形状とレール頭部の接触状況(図-3)に着目 し、探触子をFC側へ拡幅する案を検討した。拡幅すること でGC側の探傷範囲を保持しつつFC側の傷を検知できる ようになる。しかし、拡幅し過ぎるとレール頭部から側面にか けての急な13Rの曲面に探触子がかかってしまい、水膜が 形成でずに測定不良になってしまう。そこで、レール頭部の 平面に近い600Rの範囲内で最大限に探触子を拡幅するこ とが妥当だと判断し、拡幅量をこの条件を満たす5mmとし た。図-4は実際に試作した拡幅探触子である。

図-3 探触子とレール頭部の接触状況 図-4 拡幅探触子

4. 性能試験と改良の実施 (1) 基地内性能試験の結果

拡幅前後の探触子の性能を確認するため、保守基地内の レールの中心及びFC側に人工傷が入っているテストレール で性能試験を行った。拡幅探触子は、取付け位置を変更でき るようにメーカーが提案した隙間調整用金属と共にシューに 取り付けた(図-5)。

拡幅後の探触子の性能試験の結果は、レールの中心の傷 を拡幅前と同様に検知し、さらにGC側の傷も検知できた。探 触子の拡幅により、検知性能が低下することはなくFC側への 探触子拡幅の有効性を確認した。

(2) 本線性能試験の結果とシューの改良

本線においても拡幅探触子の性能試験を行った。その結 果、走行速度が20km/h以上になるとノイズが発生した。原因 は隙間調整用金属が取り付くようにシューを加工したため、シ ューの両端の厚みが16mmから9mmに減り(図-6)、レー ルとシューの間に隙間が生じ、水膜を保持できなくなったか らであった。対策として発生品を利用して、隙間調整用金属 をなくし拡幅探触子がシューに隙間なく取り付くようなシュー

を試作した(図-7)。

改良後のシューの結果は、速度上昇によるノイズは発生せ ず、正常な測定ができることを確認した。これによりH26年度 上期の測定より拡幅探触子を正式に導入することになった。

5. 本線測定による成果の確認 (1) レール探傷車の傷検知数

図-8は拡幅探触子を導入したH26年度上期と過去3期 分のレール探傷車の頭部傷検知数(東京~新大阪間上下線

1030km 分)を比較したグラフである。頭部傷検知数にはシェ

リング傷ときしみ割れを含む。このグラフから過去3期分の頭 部傷検知数に大きな変化がない一方、探触子を拡幅後は約 350個の頭部傷を検知しており、過去3期分と比較して約1.7 倍増加していることが確認できた。

(2) FC側シェリング傷検知数

図-9は探触子拡幅前後であるH26年度上期とH25年度 下期のシェリング傷の断面方向の発生位置(新横浜~名古屋

間上下線678km分)を比較したグラフである。このグラフから

探触子拡幅後は拡幅前と比較して、FC側で約3倍のシェリン グ傷を検知できたことが確認でき

た。また、写真-3 は実際に拡幅 探触子で検知した FC 側に偏って 発生したシェリング傷である。

6. おわりに

本取り組みでは、FC 側にレールと車輪の接触面が偏って いる現状に対応し、摺動式のレール探傷車として初めて拡幅 した探触子を採用し、レール傷検知性能を向上させることが できた。

FC GC

レール中心 50R

13R

600R 20mm10mm 10mm 10mm 15 mm 3mm

振動子 探触子 10mm 3mm

5mm拡幅

水膜

レール 長手方向

0 50 100 150 200 250 300 350 400

H24下期H25上期H25下期H26上期

拡幅前

拡幅後

0 5 10 15 20 25

GC側 中心 FC側

拡幅前 拡幅後

図-5 拡幅探触子の取付状態 (隙間調整用金属有)

図-7 レール探傷車における 頭部傷検知数の比較 図-6 従来の探触子用のシュー(左)

と拡幅探触子用のシュー(右

図-7 拡幅探触子の取付状態

(シュー改良後)

図-8 レール探傷車における 頭部傷検知数の比較

図-9 レール断面方向の発生 位置別検知数の比較

写真-3 拡幅探触子で検知した シェリング傷

位置別検知数の比較 土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

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参照

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