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パーソナリティ研究 2006 第14巻 第3号 281–292

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問題と目的

成人愛着研究は,「成人愛着スタイルは,成人 の愛着行動パターン3)の違いを反映する」と理論 的に前提し(暗黙の前提),研究を展開してきた. この理由は,(1) Hazan & Shaver (1987) が成人の 恋愛を愛着プロセスとして捉える際に,「成人の 愛着スタイルは乳幼児の愛着分類とほぼ同義であ る」(p. 513)と仮定し,かつ (2) Bowlby (1969) が 「人は成人になっても愛着行動を行う」(p. 207)と 仮定しているためである. 今日までに,愛着スタイル尺度が良い心理学的 属性を備えていることは確認されているが (e.g., Brennan, Clark & Shaver, 1998),この暗黙の前提 が妥当であるかどうかはほとんど検討されていな い.例えば,Hazan & Shaver (1987) は,成人愛着 スタイル尺度をはじめて開発する際に,新奇場面 法 (Ainsworth, Blehar, Waters & Wall, 1978) で観察 される乳幼児の愛着行動パターンの記述を成人向 けに翻訳して用いた.だが彼女たちは,成人にお いて愛着スタイルによる愛着行動パターンの違い が実際に存在するかどうかを検討していない.ま ©日本パーソナリティ心理学会 2006

成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを本当に

反映しているのか?

1,2)

中 尾 達 馬

加 藤 和 生

九州大学大学院人間環境学研究院 九州大学大学院人間環境学研究院 本研究では,従来の成人愛着研究が暗々裏に仮定してきた「成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターン の違いを反映する」という理論的前提の妥当性を実証的に検討した.大学生 378 名に対して,成人愛着スタ イル尺度と本研究で作成した成人愛着行動尺度を実施した結果,以下の 2 点が示された.すなわち,成人愛 着行動を直接的愛着行動(安全欲求を直接的に表現する愛着行動)と間接的愛着行動(自他の適切な心理的 距離の調整にとらわれるため,安全欲求を間接的に表現する愛着行動)の 2 種類に分類した場合に,成人 は,(1)「親密性の回避」が低いほど直接的愛着行動をより行い,(2)「見捨てられ不安」が高いほど間接的 愛着行動をより行う.また,これらの結果は,愛着スタイルの 4 分類を用いた分析においても確認できた. 以上の結果から,本研究により,上記の理論的前提が妥当であることが実証された. キーワード:愛着行動パターン,愛着スタイル,成人,成人愛着行動尺度 1) 本研究は日本心理学会第 65 回大会(つくば国際会議 場)において発表を行いました. 2) 本研究を行うにあたりご指導下さいました九州大学 丸野俊一先生,京都大学遠藤利彦先生をはじめ,い ろいろとご協力・助言をして頂きました笠原正洋先 生,假谷園昭彦先生,藤田豊先生,藤田敦先生,研 究室の皆様方に心より感謝を申し上げます.また, 調査にご協力頂いた方々にこの場を借りて謝意を表 します. 3) 本研究では,成人愛着行動を次のように定義する. すなわち,「ネガティブ感情喚起場面(e.g., 身の危険 を感じる,自分が大切だと感じているものが傷つけ られる)において,そのネガティブ感情を解消する ために,他者と何らかのかかわりを持とうとするこ と,またはその意図にもとづき実際のやりとりを行 うこと」(中尾・加藤,2001)である.

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た,その後の彼女らの尺度を用いた多くの研究で も,上記の前提を実証的に検証した研究はほとん どない(中尾・加藤,2001). この暗黙の前提が妥当であることが確認されな ければ,愛着スタイル(パーソナリティ特性)と 愛着行動(パーソナリティ関連行動)には何ら関 連がないことになり,成人において愛着スタイル を設定する必然性がなくなってしまう.さらに, 「愛着行動が繰り返されることで愛着の内的作業

モデル (IWM; Internal working models) が形成さ れ , そ れ が ま た 愛 着 行 動 に 影 響 を 与 え る 」 (Bowlby, 1969)という愛着理論にとって中心的な前 提を成人では仮定できないだろう.だからこそ, 暗黙の前提の妥当性を検討することは不可欠であ る. だがこの検証を行う前に,まず次の点を明らか にしておかなければならない.それは,現在の成 人愛着研究では愛着スタイルがどのように概念 化・測定されているのかということである. 成人愛着スタイル 成人愛着研究では,今まで に数多くの愛着スタイル尺度が開発されてきた (Brennan et al., 1998).だが,現在では愛着スタ イルの概念化・測定方法が次のように集約されつ つある(e.g., 中尾・加藤,2003). すなわち,愛着スタイルの分類数は,乳幼児の 愛着分類に対応した 3 分類から 4 分類(安定型, 拒絶型,とらわれ型,恐れ型)へと確定しつつあ る(詳細は中尾・加藤,2003 参照).そして,こ れら 4 分類の特徴は,愛着スタイルを規定する次 の 2 因子(以下,愛着スタイルの 2 因子と略す) に集約されることが明らかとなっている (e.g., Bren-nan et al., 1998). す な わ ち ,「 親 密 性 の 回 避 (Avoidance)」(以下,「回避」と略す)と「見捨 てられ不安 (Anxiety)」(以下,「不安」と略す) である(愛着スタイルの 4 分類と 2 因子の関連に ついては脚注 4 を参照)4) . そのため冒頭で述べた暗黙の前提の妥当性を確 認するためには,現段階では,この 2 因子と成人 愛着行動の相関関係を実証することが必要となる. 乳幼児では,「回避」が低いほど養育者との近接 を求め,「不安」が高いほど養育者に対して怒り を伴った抵抗行動を示すことが明らかになってい る (Fraley & Spieker, 2003).乳幼児と成人の愛着 には連続性がある (Bowlby, 1969) ため,このこと にもとづくならば,成人においても,「回避」が 低いほど,あるいは「不安」が高いほど,ある種 類の愛着行動を行うことを示す必要があろう. 成人での愛着スタイルと愛着行動の関連 それ では,これら 2 因子と成人の愛着行動について, 今までにどのような証左が得られたのだろうか. このことに関連する研究としては,6 つの成人愛 着行動研究が挙げられる(Brennan & Shaver, 1995; Collins & Feeney, 2000; Fraley, Davis & Shaver, 1998; Fraley & Shaver, 1998; 中尾・加藤,2005, 2006). これらの研究に共通する結果を整理すると次のよ

4) 愛着スタイルの 4 分類と 2 因子の関連は,以下の通 りである (Bartholomew & Horowitz, 1991; Brennan et al., 1998).すなわち,(1) 安定型 (Secure) は「回避」 と「不安」の傾向がともに低いスタイル,(2) 拒絶型 (Dismissing) は「回避」の傾向が高く「不安」の傾 向が低いスタイル,逆に(3)とらわれ型 (Preoccupied) は「回避」の傾向が低く「不安」の傾向が高いスタ イル,最後に(4) 恐れ型 (Fearful) は「回避」と「不 安」の傾向がともに高いスタイルである.また,「回 避」が高いほど,他者観(他者についての IWM)は ネガティブであり,「不安」が高いほど,自己観(自 己についての IWM)はネガティブである. 5) サポート・シーキングを「安全な隠れ家 (safe haven)」 の愛着行動として捉える場合もある (e.g., Collins & Feeney, 2000).しかし,両者にはいくつかの違いが あるため,成人愛着行動研究にはサポート・シーキ ング研究を含めなかった.例えば,愛着行動は自他 の近接性を求める行動であるが (Bowlby, 1969),サ ポート・シーキングは必ずしもそれを得るために行 うとは限らないである. だが,愛着スタイルの 2 因子とサポート・シーキン グの関連についても,6 つの研究とほぼ同様の結果が 得られている.すなわち,ほとんどの研究では,「回 避」とサポート・シーキングの頻度の間には負の相関 関係があったが (e.g., Mikulincer, Florian & Weller, 1993),「不安」とサポート・シーキングの頻度の間に は有意な相関関係がほとんど認められなかった.

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うになる5) .

「回避」の因子と愛着行動の頻度との間には負 の相関関係があった.例えば,Fraley & Shaver (1998) は,恋人同士の一方が飛行機に乗り込み, 他方が見送るという空港での分離場面において, 近接維持行動を観察した.そして愛着スタイルに よりその行動がどのように異なるのかを検証した ところ,「回避」得点が低い人ほど近接維持行動 を行うという結果が得られた.よって,愛着スタ イルの違いを説明する上で,「回避」の因子を設 定することの妥当性が示されたと言えよう. 一方,「不安」の因子と愛着行動の頻度との間 では有意な相関関係が認められなかった.例えば, Fraley & Shaver (1998) では,「不安」得点が高い 人ほど,恋人と近接することに対して抵抗を示す という結果は得られていない.これは,愛着スタ イルの違いを説明する上で,「不安」の因子を設 定することの妥当性を疑う知見ではないだろうか. 成人における愛着行動の特徴 では,なぜ成人 において「不安」が高いほどある種類の愛着行動 を行うという結果が得られていないのだろうか. その理由としては,上述の 6 つの研究全てが乳幼 児愛着研究の枠組みを単に成人に適用したに過ぎ ず,成人愛着行動における「成人であるが故」の 特徴を考慮していないということが考えられる. 例えば,Brennan & Shaver (1995) や Fraley et al. (1998) は,乳幼児の愛着行動の記述だけを参考に しながら成人愛着行動の測度を作成していた.ま た,Fraley & Shaver (1998) は,空港の分離場面 で,乳幼児が行うような他者に対する抵抗行動の 観察を行ったが,そのような行動は成人ではほと んど観察されなかった. 成人の愛着行動には,乳幼児とは異なり,状況 や愛着対象の考えなどを考慮しながら愛着対象と の間で協調的相互交渉を行うという「目標修正的 協 調 性 (goal-corrected partnership)」 (Bowlby, 1969) が備わっている.この目標修正的協調性と は,より詳細に述べると,愛着対象の状況,愛着 対象との関係の性質,自分の主観的安全感 (secu-rity) などを十分に加味しながら,愛着対象と自分 の両者に都合がよくかつ主観的安全感を最大限に 満たすことができるように愛着行動を調整するこ とである.そのため,成人は愛着行動を行う際に, 自分の主観的安全感だけでなく,自他の適切な心 理的距離の調整(以下,対他調整と呼ぶ)にも焦 点を当てることが求められる. 自他の心理的距離が適切にとれていると感じて いる場合には,成人は自分の主観的安全感を直接 的に表現できるであろう.だが,相手との関係性 や問題の重篤度から相手に許容されると想定でき る心理的距離よりも自分の愛着行動が示す心理的 距離が近くなりすぎるのではないかと感じる場合 には,「成人であるが故」の他者に対する遠慮・ 気兼ねや自己防衛が入り込む可能性があるだろう. さらには,他者からコミットメントが得られてい ないと感じる場合には,成人であるからこそ戦略 的に(あるいは退行的に)甘え行動に類似した形 で(e.g., すねる,ふてくされる),他者の反応を より引き出そうとするであろう. このように考えると,成人の愛着行動は,対他 調整という観点から,次の 2 種類に分類できる可 能性が高い.すなわち,1 つは,「対他調整を適度 にしつつも,安全欲求(自分の主観的安全感を得 たいという欲求)を直接的に表現する愛着行動」 である(以下,「直接的愛着行動」と呼ぶ).もう 1つは,「対他調整を過剰にしてしまうために,そ れにとらわれ,安全欲求を間接的に表現する(あ るいは,してしまう)という愛着行動」である (以下,「間接的愛着行動」と呼ぶ). だが 6 つの成人愛着行動研究では,直接的愛着 行動は測度の中に組み込まれていても,間接的愛 着行動は測度の中にほとんど組み込まれていな かった.それゆえ,「不安」と愛着行動の頻度の 間に正の相関関係が認められなかった可能性が高 い.なぜなら,「不安」が高いとは,自己観(自 己についての IWM)がネガティブであるというこ

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とであり (Brennan et al., 1998),自己を傷つけな いように,愛着行動が不自然なあるいはぎこちな い形態になる(間接的愛着行動を行う)と考えら れるためである.さらに,「不安」が高いほど,自 己観を保つためには他者からの承認を必要として おり (Bartholomew & Horowitz, 1991) かつ当該問 題の解決を先送りできない(金政,2005)ので, 他者からのコミットメントを即時的かつ必要以上 に引き出そうとして甘え的要素まで含めながら間 接的に安全欲求を表現すると考えられるためであ る. 目的と予測 以上のことを整理すると,本研究 の目的は,「成人愛着スタイルは,成人の愛着行 動パターンの違いを反映する」という暗黙の前提 の妥当性を検証することである.そのために,ま ず成人の直接的および間接的愛着行動を測定する ための成人愛着行動尺度を作成する.そして,以 下の 4 つの予測を検討する. 予測 1-1 :先の 6 つの成人愛着行動研究の結果 を踏まえるならば,「回避」が低いほど直接的愛 着行動を行う(6 つの先行研究結果の確認). 予測 1-2 :「回避」が低い安定型やとらわれ型 は,「回避」が高い拒絶型や恐れ型に比べて直接 的愛着行動を行う. 予測 2-1 :対他調整および安全欲求を間接的に 表現するという観点からは,「不安」が高いほど 間接的愛着行動を行う. 予測 2-1 :「不安」が高いとらわれ型や恐れ型 は,「不安」が低い安定型や拒絶型に比べて間接 的愛着行動を行う. なお,「回避」「不安」を用いて得られた結果を, 愛着スタイルの 4 分類を用いても補足的に確認す るのは,現在,愛着における個人差を類型論的に 捉えるべきかあるいは特性論的に捉えるべきかに ついて論争の最中である (e.g., Fraley & Spieker, 2003) ためである.したがって,現時点では,こ の両者の立場から結果を示す必要がある.

調査対象者 調査対象者は,大学生 378 名(平 均年齢 18.9 歳,SD1.17; 男性 104 名,女性 269 名,無記入 5 名)であった. 質問紙 質問紙は,フェイスシート(i.e., 学 部,学年,年齢,性別,恋人の有無),愛着スタ イル尺度,成人愛着行動尺度から構成された. 本研究では,愛着スタイル尺度と成人愛着行動 尺度において,愛着対象を一般他者(i.e., 人)と した.なぜなら成人は,乳幼児に比べると愛着行 動 が 顕 在 化 し に く い ( e.g., 行 わ れ に く い ) が (e.g., Weiss, 1982),一定以上の親しさを持つ他者 に対してであれば愛着行動を行うことができる (Bowlby, 1969) ためである.そのため,成人愛着 行動の基本的パターンを捉えようとすれば,愛着 対象を特定対象(e.g., 恋人)に設定せずに,相対 的・全般的な傾向を捉える必要がある.また,こ のことに合わせて,愛着スタイル尺度についても, 一般他者版を用いることにした. 愛着スタイル尺度(2 因子)愛着スタイルの 2 因子(回避,不安)を測定するための尺度として は,「親密な対人関係体験尺度(the Experiences in Close Relationships inventory」(Brennan et al., 1998, 以下,ECR と略す)の一般他者版(中尾・ 加藤,2004)を用いた6).項目数は 36 であり,7 件法(1「全く当てはまらない」から 7「非常 によく当てはまる」)で評定を求めた.なお,一 6) 「回避」の項目例は次の通りである:私は人に心を 開くのに抵抗を感じる.心の奥底で何を感じている かを人にみせるのはどちらかというと好きではない. 私は人とあまり親密にならないようにしている. また,「不安」の項目例は次の通りである:私は一 人ぼっちになってしまうのではないかと心配する.私 が人ととても親密になりたいと強く望むがために,と きどき人はうんざりして私から離れていってしまう. 私は,人が必要なときにいつでも私のためにいてく れないとイライラする.

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般他者版 ECR の信頼性や妥当性は,中尾・加藤 (2004) において確認されている.

愛着スタイル尺度(4 分類)愛着スタイルの 4 分類(安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型)を 決定する尺度としては,「関係尺度(Relationship Questionnaire)」(Bartholomew & Horowitz, 1991, 以下,RQ と略す)の日本語版(加藤,1999)を 用いた.RQ は,一般他者についての愛着スタイ ルの 4 分類を測定するための強制選択式尺度であ り,その信頼性や妥当性は,加藤 (1999) や中尾・ 加藤 (2004) で既に確認されている. 回答に際し,調査対象者は 4 つの愛着スタイル の特徴が記述してある文章を読み,それぞれにつ いて自分にどのくらいよく当てはまるかを 7 件法 で評定した.次に,その 4 つの中から最もよく当 てはまる愛着スタイルを 1 つ選択した.RQ では, この最後に 1 つ強制選択させたものを,その個人 の愛着スタイルとみなす.

成人愛着行動尺度(AABS: Adult Attachment Behaviors Scale) 成 人 愛 着 行 動 尺 度 ( 以 下 , AABSと略す)は,成人の直接的および間接的愛 着行動を測定するための尺度である(26 項目,項 目例は Table 1 参照).成人の愛着行動の特徴であ る対他調整性を強調するためには,AABS の項目 の中に具体的な愛着行動だけでなくそれを行う理 由(目的や動機)を含む必要があった7).そのた め項目の作成は,以下の 2 つのステップにより 行った. まず,行動的(方略的)側面に焦点を当て作成 された愛着行動方略尺度( 中尾・加藤, 2006) に,女子大学生 191 名の愛着行動に関する自由記 述の内容分析(中尾・加藤,2001)から得られた 「愛着行動を行う理由」の情報を追加し,項目を 作成した.次いで,対他調整や間接的愛着行動と いう観点から,再度,女子大学生 191 名の自由記 述(中尾・加藤,2001)を詳細に検討し,先ほど 作成した項目群に含まれていない愛着行動やそれ を行う理由の要素がある場合には,それらにもと づき新たに項目を作成・追加した. 他の類似概念(e.g., 恋愛行動)との違いを明 確にするために,調査対象者には「主観的安全感 が脅かされた状況」を思い浮かべながら回答を 行ってもらう必要があった.そのため,以下の操 作を行った.すなわち,「自分が失恋したとき」, 「自分が病気やケガをしたとき」,「今までと生活 環境が変わったとき(例:一人暮らし,進学な 7) AABSの項目は,具体的な愛着行動だけでなくそれを 行う理由を含むため,ダブルバーレル質問になって しまう.だが,具体的な愛着行動とそれを行う理由 を分離して項目化すると以下のような欠点が生じる. 具体的な愛着行動だけを項目化すると,対他調整が 不明瞭になってしまう.例えば,愛着行動方略尺度 (中尾・加藤,2006)の「平気なそぶりで話した」や 「まるで他人のことのように話した」では,これらの 行動が,他者に話すことに抵抗があるのか,あるい は相互作用を回避したかったのかが不明瞭であっ た. さらに,成人は,乳幼児とは異なり,愛着人物と して恋人あるいは配偶者が選択されることがあるた め,愛着関係の中に愛着行動システムだけでなく, 養育行動システム,性的行動システムが入り込んで しまう (e.g., Weiss, 1982).そのため,例えば「側に 行く」という行動(乳幼児における愛着行動)が観 察されたとしても,それは愛着行動システムが活性 化されたため行われた行動なのか,他の行動システ ム(養育行動システム,性的行動システム)が活性 化されたため行われた行動なのかの区別がつきにく い.そのため,愛着行動を行う理由を項目の中に含 める必要性が生じる. また,愛着行動を行う理由だけを項目化してしま うと,その結果行われる具体的な行動は愛着行動か どうかが不明瞭になってしまう.例えば,安全欲求 尺度(中尾・加藤,2006)の「安心したかったから」 では,その結果として愛着対象に近接するという愛 着行動が行われたのかあるいは一人で音楽を聴くと いうような愛着行動以外のコーピングが行われたの かという点が不明瞭になってしまう. そのため本研究では,ダブルバーレル質問を用い ることで生じる調査対象者の混乱という欠点よりも, 愛着行動とそれを行う理由を分離することで生じる 欠点の方がよりデメリットが大きいと考え,このよ うな形式をとった.

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Table 1 AABSのプロマックス回転後の因子パターンa) 項目 F1 F2 F3 F4 F1:“すねた伝達” a.90,男女込み: 2.55(1.30)b),男性: 2.63(1.28),女性: 2.50(1.32) 01. 相手が自分の想像したような手助けをしてくれなかったので,ついつい相手に八つ当た .80 .04 .02 .09 りをしてしまった. 02. 相手が真剣にはげましてくれていないと思い,少しすねたそぶりをみせた. .80 .02 .07 .12 03. 思いどおりに相手から共感を得られなかったので,ついつい相手に八つ当たりをした. .78 .05 .03 .13 04. 相手がこれ以上話をしたくないそぶりを見せると,私はついつい不機嫌な顔をした. .78 .03 .11 .15 05. 相手が真剣にアドバイスをしてくれていないと感じたので,少しいじけたそぶりをみせた. .75 .09 .06 .13 06. 相手に自分の気持ちを聞いてもらいたかったが,相手が今いそがしいと言ったので,少し .67 .04 .07 .07 ふてくされてみた. F2:“他者への懸念” a.85,男女込み: 3.47(1.26),男性: 3.54(1.22),女性: 3.43(1.28) 07. 今かかえている問題を一緒に考えてほしかったが,なかなか言い出せなかった. .10 .86 .07 .03 08. 自分の気持ちを受けとめてほしかったが,相手に迷惑がかかるかもしれないので,なかなか .13 .77 .02 .05 言い出せなかった 09. 相手と一緒にいたかったが,そのことを相手に伝えることに抵抗が.あったので,なかなか .01 .70 .11 .02 言い出せなかった. 10. 相手に手助けしてほしいことがあったが,相手がイヤな顔をするかもしれないと思ったので, .12 .68 .08 .06 手助けを求めなかった. 11. 共感してほしいとは思ったが,相手に悪いと思い,なかなか自分の気持ちをうちあけ .05 .61 .08 .11 なかった. 12. 相手に手助けをしてほしかったが,そのことをうまく表現することができなかった. .21 .55 .03 .10 F3:“近接性維持” a.77,男女込み: 3.86(1.33),男性: 3.81(1.43),女性: 3.87(1.30) 13. たとえ言葉をかわさなくても相手と一緒にいるだけで元気がわいてくるので,できるだけ .17 .11 .70 .01 一緒にいようとした. 14. 自分を守ってもらうために,できるだけ一緒にいようとした. .16 .02 .68 .18 15. 相手とどうしても直接会って話をしたかったので,会う約束をとりつけた. .08 01 .56 .06 16. 一人でいたくなかったので,いつもより長く相手と一緒にいた. .01 .01 .54 .10 17. 今すぐ相手に話を聞いてもらいたかったので,相手をさがしたり,連絡をとろうとした. .03 .09 .52 .23 F4:“素直な伝達” a.84,男女込み: 4.66(1.46),男性: 4.33(1.38),女性: 4.77(1.48) 18. 今かかえている問題を一緒に考えてほしかったので,自分の状況を具体的に話した. .04 .05 .10 .95 19. この相手なら何か状況を良くするためのヒントをくれると思ったので,自分の状況をできる .08 .01 .01 .69 だけくわしく話した. 20. 相手になぐさめてほしかったので,自分の気持ちをつつみかくさず話した. .06 .05 .24 .58 21. この相手なら何を言っても受けとめてくれると思ったので,自分の本当の気持ちを全て .05 .05 .27 .51 話した. 因子間相関 F1 F2 F3 F4 F2 .36 F3 .34 .03 F4 .11 .27 .61 a) AABSの教示は次の通りである:先ほどのような状況(自分が失恋したとき,自分が病気やケガをしたとき,など;状況の具体的 内容は中尾・加藤,2005 参照のこと)では,人はきっと「不安」「悲しみ」「落ち込み」「恐れ」「ストレス」やこれらのいくつかが 混ざりあったようなマイナスの感情を体験するのではないでしょうか.人はこのような感情を体験するとき,誰かのところに行っ て解消しようとすることがよくあります(例:電話で相談する,直接会って話を聞いてもらう,など).以下にはそのような行動が具 体的にあげてあります.あなたはこれらの行動をどのくらいよく(ひんぱんに)しましたか.過去 1 年くらいにあったことで, マイナスの感情を「強く」体験したときの状況を思い浮かべながら,当てはまる番号に○印をつけてください.なお,下の文(Table 1の項目のことを指す)で使っている「相手」とは,あなたがかかわりを持った相手のことです. b)数字はそれぞれ男女込み,男性のみ,女性のみの場合の平均値 (SD) を示す.なお,t 検定の結果,「F4 :素直な伝達」において のみ性差が得られた (t(367)2.60, p.01).

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ど)」といった愛着行動が行われやすい 12 場面を 呈示した8).その後,調査対象者に「ネガティブ な感情を強く体験した状況(過去 1 年くらいの間) を思い浮かべながら回答をして下さい」と教示し た(教示の詳細については Table 1 参照).その後, 調査対象者は AABS について 7 件法(1「全くし なかった」から 7「非常によくした」)で回答を 行った.なお,AABS では愛着対象を「あなたが かかわりを持った相手」とした.

結果と考察

AABSの因子分析 AABS の 26 項目について最 小 2 乗法・プロマックス回転による因子分析を 行った.3 つの観点(固有値の推移,解釈可能性, 因子負荷量 .40 以上)から因子数の決定や項目の 選択を行った結果,4 因子解(21 項目)が適当で あると判断した (Table 1).項目の内容をもとに, 第 1 因子を「すねた伝達」,第 2 因子を「他者へ の懸念」,第 3 因子を「近接性維持」,第 4 因子を 「素直な伝達」と命名した.なお,因子間相関が 高い第 3 因子と第 4 因子を併合しなかったのは, 成人は他者に近接したからといって必ずしもそこ で相手に対して素直に自分の安全欲求を伝達する とは限らないためである.4 因子による累積説明 率は 53.62% であった.また,十分な信頼性(a 係 数)が得られた (Table 1). 以下では,各因子が直接的愛着行動なのかある いは間接的愛着行動なのかを明らかにするために, その項目内容を詳細に検討する.まず,「F1 :す ねた伝達」と「F2 :他者への懸念」について検討 する.F1 とは,他者が自分の期待と違った反応を するので,すねた素振りを見せることで他者の反 応を引き出しながら行う甘え的要素を含んだ愛着 行動である.F2 とは,他者に自分の気持ちを素直 に伝えたいが,その一方で他者に自分の本心やプ ライベートな側面を知られたくないために,それ を抑制しながら行う愛着行動である.そのため, これら 2 因子は,安全欲求を間接的に表現してい るので,間接的愛着行動であると考えられる. 次に,「F3 :近接性維持」と「F4 :素直な伝 達」について詳細に検討する.これらは,他者と の近接性を保とうとする愛着行動 (F3),あるいは 出来事や自分の感情を率直に表現しながら行う愛 着行動 (F4) である.そのため,安全欲求を直接 的に表現しているので,直接的愛着行動であると 考えられる. AABSの 4 尺度の平均値に性差があるかを t 検定 により検討した(男女別の平均値や SD は Table 1 に示した).その結果,「F4 :素直な伝達」におい てのみ性差が得られた (t(367)2.60, p.01).そ こで以下の分析では,「F4 :素直な伝達」につい てのみ,男女込み,男女別の結果を示す9) . 愛着スタイルの 2 因子と愛着行動 予測 1-1 と 2-1を検討するために,まず,中尾・加藤 (2004) の結果に従い,一般他者版 ECR の 2 因子の尺度得 点を,各因子に対応する項目の評定値の平均とし て算出した.なお,これら 2 因子の尺度得点は, ほとんど相関していなかった (r.06, ns.). 6つの成人愛着行動研究では,今までの経験を 通して形成された愛着スタイルが現在の親密な対 人関係での愛着行動に影響を与えるという方向性 を仮定していた.そのため本研究では,一般他者 版 ECR の尺度得点と AABS の尺度得点の相関係数 を算出することに加えて,前者を独立変数とし, 後者を従属変数とする重回帰分析(強制投入法) 8) これら 12 場面については,調査対象者にネガティブ 感情の強さなどの評定を求めている.だが AABS の 教示・操作においては,これらの 12 場面を例示する ことが目的であったため,本研究ではこれらを割愛 した(詳細については,中尾・加藤,2005 を参照の こと). 9) 「F4 :素直な伝達」以外についても性別を加味した 再分析を行ったが,性別による結果のパターンの違 いは得られなかった.このことは,全ての分析にお いて同じである.

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を行った (Table 2). その結果,予測 1-1 は支持された.すなわち, 「回避」が低いほど直接的愛着行動(F3 :近接性 維持,F4 :素直な伝達)を行うことが示された. また,予測 2-1 も支持された.すなわち,「不 安」が高いほど間接的愛着行動(F1 :すねた伝 達,F2 :他者への懸念)を行うことが示された. このことから,測度の中に間接的愛着行動の項目 を入れることで,「不安」も成人愛着行動との間 に相関関係が認められることが示された. また本研究では,予測していなかったが,「回 避」と「F2 :他者への懸念」,「不安」と「F3 : 近接性維持」についても,相関関係が認められた (Table 2).「回避」が高いほど「F2 :他者への懸 念」を行うことについては,「回避」が高いほど, 他者への懸念を示すことによって,現在の自他の 距離を一定に保とうとする(近接を拒む)からか もしれない.そして,「不安」が高いほど「F3 : 近接性維持」を行うことについては,「不安」が 高いほど,他者に常に近接していなければ(くっ ついていなければ),その「不安」が高くなるた めであるのかもしれない. 愛着スタイルの 4 分類と愛着行動 愛着スタイ ルの 2 因子を用いて得られた結果が愛着スタイル の 4 分類においても成り立つかどうかを確認する ために,予測 1-2 と 2-2 を検討した.AABS の 4 因 子の尺度得点それぞれについて,RQ による愛着 スタイルの 4 分類間で違いがあるかどうかを,一 元配置分散分析により検討した.そして,4 因子 全てにおいて愛着スタイルの主効果が有意であっ たため,Tukey の HSD 検定を行った (Table 3). その結果,予測 1-2 はほぼ支持された.すなわ ち,「回避」が低い安定型やとらわれ型は,「回避」 が高い拒絶型や恐れ型に比べて,直接的愛着行動 (F3 :近接性維持,F4 :素直な伝達)の得点が有 意に高かった.「F4 :素直な伝達(女性のみ)」に おいて,予測が支持されなかったのは,拒絶型の 人数が少なかったためであると考えられる. また,予測 2-2 は部分的に支持された.すなわ ち,「不安」が高いとらわれ型は,「不安」が低い 安定型に比べて,間接的愛着行動(F1 :すねた伝 達,F2 :他者への懸念)の得点が有意に高かっ

Table 2 重回帰分析の結果(独立変数:一般他者版 ECR,従属変数: AABS)a)

従属変数 独立変数b) r b R R2 F 間接的愛着行動 F1:すねた伝達 回避 (O) .01 .01 .36 .13 F (2, 371)28.12** 不安 (S) .36** .36** F2:他者への懸念 回避 (O) .22** .20** .38 .15 F (2, 371)31.97** 不安 (S) .33** .31** 直接的愛着行動 F3:近接性維持 回避 (O) .34** .35** .41 .16 F (2, 371)36.59** 不安 (S) .21** .23** F4:素直な伝達c) 回避 (O) .57** .58** .59 .34 F (2, 371)98.65** (男女込み) 不安 (S) .11* .14** (男性のみ) 回避 (O) .59** .58** .63 .39 F (2, 100)33.07** 不安 (S) .27** .14** (女性のみ) 回避 (O) .57** .58** .58 .33 F (2, 263)67.06** 不安 (S) .05 .08** a)rはピアソンの相関係数,b は標準偏回帰係数,R2は調整済みの重決定係数である.また,** p.01, * p.05 である. b)「回避」は「親密性の回避」を,「不安」は「見捨てられ不安」を表している.また,O は「他者観」を表し,S は「自己観」を表し ている.理論的には,「回避」が高いほど O はネガティブであり,「不安」が高いほど S はネガティブであると想定されている(脚注 4). c)男性のみの分析は N103 であり,女性のみの分析は N266 であった.

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た.そして,「不安」が高い恐れ型は,安定型に 比べて,「F2 :他者への懸念」の得点が有意に高 かった.とらわれ型や恐れ型と拒絶型の間に有意 差が得られなかったのは,拒絶型の人数が少な かったためであると考えられる.また,恐れ型が 安定型に比べて「F1 :すねた伝達」を行わなかっ たのは,恐れ型に対人関係を回避する傾向がある (Bartholomew & Horowitz, 1991) ためであると考 えられる.したがって,予測 1-2 がほぼ支持され かつ予測 2-2 も部分的に支持されたことから,愛 着スタイルの 2 因子を用いて得られた結果が愛着 スタイルの 4 分類においても成り立つことが確認 できたと言えよう. 結果の整理および今後の課題 本研究で立てた 4つの予測がほぼ支持されたことから,以下の 2 点が示された.すなわち,成人愛着行動を直接的 および間接的愛着行動の 2 つに分類した場合,(1) 「回避」が低いほど直接的愛着行動を行うこと (安定型やとらわれ型は,拒絶型や恐れ型に比べ て,直接的愛着行動をより行うこと),(2)「不安」 が高いほど間接的愛着行動を行うこと(とらわれ 型や恐れ型は,安定型や拒絶型に比べて間接的愛 着行動をより行うこと)が示された.なお,(1) については,6 つの成人愛着行動研究と同じ結果 である.このことから冒頭で述べた「愛着スタイ ルは成人の愛着行動パターンの違いを反映する」 という暗黙の前提は,愛着スタイルを特性論的に 捉えた場合にも,類型論的に捉えた場合にも妥当 であることが示されたと言えよう. 本研究では,相対的に,「回避」は直接的愛着 行動と対応しており,「不安」は間接的愛着行動 と対応しているということが示された.このこと については,以下のように解釈できる.すなわち, 「回避」が低いとは,他者観(他者についての Table 3 日本語版 RQ における AABS の平均値 (SD)a) b) 安定型 拒絶型 とらわれ型 恐れ型 (N94) (N19) (N176) (N79) 「回避」c) 「不安」 低 低 高 高 間接的愛着行動 F F1: すねた伝達 M 2.23 b 2.33 ab 2.79 a 2.46 ab F (3, 364)4.40** (SD) (1.19) (1.27) (1.37) (1.22) F2: 他者への懸念 M 2.95 b 3.40 ab 3.67 a 3.58 a F (3, 364)7.41** (SD) (1.04) (1.16) (1.31) (1.24) 直接的愛着行動 F3: 近接性維持 M 4.11 a 3.03 b 4.06 a 3.29 b F (3, 364)10.35** (SD) (1.32) (1.31) (1.27) (1.30) F4: 素直な伝達 M 5.13 a 3.36 b 4.94 a 3.73 b F (3, 364)25.27** (男女込み) (SD) (1.22) (1.13) (1.33) (1.52) (男性のみ) M 4.78 a 2.93 b 4.78 a 3.36 b F (3, 97 )11.87** (SD) (1.19) (0.97) (1.23) (1.30) (女性のみ) M 5.30 a 3.64 bc 4.99 ac 3.80 b F (3, 258)15.84** (SD) (1.22) (1.21) (1.37) (1.54) a) Tukeyの HSD 検定結果は,英語小文字の異同により示した.すなわち,5% 水準で有意差があった場合には異なった文字(e.g., a と b,a と bc),有意差がなかった場合には同じ文字(e.g., a と a,b と bc)により結果を示した.また ** p.01 である.なお,F1 から F3 の平均値 (SD) は,男女込みの値である.

b)各愛着スタイル(安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型)の人数については,男性のみではそれぞれ 28,10,44,19 名であった.

また,女性のみではそれぞれ 65,7,131,59 名であった(性別不明は 5 名).

c)この部分では,愛着スタイルの 4 分類と 2 因子の関連を図示した(脚注 4).なお,「回避」は「親密性の回避」を,「不安」は

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IWM)がポジティブであるということである (Bren-nan et al., 1998).そのため,ネガティブ感情喚起 場面で「この人になら話しても大丈夫だ(e.g., 他 者信頼, 秘密の保持)」という信念を持つことがで きるのかもしれない.この信念を持つことができ るので,他者に気兼ねなく自分の主観的安全観に 焦点を当てた愛着行動(直接的愛着行動)を行う ことができるのであろう. 本研究では,今までに見出せなかった「不安」 と間接的愛着行動の対応性を見出すことができた. では,なぜこのような対応性があるのだろうか. このことについては,以下の 2 つの立場から解釈 することができる.第 1 に,「不安」高群は,自 他の近接性が損なわれることに対して警戒心過剰 (hypervigilant) になっており (e.g., Mikulincer, Flo-rian & Tolmacz, 1990),この警戒心過剰が安全欲 求を間接的に表現させるためであろう.第 2 に, 「不安」が高いとは,自己観がネガティブである ということであり(Brennan et al., 1998),自己観を 保持するために(i.e., 自己が傷つかないために, 他者からの承認により自己観を維持するために), 間接的に自分の安全欲求を表現すると解釈できる. 以下ではさらに,4 分類愛着スタイルごとに成 人の愛着行動パターンの違いについて考察を行う. すなわち,(1) 安定型は,主観的安全感を直接的 に表現しやすく(直接的愛着行動を用いやすく), また,対他調整にあまりとらわれないため,他者 の反応や状況を適度に考慮しながら(柔軟に)愛 着行動を継続させることができる.(2) 拒絶型は, 他者との相互作用を回避し(愛着行動を行いにく く),また対他調整にあまりとらわれないため,他 者の反応や状況にかかわらず継続して相互作用を 回避する.(3) とらわれ型は,主観的安全感を直 接的に表現するが(直接的愛着行動を行やすい が),対他調整にとらわれてしまうため,他者の 反応や状況が異なると,愛着行動に対して必要以 上の自己制御を行ってしまう.(4) 恐れ型は,拒 絶型とは異なり,愛着行動を行いたいと考えてい

るため (Bartholomew & Horowitz, 1991),他者の 反応や状況によっては(拒絶型に比べて)愛着行 動を行おうとする.しかし,一方で対他調整にと らわれてしまうため,結果としては愛着行動を行 わないことが多い(愛着行動を抑制してしまう). 本研究は,今まで検証されてこなかった冒頭の 暗黙の前提を直接的に検討した研究の端緒である と位置づけることができる.ただし,端緒的研究 であるがゆえに,以下に挙げる限界点や今後の課 題がある. 第 1 に,本研究では,成人における愛着スタイ ルと愛着行動の関連について,相対的・全体的な 基本的なパターンを見出している.だが,暗黙の 前提の妥当性が最終的に確認できた状態というの は,両者の関連において「対象・関係性や状況に 依らず一貫している部分とこれらに応じて柔軟な 可 変 性 を 持 つ 部 分 」 (e.g., Feeney, 1999; Kobak, 1994) を明らかにできた状態であると言えよう.そ のため,今後は愛着対象・関係性や状況に応じ て,本研究で見出された愛着行動の基本的パター ンがどのように変化するのかについても検討する 必要があろう. 第 2 に,本研究では愛着行動を質問紙法により 測定している.そのため,今後は上述の問題意識 を踏まえた上で,実際に行われる直接的および間 接的愛着行動を実験や観察により検討する必要が ある. 第 3 に,成人の愛着行動には,(1) 対他調整の ために考慮した要因,(2) それにより引き起こさ れる自他のモニタリングや自己制御という 2 つの 側面が含まれている.今後はそれぞれについても 検討する必要があろう.特に,「F1 :すねた伝達」 については,この行動を対他調整のために戦略的 に行うのかあるいは退行的に行うのかについて今 後さらなる検討が必要であろう.これらのことは, 愛着の連続性に対して,認知発達に伴った対人モ ニタリングや自己制御の発達が与える影響 (e.g., Kato, 1995) を考える上でも重要であると考えられ

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る.

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Adult Attachment Styles Reflect Differences in

the Patterns of Attachment Behavior

Tatsuma N

AKAO

and Kazuo K

ATO Faculty of Human-Environment Studies, Kyushu University THEJAPANESEJOURNAL OFPERSONALITY2006, VOL. 14 NO. 3, 281–292

This study examined validity of the theoretical assumption that adult attachment researchers have implic-itly held: Adult attachment styles reflected corresponding patterns of attachment behavior in adults. A ques-tionnaire, including adult attachment style scales and Adult Attachment Behavior Scale, which we developed for this study, was administered to 378 undergraduates. Main findings were as follows: When adult attach-ment behavior was classified into Direct type, which expressed security seed directly, and Indirect type, which expressed security need indirectly, due to over-preoccupation with appropriate adjustment of psycho-logical distance between self and others, low Avoidance participants engaged more frequently in Direct at-tachment behavior, whereas high Anxiety participants engaged more frequently in Indirect behavior. These results were also found in the analysis using 4-category attachment styles. The findings were interpreted to demonstrate validity of the implicit assumption described above.

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