βピリジルポルフィリンの錯化挙動に関する研究
全文
(2) 学. 位. 審. ( ふ り が な ). やまぐち. 氏. 山口. 滋. 学位(専攻分野). 博. 士. 学. 理. 博. 名. 位. 記. 番. 号. 査. 報. 告. 書. しげる. (. 理. 学. 第 年. 月. ) 号. 学位授与の日付. 平成. 日. 学位授与の要件. 学 位 規 則 第 4 条 第 1 項 該 当. 研 究 科 ・ 専 攻. 理学研究科. 化学専攻. (学位論文題目). Studies on Metallation of β -Pyridyl Porphyrins (βピリジルポルフィリンの錯化挙動に関する研究). 論 文 調 査 委 員. (主査). 理. 大須賀篤弘. 教授. 林. 民生. 教授. 丸岡. 啓二. 教授. 学. 研. 究. 科.
(3) ( 続紙 1 ) 京都大学. 博. 士. (. 理. 学. ). 氏名. 山口滋. Studies on Metallation of β -Pyridyl Porphyrins (βピリジルポルフィリンの錯化挙動に関する研究) (論文内容の要旨) 論文題目. ポルフィリンは自然界で様々な重要な役割を果たしている。ポルフィリンは中心の空 孔 で 様 々 な 金 属 に 配 位 で き る 。中 心 金 属 は ポ ル フ ィ リ ン の 機 能 発 現 に 欠 か せ な い た め 、 古くから研究されてきた。一方で、環外縁部で金属との錯化を行う研究はほとんどな く 、特 に 、外 縁 部 の 金 属 を 置 換 基 で 安 定 化 し た 例 は な か っ た 。し か し ベ ン ゼ ン 環 で は 、 そのような手法は一般的である。錯体の高い安定性から種々の研究が可能になる。申 請 者 は イ リ ジ ウ ム 触 媒 の C-H 直 接 ホ ウ 素 化 に よ り 得 ら れ る β ホ ウ 素 化 ポ ル フ ィ リ ン と 2-ヨ ー ド ピ リ ジ ン と の 鈴 木 ・ 宮 浦 反 応 に よ り 、 環 外 部 に 配 位 部 位 を 導 入 し た 。 合 成 し た β ピ リ ジ ル ポ ル フ ィ リ ン を 用 い て 金 属 と の 錯 化 を 行 い 、錯 体 の 構 造 ・ 性 質 を 調 べ た 。 1.配 位 子 と パ ラ ジ ウ ム 塩 と を 反 応 さ せ 、ピ ン サ ー パ ラ ジ ウ ム 2 価 錯 体 を 得 た 。錯 化 に 伴 いポルフィリン環が大きく歪む。また紫外可視吸収スペクトルにおいて、吸収波長が 大きく長波長シフトした。外側の金属により触媒反応もまわった。白金での錯化も検 討した。白金ではパラジウムと異なり2価に加え4価も安定である。価数の変化によ るポルフィリン環の性質の変化を調べた。合成はパラジウム錯体と同様に行った。得 ら れ た 2 価 の 白 金 錯 体 と 塩 化 銅 (II)を 反 応 さ せ 、 4 価 の 白 金 錯 体 を 得 た 。 さ ら に 2 価 錯体の白金上の塩素をフェニル基に変えた。これとヨウ素を反応させると、メゾ位に フェニル基を持つポルフィリンが得られた。生成した白金4価錯体から還元的脱離が 起こると考えられる。ベンゼン環のピンサー錯体では同様にして安定な4価白金錯体 が得られる。ベンゼン環とは異なる反応性である。 2.β モ ノ ピ リ ジ ル ポ ル フ ィ リ ン と 白 金 塩 と の 錯 化 を 検 討 し た 。 ポ ル フ ィ リ ン 環 上 の sp 2 C-H結 合 と 、 溶 媒 と し て 用 い た DMF上 の sp 3 C-H結 合 が 同 時 に 切 断 さ れ 、 DMFを 持 つ 白 金 ポルフィリン錯体が得られた。また、ピリジルポルフィリンと4価の白金塩とを反応 さ せ て 白 金 4 価 架 橋 ポ ル フ ィ リ ン 2 量 体 を 得 た 。X線 構 造 解 析 か ら 、ポ ル フ ィ リ ン 平 面 同士が平行になっていることがわかった。対応するベンゼン類縁体のフェニルピリジ ン白金4価錯体では、フェニル基のなす平面同士は直交している。この違いは、外部 白金の配位環境にあわせてポルフィリン環が歪むことによる。対面型の構造のため、 この錯体には螺旋性がある。両エナンチオマーはキラルカラムにより分離できた。純 粋な光学活性体の白金4価錯体を還元すると螺旋の反転が起こり、逆の螺旋性をもつ 白金2価架橋ポルフィリン対面型2量体が得られた。 3. ル テ ニ ウ ム タ ー ピ リ ジ ン 錯 体 と β ピ リ ジ ル ポ ル フ ィ リ ン か ら ピ ン サ ー 型 錯 体 を 得 る た め の 検 討 を 行 っ た 。す る と 、ポ ル フ ィ リ ン が ル テ ニ ウ ム に η 2 で π 配 位 し た 錯 体 が 得 られた。金属η 2ポルフィリンπ錯体の初の合成例である。通常、安定η 2πアレーン 錯 体 の 合 成 に は 電 子 豊 富 な 金 属 が 必 要 で あ る 。ル テ ニ ウ ム へ の ア レ ー ン の η 2 π 配 位 は 弱く合成例は非常に少ない。今回の錯体はシリカゲルカラムでも単離可能である。ポ ルフィリン環とターピリジンとのππ相互作用によりη 2 π配位が安定化されている と 考 え ら れ る 。ル テ ニ ウ ム 上 の 配 位 子 と し て 、ビ ピ リ ジ ル ベ ン ゼ ン も 適 用 可 能 で あ る 。 本研究はポルフィリン外縁部へ配位部位を導入し錯化を行うという新しい概念の有 用性を示したものである。ポルフィリン化学のみならず、有機金属化学・錯体化学に おいても大きな貢献を果たすものとして意義深い。.
(4) (続紙 2 ) (論文審査の結果の要旨) ポ ル フ ィ リ ン は 古 く か ら 研 究 さ れ て い る 重 要 な 色 素 で あ る 。最 近 ポ ル フ ィ リ ン の β 位 に 位 置 選 択 的 に ホ ウ 素 化 で き る こ と が 大 須 賀 教 授 ら に よ っ て 報 告 さ れ て い る 。申 請 者 は こ の ホ ウ 素 化 ポ ル フ ィ リ ン を 原 料 と し て 、ポ ル フ ィ リ ン 環 外 部 に 配 位 部 位 と し て ピ リ ジ ル 基 を 導 入 し た 。申 請 者 は こ の ピ リ ジ ル ポ ル フ ィ リ ン を 用 い て 新 た な 機 能 性 ポ ル フ ィ リ ン 錯 体 の 合 成 に 挑 戦 し た 。ポ ル フ ィ リ ン の 広 い π 共 役 平 面 に 由 来 す る 斬 新 な 構造および性質を明らかにした。 これまでポルフィリンの外周部の金属を置換基により安定化するという概念はな か っ た 。申 請 者 は 外 縁 部 に ピ リ ジ ル 基 を 持 つ ポ ル フ ィ リ ン を 合 成 し 、パ ラ ジ ウ ム を 導 入 す る こ と に 成 功 し た 。外 部 金 属 に よ る 歪 み の 誘 起 な ど 、構 造 や 電 子 状 態 が 大 き く 変 わ る こ と を 見 い だ し た 。ポ ル フ ィ リ ン 環 の 性 質 の 置 換 基 に よ る 調 節 は 、ポ ル フ ィ リ ン の 機 能 発 現 に 有 用 で あ る た め 、多 く の 研 究 例 が あ る 。今 回 の よ う に 外 側 の 金 属 で ポ ル フィリンの性質を大きく変換可能であることを示したことは斬新であり、興味深い。 さ ら に 白 金 の 導 入 に も 成 功 し 、4 価 錯 体 か ら の ピ ン サ ー 骨 格 と フ ェ ニ ル 基 と の 還 元 的 脱 離 な ど 、こ れ ま で に な い 反 応 性 を 明 ら か に し た 。ベ ン ゼ ン 環 を 骨 格 と し た ピ ン サ ー 型 の 錯 体 は 機 能 性 錯 体 と し て 、幅 広 く 研 究 さ れ て い る 。ベ ン ゼ ン 環 を も と と す る 錯 体 と は 異 な る 性 質 を 見 い だ し た こ と は 、新 規 ポ ル フ ィ リ ン 錯 体 の 機 能 性 錯 体 と し て の 新 た な 可 能 性 を 示 し た も の で あ り 、ポ ル フ ィ リ ン 化 学 の み な ら ず 、有 機 金 属 化 学・錯 体 化学的にも意義深い。 次 に 申 請 者 は 、環 外 部 に ピ リ ジ ル 基 が ひ と つ つ い た ポ ル フ ィ リ ン へ の 白 金 の 導 入 を 試 み た 。白 金 2 価 と の 反 応 で は 、溶 媒 で あ る DMF と ポ ル フ ィ リ ン 環 上 の 異 な る 2 つ の C− H 結 合 が 切 断 さ れ て 錯 体 が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し た 。珍 し い 錯 化 様 式 で あ る 。 ま た 、こ の 錯 体 で も ポ ル フ ィ リ ン 環 が 大 き く 歪 み 、外 部 金 属 に よ る ポ ル フ ィ リ ン の 構 造・性 質 の 調 整 の 一 般 性 を 示 し て い る 点 か ら 興 味 深 い 。ま た 、白 金 4 価 の 塩 と 反 応 さ せ る こ と で 、白 金 で 架 橋 さ れ た ポ ル フ ィ リ ン 対 面 型 2 量 体 が 得 る こ と に 成 功 し た 。こ の 対 面 型 構 造 は ポ ル フ ィ リ ン の 柔 軟 性 に 由 来 す る 構 造 で あ る 。こ の 錯 体 が 螺 旋 性 を 持 つ こ と を 明 ら か に し た 。ま た 錯 体 の 純 粋 な 光 学 活 性 体 を 還 元 す る こ と で 、螺 旋 の 反 転 が 起 こ り 、逆 の 螺 旋 性 を 持 つ 白 金 2 価 で 架 橋 さ れ た ポ ル フ ィ リ ン 対 面 型 2 量 体 が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し た 。こ れ ら の 結 果 も ポ ル フ ィ リ ン の 広 い π 共 役 平 面 を 活 か し た 結果であり、興味深い。 更 に 申 請 者 は 、ポ ル フ ィ リ ン 環 と 金 属 上 の 平 面 π 共 役 系 分 子 と の 間 の π π 相 互 作 用 により、ポルフィリンの金属へのη 2π配位を安定化することに成功した。また、申 請 者 は 金 属 上 の 平 面 π 共 役 系 配 位 子 を 変 え た 錯 体 の 合 成 に も 成 功 し 、そ の 一 般 性 も 示 した。通常は安定に合成することが難しいη 2πアレーン錯体をππ相互作用により 安 定 化 で き た こ と は 、一 般 の 有 機 金 属 化 学 に お い て も 新 た な 可 能 性 を 示 し て お り 、意 義深い結果であると言える。 以上のように申請者はポルフィリン環外部に配位部位を導入し錯化を行うことに 成 功 し 、新 規 ポ ル フ ィ リ ン 錯 体 の 新 た な 可 能 性 を 見 い だ し た 点 で そ の 業 績 は 高 く 評 価 で き る 。よ っ て 申 請 者 の 研 究 は 博 士( 理 学 )の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る 。 な お 主 論 文 お よ び 参 考 論 文 に 報 告 さ れ て い る 研 究 業 績 を 中 心 と し 、こ れ に 関 連 し た 研 究 分 野 に つ い て 、平 成 2 3 年 1 月 1 8 日 に 口 頭 試 問 を 行 っ た 。そ の 結 果 、合 格 と 認 めた。 要旨公開可能日:. 年. 月. 日以降.
(5)
関連したドキュメント
Power and Efficiency Measurements and Design Improvement of a 50kW Switched Reluctance Motor for Hybrid Electric Vehicles. Energy Conversion Congress and
Consideringthe crackswhich are relatedto shear failurein reinforcedconcretemembermodel subjectedto four point bending,we discussthe extensionbehaviorof fracturecracksby
氏名 生年月日 本籍 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付
The behavior of cutting heat heat into chip, work and tool in high speed cutting has been investigated applying theory and experiment methods in the present study.. The heat
回報に述べた実験成績より,カタラーゼの不 能働化過程は少なくともその一部は可三等であ
算処理の効率化のliM点において従来よりも優れたモデリング手法について提案した.lMil9f
Araki, Y., Tang, N., Ohno, M., Kameda, T., Toriba, A., Hayakawa, K.: Analysis of atmospheric polycyclic aromatic hydrocarbons and nitropolycyclic aromatic hydrocarbons
『国民経済計算年報』から「国内家計最終消費支出」と「家計国民可処分 所得」の 1970 年〜 1996 年の年次データ (