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[巻頭言]環境汚染物質としての放射能

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

環境汚染物質としての放射能

広島市衛生研究所長

岩 崎 幸 治

Vol. 37 No. 2 (2012) 【T:】Edianserver /環境コミュニケーションズ/全国環境研会誌/ 第37巻第2号(通巻第123号)/(巻頭言)

53 ― 1 東日本大震災から年が経ち,追悼式典が各地 で開催されました。この震災により亡くなられた 方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに被災 された皆様に心からお見舞い申し上げます。ま た,一刻も早い復興をお祈りいたします。 さて,私はこの月まで行政部門に在職してい ましたが,衛生研究所に異動となり,このたび全 国環境研会誌の巻頭言を執筆する機会を得まし た。今回の原子力災害に関連し,多くの環境研究 所では放射能汚染に関する調査研究等に取り組ま れていることと思いますが,ここでは,事故に関 連した最近のニュース等をもとに述べさせてもら います。 原子力発電所における放射能汚染事故でよく知 られているのが1986年のチェルノブイリ原子力発 電所の火災事故です。この火災事故が報道された 当初は,地球の裏側のことであり日本に影響はな いであろうと予測されていましたが,放出された 放射性物質は対流圏上層を流れるジェット気流に より事故から約週間後には日本にもその影響が 観測されました。しかし,この事故による日本へ の影響は短期間で減少し,輸入食品の検査など特 定の機関を除いて調査は早期に終結しました。 今回の原子力発電所の事故では水素爆発が発生 し放射性物質を多量に放出するというチェルノブ イリ原子力発電所の事故に匹敵する原子力災害と なりました。原子炉の冷温停止状態を維持すると ともに,放射能汚染除去のため,現在も多くの関 係者の方々の努力が続けられていますが,原子炉 内の核燃料の状況はまだ確認できていません。核 燃料の早期の封じ込めと除染が望まれるところで す。 国においては今回の事故を契機に原子力行政の 見直しを行うこととし,環境省設置法等の一部改 正法案を国会に提出したところです。放射性物質 の利用に関しては,現在まで原子力基本法の枠の 中で複数の機関により原子力発電所等の規制が行 われてきました。この法律案では,環境省に原子 力規制庁を置き原子力安全規制を一元的に行うと ともに,環境基本法第13条を削除して放射性物質 による大気の汚染等の防止のための措置を同法の 適用対象とすることとしています(与野党の協議 により一部修正となり,「原子力規制委員会設置 法案」が平成24年月20日に国会可決した)。 また,今回の事故では食品からも放射性セシウ ムなどが検出される事態となり,原子力安全委員 会が原子力発電所等の事故を想定し示していた 「飲食物摂取制限に関する指標」に基づく暫定基 準により食品等の規制が行われました。そして本 年月には,より一層食品の安心と安全を確保す る観点から年間許容被ばく線量の見直しを行い, それに基づく新基準が設けられ施行されたところ です。 住民の方々においても自衛措置が積極的にとら れました。先日報道されたテレビ番組では,市民 団体が独自に放射能測定器を購入し食品の検査を 行っており,その代表者が「セシウムの基準値が いくらであるかは関係ない。無いことが大切なの だ」と述べていたのは印象に残っています。 環境中に放出されたセシウム137の半減期は約 30年と非常に長く,今後長期間のモニタリングが 必要となります。被災された各自治体では汚染 マップの作成やその除染対策等に取り組まれてい ることと思いますが,関係者皆様のご尽力により 被災された皆様が少しでも早く安心して暮らせる 日が訪れることを心から祈念いたします。

参照

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