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博 士 論 文 概 要 書

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早稲田大学大学院 経済学研究科

博 士 論 文 概 要 書

日本の家族の消費:核家族のファミリー・ライフサイクルの視点から   

                     

 岩本 光一郎

Koichiro Iwamoto 応用経済学専攻 金融論専修

2009 年 9 月

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1.論文の要旨

本論文は、現代日本の家計の消費行動について、その原理原則の解明に資することを主目的と している。そしてその分析にあたって、家計を「家族」という一種の社会集団の側面から捉えて いることが本論文の特色である。

分析対象である「家族」を本論文ではどう考えるかを明らかにし、そして日本の家族の現在の 姿を描写することで、以降の章での分析の礎とすることを目的とする第一章では、①日本の家族 の過半数を占める核家族は、雇用者家族的かつ都市家族的な特徴を持つこと②家族規模と家族内 年齢構成は、家族の消費行動に影響を与える可能性のある要素であること③これら二つの要素の 変化が、ファミリー・ライフサイクルと呼ばれる家族形態の経時変化と不可分であることを確認 した。

ファミリー・ライフサイクルと家族消費支出の関係の実証分析を目的とする第二章では、日本 の雇用者核家族の家族消費支出とファミリー・ライフサイクルとの間には統計的に有意な関係が 見られるという結論を得た。つまり、家族の消費行動を分析する際には、このファミリー・ライ フサイクルという社会学的な視点が必要であることが分かった。また第二章では、家計資産の流 動性の違いが消費に影響を与えることも確認されており、家族の消費を単純な恒常所得仮説のみ で説明することは難しいという考察が得られた。もっともこれは、従来から指摘されていたこと であり、恒常所得仮説については現実の消費行動との整合性をとるべく数々の拡張案が提案され ている。

そこでこれらの拡張案のうち、習慣形成に着目して家族の消費行動分析に導入し、消費習慣が 基本的に同一経済主体の時間経過に伴って観察されるものあることを考慮して、世帯主の加齢過 程を近似した擬似パネルデータを使用したのが第三章である。分析から得られた結果は、少なく とも本章で想定している形での習慣形成は日本の家族には見られない可能性が高い、というもの であった。しかし同時に、家族規模など家族属性が消費に有意に影響しているとの結果も得られ、

これは第二章のクロスセクション分析と整合的な結果である。

 そして、家族消費の習慣形成は、ライフステージごとに行われている可能性が全国消費実態調 査の集計データから看取できるので、第四章では、習慣形成の成立の有無を、若年層核家族のパ ネルデータを使い、ライフステージの違いを取り込んだ上で動学分析の枠組で再検証した。その 検証の結果、若年層核家族の生活費(非耐久財支出)には①ライフステージの違いが有意な影響 を与えていること、②時間的な連続性、一種の粘着性とでも言うべき性質が(若年層核家族全体 にも、各ステージにおいても)あること、が確認された。ただし、②の消費の粘着性は、習慣形 成ではなく耐久性と整合的な傾向を示し、擬似パネルデータ分析である第三章に引き続き、真パ ネルデータ分析である本章でも習慣形成の成立のevidenceは得られなかった。

 最後に、四つの章にまたがる本論文から分かったことは、以下のようにまとめられる。

(1)現代日本で過半数を占める核家族は都市型雇用者家族的な特徴を持つ。

(2)家族の消費行動にはライフステージの違いが有意な影響を与えている。これは、動学的

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分析からも静学的分析からも支持される。

(3)ライフステージには、ステージ固有の消費支出パターンがあり、事実、ライフステージ 単位で消費の粘着性があることが確認できる。

2.論文の構成 

  本論文は、序章・終章を合わせると六つの章から構成される。その構成と目次は以下の通り。 

 

 序章では主に文献サーベイを行い、消費関数論争以降から現代に至るまでの時期における、家 計消費の実証分析に関する主要なイシューと先行研究について概観している。この概観によって、

膨大な数に上る家計消費の実証研究の中での、本論文の立ち位置を明らかにしている。また、本 論文の目的および構成についても述べている。 

第一章では分析対象である「家族」を本論文ではどう考え、定義しているかを明らかにする。

そして日本の家族の現在の姿を描写することで、以降の章での分析の礎としたい。いわば、本格 的な分析の前段となる準備のための章である。また、家族の姿と副題でもあるファミリー・ライ フサイクルの関係についてもこの章で触れている。 

第二章では、ファミリー・ライフサイクルと消費の関係について解説を試みる。その上でファ ミリー・ライフサイクルと家計消費支出の関係について、『全国消費実態調査』の県別データに よるクロスセクション分析を行っている。また併せて、家計消費が単純なライフサイクル=恒常 所得仮説で説明できるかどうかについても検証している。なお第二章は、『生活経済学研究』(第 17号、2002年)に掲載された論文「家族のライフステージと消費の関係についての分析」を元 に加筆・修正したものである。 

第三章では、恒常所得仮説を拡張した習慣形成を取り込んだ消費のオイラー方程式による、日 本の家計の消費行動の検証を行っている。家計消費を、単純なライフサイクル=恒常所得仮説の みで説明することが難しいことは従来より指摘されており、このことは第二章の分析結果からも 示唆される事実である。第三章では分析にあたり、習慣形成が基本的に、同一経済主体の時間経 過に伴って観察される現象であるという想定を鑑みて、主体の連続性を保つために、世帯主の加 齢過程を近似した擬似パネルデータ(『家計調査』の年齢別データから作成)を構築して分析に 使用している。なお第三章は、『早稲田経済学研究』(第56号、2002年)に掲載された論文「家 計消費と習慣形成(habit formation)」を元に加筆・修正したものである。

第四章では、第三章でも採り上げたライフサイクル=恒常所得仮説の拡張案である習慣形成の 成立の有無を、『消費生活に関するパネル調査』のパネルデータを使って、動学分析の枠組で検 証する。その際、家計の消費習慣は、ライフステージごとに異なる可能性が高いことが全国消費 実態調査の集計データから看取できるので、習慣形成の検証にあたっては、三章ではできなかっ た、ライフステージの違いを取り込んで行っている。つまり四章は、二章と三章を統合した上で 拡張した分析を行っている。なお、わが国の家計消費分析において、消費の習慣形成を真パネル

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データで検証した例は筆者の知る限り存在せず、この検証は本論文の貢献の一つであると言える。

第四章は、生活経済学会第20回研究大会(2004年6月)報告論文「家族のライフステージ推 移と消費行動の関係」に討論者からのコメント他を元に、大幅に加筆・修正したものである。 

終章では、上記の章における分析結果とその考察をまとめ、それでもなお残る問題について、

今後に取り組むべき課題として挙げている。 

   

<目次> 

 

序章 家計消費の実証分析 1

1. はじめに 1

2. 先行研究の概観 2

2.1. 消費関数論争とライフサイクル=恒常所得仮説 2

2.2. Hall (1978)によるオイラー方程式アプローチ 4

2.3. 現実の家計によるライフサイクル=恒常所得仮説からの逸脱行動 5

3. 本論文の目的 40

4. 論文の構成 41

第1章 現代日本の家族 43

1.1. 日本の家族 43

1.2. 日本の家族と世帯 44

1.3. 日本の現代家族の変遷 48

1.3.1. 産業化 48

1.3.2. 都市化 52

1.3.3. 核家族化 54

1.4. 日本の現代家族の特徴 59

1.4.1. 現代日本の雇用者家族 59

1.4.2. 都市家族と社会ネットワーク 64

1.4.3. 現代日本の核家族 70

1.4.4 雇用者・都市家族以外の現代家族 74

1.5. 日本の現代家族の消費行動 74

1.5.1. 全世帯の消費行動 75

1.5.2. 雇用者家族・都市家族・核家族の消費行動 78

1.6. 日本の家族の消費行動とファミリー・ライフサイクル:おわりに代えて 83

補論A:日本の家族の小規模化〜小家族化 85

補論B:データの調整について 89 

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第2章 ファミリー・ライフサイクルと家族の消費行動の関係 92

2.1. ファミリー・ライフサイクルとライフステージ 92

2.2. ライフステージの特性について 93

2.2.1. 家族の発達段階 93

2.2.2. 我が国における家族のライフステージ:再集計 95

2.3. 計量分析 97

2.3.1. 分析Ⅰ:ライフステージ 97

2.3.2. 分析Ⅱ:資産構成 100

2.3.3. 推定結果考察 104

2.4. 結論:今後の展望 111

補論A:データの調整について 113

補論B:推計モデルの導出過程 121

第3章 家計消費と習慣形成 122

3.1. 家計の消費行動仮説 122

3.2. 習慣形成:先行研究および問題の所在 124

3.3 実証分析 128

3.3.1. モデル 128

3.3.2. データ 130

3.3.3. 推定 131

3.4. 推定結果考察 133

3.5. 結論:今後の課題 136

補論A:データの調整について 138

補論B:月次データによる推定結果 141

第4章 家族の消費行動におけるライフステージと習慣形成の関係 144

4.1 はじめに 144

4.2. 日本の家族のライフステージと消費習慣 145

4.3. 実証分析 150

4.3.1 データ 151

4.3.2 推定方法 159

4.3.3 推定結果とファインディングス 160

4.4. 終わりに:結論と今後の課題 164

補論A 最尤法による推定結果 166

終章 本論文のまとめと今後の課題 167

1.本論文のまとめ 167

2.今後の課題 168

参照文献: 171 

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