博 士 ( 獣 医 学 ) ガ ル シ ア ガ ル シ ア ホ ア ン
学位論文題名
Studies on the antibody
―forming cell responses
1n mice infected with Japanese encephalitis virus and related flavlVlruSeS.
(日本脳炎ウイルスとフラビウイルス感染マウスにおける 抗 体 産 生 細 胞 の 免 疫 応 答 に 関 す る 研 究 )
学位論文内容の要旨
日 本 脳 炎 (JE)ウ イ ル スtよ 、 ヒ ト と ウ マ に は 脳 炎 、 ま た ブ タ に は 異 常 産 を 起 こ す 束 ア ジ ア の 代 表 的 な 人 畜 共 通 伝 染 病 の 病 原 体 で あ る 。 本 ウ イ ル ス は 蚊 に よ っ て 媒 介 さ れ 、 フ ラ ビ ウ イ ル ス 科 フ ラ ビ ウ イ ル ス 属 に 属 す る 。 フ ラ ピ . ウ イ ル ス は 自 然 界 で 感 受 性 脊 椎 動 物 宿 主 と 媒 介 節 足 動 物 との 問 で感 染 環 を 形 成 す る も の で 、 ト ガ ウ イ ル ス 科 や ブ ニ ヤ ウ イ ル ス 科 と 並 ん で 節 足 動 物 媒 介 性 ( ア ル ボ ) ウ イ ル ス 群 の 主 要 メ ン バ ー で あ る 。 本 ウ イ ル ス 群tま 世 界 各 地 域 の 自 然 条 件 に 適 応 し て 分 化 し な が ら 地 方 病 的 に 分 布 し 、 ま た ヒ ト や 動 物 に 剣 す る 病 原 性 や 病 勢 の 上 で も 著 し く 多 様 な ウ イ ル ス 種 か ら 構 成 さ れ て い る 。 現 在 フ ラ ビ ウ イ ル ス 属 で は 血 清 学 的 交 差 反 応 性 に よ っ て68種 類 のウ イ ルス が 知ら れ て いる 。
こ れ ま で の 地 理 医 学 的 調 査 で . は 、 同 一 個 体 が 幾 種 類 も の フラ ビ ウ イル ス に感 , 染づ . るよ う な 極め て 浸淫 度 の高 い 流行 地 の存 在 が知 ら れて い る。 この た め 異 な っ た フ ラ ビ ウ イ ル ス の 再 感 染 や 混 合 感 染tま 、 交 差 反 応 に よ っ て 血 清 診 断 の 判 定 を 誤 ら せ る ぱ か り で な く 、 デ ン グ 熱 ウ イ ル ス の 再 感 染 で 見 ら れ る よ う な 重 篤 な 出 血 熱 や シ ョ ッ ク 症 状 等 の 原 因 と な り 得 る も の で あ る 。 従 来 か ら フ ラ ビ ウ イ ル ス の 中 和 や 発 症 防 御 に ( ま 液 性 免 疫 が主 役 を 演ず る と さ れ 、 特 に ウ イ ル ス の エ ン ベ 口 ー ブ タ ン バ ク に 対 す る 中 和 抗 体 と 感 染 細 胞 表 而 に 発 現 す る 非 構 造 夕 ン バ ク (NSi) に 対 す る 抗 体 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い た 。 し か し 山vivoで の フ ラ ビ ウ イ ル ス に 対 す る 抗 体 産 生 機 構 、 特 に フ ラ ビ ウ イ ル ス 問 の 抗 原 交 差 に 関 し てB細 胞 レ ベ ル で の 詳 細 な 検 討tよ ほ とん ど なさ れ てい な い 。
こ れ ま で 抗 体 産 生 細 胞 を 検 出 す る た め の 方 法 と し てJerneの 溶 血 プ ラ ッ ク 形 成 法 が 知 ら れ 、 広 く 活 用 さ れ て き た 。 こ の 方 法tよ 補 休 結 合 性抗 休 を 産 生 す る 細 胞 に 抗 原 感 作 赤 血 球 を 加 え 、 溶 血 の 有 無 を 指 標 に し て 抗 体 産 生 細 胞 を 検 出 す る も の で あ る 。 し か し 本 法 で は 抗 原 と 赤 血 球 の 結 合 反 応 の 再 現 性 、 感 作 赤 血 球 の 保 存 性 、 抗 体 の ア イ ソ タ イ プ の 鑑 別 あ る い は 非 補 休 結 合 性 抗休 の 検 出 な ど 多 岐 に わ ′ こ る問 題 点 が 指摘 され 、こ れらの 解決 のた めに、
ボ リ ス チ レ ン プ レ ー ト の 表 面 に 固 相 化 し た 抗 原 を 用 い たELISPOT法 ま た は ELISA・ プ ラ ッ ク 法 が 考 案 さ れ た 。 し かし こ れ ら の 方 法 でtま 大 量 の精 製 抗 原 を 必要 と す る た め 、 ウ イ ル ス を 感染 さ せ ′ こ培 養細 胞を その・ まま 固定 して抗 原 と す る 手 法 が 最 近 考 案 さ れ た 。 す な わ ち こ こ で は ウ イ ル ス 感 染 動 物 の 脾 臓 を 摘 出 し て 脾 細 胞 を 培 養 し 、 抗 体 産 生細 胞 か ら 分 泌 さ れ ′ こ 抗 体を 免 疫 組 織 化 学 的 手 法 に よ り 染 色 レ て 個 々 の 抗 体 産 生 細 胞 を ス ポ ッ ト と し て 検 出 す る方法が取られている。
本 研 究 で はJピ ウ イ ル ス あ る い は 各 種 フ ラ ビ ウ イ ル ス 感 染 マ ウ スに お け る 抗 原 特 異 的 なB細 胞 免 疫 応 答 を 解 明 す る 目 的 で 、 ま ず ウ イ ル ス 感 染 細 胞 を 抗 原 と し 、J ̲Eウ イ ル ス 感 染 マ ウ ス に 出現 し た 抗 原 に 特 異 的 なlgMある いtよ lgG抗 休 を 分 泌 す る 細 胞 を 定 量 で き る 抗 体 産 生 細 胞 検 出 (AFC) 法 を 確 立 し た 。 ま た 血 清 反 応 で 広 く 認 め ら れ て い る フ ラ ビ ウ イ ル ス 問 の 交 差 反 応 性 を B細 胞 レ ベ ル で 解 析 す る た め に 、AFC法 を 用 い て 経 時 的 な 抗 休 産 生 細 胞 の 出 現 状 況 な ら ぴ に 異 な る フ ラ ビ ウ イ ル ス が マ ウ ス に 前 後 し て 感 染 し た 場 合 の 免疫の記憶と交差反応の発現状況にっいて検討し′こ。
Arc法 でtよ 、 感 染 細 胞 上 に 充 分 量 の ウ イ ル ス 抗 原 が 保 存 さ れ て い る こ と が 重 要 な た め 、 ま ず 抗 原 発 現 量 が 最 大 と な る よ う な 各 種 の 固 定 法 を 比 較 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 バ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド ・ リ ジ ン ・ 過 ヨ ウ 素 酸 緩 衝 液 に よ る 細 胞 固 定 法 がJEウ イ ル ス 抗 原 の 保 存 に 最 適 な こ と が 判 明 し た 。 ま た 本 固 定 液 は 他 の 幾 っ か の 固 定 液 と 比 べ 非 特 異 反 応 が 最 も 低 か っ た 。 次 に 抗 体 産 生 細 胞 検 出 用 の 抗 原 を 作 製 す る た め の 至 適 条 件 を 得 る た め に JEウ イ ル ス 感 染 細 胞 の 培 養 時 間 、 個 々 の 抗 体 産 生 細 胞 の 性 状 に っ い て 検 討 し ナこ 。 す な わ ちJEウ イ ル ス 抗 原はBGM細 胞 でtよ 感 染 後8時 間目 か ら 出 現 し、
26時 間 目 で 最 高 と な っ た 。 こ の た めAFC法 に お け る 抗 原 フ . レ ー トの 作 製 に tよ ウ イ ル ス 接 種 後26時 間 目 の 感 染 細 胞 を 使 用 し た 。 こ れ に よ り 抗原 プ レ ー ト に 加 え た 牌 細 胞 数 とJE特 異 的lgGま たtよIgH抗 休 を 産 生 す る 細 胞ス ポ ッ ト 数の川にtよ‖喞,l0‖泡数が過剰の上昜合を除いて高いヰ川粥が認められた。また牌
‑Xrlll旭をサイ´/口ヘキシミドで前処整1!づ ることにより抗1ホ産生キnl胞のスボッ ト 形 成 数 が70% も 減 少 し た こ と か ら 、 本AFC法 で は 活 性 化 し て いる 抗 体 産
生キIlI胞を検出していることが示唆された。
4極類 の 免疫 甜I織化 学nつ手法を用 いて感染細胞上 に発現された ウイルス 抗 原 とB細 胞 か ら 分 泌さ れ た抗 休と の 問の 抗 原抗 体 反応 の検 出 感度 の 比較 を 行 っ た と こ ろ 、ア ビ ジン ・ ビオ チ ン・ コン ブ レ` ソ クス(ABC)法 の検 出 感 度が 最 も高 く 、次 い でバ ーオ キ シダ ー ゼ・ 抗 バー オキシ ターゼ法、バ ー オ:トシター`じ.f;;J按法およぴバーオキシターゼ・直按法の贓で低下した。
従って木キ&でlよ ABC法を標準法として採用した。
次に 異な っ たフ ラ ビウ イ ルス の 感染 細胞 問 の共 通 抗原の発 現状況を細胞 極、接 種ウイルス濃 度や感染泉II胞の 培養時間を種 々変えて検討した。BHK‑
21細胞でtよ供試されたづ .べてのフラビウイルスで抗原の良好な発現が見ら れた。またいづ れのウイルスでも感染の多重度(m.o.i.)を6以上で接種 し た 場 合 、 細 胞 種 に 関 係 な く 良 好 な ウ イ ル ス 抗 原 の 発 現 が 見 ら れ た 。 さら にマ ウ スに 対 する 按 種ウ イ ルス 量と 免 疫応 答 との関係 を調べたとこ ろ 、高 濃 度の ウ イル ス 液を 接種 し た場 合 は初 感 染後5日目で 既にlgG産生細 胞 とlgM産 生細 胞 の検 出数がほぱ等 しく、lgM‑ IgGのクラス変 換の発現して い るこ と が明 ら かと なった。 また2次応答にお ける|gG抗体産 生細胞のアイ ソタイ ブtよ IgGー2aとlgG‑2bが主体で、lgG‑1は僅かで、IgG‑3は非常に少な か った 。 さら に マウ スにn市乳 動物細胞由来の ウイルスと蚊 の細胞由来の ウ イ ルス を 接種 し て抗 体 産生 細胞 の 出現 状 況を 比 較し たとこ ろ、前者の細 胞 数 の方 が 後者 よ り多 く 、よ り強 い 免疫 原 性を 備 えて いるこ とが判明した 。 冫欠に 興なるフラビ ウイルスfiUのB細胞レ ベルでの反応 の特異性を検討し た 。lgHとlgGの い ずれ の抗 休 産生 細 胞で も 同じ 血 清群 に属するフラ ビウイ ル ス問 でtよ 強い 交差 反応性が 認められたのに 対し、異なる 血清群のウイ ル ス では 交 差反 応 性が 低 く、 また ア ルフ ァ ウイ ル スの ゲタウ イルスに対す る 反応は仝く認められなかった。
マウス に」ピ‑ JaGAr‑01株を感染させた後、2週間目に他のフラビウイルス を 接種 し 、追 加 免疫 に よる フラ ビ ウイ ル スの 共 通抗 原の記 憶状況を検討 し た 。す な わち 異 なる フ ラビ ウイ ル スを 再 接種 し た場 合、ま ず共通抗原に 対 す る免 疫 応答 が 免疫 記 憶細 胞を 刺 激し 、 共通 抗 原に よるウ イルスの追加 免 疫 と 同 じ よ う な 効果 が 発現 し た。 ま たAFC法に よ り検 出 され た 抗体 産生 細 胞数tよ迫)lI免疫に用いたへテ匸王のウイルスに対するものよりも初回免疫に 用 いた ホ モウ イ ルス に対する ものの方がtよる かに多く、初 回免疫の抗原 に 対してよりj虫く反応することが判明した。
これ らの 成 績か らAFC法tよ 血vivoで のフ ラ ビウ イ ルス感染 に際して発現 するB;rrlll胞レ ベルでの免疫応答を定量測定するための極めて優れた手法で
あることが判明した。さらに本法によりJE ウイルス感染マウスにおけるウ
イルス特異的な抗休産生細胞の出現時期と持続j 明RH が明かとなったぱかり
でなく、フラビウイルス問の交差反応性をもとに初感染と再感染の免疫記
憶 キ
uJJ泡 の 応 答 に 関 し て も基 礎 的 な 相 違点 が | 叨 ら かに さ れ た 。
学位論文審査の要旨
主査 副査・
副査 副査
教授 教授 教授 助教授
橋 本 信 夫 清水悠紀臣 小 沼
操 高 島 郁 夫
学 位 論 文 題 名
Studies on the antibody‑forming cell responses 1n mlcelnfected with Japanese encephalitis vlrus and related flavlvlruses.
( 日 本 脳 炎 ウ イ ル ス と フ ラ ビ ウ イ ル ス 感 染 マ ウ ス に お け る 抗 体 産 生 細 胞 の 免 疫 応 答 に 関 す る 研 究 )
フラビウイルス属は日本脳炎ウイルスなど、抗原性、病原性や宿主域な どの異なる様々なウイルスから構成され、世界各地に広く分布しているが、
いずれも吸血性節足動物媒介性で属特異的な共通抗原を保有する。フラビ ウイルスの中和や感染防禦に
tま液性免疫が主役を演ずるとされ、これまで 数多くの研究がなされているが、
B細胞レベルでの免疫応答に関する研究 は乏しい。
申請者は血vivo における抗体産生細胞の定量法として
antibody form‑ing ccll assaS
(
AFC法)を開発し、フラビウイルス感染マウスにおける 特異抗体産生細胞の動態と
B細胞レベルでのフラビウイルス間の交差反応 性にっいて検討した。
まず、AFC 法を確立するための種々の基礎条件を検討し、抗原としてウ
イルス感染後
24時間目の
BGH細胞をバラフォルムアルデヒド・リジン・過沃
素酸緩衡液で固定したものを使用した。
AFC法による抗体産生細胞の検出
は、固相化抗原細胞に感染マウス由来の脾臓細胞を加えて培養し、アビジ
ン・ビオチンコンプレックス法により免疫組織化学的に特異抗休産生細胞
を染色して行った。
高濃度の日本脳炎ウイルス液を按種されたマウスでは、5 日目から|gM と
lgGの2 種類の抗体産生細胞が共に検出され、感染早期からlgM ‑ IgG クラス 変換の発現していることが判′明した。またマウスにおけるB 細胞レベルで のフラビウイルス属の交差反応性は|gM とlgG のいずれの抗体産生細胞でも 同一血清群内では強く、異った血清群間では弱かった。さらに、日本脳炎 ウイルス接種マウスに異なるフラビウイルスを追加接種した場合、追加接 種し・′こへテ口ウイルスに対するよりも初回接種ウイルスにより強く反応し た。このことは、最初の抗原刺激に対する免疫記憶が共通抗原の追加接種 によって呼ぴ起こされたものと考えられ、フラビウイルスの免疫応答にも 抗原原罪説の当てはまることが明らかとなっ′こ。