博 士 ( 医 学 ) 荻 本 真 美 学位論文題名
Negative regulation of apoptotic death in immatureBcells by CD45
(CD 45によ る 未 熟B細胞 アポ 卜一シス の制御)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
目的
B細 胞抗 原 レセ プ タ ー刺 激 に より 、1分 以内 にいくっ かの蛋白 質のチロシ ンリン 酸化 が誘導さ れる。こ の生化学 的な変化に 始まるシ グナルの カスケイドにより、成 熟B細 胞 にお い ては 活 性 化・ 増 殖が 誘 導 され 、未熟B細胞にお いては増殖 抑制・ア ポト ーシス( プログラ ムされた 細胞死)が 誘導され る。この りンパ球の活性化と不 活化 は、外来 抗原に対 する免疫 応答と自己 成分に対 する免疫 寛容の基礎にある機構 であ るが、未 だ不明な 点が多い 。
本研 究では、 チロシン の脱リン 酸化を触媒 する酵素 (チロシ ンホスフアターゼ)
の 中 で 造 血 系 細 胞 に 限 局 し て 発 現 し て い るCD45を 取 り 上 げ 、未 熟B細 胞 がア ポ ト ー シ ス に 至 る 過 程 を こ の 分 子 が ど の よ う に 制 御 し て い る の か を 検 討 し た 。
方 法 1. 盈胞
未 熟B細胞の 表現型( 膜型lgM十十 、膜型IgD+) を示すりンパ腫細胞WEHIー231 を 用いた。
2.CD45陰 性2聖二2の 樹立
WEH卜231を 変 異 剤 処 理 後 、 抗CD45抗 体 と 補 体 に よ るCD45陽 性 細 胞 傷 害、 さらに限 界希釈法 によるクローニングを行った。出現したクローンの中から、
CD45抗 体 とFITCを標 識 し たプ ロ テイ ンAを 用 いた フ ロー サ イ トメ ト リ ーに よ り CD45陰性 クローン を選び出 した。
4.主丞ZZ空二望活性の測定
CD45モ ノ ク 口 ー ナ ル 抗 体 を 結 合 さ せ た プ ロ テ イ ンG− セ フ ァ ロ ー ス とcell lysateを反応さ せ、抗体 と結合し た分画について酵素活性の測定を行った。基質とし てPーnitrophenyl phosphateを用い、生成されたp‑nitrophenolの量をスペクトロフォト メーターで測定した。
…−
― 書言
…
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……
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5.細胞鹵恋2ヒ皇立ムi左2濃度の測定
カルシウムイオンと結合して螢光を発するFluo−3Mを取り込ませた細胞に、抗 IgM抗体10yg/mlを添加した後5分間の螢光強度の変化について、フローサイトメ ーターで解析した。
6.立壬丞空2Z旦型b鰹柢
それそれ の細胞を抗IgM抗体40yg/mlで1分間刺激後、1XTriton‑X‑100で可溶 化した分画についてSDS−PAGEで展開し、二トロセルロース膜に転写した。チロシ ンリン酸化蛋白質の検出は、マウス抗ホスフオチロシン抗体とアルカリホスファタ ーゼ標識ヤギ抗マウス抗体で行った。
7.鈿胞増殖の測定
それそれの細胞を抗IgM抗体(O.lyg/ml〜10yg/ml)で48時間から72時間刺激し た後、細胞数、及び[3 H]Thymidineの取り込みを測定し、抗体非添加群を対照とし た%増殖抑制を算出した。
8.旦盥△断丘iヒ
抗IgM抗体(O.lptg/ml〜10y.g/ml)で刺激後20時間のサンプルから断片化され た DNAを 抽 出 し | ア ガ ロ ー ス 電 気 泳 動 に よ る 解 析 を 行 っ た 。
結 果
限界希 釈法により 得られたク ローンにつ いて、細胞表面のCD45の発現を調 べ た 結 果 、 10ー5、31−2、39−2と い う3種 類 のCD45陰 性 ク ロ ー ン を 得 た。 また、クロ ーン39―2を継代培養 中にCD45の発現 を回復した りバータン ト
(39−2rvt)を 得 た。 こ れら の クローン について膜 型IgM、膜 型IgDの発 現を 調べたところ、親株との差は認められなかった。また、他の細胞表面分子H―2、Ia 抗原についても親株と得られたクローンとの間での発現の差は認められなかった。
ノーザンブロット解析により、WEHI−231親株とCD45陰性クローン、リバ一 夕ント におけるCD45mRNAの発 現を調べた 。その結果 、親株では 強い発現が認 められるのに対し、いずれの陰性クローンでも発現は消失しており、mRNAレベル での発現も抑えられていることが明らかとなった。リバータントでの発現は親株と ほ ぼ同 程 度に 回 復し て いた 。 また 、CD45陰性 ク ロー ン におけ るCD45ホスフ アターゼ活性はほとんどなくなっているのに対し、リバータントでは親株と同様の 活性を示した。
a.蛋自質チロシンリン酸化は、親株では刺激後初めて強く誘導されるのに対し、
CD45陰性クローンではいずれも刺激前から構成的にチロシンリン酸化が亢進し ており 、抗IgM抗 体刺激によ るチロシンリン酸化の増強は認められなかった。
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b.抗IgM抗体刺激による細胞内カルシウムイオン濃度の動態は、親株とりバータ ントでは一過的に強いカルシウムイオン濃度の上昇が認められた。それに対し、い ずれの陰性クローンでも上昇のピークは親株より30秒ほど遅れ、イオン濃度の低 下の速度も遅くなっていた。
c. 抗IgM抗 体刺激 によ る細胞増殖抑制は、親株では30〜60%であったのに対 し、陰性クローンでは70〜90%とより強い抑制が認められた。リバータントで は親株とほぼ同様の抑制が認められた。
d.抗IgM抗体刺激によるDNA断片化は、親株と比べて陰性クローンで増強して いた。
考察
未 熟B細 胞 に お け るCD45の 機 能 を 解 明 す る 目 的 で 、WEHト231からCD45 陰性クローンを樹立し、その性状を親株と比較検討した。その結果、CD45陰性 クローンでは構成的なチロシンリン酸化が認められ、CD45がチロシンリン酸化 のホメオスターシスに関与していることが推測される。また、抗原レセプター刺激 による細胞内カルシウムイオンの動員、細胞増殖抑制、アボトーシスは、親株に比 し てCD45陰 性 ク ロ ー ンで 増強 して いた。 これ らの 結果 は、CD45が 抗原 レセ プターを介して誘導されるアポトーシスに至るシグナル伝達機構をネガテイブに制 御していることを示唆している。T細胞、及び膜型IgMをトランスフェクトした形 質細胞腫では、CD45の発現がなければ抗原レセプターを介するシグナルが伝達 されないという報告を考慮に入れると、CD45の機能が細胞型や細胞の分化段階 の違いにより異なっている可能性が想定される。この点を明らかにするためには、
成 熟B細 胞 で のCD45の 機 能 を解 析 す る こ と が 不 可 欠 で あると 考え られ る。
結語
本研究により、チロシンホスファターゼであるCD45は、未熟B細胞におけ るチロシンリン酸化や細胞内カルシウムイオンの動員などの初期のシグナルのみな らず、増殖抑制、アポトーシスに至るシグナルをも制御していること、さらにその 制御はネガテイブであることが示唆された。
学位論文審査の要旨 主査 教授 吉木 敬 副査 教授 葛巻 暹 副査 教授 上出利光
学位論文題名
Negative regulation of apoptotic death in immatureBcells by CD45
(CD 45によ る未 熟B細胞 アポ 卜一シ スの 制御 )
atj9:B細 胞抗 原レ セプ タ― 刺激 によ り、1分以 内に ぃく つか の蛋 白質 のチ ロシ ン リン 酸化 が誘 導さ れる。この生化学的な変化に始まるシグナルのカスケイドによ り 、成 熟B細 胞に おぃ ては 活性 化・ 増殖 が誘 導さ れ、 未熟B細胞 にお ぃて は増 殖抑 制 ・ア ポト ーシ ス( プログラムされた細胞死)が誘導される。このりンバ球の活性 化 と不 活化 は、 外来 抗原に対する免疫応答と自己成分に対する免疫寛容の基礎にあ る 機構 であ るが 、未 だ不 明な点 が多 い。
本研 究で は、 チロ シンの脱リン酸化を触媒する酵素(チロシンホスファタ―ゼ)
の 中 で 造 血 系 細 胞 に 限 局 し て発現 して いるCD45を取 り上 げ、 未熟B細胞 がァ ポ卜
― シ ス に 至 る 過 程 を こ の 分 子 が ど の よ う に 制 御 し て ぃ る の か を 検 討 し た 。 五法 :細 胞と して は、 未熟B細胞 の表 現型 (膜 型IgM++、膜型IgD士) を示 すり ン パ 腫 細 胞WEIiI−231を 用 い た 。 こ のWEm−231を 変異 剤処 理後 、抗CD45抗体 と補 体 によ るCD45陽 性細 胞傷 害、 さら に限界 希釈 法に よる クロ ーニングを行い、フローサ イ ト メ ト リ ー に よ り 、CD45陰 性 ク ロ ― ン を 選 び 出 し た 。 得 ら れ た クロ ー ン か ら poly(A)十RNAを抽出し、ホルムアルデヒド:ホルムアミド変性ゲル電気泳動後、ニ ト ロ セ ル ロ ー ス 膜に 転 写 し 、CD45の 膜 貫 通 領 域 を 含 む2.3kbのBamHlフラ グメ ン ト を プ ロ ― ブ と し てCD45mRNAの 発 現 を 検 討 し た 。 ま た 、CD45モ ノ ク ロ ― ナ ル 抗体 を結 合さ せた プロ テイ ンG‐ セフ ァロ ース とcenlysateを反応させ、抗体と結合 した 分画 につ いて 酵素 活性 の測定を行った。基質としてp‐m卸phenylphosphatcを用 い、生成されたp‐niロ()phen01の量をスペクトロフォトメータ―で測定した。蛋白質 の チ ロ シ ン リ ン 酸 化 は 、 そ れ ぞ れ の 細 胞 を 抗IgM抗 体40p伽1で1分 間 刺 激 後 、1 ワ。Tdton−X−100で可溶化した分画についてSDS‐PAGEで展開し、ニ卜ロセルロ―ス膜 に転 写し た。 チロ シン リン 酸化 蛋白質 の検 出は 、マ ウス 抗ホスフォチロシン抗体と アル カリ ホス ファ ター ゼ標 識ヤ ギ抗マ ウス 抗体 で行 った 。細胞内カルシウムイオン 濃 度の 測定 は、 カル シウ ムイ オン と結 合し て螢 光を 発す るRu013AMを取 り込 ませ た 細 胞 に 、 抗IgM抗 体10ug/Inlを 添 加し た後5分間 の螢 光強 度の 変化 につ いて 、フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ―で 解 析 し た 。 細 胞 増 殖 の 測 定 は 、 そ れ ぞ れ の細 胞を 抗IgM抗 体
(0. 1い 如 1〜10い 〆ml) で48時 間 か ら72時 間 刺 激 し た 後 、 細 胞 数 、 及 び
【3H]111ymidineの取り込みを測定し、抗体非添加群を対照とした%増殖抑制を算出し た。
DNA断 片 化に つ いて は 抗IgM抗 体(O.lyg/ml〜lOhLg/ml)で 刺 激後20時間の サ ンプル から断片化 されたDNAを抽出し、 アガロ―ス 電気泳動による解析を行っ た。
蘊塞及こと董塞:未熟B細胞におけるCD45の機能を解明する目的で、WEHI‑231 からCD45陰 性クロ―ン を樹立し、 その性状を親株と比較検討した。その結果、
CD45陰 性 ク ロ ― ンで は 構成 的 なチ ロ シン リ ン酸 化 が認 め られ 、CD45がチ ロ シンリシ酸化のホメオスターシスに関与していることが推測された。また、抗原レ セプタ一刺激による細胞内カルシウムイオンの動員、細胞増殖抑制、アポトーシス は 、親 株 に比 し てCD45陰 性 クロ ー ンで 増 強 して ぃ た。 これらの結 果は、CD4 5が抗原レセプターを介して誘導されるアポ卜―シスに至るシグナル伝達機構をネ ガティブに制御していることを示唆してぃる。T細胞、及び膜型IgMをトランスフ ェク卜 した形質細 胞腫では、CD45の発現がなければ抗原レセプタ―を介するシ グナル が伝達され なぃとぃう 報告を考慮に入れると、CD45の機能が細胞型や細 胞の分化段階の違いにより異なってぃる可能性が想定される。この点を明らかにす るため には、成熟B細胞 でのCD45の機能を 解析するこ とが不可欠 であると考え られる。
濫語:本研 究により、 チロシンホ スファターゼであるCD45は、未熟B細胞に おけるチロシン1ノン酸化や細胞内カルシウムイオンの動員などの初期のシグナルの みならず、増殖抑制、アポ卜一シスに至るシグナルをも制御していること、さらに その制御はネガティブであることが示唆された。
口頭発表に あたり、葛 巻教授より 、B細胞 のCD45の基質について、石橋教授 より、未熟Bリンパ腫使用による実験結果の信頼性、カルシウム放出の系につい て、 上 出教 授 より 、CD45陰性 ク ロ― ン にお け るCD45以 外 の膜 型 ホスファ タ ーゼの発現 ・機能、及 ぴCD45エクソン6丿ック アウトマウスでの結果との矛盾 について、 小林教授より、親株とCD45陰性クロ―ンにおける増殖及ぴカルシウ ム放出パタ ーンの相違 、CD40の関与に ついて、細川教授よりB細胞のアポトー シスの機序 について、小野江教授より、CD45によるチロシンキナーゼの脱リン 酸化機構に ついて、柿 沼教授より 、アポト― シスにおけるDNaseの関与につい て質問がなされた。申請者は概ね適切な解答をした。また、副査の葛巻、上出両教 授には個別の審査を受け合格と判断された。
以 上、 本 研究 は 、マ ウ ス未 熟B細胞腫から 初めてCD45陰性 クロ―ンを 樹立 し 、未熟B細胞アポト ーシスにお けるCD45の役割を明かにしたものであり、免 疫系の重要な機能である免疫応答と免疫寛容の機構の解明に大きく寄与するもので あ る 。よ っ て、 本 論 文は 医 学博 士 の学 位 授与 に 値す る もの と 判断される 。
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