Title
Nonencapsulated Trichinella pseudospiralis Infection Impairs
Follicular Helper T Cell Differentiation with Subclass-Selective
Decreases in Antibody Responses( 内容と審査の要旨
(Summary) )
Author(s)
淺野, 一信
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第1047号
Issue Date
2017-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/56168
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 淺 野 一 信(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 1047 号 平成 29 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
Nonencapsulated Trichinella pseudospiralis Infection Impairs Follicular Helper T Cell Differentiation with Subclass-Selective Decreases in Antibody Responses.
(主査)教授 長岡 仁 (副査)教授 深尾 敏幸 教授 竹内 保 論 文 内 容 の 要 旨 多くの感染症で宿主免疫応答に変調が誘導されることが報告されている。宿主免疫系による排除 機構が変調を受けると免 疫回避となり,慢性感染 や潜伏感染の成立の一要 因となる。旋毛虫 Trichinella spp.は宿主筋細胞内において長期間感染する寄生性線虫であり,旋毛虫感染においても I 型糖尿病モデルや炎症性腸炎モデル,アレルギー性気管支炎モデルなどで宿主免疫応答に変調をき たすことが報告されている。これらはT 細胞が主体となる細胞性免疫が関与する実験モデルであり, T 細胞の活性化や分化に対する影響が明らかになっている。しかし,旋毛虫感染が宿主液性免疫応 答に及ぼす影響については,未だ十分に解明されていない。 申請者は非被嚢型旋毛虫Trichinella pseudospiralis(Tp)感染が宿主液性免疫応答に及ぼす影響に ついて検討した。旋毛虫感染マウスにモデル抗原を免疫し,モデル抗原特異的抗体の量および質に ついて解析した。また,抗体産生の制御に関わる特定のT 細胞サブセットについても検討を行った。 【対象と方法】 マウスをTp 感染群と非感染対照群の 2 群に分け,Tp 感染群では旋毛虫の筋肉幼虫 200 隻を経口 感染させた。感染10 日後に卵白アルブミン(OVA)を水酸化アルミニウムゲルアジュバント(アラ ム)と共に腹腔内に免疫し,20 日後に追加免疫を施行した。30 日後に血液を採取し血清中の抗 OVA 抗体量を ELISA により測定した。また,免疫したマウスの脾細胞を試験管内で OVA にて再刺激し OVA 特異的な T 細胞からのサイトカイン産生を ELISA により測定した。 Tp 感染による濾胞性ヘルパーT 細胞(Tfh 細胞)分化への影響を検証した。感染 10 日後に OVA 特異 的OT-II T 細胞受容体トランスジェニックマウス由来 CD4+T 細胞を移入するとともに OVA をアラ ムと共に腹腔内免疫した。免疫10 日後に脾細胞に対し抗 PD-1 抗体および抗 CXCR5 抗体を用いて フローサイトメーターによる解析を行った。
抗 体 の 親 和 性 成 熟 を 解 析 す る た め ,4-hydroxy-3-nitrophenylacetyl-keyhole limpet hemocyanin (NP14-KLH) をアラムとともに腹腔に免疫し,免疫 20 日および 30 日後に NP 特異的 IgG1 抗体の親
和性成熟をELISA にて解析した。NP 特異的高親和性 IgG1 抗体に対しては NP4-BSA を,NP 特異的
IgG1 抗体の総量は NP26-BSA を抗原として ELISA を行った。
IL-6 の発現についてリアルタイム PCR 法にて検討した。また,Tp 感染マウスのマクロファージ の活性化について,脾細胞を抗CD11b 抗体,抗 CD206 抗体,抗 PD-L2 抗体を用いてフローサイト メーターで解析した。
Tp 感染により OVA 特異的 IgG2a および IgG2b 抗体が有意に低下した。一方,IgG1 や IgE 抗体産
生は感染による有意な影響は認められなかった。よって,感染によって抗体産生全般が抑制される
わけではないと考えられた。脾細胞の再刺激によって産生されるインターフェロンγ(IFN-γ)およ
びインターロイキン 4(IL-4)はいずれも両群間で有意な差は認められなかった。このことから,
Tp 感染による IgG2a および IgG2b 抗体産生の低下は IFN-γ 産生の減少によるものではないことが示
唆された。 Tp 感染マウスでの OVA 特異的 IgG2a,IgG2b 抗体の産生低下に,Tfh 細胞に対する影響が関与し ているのではないかと想定した。そこでOVA 免役後の抗原特異的 Tfh 細胞をフローサイトメーター により解析したところ,非感染対照群では PD-1,CXCR5 両陽性の Tfh 様細胞が検出できたのに対 し,感染群では Tfh 様細胞はほとんど検出されなかった。Tfh 細胞は抗体の親和性成熟にも関与し ているためNP 特異的 IgG1 抗体の親和性成熟に対する影響ついて解析したところ,感染群では対照 群と比較して抗原特異的抗体の親和性成熟が遅延している傾向が観察された。 Tp 感染により抗原特異的 Tfh 細胞が減少していたため,次に Tfh 細胞分化に対する影響を検討し た。Tfh 細胞分化には IL-6 が必須である。腹腔免疫の反応の場である脾臓での IL-6mRNA の発現を リアルタイムPCR 法にて調べたところ,IL-6 発現は OVA 免疫によって上昇するのに対し,感染群 では免疫によるIL-6 発現上昇が抑制されていた。IL-6 の産生細胞であるマクロファージの活性化状 態をフローサイトメーターで解析したところ,感染マウス脾臓の CD11b 陽性細胞の中で CD206 陽 性,PD-L2 陽性の M2 様表現系を持つ細胞が増加していた。このことから,Tp 感染によって脾臓マ クロファージはM2 型へと変移していると考えられた。 【考察】 Tp 感染マウスでは免疫した抗原に対する IgG2a および IgG2b 抗体の産生低下を伴う濾胞性ヘルパ ーT 細胞(Tfh 細胞)の減少が認められた。Tfh 細胞の減少は Tfh 細胞の分化に必須のサイトカインで あるIL-6 産生の低下が原因であると考えられた。IL-6 産生は炎症性の M1 型マクロファージから主 に産生されるが,Tp 感染マウスでは IL-6 を産生しない M2 型マクロファージが出現していた。以上 より,Tp 感染によってマクロファージの機能変移が M2 型へと誘導され IL-6 産生が減少した結果, Tfh 細胞への分化が障害されると考えられた。Tp 感染で認められる Tfh 細胞分化の障害と IgG2a お よびIgG2b サブクラスの選択的減少の関係についてはさらなる検討が必要である。 【結論】 申請者は,非被嚢型旋毛 Trichinella pseudospiralis 感染が宿主液性免疫応答においてサブクラ ス選択的な抗体産生低下を伴った濾胞性ヘルパーT 細胞の分化を障害することを明らかにした。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 淺野一信 は,非被嚢型旋毛虫Trichinella pseudospiralis感染では液性免疫応答を調節す る役割を担う濾胞性ヘルパーT 細胞の分化が障害されることを明らかにした。本研究の成果は 旋毛虫感染による宿主免疫応答の変調の一端を解明するものであり,寄生虫学および感染病態学 の発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Kazunobu Asano, Zhiliang Wu, Piyarat Srinontong, Takahide Ikeda, Isao Nagano, Hiroyuki Morita, Yoichi Maekawa:Nonencapsulated Trichinella pseudospiralis Infection Impairs Follicular Helper T Cell Differentiation with Subclass-Selective Decreases in Antibody Responses. Infection and Immunity 84, 3550-3556 (2016). DOI:10.1128/IAI.00597-16