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博士(農学)長岡俊徳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)長岡俊徳 学位論文題名

作物の土壌環境に関する生物有機化学的研究 学位論文内容の要旨

  作 物 の 生 育 に 障 害 と な る 土 壌 環 境 の 改 善 を 目 的 に 、 生 物 有 機 化 学 的 な 立 場 か ら 、 下 水 汚 泥 コ ン ポ ス 卜 の 種 子 発 芽 阻 害 と 、 ナ ス 科 植 物 の 土 壌 病 害 抵 抗 性 に 関 す る 研 究 を 実 施 し た 。

1. 下 水 汚 泥 コ ン ポ ス ト の 種 子 発 芽 阻 害 に 関 す る 研 究

  生 物 系 廃 棄 物 の コ ン ポ ス ト 化 及 び そ の 利 用 は 資 源 の 有 効 利 用 で あ り 、 環 境 保 全 に 果 た す 役 割 も 大 き い が 、 作 物 の 生 育 、 特 に 種 子 発 芽 を 阻 害 す る コ ン ポ ス ト 製 品 も 少 な く な い 。 そ れ ら の 中 か ら 、 ク ロ ー パ ー 類 の 種 子 発 芽 を 選 択 的 に 強 く 阻 害 す る 下 水 汚 泥 コ ン ポ ス ト 中 の 阻 害 物 質 、 起 源 、 土 壌 中 で の 動 態 、 作 用 を 明 ら か に す る た め に 研 究 を 行 っ た 。   こ の 下 水 汚 泥 コ ン ポ ス ト か ら 、5種 の 種 子 発 芽 阻 害 物 質 (15) を 単 離 、 同 定 し た 。5は 、 可 塑 剤 の 分 解 物 と 考 え ら れ た 。13は 、 特 定 の 下 水 汚 泥 中 に 結 合 体 と し て 多 く 含 ま れ 、 コ ン ポ ス ト 化 過 程 に 分 解 さ れ 生 成 し た 。24は 、 下 水 汚 泥 中 に ほ と ん ど 含 ま れ ず 、 コ ン ポ ス ト 化 過 程 に 遊 離 の13か ら 変 換 さ れ る と 考 え ら れ た 。 こ の コ ン ポ ス ト を 土 壌 に 混 合 す る と 、 黒 ポ ク 土 中 で は 種 子 発 芽 を 阻 害 せ ず 、 マ サ 土 中 で は 阻 害 し た 。 こ れ は 、 種 子 発 芽 阻 害 物 質 が 黒 ポ ク 土 中 で は 強 く 吸 着 さ れ る の に 対 し て 、 マ サ 土 中 で は 吸 着 さ れ に く い た め と 考 え ら れ た 。 ま た 、14は 、 黒 ポ ク 土 よ り も マ サ 土 中 で 速 く 分 解 さ れ た 。12の 阻 害 作 用 は 、 殺 草 作 用 で は な く 発 芽 を 遅 延 さ せ る 作 用 で あ り 、 シ 口 ク ロ ー パ ー の 種 子 中 ヘ 吸 収 さ れ た 後 、 速 や か に エ ス テ ル や ア ミ ド 結 合 体 あ る い は 違 う 構 造 ヘ 変 換 さ れ た 。

a

a3

H

C1

C OOH

a4

CI

COOCH29HCH2CHZCH2CH3  CHZCH3

COOH

2. ナ ス 科 植 物 の 土 壌 病 害 抵 抗 性 に 関 す る 研 究

  ナ ス 科 作 物 の 土 壌 病 害 対 策 と し て 、 抵 抗 性 の 台 木 を 用 い た 防 除 法 が 一 般 的 に 利 用 さ れ て い る 。 台 木 に は 近 緑 野 生 種 や 栽 培 品 種 と の 種 間 雑 種 が 用 い ら れ る 。 ナ ス 科 の 台 木 と 近 縁 野 生 種 の 土 壌 病 害 抵 抗 性 機 構 を 明 ら か に す る た め に 、 ト マ ト 台 木 ( 耐 病 新 交1号 ) と エ チ オ ピ ア ナ ス(S. aethiopicum)の 根 中 の 抗 菌 物 質 の 探 索 を 行 っ た 。 ま た 、 活性 炭 を用 いた 栽培 法で 吸 着、

回 収 し た ェ チ オ ピ ア ナ ス の 根 分 泌 物 中 の 抗 菌 物 質 の 探 索 も 行 っ た 。

  ト マ ト 台 木 の 根 抽 出 物 の エ ー テ ル と 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 が ト マ ト の も の よ り 強 い 抗 菌 活 性 を 示 し た こ と か ら 、 ト マ ト 台 木 根 の エ ー テ ル と 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 中の 抗 菌物 質の 検索 を行 っ た。

エ ー テ ル 抽 出 物 か ら 、6種 の ア ル カ ロ イ ド (6n) 、5種 の 酸 化 型 脂 肪 酸 、6種 の フ ェ ノ ー ル 化 合 物 を 単 離 、 同 定 し た 。 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 か ら は 、 抗 菌 物 質 とし て1種の アル カ ロイ ド(12) を 単 離 、 同 定 し た 。7 ¥‑12は 新 規 化 合 物 で あ っ た 。 ま た 、 非 抗 菌 物 質 と し て2種 の 新 規 ス テ

H   a l

(2)

口イド

(13

14)

を単離、同定した。トマト台木の土壌病害抵抗性には、新規化合物である 抗菌性のアルカ口イド7 〜 12 が関与していると考えられた。卜マト台木のエーテル抽出物の 塩基性画分の抗菌活性は酸性と中性画分より非常に高く、トマ卜のものよりも高かったこと と、抗菌活性の高かった酢酸エチル抽出物から得られた抗菌物質がアルカロイド12 だけであ ったことからも、アルカロイドがトマト台木の抵抗性へ関係していることが推察された。

  

工チオピアナスの根抽出物のエーテル抽出物と活性炭で吸着させた根分泌物の酢酸エチル 溶出物がナスより強い抗菌活性を示したことから、これらの抽出物及び溶出物中の抗菌物質 の探索を行った。根のエーテル抽出物から、セスキテルベン(15 〜23) を単離、同定した。

根の分泌物の酢酸工チル溶出物からは、セスキテルベン(15 、

20

、22 、23 、

24)

を単離、同 定した。21 ‑23 は新規化合物であった。工チオピアナスとナスの根及び根分泌物中のセスキ テルベン含量を比較したところ、これらのセスキテルベンはエチオピアナスに特有の成分で はなかったが、含量の多い15 と20 は

Fusar ium oxysporum

に対して強い抗菌作用を示した。

工チオピアナスはこれらのセスキテルベンを根から根圏ヘ放出し、土壌病原菌に影響を与え ていると推定される。

Ri

H

R2

H O

9 RI=Mc,R2=H       II 10 Ri=H,RZ=Me

H

18

H O

H

      I       HH

_

R RR R RR M

(3)

学位論文審査の要旨

主 査   教 授   吉 原 照 彦 副 査   教 授   田 原 哲 士 副 査   教 授   小 林 喜 六 副 査   教 授   松 田 従 三

学 位 論 文 題 名

作物の土壌環境に関する生物有機化学的研究

  作物の生 育に障 害となる 土壌環境 の改善 を目的に 、生物有機化学的な立場から、下水汚泥 コン ポ ス トの 種 子 発芽 阻 害 と、 ナ ス 科植 物 の 土壌 病 害 抵 抗性 に 関 する 研 究を実 施した 。 1,下 水汚泥 コンポス トの種子 発芽阻 害に関す る研究

  生物系廃 棄物の コンポス ト化及 びその利 用は資 源の有効 利用であ り、環境保全に果たす役 割も大き いが、 作物の生 育、特 に種子発 芽を阻害 するコ ンポスト 製品も少なくない。それら の中から 、クロ ーバー類 の種子 発芽を選 択的に強 く阻害 する下水 汚泥コンポス卜中の阻害物 質 、 起 源 、 土 壌 中 で の 動 態 、 作 用 を 明 ら か に す る た め に 研 究 を 行 っ た 。   この 下水汚 泥コンポ ストから 、5種の種子 発芽阻 害物質(1〜5)を 単離、 同定した 。5は、

可塑剤の 分解物 と考えられた。1、3は、特定の下水汚泥中に結合体として多く含まれ、二ゴン ポス ト 化 過程 に 分 解さ れ 生 成し た。2と4は 、下水 汚泥中に ほとんど 含まれ ず、コン ポス卜 化過程に 遊離の1、3から変 換され ると考え られた 。このコ ンポスト を土壌に混合すると、黒 ポク土中 では種 子発芽を 阻害せ ず、マサ 土中では 阻害し た。これ は、種子発芽阻害物質が黒 ポク土中 では強 く吸着さ れるの に対して 、マサ土 中では 吸着され にくいためと考えられた。

また 、1‑‑4は 、黒 ボ ク 土よ り もヌサ 土中で速 く分解 された。1と2の阻 害作用は 、殺草 作用 ではなく 発芽を 遅延させ る作用 であり、 シ口ク口 ーパー の種子中 へ吸収された後、速やかに エステル やアミ ド結合体 あるい は違う構 造へ変換 された 。

a l

,7a a‑j:H.,J(jHO

COOCH2fHCH2Cl‑hCH2CH3  CHZCH3

COOH

2. ナス科植 物の土 壌病害抵 抗性に 関する研 究

  ナス科 作物の 土壌病害 対策とし て、抵 抗性の台 木を用 いた防除 法が一 般的に利用されてい る。台 木には近 縁野生 種や栽培 品種と の種間雑 種が用 いられる 。ナス科 の台木 と近縁野生種 の 土壌 病 害 抵抗 性機 構を明 らかにす るために 、トマ ト台木( 耐病新 交1号 )とェチ オビア ナ ス(S. aethiopicum)の 根中の 抗菌物質の探索を行った。また、活性炭を用いた栽培法で吸着、

回 収 し た ェ チ オ ピ ア ナ ス の 根 分 泌 物 中 の 抗 菌 物 質 の 探 索 も 行 っ た 。   トマ卜 台木の 根抽出物 のエーテ ルと酢 酸エチル 抽出物 がトマト のもの より強い抗菌活性を

(4)

示したことから、トマト台木根のエーテルと酢酸工チル抽出物中の抗菌物質の検索を行った。

工ーテル抽出物から、6 種のアルカロイド(

6

〜11 )、5 種の酸化型脂肪酸、5 種のフェノール 化合物、

1

種のキノンを単離、同定した。酢酸エチル抽出物からは、抗菌物質として1 種の アルカ口イド

(12)

を単離、同定した。

7‑‑12

は新規化合物であった。また、非抗菌物質と して

2

種の新規ステロイド

(13

14)

を単離、同定した。トマト台木の土壌病害抵抗性には、

新規化合物である抗菌性のアルカ口イド7 〜12 が関与していると考えられた。トマト台木の エーテル抽出物の塩基性画分の抗菌活性は酸性と中性画分より非常に高く、トマトのものよ りも高かったことと、抗菌活性の高かった酢酸工チル抽出物から得られた抗菌物質がアルカ 口イド

12

だけであったことからも、アルカロイドがトマト台木の抵抗性ヘ関係していること が推察された。

  

工チオピアナスの根抽出物のエーテル抽出物と活性炭で吸着させた根分泌物の酢酸工チル 溶出物がナスより強い抗菌活性を示したことから、これらの抽出物及び溶出物中の抗菌物質 の探索を行った。根のエーテル抽出物から、゛9 種のセスキテルベン(15 〜23) を単離、同定 した。根の分泌物の酢酸工チル溶出物からは、5 種のセスキテルペン(15 、20 、

22

、23 、24) を単離、同定した。21 〜

23

は新規化合物であった。工チオピアナスとナスの根及び根分泌物 中のセスキテルベン含量を比較したところ、これらのセ,スキテルベンはェチオピアナスに特 有の成分ではなかったが、含量の多い15 と

20

はFL sarIUm oxyspor m に対して強い抗菌作用 を示した。エチオピアナスはこれらのセスキテルベンを根から根圏へ放出し、土壌病原菌に 影響を与えていると推定される。

Ri

; Ri=OH, R2=R3=HoA

H

3

を勢き護

    OH

H

O

  

以上のように、本論文は不良土壌に関わる有機化合物に関し植物生理学的及び植物病理学 的観点から考察したものであり、この成果は学術的・実用的に高く評価される。よって、審 査員一同は長岡俊徳が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。

   1 11

1 l R RR R RR 20 21 24

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