博士(地球環境科学)姜 秉元
学位 論文題 名
New Sulf・ onatedAminO‐ polySaCCharideS HaVingPentofuranOSidiCStruCtureS
andTheirBiologicalActivities
(新 規ペ ントフ ラナン型硫酸化アミノ多糖の合成と生理活性)
学 位 論 文内 容 の 要 旨
序論:
多 糖類 はタ ンパ ク質、核酸とともに生体を構成する重要な高分子であり、最近生命 現 象に 深く 係っ てい るこ とが 明らか にさ れつ っあ る。 天然 には 、抗 凝血 作用 を持つへ パ リン を始 め、 キチ ン・ キト サン、 血液 型決 定糖 鎖な どア ミノ 基を 持つ 多糖 も普通に 存 在 し 重 要 な 生理 活 性 に 関 与 し て い る 。 し か し 、 ア ミ ノ 基 の 抗 凝 血 作 用、 抗HIV作 用 に及 ぼす 影響 につ いて 調べ た研究 は少 ない 。当 研究 室で は、 新規 で構 造明 確な多糖 類 を無 水糖 類の 開環 重合 法に よって 合成 し、 構造 と硫 酸化 多糖 の重 要な 生理 活性であ る 抗HIV作 用 、 抗 凝 血 作 用 に つ い て 研 究 し て い る 。 こ れ ま で に6単 糖 の3位 に ア ミ ノ 基を 有す るア 口― ス型 多糖 を合成 し構 造と 生理 活性 につ いて 報告 した が、 ベントフ ラ ナ ン 型 ア ミ ノ 多 糖 の 構 造 と 生 理 活 性 と の 関 係 を 調 べ た 研 究 は な か っ た 。 そ こで 、本 研究 では 、3位 にア ミノ 基に 変換 可能なアジド基を持つ無水キシ口一ス お よび 無水 リポ ース 誘導体を新たに合成し、その開環重合性について詳細に調べ、新規 3―アミノキシ口フラナン、リポフラナンを合成することが出来た。さらにりポフラナン 型 アミ ノ多 糖を 硫酸 化し、構造と生理活性との関係を調ることが大きな目的である。さ ら に、 リポ フラ ナン 、リポピラナンと立体構造の異なるアラピノフラナン、キシ口フラ ナンも合成して硫酸化し、さらに1|4‑[3構造を持っキシランも硫酸化し、立体構造と抗 凝 血 作 用 、 抗HIV作 用 と の 関 係を 当研究 室か らす でに 報告 した 硫酸 化リ ボフ ラナ ン、
リポピラナンと比較検討した。
実験・結果:
D・リポースを真空熱分解して得られた1|4.無水リポ―スの2位水酸基の保護、3位 水 酸基 のTf化、 リチ ウムアジドで3位立体が反転したキシ□−ス型の3‐アミノキシ口フ ラ ノ― スを 合成 する こと がで きた。 開環 重合 性はBF30Et2、PF5触媒 を用 いた 結果、い ずれも1,5ーa構造ポリマーになることが分かった。SbC15触媒では‑60゜CではBF30Et2、 PF5触媒 の場 合と は異 なり 重合 温度 を上 昇さ せる に従い立体規則性が変化し、‑20°Cで は1|5‑aと1,5‑p構造との割合が約6:4のポリマ―となった。1,5‑a構造ポリマーのアジド
基を アミノ基 に還元し 脱保護を 行い3‐ア ミノキシ口フラナンヘと導いた。アミノ基を持 つべ ントフラ ナンの初 めての合 成例とな った。リポース型の3‐アミノリポフラナンを合 成するために、上と同様にD・キシ□―スの真空熱分解により1|4−無水キシ口一スを得た。
2位 水 酸 基の 保 護 、3位 水 酸 基のTf化、 リ チウ ムアジド による反 転アジド 化によっ て目 的 の 新 規 モ ノ マ ーA3ASRを 合 成 し た 。BF30Et2、SnCI4、PF5触 媒で は1,5‑a構 造の ポ リ マ ―が 得 ら れるこ とが分かっ た。SbC15触媒 では、こ の場合も 重合温度 によって 得ら れた ポリマ― の構造が 大きく変 化するこ とが明ら かになった が、構造 変化はキシ口一ス の場 合とは逆 になった 。すなわ ち、重合 温度を上げるに従い1,5‑[3構造の割合が上昇し た。1|5‑aおよび1|5‑p構造を持っポリマーの還元、脱保護お行い3‐アミノリポフラナン を 合 成し た 。 さら に 、モ ノ マ ―ADSRと の 共重 合 も 行い 、A3ASRユ ニッ 卜 の割 合が異な る1,5‑a‑リ ポフ ラナンを 合成するこ とが出来 た。リポ ←スとは2位、3位の 立体配置 が 異な り、アミ ノ基を持 たないア ラビノフ ラナン、 キシ口フラ ナンをポ リマ―構造と生理 活性 との関係 を調ぺる 目的で、 これまで に報告さ れた方法に 従って対 応する無水糖モノ マ ー の開 環 重 合法に よって合成 した。上 記で得ら れた3‐ア ミノリボ フラナン 、ADSRモ ノマ ―と共重 合して種 々の割合 でアミノ 基を持つ アミノリボ フラナン 、アラビノフラナ ン 、 キシ 口 フ ラナ ン 、さ ら に 市販 の1|4‐p構造を持 っキシラ ンを硫酸 化して抗HIV作 用 、 抗凝 血 作 用を調 べた。硫酸 化アラビ ノフラナ ンでは、EC50二二0.1 yg/mlとい う高 い 抗HIV作 用 を 示すこと が分かった 。硫酸化 キシ□フ ラナンで は、EC50二ニ108 lig/ml と 低 くな る が 、硫酸 化度が上が るとEC50二ニ0.2 yg/mlという高 い値を示 した。フ ラノ ース 構造に比 べて硬い 主鎖構造 である1,4‑[3構造を持 つ硫酸化キ シランではEC50 0.1 yg/mlと な り 、分 子 量、 硫 酸 化度 と も に高 くな れば抗HIV作 用も高く なること が分かっ た 。 さら に 細 胞毒 性 は、 ど ち らの 多 糖もCC50:ニ>1000 yg/mlとなり 低毒性で あった。
置換 基の立体 配置には それ程影 響されな いことも 分かった。 次に硫酸 化多糖の重要な生 理活 性である 抗凝血作 用は柔ら かいフラ ナン型主 鎖構造を持 つ、硫酸 化アラビノフラナ ン、 キシ口フ ラナンで は36、28 unit/mgと高 い値とな り、リジ ッドな構造を持つ硫酸化 キシ ランでは14〜15 unit/mgで低い 値をとる ことが明 らかにぬ った。硫酸化リポフラナ ンで は、56 unit/mgと非 常に高い 値を示す が、抗凝 血作用も 分子量、硫 酸化度に影響さ れ、 さらに今 回、主鎖のフレキシピリティによっても大きく変ることが明らかになった。
硫唆 化アミノ リポフラナンでは、36〜48 unit/mgとなって高い値になることが分かった。
また 、アミノ 基の割合 が減少す るに従い 抗凝血作 用も低くな り、硫酸 化多糖に含まれる アミ ノ基(硫 酸アミド 基)が生 理活性に 深く関与 しているこ とが新た にわかった。これ ら の 研 究 は 、HIVと の 相 互 作 用 の 検 討 な ど に よ い 試 料 に な る と 考 え ら れ る 。 結諭:
以 上 のよ う に これ ま でに 研 究 例の な いア ミノ基を 持っぺン 卜フラノ ース型モ ノマ ーの 合成法を 確立し、 重合の触 媒、温度 、保護基 、保護基の 立体配置 などの違いによっ て開 環重合性 も異なる ことを明 らかにし た。さら にこれらの アミノ多 糖、アミノ基を持 たな いアラピ ノフラナ ン、キシ 口フラナ ン、キシ ランを硫酸 化して得 られる硫酸化多糖 は 、 ベン ト フ ラナ ン 構造 に 由 来す る 主鎖 の 柔 軟さ 、 硫 酸化 度 、分 子 量 など が抗HIV作
用、抗凝血作用に大きく影響することを明らかにした。さらに硫酸化多糖中のアミノ基 は、これら生理活性に深く係っていることも明らかに出来た。これらの研究は、HIV との相互作用の検討や、副作用の少ないエイズ薬を開発する上でよい試料になると考え られる。
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 坂入 信 夫 副 査 教 授 西 則夫 副 査 助 教授 覚 知 豊次
副 査 助 教授 吉 田 孝(大学 院理学研究 科)
学位論文題名
New Sulfonated Amino‑polysaccharides Having Pentofuranosidic Structures and Their Biological Activities
(新規ペントフラナン型硫酸化アミノ多糖の合成と生理活性)
序論:
多糖類はタンバク質、核酸とともに生体を構成する重要な高分子であり、最近生命 現象に深く係っていることが明らかにされつっある。天然には、.抗凝血作用を持つへ パリンを始め、キチン・キトサン、血液型決定糖鎖などアミノ基を持つ多糖も普通に 存在 し重要な生 理活性に関 与している 。しかし、アミノ基の抗凝血作用、抗HIV作 用に及ぼす影響について調べた研究は少ない。当研究室では、新規で構造明確な多糖 類を無水糖類の開環重合法によって合成し、構造と硫酸化多糖の重要な生理活性であ る 抗HIV作用 、 抗凝 血作 用について 研究してい る。これま でに6単糖の3位にアミ ノ基を有するア口一ス型多糖を合成し構造と生理活性について報告したが、ペントフ ラ ナ ン 型 ア ミ ノ 多 糖 の 構 造 と 生 理 活 性 と の 関 係 を 調 ぺ た 研 究 は な か っ た 。 そこで、本研究では、3位にアミノ基に変換可能なアジド基を持つ無水キシ口―ス および無水リポース誘導体を新たに合成し、その開環重合性について詳細に調ベ、新規 3一アミノキシ口フラナン、リポフラナンを合成することが出来た。さらにりポフラナン 型アミノ多糖を硫酸化し、構造と生理活性との関係を調ることが大きな目的である。さ らに、リポフラナン、リポピラナンと立体構造の異なるアラピノフラナン、キシ口フラ ナンも合成して硫酸化し、さらに1,4‑[3構造を持っキシランも硫酸化し、立体構造と抗 凝血作用、抗HIV作用との関係を当研究室からすでに報告した硫酸化リポフラナン、
リポピラナンと比較検討した。
実験・結果:
D.リポ―スを真空熱分解して得られた1,4‐無水リボ―スの2位水酸基の保護、3位 水酸基のTf化、リチウムアジドで3位立体が反転したキシ口―ス型の3‐アミノキシ口フ
ラ ノ ー ス を 合 成 す る こと がで きた 。開 環重 合性はBF30Et2、PF5触媒 を用 いた 結果 、い ず れも1,5‑a構造 ポリ マ― にな るこ とが 分か った。SbC15触媒では‑60゜CではBF30Et2、 PF5触媒 の場 合と は異 なり 重合 温度 を上昇 させ るに 従い 立体 規則 性が 変化 し、‑20゜Cで は1|5‑aと1,5‑{3構造との割合が約6:4のポリマーとなった。1|5‑a構造ポリマーのアジド 基 をア ミノ基 に還 元し脱保護を行い3‐アミノキシ口フラナンヘと導いた。アミノ基を持 っ ぺン トフラ ナン の初めての合成例となった。ルポ―ス型の3‐アミノリポフラナンを合 成するために、上と同様にD‐キシ口一スの真空熱分解により1|4―無水キシ口―スを得た。
2位 水酸 基 の 保 護 、3位水 酸基 のTf化、 リチ ウムア ジド によ る反 転ア ジド 化に よっ て目 的 の 新 規 モ ノ マ ーA3ASRを 合 成 し た 。BF30Et2、SnCI4、PF5触 媒 で は1,5‑a構 造 のポ リ マ― が得ら れる こと が分 かっ た。SbC15触媒 では 、こ の場 合も 重合 温度 によって得ら れ たポ リマー の構 造が 大き く変 化す るこ とが 明らかになったが、構造変化はキシ口―ス の 場合 とは逆 にな った。すなわち、重合温度を上げるに従い1|5‑[3構造の割合が上昇し た。1,5‑aおよび1,5‑[3構造を持っポリマ―の還元、脱保護お行い3一アミノリポフラナン を 合 成 し た 。 さ ら に 、 モ ノ マ ―ADSRと の 共 重 合 も 行 い、A3ASRユニ ット の割 合が 異な る1.5‑a‑リ ボフ ラナ ンを 合成 する ことが 出来 た。 リポ ―ス とは2位、3位 の立体配置が 異 なり 、アミ ノ基 を持 たな いア ラピ ノフ ラナ ン、キシ口フラナンをポリマ―構造と生理 活 性と の関係 を調 べる 目的 で、 これ まで に報 告された方法に従って対応する無水糖モノ マ ーの 開環重 合法 によ って 合成 した 。上 記で 得ら れた3―ア ミノ リポ フラ ナン、ADSRモ ノ マー と共重 合し て種 々の 割合 でア ミノ 基を 持つアミノリポフラナン、アラピノフラナ ン 、 キ シ 口 フ ラ ナ ン 、さ らに 市販 の1,4‑[3構造 を持 っキ シラ ンを 硫酸 化して 抗HIV作 用、抗凝血作用を調べた。硫酸化アラピノフラナンでは、EC50二二二ニ0.1 yg/mlという高 い 抗HIV作用 を示 すこ とが 分か った 。硫酸 化キ シ口フラナンでは、EC50〓二ニ108 yg/ml と 低 く な る が 、 硫 酸 化 度 が 上 が るとEC50 0.2 yg/mlとい う高 い値 を示 した 。フ ラノ
―ス構造に比べて硬い主鎖構造である1,4‑[3構造を持つ硫酸化キシランではEC50二ニ0.1 yg/mlと な り 、 分 子 量 、硫 酸化 度と もに 高く なれ ば抗HIV作 用も 高く なる こと が分 かっ た 。さ らに細 胞毒 性は 、ど ちら の多 糖もCC50二ニ>1000 yg/mlと なり 低毒 性であった。
置 換基 の立体 配置 には それ 程影 響さ れな いこ とも分かった。次に硫酸化多糖の重要な生 理 活性 である 抗凝 血作 用は 柔ら かい フラ ナン 型主鎖構造を持つ、硫酸化アラピノフラナ ン 、キ シ□フ ラナ ンで は36、28 unit/mgと高 い値となり、リジッドな構造を持つ硫酸化 キ シラ ンでtr14〜15 unit/mgで低い値をとることが明らかにぬった。硫酸化リポフラナ ン では 、56 unit/mgと 非常 に高 い値 を示 すが 、抗凝血作用も分子量、硫酸化度に影響さ れ、さらに今回、主鎖のフレキシピリティによっても大きく変ることが明らかにぬった。
硫唆化アミノリポフラナンでは、36〜48 unit/mgとなって高い値になることが分かった。
ま た、 アミノ 基の 割合 が減 少す るに 従い 抗凝 血作用も低くなり、硫酸化多糖に含まれる ア ミノ 基(硫 酸ア ミド 基) が生 理活 性に 深く 関与していることが新たにわかった。これ ら の 研 究 は 、HIVと の 相 互 作 用 の 検 討 な ど に よ い 試料 にな ると 考え られ る。 さら に、
こ の 研 究 を 用 い る こ と に よ ル ア ミノ 基 の 役 割 を さ ら に 解 明 す る こ と が 期 待 で き る。
審査 員一同 は、 これ らの 成果 を高 く評 価し 、大学院課程における研鑽や取得単位など も 併せ 申請者 が博 士( 地球 環境 科学 )の 学位 を受けるのに充分な資格を有するものと判 断する。‑ 1316―