博 士 学 位 論 文
論 文 題 名
光 刺 激 ル ミネ セ ンス 線 量 計 の 診 断 領 域X線 に 対 す る 特 性 と患 者 の 放 射 線 防 護 へ の 応 用 に 関 す る研 究
平 成24年7月13日 提 出
首都 大 学東京 大学 院
人 間健 康 科学研 究 科 博 士後期 課程 人 間健 康科 学 専攻 放 射 線 科 学 域
学 修 番 号:07997601 氏 名:遠 藤 敦
(指 導 教 員 名:加 藤 二 久)
要 旨
最 近,歯 ・顎 顔 面 領 域 で は 歯 科 用 コ ー ン ビ ー ムCT(CBCT)急 速 に 普 及 し て い る.
CBCTは 医 科 で 用 い られ て い る多 列 検 出 器CTよ りも被 ば く線 量 が 低 い ことを利 点 として い た が,一 部 のCBCTは 多 列 検 出 器CTよ りも 患 者 被 ば く線 量 が 高 い ことが2010年11月 23日 の ニ ュー ヨー クタイムズ 紙 に 掲 載 され,物 議 を醸 した.国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 は,放 射 線 診 断 に お ける患 者 防 護 の 最 適 化 を促 進 す るた め に,診 断 参 考 レベ ル の 使 用 を勧 告 し て い る.し か し,わ が 国 で は 診 断 参 考 レ ベ ル は 未 だ 確 立 され て い な い た め,そ の 確 立 が 急 務 とな って い る.CBCTの 診 断 参 考 レベ ル はSEDENTEXCTに より提 案 され,そ こで は 面 積 線 量 の 使 用 を推 奨 して い る.
10年 ほ ど前 か ら光 刺 激 ル ミネ セ ン ス線 量 計(OSLD)が 個 人 モ ニ タリング な どで 用 い られ て い る.こ の 線 量 計 は,熱 ル ミネ セ ン ス線 量 計 に 比 べ,取 り扱 い が 単 純 で 簡 単,ま た,読 み 取 りも容 易 と報 告 され て い る.診 断 参 考 レ ベ ル を 決 定 す るた め の 広 域 調 査 に 用 い る線 量 計 に は,取 り扱 い が 単 純 で 安 価,そ して,測 定 値 の 信 頼 性 が 要 求 され る.我 々 は そ の 条 件 を す べ て 具 備 し,満 足 で きる線 量 計 としてOSLDに 着 目し広 域 調 査 に 耐 え うる線 量 計 か 検 討 を行 っ た.
OSLDの 診 断 領 域X線 に お け る線 量 直 線 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性,方 向 依 存 性 に つ い て の 定 量 評 価 を行 った.次 に,そ の 応 用 として 人 体 等 価 フ ァン トム にOSLDを 挿 入 し,歯 科 領 域 で 多 く利 用 され て い るパ ノラマ 撮 影 装 置 に お け る臓 器 線 量 の 測 定 を行 っ た.そ して これ ら の 結 果 は,既 報 され て い るTLDに よる臓 器 線 量 と比 較 し,そ の 妥 当 性 を評 価 した.さ らに, 東 京 お よ び 東 京 近 郊 のCBCTを 設 置 す る21施 設 の 歯 科 診 療 所 に つ い て,OSLDとX線 フ ィル ム の 組 み 合 わ せ に よる面 積 線 量 の 測 定 を 実 施 し,面 積 線 量 が 簡 便 に,ま た,広 域 調 査 に 耐 え うる精 度 で 測 定 で きて い るか 検 討 を行 っ た.
結 果 は,線 量 直 線 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性 お よ び 方 向 依 存 性 は 低 く,診 断 領 域X線 に つ い て 測 定 で きることが 示 せ た.さ らに,人 体 等 価 ファン トム にOSLDを 挿 入 して 臓 器 線 量 を 求 め,既 報 され て い る結 果 と比 較 した ところ,同 様 な 結 果 が 得 られ 臓 器 線 量 も測 定 で きるこ とが 示 せ た.面 積 線 量 の 測 定 で は,21施 設 の 面 積 線 量 が 簡 便 に 測 定 で き,さ らに 良 好 な 結 果 が 得 られ た.こ の 結 果 に より,CBCTの 診 断 参 考 レベ ル を確 立 す るた め の,広 域 調 査 にOSLDとX線 フィル ム の 組 み 合 わ せ が 利 用 で きることを 示 した.
目次
要 旨
序論
略語 一 覧
第1章 光 刺激ル ミネセンス線 量計 の物理評 価
第2章 光 刺激ル ミネセンス線 量 計 による臓 器線 量 の測 定
第3章 歯科 用 コーンビームCTの 面積線 量 の測 定法 の検 討
(診断 参考 レベル決 定 のための広域調 査 用線 量測 定用具 の開発)
まとめ
引用 文献
謝辞
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序論
わ が 国 で は 国 民 一 人 あ た り平 均,年1枚 の 歯 科X線 写 真 が 撮 影 され て い る.こ れ は,歯 と歯 周 組 織 の 疾 患 の 診 断,治 療 方 針 の 決 定,予 後 の 判 定 にX線 検 査 は 必 須 とされ,6万8 千 軒(平 成24年 厚 労 省 医 療 施 設 動 態 調 査 より)に の ぼ る歯 科 診 療 所 に お い て,ほ ぼ す べ て の 診 療 所 にX線 装 置 が 設 置 され,そ の 規 模 に 応 じてX線 撮 影 が 行 わ れ て い ることが 一 因 として 挙 げ られ る.
最 近 は,歯 ・顎 顔 面 領 域 に お け るX線 を 用 い た 検 査 が 一 層 高 度 化 し,急 速 に 普 及 して い る.代 表 的 な 装 置 と し て 歯 科 用 コ ー ン ビ ー ムCT(ConeBeamComputed
Tomography;CBCT)が 挙 げ られ る.CBCTの 到 来 は,歯 と歯 周 疾 患 の 診 断,治 療 方 針 の 決 定,予 後 の 判 定 に3次 元 画 像 を提 供 し,こ れ まで にな い 高 密 度 な 情 報 が 提 供 で きるよう に な っ た.こ の 装 置 を利 用 す る施 設 は 歯 科 診 療 所 か ら大 学 病 院 まで 幅 が 広 く,イン プ ラン ト 治 療,埋 伏 歯 の 抜 歯,歯 周 病 学,顎 関 節 の 評 価 お よび 歯 科 矯 正 科 な ど の 歯 科 の 専 門 分 野 で 広 範 囲 に 使 用 さ れ て い る.CBCTは 医 科 で 用 い ら れ て い る 多 列 検 出 器CT
(Multi‑DetectorrowComputedTomography;MDCT)よ りも硬 組 織 の 描 出 に お け る空 間 分 解 能 が 高 く,安 価 で,更 に 被 ば く線 量 が 低 い こ とを利 点 として い た.し か し,一 部 の 機 種 は 患 者 被 ば く線 量 が 高 く,中 に はMDCTよ りも 高 い 患 者 被 ば く線 量 の 装 置 も報 告 され て い る.
この 報 告 は2010年11月23日 の ニ ュー ヨー クタイム ズ の 紙 面 を 飾 り,物 議 を 醸 した.
1996年,国 際 原 子 力 機 関(InternationalAtomicEnergy;IAEA)が ガ イダ ンス レベ ル を 提 案 し,同 年,国 際 放 射 線 防 護 委 員 会(lnternationalCommissiononRadiological
Protection;ICRP)が 診 断 参 考 レ ベ ル(DiagnosticReferenceLevels;DRL)を 提 案 した.
DRLは 放 射 線 診 断 に お け る患 者 防 護 を 最 適 化 す るた め に 設 け られ た 量 で あ る.IAEAは, ガ イダ ン ス レベ ル を 国 や 地 域 の 広 い 範 囲 で 調 査 を行 い(広 域 調 査),各 々 の 国 ご とで 決 定 す るように 勧 告 して い る.ICRPは,放 射 線 診 断 に お け る患 者 防 護 の 最 適 化 を促 進 す るた め に,診 断 参 考 レベ ル の 使 用 を勧 告 して い る.DRLは 放 射 線 診 断 の 質 を担 保 し,且 つ,患 者 被 ば くを低 減 す る実 用 的 な 手 段 として 認 識 され て お り,EU諸 国 に お い て は 加 盟 国 に DRLの 確 立 を義 務 付 けて い る.し か し,わ が 国 で はDRLは 未 だ 確 立 され て い な い.そ の た め,DRLの 確 立 が 急 務 とな っ て い る.
この ような 我 が 国 の 状 況 に 呼 応 し,厚 生 労 働 省 科 学 研 究 費 補 助 金(地 域 医 療 基 盤 開 発 推 進 研 究 事 業)医 療 放 射 線 の 安 全 確 保 に 関 す る研 究(主 任 研 究 者 細 野 眞)で は 日本 国 に お けるDRLを 確 立 す るた め の 検 討 を行 っ て い る.
CBCTのDRLはSEDENTEXCTに よ り提 案 され,そ こ で は 面 積 線 量(dose‑area product;DAP)の 使 用 を推 奨 して い る.SEDENTEXCT(safetyandefficacyofanewand
emergingdentalX‑raymodality)は,欧 州 に お け る歯 ・顎 顔 面 放 射 線 学 会 に 設 置 され た
組 織 で,CBCTの 安 全 性 と,そ れ に よ る効 果 を 増 進 させ る ことを 活 動 の 目 的 として い る.
CBCTはMDCTな ど に 比 べ,X線 束 が 広 く,線 量 プ ロフ ィー ル が 非 対 称 な た めCTDI (ComputedTomographyDoseIndex)やDLP(Dose‑LengthProduct)の 使 用 は 適 切 で は な い.そ の た め,CBCTのDRLを 確 立 す るた め の 広 域 調 査 に はDAPを 測 定 す る必 要 が あ る.
一 方,10年 ほ ど前 か ら光 ル ミネ セ ンス 線 量 計 が 個 人 モ ニ タリング な どで 用 い られ るように な っ た.こ の 線 量 計 は,初 期 化 か ら読 み 取 りまで 光 の み を使 用 す る.こ の 線 量 計 は,従 来, 一 般 的 に 使 用 され て きた 熱 ル ミネ セ ン ス 線 量 計 に 比 べ
,取 り扱 い が 単 純 で 簡 単,ま た,読 み 取 りも容 易 と報 告 され て い る.DRLを 決 定 す るた め の 広 域 調 査 に 用 い る線 量 計 に は,取 り扱 い が 単 純 で 安 価,そ して,あ る程 度 の 精 度 が 要 求 され る.我 々 は そ の 条 件 を す べ て 具 備 し,満 足 で きる線 量 計 としてOSLDに 着 目した.し か し,診 断 領 域X線 に 対 す るOSLDの 線 量 直 線 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性,方 向 依 存 性 な ど の 物 理 評 価 が 報 告 され て い な か っ た.
そ こで,我 々 は 次 の ような 手 順 でOSLDの 特 性 を 調 査 し,広 域 調 査 に 耐 え られ る線 量 計 か 検 討 を行 っ た.は じめ に,第1章 で はOSLDの 診 断 領 域 に 用 い るX線 の 線 質 に お け る線 量 直 線 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性,方 向 依 存 性 に つ い て の 定 量 評 価 を 行 っ た.第2章 で は, そ の 応 用 として,人 体 等 価 ファン トム にOSLDを 挿 入 し,歯 科 領 域 で 多 く利 用 され て い るパ ノラマ 撮 影 装 置 に お け る臓 器 線 量 の 測 定 を行 っ た.そ して これ らの 結 果 は,既 報 され て い る TLDに よる臓 器 線 量 と比 較 し,そ の 妥 当 性 を評 価 した.第3章 で は,CBCTのDRLを 決 定 す るた め の 広 域 調 査 に 耐 え うる安 価 で 精 度 の 高 い 測 定 シ ステ ムの 開 発 に つ い て 言 及 す る.
略 語 一 覧
熱 ル ミネ セ ン ス 線 量 計(Thermoluminescencedosemeters;TLD)
光 刺 激 ル ミネ セ ン ス 線 量 計(OpticallyStimulatedLuminescencedosimeter;OSLD)
CTDI(ComputedTomographydoseindex)
DLP(Dose‑LengthProduct)
ア ク リル 樹 脂(PolymethylMethacrylate;PMMA)
X線 フ ィ ル ム とnanoDot線 量 計 の 組 み 合 わ せ(nanoDot/Film)
米 国 国 立 標 準 技 術 研 究 所(NationalInstituteofStandardsandTechnology;NIST)
患 者 入 射 線 量(PatientEntranceDose;PED)
面 積 線 量(Dose‑AreaProduct;DAP)
入 射 表 面 線 量(EntranceSurfaceDose;ESD)
線 量 幅 積(Dose‑WidthProduct;DWP)
国 際 原 子 力 機 関(InternationalAtomicEnergy;IAEA)
国 際 放 射 線 防 護 委 員 会(InternationalCommissiononRadiologicalProtection;ICRP)
診 断 参 考 レ ベ ル(DiagnosticReferenceLevels;DRL)
歯 科 用 コ ー ン ビ ー ムCT(ConeBeamComputedTomography;CBCT)
多 列 検 出 器CT(Multi‑DetectorrowComputedTomography;MDCT)
半 値 全 幅(FullWidthatHalfMaximum;FWHM)
第1章 光刺 激ルミネセンス線 量計 の物 理評 価
序 論
近 年,歯 ・顎 顔 面 領 域 に お け るX線 を 用 い た 画 像 検 査 が 急 速 に進 歩 して い る.特 に3次 元 画 像 が 提 供 で きる画 像 検 査 が 普 及 し,密 度 の 高 い 情 報 が 提 供 で きるように な っ た.X線 を 用 い る検 査 で は そ の 便 益 と不 利 益 を 明 確 に し,医 学 利 用 す る上 で 正 当 化 す る必 要 が あ る.最 も代 表 的 な 不 利 益 は,各 臓 器 に お け る癌 で あ り,そ の リスクを 見 積 もる単 位 として 実 効 線 量 が あ る.そ の 値 は 人 体 等 価 フ ァン トム な ど に線 量 計 を 挿 入 して 得 られ る.こ れ まで 人 体 等 価 ファン トム に入 れ る線 量 計 として,熱 ル ミネ セ ン ス線 量 計(Thermoluminescence
dosemeters;TLD)が 一 般 的 に 用 い られ て きた.今 回 用 い た 光 刺 激 ル ミネ セ ンス 線 量 計 (OpticallyStimulatedLuminescencedosimeter;OSLD)は 光 を 使 用 し,TLDの ように 読 み 取 り過 程 で 熱 を使 用 しな い.読 み 取 る過 程 で 熱 を使 用 しな いOSLは,TLDの そ れ と比 べ,よ り単 純 で は や く,容 易 とい え る1).
OSLDは,個 人 モ ニ タリング や 生 体 線 量 測 定,CTdoseindex(CTDI)測 定 な ど 多 くの 領 域 で 使 用 され て い る2)‑4).その 理 由 は,0.005mSvか ら100mSvと 測 定 範 囲 が 広 い,読 み 取 りの 過 程 で 熱 を使 わ な い,熱 フェ ー デ ィング が 小 さい,再 利 用 可 能,薄 い フィル ム 状 で 形 状 の 加 工 が 容 易 な どの 利 点 が 挙 げ られ る.我 々 は,そ の 利 点 を 生 か して 人 体 等 価 フ ァン トム にOSLDを 挿 入 し,診 断 領 域 に お け る臓 器 吸 収 線 量 の 測 定 を 考 案 した.し か し,測 定 に 際 して 必 要 なOSLDの 診 断 領 域 で 用 い るX線 の 線 質 に 対 す る線 量 直 線 性,方 向 依 存 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性 な ど の 物 理 評 価 の 報 告 が 見 あ た らな か っ た.一 方,人 体 等 価 フ ァン トム に は 線 量 計 を挿 入 す るた め の 円 筒 形 の 穴 が 空 い て い る.そ の 穴 にOSLDを 入 れ て 固 定 させ る た め に,フ ィル ム 状 のOSLDを 半 円 筒 形 の ア クリル 樹 脂(PolymethylMethacrylate;
PMMA)で 挟 み,円 筒 形 に 加 工 した.PMMAでOSLDを 挟 む とい うことは,PMMAか らの 発 生 す る2次 放 射 線 がOSLDに 入 射 し,測 定 値 に影 響 を与 え る可 能 性 が あ るた め,そ の 影 響 の 程 度 を 明 らか に す る必 要 が あ る.
この 研 究 の 目的 は,診 断 領 域 で 使 用 す るX線 の 線 質 に お けるOSLDの 線 量 直 線 性, 方 向 依 存 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を調 べ,併 せ て,人 体 等 価 フ ァン トム に挿 入 して 臓 器 線 量 を 測 定 す るた め にPMMAで 挟 ん だ 場 合 の 線 量 直 線 性,方 向 依 存 性,エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を 明 らか に す ることで あ る.
材料及び方法
光刺激 ルミネセンス線 量計 による発 光原 理の概 略
物 質 に放 射線 を照射す ると物質 内で励 起や電 離 が起きる.これ らの反応 により発 生した 自由電 子 は,元 の原 子 や電 子 と再結 合 し,余 分なエネル ギー を光 や熱 の形で放 出し基 底
状 態 へ 戻 る.Al2O3:Cの ような 格 子 欠 損 の 多 い 結 晶 で は,電 離 に よ り発 生 した 電 子 の 一 部 が,元 の 原 了 や 分 子 と再 結 合 せ ず に 格 子 欠 損 に 形 成 され た 捕 獲 中 心 に 捕 獲 され る.捕 獲 され た 電 子 は 捕 獲 され た エ ネ ル ギ ー バ ン ドより高 い エ ネ ル ギ ー が 供 給 され な い と解 放 され ず,捕 獲 され た 状 態 で 安 定 的 に 存 在 す る.捕 獲 エ ネ ル ギ ー より高 い エ ネ ル ギ ー を 持 った 光 に さらす ことに より,捕 獲 され て い た 電 子 は 格 子 欠 損 か ら解 放 され て 自 由 に な る.こ の 自 由 に な った 電 子 が 発 光 中 心 とな る不 純 物 と再 結 合 す る際 や,別 の 格 子 欠 損 へ 移 動 す る 際, 電 子 の 持 っ て い た 余 分 な エ ネ ル ギ ー が ル ミネ セ ンス として 放 出 され る.
あ る種 の 蛍 光 体 に 放 射 線 を 照 射 す る と一 時 的 に 可 視 光 を 発 生 す る.こ の 現 象 を輝 尽 発 光(Photo‑stimulatedLuminescence)と 呼 ぶ.線 量 測 定 に 使 用 す る 場 合 に はOptically StimulatedLuminescence(OSL)と 呼 ぶ.こ の 時 に 発 生 す る光 の 量 が 最 初 に 被 ば くした 放 射 線 の 量 と比 例 関 係 が 成 り立 つ 事 か ら,放 射 線 の 測 定 器 に 応 用 され て い る5).Al2O3:Cに お い て は,放 射 線 の 電 離 に よ り形 成 され たFセ ン ター(カ ラー セ ン ター)に トラップ され た 電 子 が,緑 色(波 長532nm)の 光 で 刺 激 され,ト ラップ か ら開 放 され ホ ー ル と再 結 合 す る 際 に発 せ られ る青 色(420nm)の 光 を測 定 す ることに より線 量 測 定 を行 な う(Figure1‑1).OSL測 定 法 で は,電 子 を解 放 す るた め に 使 用 す る光 の 強 度 と量 を変 化 させ る事 に よ り,トラップ され た 電 子 の 一 部 分 の み を 解 放 す ることが 可 能 とな る.こ れ に よ り複 数 回 の 繰 り返 し線 量 測 定 が 可 能 とな っ て い る.今 回 使 用 したOSLDに お い て は,レ ー ザ ー へ の 変 換 効 率 が 高 く,高 出 力 が 得 られ るContinuouswaveレ ー ザ ー をOSLD素 子 に 照 射 して ル ミネ セ ン スを 発 生 さ せ た.刺 激 に 使 用 す る光(532nm)と ル ミネ セ ン ス(420nm)を 光 学 フィル ター に よ り分 離 し, ル ミネ セ ンス の み を測 定 す る.
Figure 1-1 A schematic illustration of the optically stimulated luminescence
measurement system.1and4 represent the absorption of radiation and subsequent
charge separation; 2and3 illustrate migration and trapping of an electron(•) after
charge separation; 5 shows the migration and trapping of an hole( ) after charge
separation; 6and7 illustrate the ejection of an electron out of a trap by a green
light of 532nm and movement to the hole via the conduction band ; 8 is the
recombination of an electron and hole at a hole trap and the discharge of a blue light
of 420nm.
光 刺 激 ル ミネ セ ン ス 線 量 計 の 概 略
OSLDは 酸 化 ア ル ミニ ウ ム(Al2O3)に 炭 素(C)を 添 加 し た も の で あ る.OSLDシ ー トは LandauerLtd(LandauerInc.,Glenwood,IL,USA)で 製 作 され た.こ の シ ー トを 長 瀬 ラ ン ダ ウ ア 株 式 会 社(lbaraki,Japan)に お い て 長 さ20mm,幅3mmに 切 断 した(Figure1‑2a).
シ ー トを 半 円 筒 形 のPMMAでOSLの 上 下 を 挟 み,円 筒 形 に す る(Figure1‑2b).各 シ ー トは 可 視 光 に 露 光 す る と光 フ ェ ー デ ィン グ を 起 す こ とか ら,遮 光 ビ ニ ー ル で 覆 っ た(Figure
1‑2c).線 量 計 の 感 度 の 均 一 性 は,60Coの γ 線(1.17MeV,1.33Mev)1mSvの 照 射 に お け る応 答 の 変 動 係 数 は5%未 満 で あ る6).
Figure 1-2 Photograph of an optically stimulated luminescence dosemeter(OSLD) strip (a), strip with half-cut polymethyl methacrylate cylinders (b), and OSLD covered in a visible light protective sheet (c)
素 子 の 初 期 化(ア ニ ー リン グ)か ら測 定 ま で
素 子 の 準 備 か ら測 定 ま で の 流 れ をFigure1‑3に 示 す.ア ニ ー リン グ に は 市 販 され て い る 15Wの 蛍 光 灯(Toshibaメ ロウ5)に 紫 外 線 を カ ッ トす る フ ィル タ ー を 取 り付 け て 使 用 す る.蛍 光 灯 を5本 平 行 に 取 り付 け,蛍 光 灯 か ら17cm離 れ た とこ ろ にOSLDを 設 置 し,360分 照 射 す る.OSLD表 面 で の 明 る さ は16,500±650luxで あ る.ア ニ ー リン グ を 終 え たOSLDを ア ク リル 樹 脂 で 挟 み,光 に よ る フ ェ ー デ ィン グ を 防 ぐ 目 的 で 黒 色 の 遮 光 ビ ニ ー ル で 覆 う.次 ぎ に 測 定 しよ うとす る 放 射 線 に 曝 し,測 定 値 を 読 み 取 りとる.読 取 装 置 はManualluxelreader
(LandauerLtd.)を 使 用 し た.こ の 読 み 取 り装 置 は,137Csの γ 線(663keV)に よ るambient doseequivalent(H*(10))に 対 し て 校 正 され,そ の 指 示 値 の 単 位 は シ ー ベ ル ト(Sv)で あ る.
尚,ア ニ ー リン グ お よ びOSLDの 線 量 の 読 み 取 りは 長 瀬 ラ ン ダ ウ ア 社 で 行 っ た.測 定 は,1
つ のOSLD素 子 を 縦4mm,幅2mmの3つ の 小 さな 長 方 形 に 区 切 り,各 面 か ら線 量 を
読 み 取 り3つ の 値 で 平 均 値 を 求 め た(Figure1‑4).
Figure 1-3 Procedure chart of OSLD element preparation.
Figure 1-4 Diagrammatic luminescence dosemeter measurement areas
representation (OSLD) strip
of an showing
optically stimulated
dimensions and
校 正 場
人 体 臓 器 組 織 の 吸 収 線 量 を 測 定 す る場 合,人 体 等 価 フ ァン トム 中 で,線 量 を知 りた い 臓 器 の 場 所 に線 量 計 を挿 入 して 測 定 す る.線 量 計 として 電 離 箱 を 挿 入 した 場 合,電 離 箱 内 部 は 空 気 で 満 た され た 空 洞 に な っ て い る.電 離 箱 で は 空 洞 中 の 空 気 の 吸 収 線 量 を 測 定 して い る.こ の 空 洞 が 組 織 で 満 た され て い る場 合,組 織 の 吸 収 線 量 と空 洞 に お け る空 気 の 吸 収 線 量 の 比 は,各 々 質 量 エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数 の 比 に 等 しい.従 っ て,空 気 の 吸 収 線 量 が 測 定 で きれ ば,そ の 値 に 空 気 に 対 す る組 織 の 質 量 エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数 を 掛 け ることに よ っ て 組 織 の 吸 収 線 量 が 算 出 で きる.
一 方,人 体 臓 器 の 吸 収 線 量 を測 定 す るの に,便 宜 上,電 離 箱 を使 わ ず にTLDやOSLD な どの 個 体 検 出 器 を使 う場 合 が あ る.こ の 場 合,個 体 検 出 器 で 測 定 され た 線 量 は,電 離 箱 か ら得 られ た そ れ とは 異 な る.こ の 測 定 され た 線 量 の 比 は,個 体 検 出 器 の 検 出 媒 体 と電 離 箱 の 検 出 媒 体 で あ る空 気 の 質 量 エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数 比 お よび 媒 体 を 覆 う物 質 に 依 存 す る.
例 え ば,TLDはTL素 子 の 粉 末 を封 入 す るカ プ セ ル の 影 響 も加 える必 要 が あ る.こ の 比 は, エ ネ ル ギ ー の 関 数 に な っ て お り,エ ネル ギ ー に依 存 す る.電 離 箱 以 外 の線 量 計 を用 い る場 合 に は,使 用 す るエ ネ ル ギ ー に お け る指 示 値 と空 気 吸 収 線 量 の 比 を 明 らか に して お く必 要 が あ る.こ れ が 校 正 とい う作 業 で あ る.
高 電 圧 発 生 装 置 としてMG165(Philips,Hamburg,Germany)を 用 い た.MG165の 管 電 圧 は7.5kVか ら160kVま で0.1kV間 隔 で 選 択 が 可 能 で,そ の 誤 差 は1%未 満 とな っ て い る.
管 電 流 は0.5mAか ら30mAま で0.05mA間 隔 で 選 択 で き,そ の 誤 差 は0.2%未 満 とな っ て い る.ま た,固 有 濾 過 は1.0mm(Be),付 加 濾 過 は3.7mm(Al)と した.照 射 野 は 直 径15 cmの 円 形 でX線 ビー ム を 水 平 に 向 けて 照 射 した.焦 点 検 出 器 間 距 離 を150cmと し,検 出 器 は 壁 か らの 後 方 散 乱 を 避 け るた め に 壁 か ら300cm離 した(Figure1‑5).
OSLDか らの 指 示 値 は 校 正 定 数 を乗 じて 空 気 吸 収 線 量 とした.リ ファレン ス線 量 計 として 線 量 計RAMTEC1000D(ToyoMedicCo.,Ltd.,Tokyo,Japan),電 離 箱 に はModelA4 Exradin(30cm3involume)を 使 用 した.こ の 線 量 計 と電 離 箱 は 日本 品 質 保 証 機 構 に よ り校 正 され て い る.OSLDを リフ ァレンス 線 量 計 と同 じ位 置 に 設 置 し,OSLDか らの 指 示 値 を リファ レ ンス線 量 計 の 指 示 値 で 置 き換 え る置 換 更 正 法 を用 い た.ま た,OSLDの 指 示 値 をリフ ァレ ン ス線 量 計 に よる指 示 値 で 除 したも の を応 答 とした.ま た,応 答 の 変 動 は 変 動 係 数(cv)で 評 価 し,そ の 計 算 式 を 以 下 に 示 す.
S
x
x
標 本 標 準 偏 差(OSLDか らの 指 示 値 の 標 準 偏 差) :標 本 平 均(OSLDか ら の 指 示 値 の 算 術 平 均) :測 定 値(OSLDの 指 示 値)
(1)
レスポ ンス は,被 校 正 線 量 計 の 指 示 値 をリフ ァレ ンス線 量 計 の 指 示 値 で 割 っ たも の と定 義 され て い る.従 っ て,こ こで のOSLDの レスポ ンス はR(Sv/Gy)と して 定 義 した.校 正 定 数 は そ の 逆 数 で 定 義 され,こ こで はN(Gy/Sv)と した.OSLDか らの 測 定 値 をr(Sv)と しリファレ ン ス線 量 計 か らの 空 中 線 量 をD(Gy)と す る と以 下 の 関 係 が あ る.
= −r1R= −(2) DN
Figure 1-5 Schematic representation of the experimental set-up.
OSLD, optically stimulated luminescence dosemeter
線 量 直 線 性
X線 発 生 装 置 は 高 電 圧 発 生 装 置(MG165)を 使 用 し,照 射 した 幾 何 学 的 条 件 は 上 記 校 正 場 と同 様 に 行 っ た.X線 の 入 射 方 向 は 素 子 に 対 して 直 角 とした.照 射 した 空 気 吸 収 線 量 は0.1mGy,0.5mGy,2.OmGy,10mGy,50mGy,100mGyの6点 とした.管 電 圧 は70kVと し,管 電 流 と照 射 時 間 は 上 記6点 の 線 量 が 得 られ るように 次 の 組 み 合 わ せ とした.線 量0.1 mGyで は 管 電 流1.1mA照 射 時 間5秒.線 量0.5mGyで は,管 電 流5.5mA照 射 時 間5秒.
線 量2mGyで は 管 電 流11mA照 射 時 間10秒.10mGyで は 管 電 流22mA照 射 時 間25秒.
40mGyで は 管 電 流22mA照 射 時 間100秒.50mGyで は 管 電 流22mA照 射 時 間125秒.
100mGyで は 管 電 流22mA照 射 時 間250秒 とした.初 期 化 した 線 量 計30個 を 準 備 し,5個 の 線 量 計 を1つ の 組 とし,上 記6点 の 線 量 に つ い て 線 量 を測 定 した.線 量 を読 み 取 る位 置 は,1本 の 素 子 あ た り,先 端,真 中,終 端 の3か 所(Figure1‑4)と し,各 線 量 あ た り合 計15点
(5個 の 素 子 ×3か 所)の 測 定 値 を 求 め た.
レスポ ンス は5個 の 素 子 す べ て に お い て 式1に よ りレス ポ ンス を求 め た.上 記6点 の 線 量 に お ける レス ポ ンス の 平 均 値 を求 め,各 線 量 か ら得 られ た レス ポ ン ス を平 均 値 で 割 り,相 対 値 として グ ラフ に プ ロットした.
エ ネ ル ギ ー 依 存 性
PMMAで 挟 ん だOSLDが45個,PMMAで 挟 ん で い な いOSLDが45個,合 計90個 の 線 量 計 を 使 用 し た.そ れ ぞ れ,5個 を1つ の 組 み として 次 に 示 す9種 の 設 定 し た 管 電 圧(実 効 エ ネ ル ギ ー)で 照 射 した.40kV(26.8keV),50kV(29.1keV),60kV(31.OkeV),70kV
(32.7keV),80kV(34.4keV),90kV(36.1keV),100kV(37.8keV),120kV(41.1keV),
140kV(44.4keV).尚,こ の 管 電 圧 と実 効 エ ネ ル ギ ー の 組 み 合 わ せ は,放 射 線 技 術 学 会 の 「 診 断 領 域X線 の 標 準 測 定 」に 従 っ た も の で あ る7)‑9).
OSLDか ら線 量 を 読 み 取 る位 置 は,線 量 直 線 性 と同 様 に 行 い,1本 の 素 子 あ た り3点,各 エ ネ ル ギ ー あ た り合 計15点 の 測 定 値 を 求 め た.照 射 したX線 の 線 質 は,ア ル ミニ ウム も し く は 銅 の フ ィル タ ー を 加 え て 半 価 層 を 測 定 し,得 ら れ た 半 価 層 の 厚 さを 米 国 の 国 立 標 準 技 術 研 究 所(NationalInstituteofStandardsandTechnology;NIST)10)か らダ ウ ン ロ ー ドし た 半 価 層 に 対 す る 実 効 エ ネ ル ギ ー の 値 と照 らし 合 わ せ て 実 効 エ ネ ル ギ ー を 決 定 し た.
方 向 依 存 性
PMMAで 挟 ん だOSLDが105個,PMMAで 挟 ん で い な いOSLDが105個,合 計210 個 の 線 量 計 を使 用 した.角 度 の 名 称 は,長 方 形 のOSLD素 子 に 対 して 長 辺 方 向 に ま わ る 角 度 を θ,短 辺 方 向 に ま わ る角 度 を φ とし,そ れ ぞ れPolarangle,Azimuthalangleと した.
この 論 文 で は,わ か りや す くす るた め に θと φ を 垂 直 方 向 お よび 水 平 方 向 と記 載 す る.照 射 した 角 度 は,素 子 に 対 して 水 平 方 向 お よび 垂 直 方 向 に そ れ ぞ れ0度,30度,60度,90
度 方 向 か ら照 射 し た(Figure1‑6).ま た,管 電 圧 は50kV,70kV,140kVと した.
素 子 は,5個 を1つ の 組 とし て7方 向 か ら照 射 を 行 っ た(5個 ×7方 向=35個).(0度 に 関 し て は 水 平 方 向 お よ び 垂 直 方 向 の 値 は 同 じ 方 向 とな る).次 に,4つ の 異 な る 管 電 圧 で 照 射 した(35個 ×3=105個).更 にPMMAを 挟 ん だ 場 合 と挟 ま な い 場 合 の2種 類 測 定 した
(105個 ×2=210個).
Figure 1-6 Definition of X-ray incident angles to the optically stimulated luminescence dosemeter strip. OSLD, optically stimulated luminescence dosemeter
結 果
線 量 直 線 性
空 気 吸 収 線 量 が0.1mGyか ら100mGyに お け る レ ス ポ ン ス の 相 対 値 をFigure1‑7に 示 す.
レ ス ポ ン ス は,す べ て の 測 定 点 で0.984か ら1.02と な っ た.ま た,各 測 定 値 の 変 動 係 数 は 1.5%未 満 とな っ た.
エ ネ ル ギ ー 依 存 性
レ ス ポ ン ス は 設 定 管 電 圧40kV,実 効 エ ネ ル ギ ー26.8keVに お い て 約4Sv/Gy,設 定 管 電 圧140kV,実 効 エ ネ ル ギ ー45keVに お い て 約3Sv/Gyと な っ た(Tablel‑1,Figure1‑8,).
ま た,こ の 設 定 した 管 電 圧40kVか ら140kV(実 効 エ ネ ル ギ ー25keVか ら45keV)の 範 囲 は,
診 断 領 域 で 最 も利 用 して い る線 質 で あ る.各 測 定 値 の 変 動 係 数 は1.5%未 満 とな っ た.
角 度 依 存 性
0度 に 対 す る レ ス ポ ン ス をTable1‑2a,1‑2b,Figure1‑9a,1‑9bに 示 す.PMMAで OSLDを 挟 ん だ 場 合(PMMAON)の 水 平 方 向 の レ ス ポ ン ス は,30度 に お い て0.98〜1.03, 60度 に お い て0.95〜1.00,90度 に お い て0.90〜0.97と な っ た.垂 直 方 向 に お け る レ ス ポ ン ス は,30度 に お い て0.99か ら1.02,60度 に お い て0.99か ら1.04,90度 に お い て0.87か ら0.94 とな っ た.PMMAでOSLDを 挟 ん で い な い 場 合(PMMAOFF)はPMMAONと ほ ぼ 同 様 な 値 とな っ た.
Figure 1-7 Relative responses of the dosemeters charted against effective energy,
showing the energy dependence of optically stimulated luminescence dosemeters
Table 1-1 response
Energy dependency of optically stimulated luminescence dosemeters
Tube voltage ( kV ) Effective energy ( keV ) Response
PMMA ON PMMA OFF C.V. ( %)
40 50 60 70 80 90 100 120 140
26.8 29.1 31.0 32.7 34.4 36.1 37.8 41.144.4
4.1 4.2 3.8 3.8 3.8 3.6 3.6 3.3 3.1
4.3 4.1 3.9 3.7 3.8 3.5 3.6 3.3 3.0
1.1 0.4 0.7 1.1 1.4 0.8 1.0 0.9 0.9
Figure 1-8 Figure 6 Relative responses of the dosemeters charted against effective energy, showing the energy dependence of optically stimulated luminescence
dosemeters
Angle (degrees)
Azimuthal 0°
Azimuthal 30°
Azimuthal 60°
Azimuthal 90°
Pola 0°
Pola 30°
Pola 60°
Pola 90°
Table
Angle (degrees)
Azimuthal 0°
Azimuthal 30°
Azimuthal 60°
Azimuthal 90°
Pola 0°
Pola 30°
Pola 60°
Pola 90°
Table
1-2b
1-2a Angular dependence of OSLD with PMMA
29.1 keV
1.00
0.99
0.95
0.90
1.00
0.93
0.86
0.47
Response normalised to 0°
32.7 keV
1.00
0.98
0.99
0.94
1.00
1.01
0.91
0.73
44.4
Angular dependence of OSLD without PMMA
29.1 keV
1.00
1.01
0.99
0.87
1.00
0.97
0.96
0.65
Response normalised to 0°
32.7 keV
1.00
0.99
1.00
0.90
1.00
1.01
1.02
0.53
keV
1.00
1.03
1.00
0.97
1.00
0.95
0.93
0.79
44.4 keV
1.00
1.02
1.04
0.94
1.00
0.97
1.02
0.56
Figure 1-9 Figure 7 Relative responses of the dosemeters as a function of variation in
azimuthal angle (a) and polar angle (b).PMMA, polymethylmethacrylate
考 察
光 刺 激 ル ミネ セ ンス 線 量 計(OpticallyStimulatedLuminescencedosimeter;OSLD)は
1985年 にHuntly等 に より,石 英 や 長 石 を使 用 した 初 め て のOSLに よる線 量 測 定 が 行 わ れ た.1990年 代 に は,酸 化 ア ル ミニ ウム に 炭 素 を 添 加 させ ることに より,高 感 度 のOSLが 開 発 され た.さ らに,McKeeverら は 炭 素 添 加 酸 化 ア ル ミニ ウ ム(α 一Al203:C)の 読 み 取 りに, PullsedOSL(POSL)を 用 い て 高 速 に 読 み 取 れ る方 法 を 開 発 した.現 在 で は,レ ー ザ ー へ の 変 換 効 率 が 高 く,小 型 で 高 出 力 なContinuouswaveレ ー ザ ー に よる読 み 取 りが 主 流 とな っ て い る11).
OSLDは 再 利 用 可 能 で,物 理 的 な 力 や 熱 を加 えて 素 子 を破 壊 しな い 限 り何 度 でも使 用 が で きる.さ らに,熱 フェ ー デ ィング はTLDの 場 合,3ヶ 月 で5〜10%(摂 氏40度 保)生 じるが 12),OSLDで は4カ 月 で10%程 度(摂 氏40度 保 存)で あ る13).OSL技 術 の 最 大 の 特 徴 は,線 量 を読 み 取 る過 程 で 熱 を使 用 しな い 事 で あ る.TLDは 昇 温 速 度 に 依 存 して 感 度 が 異 な る た め,温 度 の 管 理 が 重 要 とな る.多 くの 素 子 を 一 度 に 同 じ昇 温 速 度 で,か つ 反 復 可 能 な 使 用 に 耐 え るシ ステ ム を構 築 す る事 は,実 際 の ところ 非 常 に複 雑 で あ る11).しか し,OSLDは 光 の み を 用 い ることに よ り,そ の ような 欠 点 が な い.
レスポ ンス は,OSLDはPMMAで 挟 ん だ もの と挟 ん で い な い もの に 有 意 な 差 が 見 られ な か っ た.こ の 結 果 は,PMMAか ら発 生 す る2次 放 射 線 がOSLの 現 象 に 影 響 を 与 え な い ことを示 唆 して い る.OSLDの 線 量 直 線 性 は,素 子 の 結 晶 やX線 の 照 射 条 件 に 依 存 す る.今 回 の 結 果 で は,0.1mGyか ら100mGyの 範 囲 で 直 線 性 を 示 し,各 線 量 に お け る測 定 値 の 変 動 係 数 は1.5%未 満 で あ った.人 体 等 価 フ ァン トム に 挿 入 して 照 射 を行 う場 合 な ど,1次 線 か ら離 れ た 臓 器 の 線 量 は 著 しく低 下 す る.こ の 低 下 した 線 量 が,線 量 直 線 性 の 範 囲 を超 える場 合 に は 補 正 が 必 要 とな る.OSLDは 比 較 的 広 い 範 囲 で 直 線 性 が 保 た れ て い るた め に,フ ァン ト ム な どに 入 れ て 測 定 を行 う場 合 に は 有 利 とな る.
方 向 依 存 性 は,水 平 方 向 お よび 垂 直 方 向 に お い て,30度 ず っ4っ の 角 度(0度,30度, 60度,90度)に わ け て 評 価 した.等 方 入 射 場 に お ける方 向 に よる欠 損 の 程 度 を 見 積 もると 次 の ように な る.わ か りや す くす るた め にFigure1‑10の ような 階 段 関 数 を 想 定 す る.0度 以 上15度 未 満 の レス ポ ンス を1.0と す る.こ の 値 を0度 以 上15度 未 満 の 代 表 値 として 考 え る.
以 下,同 様 に 考 え て15度 以 上45度 未 満 の レスポ ンス を0.99,45度 以 上75度 未 満 を0.95, 75度 以 上90度 以 下 ま で を0.90と す る.こ の ように,90度 まで の 領 域 を6つ の 短 冊 状 に 別 け て レス ポ ン スを 考 え ると,水 平 方 向 に お け るレス ポ ン スの 合 計 は0.963と な る(∵
1.0+2*0.99+2*0.95+1.0)/6=0.963).す な わ ち,水 平 方 向 に よる欠 損 は3.7%と な る.次 に 垂 直 方 向 の レス ポ ンスも 同 様 に 考 え ると,0度 以 上15度 未 満 の とき に は0度 の レス ポ ン スを 1.0とす る.15度 以 上45度 未 満 の レスポ ンス と0.93と す る.垂 直 入 射 方 向 に つ い て は,一 次 線 が0度 方 向 か ら入 射 す るようにOSLDを 設 置 す る事 は 容 易 で あ る.散 乱 線 の 入 射 も考 慮 し て,0度 か ら44度 までX線 光 子 が 等 しく照 射 され た と仮 定 した として もレス ポ ンス は0.953と な
り,欠 損 は4.7%と な る.上 記 欠 損 は,評 価 した 設 定 管 電 圧(実 効 エ ネ ル ギ ー)の 中 で,最 も 欠 損 が 多 い40kV(26.75keV)の 場 合 で あ り,一 般 に 使 用 され るパ ノラマ 撮 影 に お い て 設 定 され る管 電 圧 は65kVか ら85kVで 実 効 エ ネ ル ギ ー の 平 均 が33.5keV程 度 で あ る.こ の エ ネ ル ギ ー に お け る欠 損 は,高 々2%で あ る.
OSLDは 診 断 領 域 で 用 い るX線 の 線 質 に お い て,レ ス ポ ン ス は ほ とん ど均 一 で あ り,方 向 依 存 性 も少 な い と結 論 で きる.今 回 の 結 果 を通 じて,線 量 計 測 分 野 に お い てOSLDが 利 用 で きることを示 し,且 つ,OSLDが 信 頼 で きる測 定 精 度 で 計 測 で きることが 示 せ た.
Figure 1-10 Schema for estimation of total response against the isotropic irradiation
第2章 光刺 激ルミネセンス線 量計 による臓器 線 量の測定
序 論
わ が 国 で は 国 民 一 人 あ た り平 均,年1枚 の 歯 科X線 写 真 が 撮 影 され て い る.こ れ は,歯 と歯 周 組 織 の 疾 患 の 診 断,治 療 方 針 の 決 定,予 後 の 判 定 にX線 検 査 は 必 須 とされ,6万8 千 件(平 成24年 厚 労 省 医 療 施 設 動 態 調 査 より)に の ぼ る歯 科 診 療 所 に お い て,ほ ぼ す べ て の 歯 科 診 療 所 にX線 装 置 が 設 置 され,そ の 規 模 に応 じてX線 撮 影 が 行 わ れ て い ること が 一 因 として 挙 げ られ る.
歯 科 診 療 で 頻 繁 に 利 用 され る撮 影 は 口 内 法 撮 影 で あ る.こ の 撮 影 法 は 撮 影 媒 体 を 口 腔 内 に 入 れ て,口 腔 外 よ りX線 を 照 射 して 撮 影 す る.口 内 法 撮 影 は 歯 と歯 周 組 織 の 観 察 を 目 的 として い る.口 内 法 の 照 射 野 は 円 形 で 直 径6cm程 度,30cm2と 撮 影 領 域 は 限 定 され る.ま た,使 用 す る管 電 圧 は60〜70kV程 度 で あ る.1回 の 撮 影 あ た りの 実 効 線 量 は0.01 mSvと 低 く,胸 部 撮 影 の10分 の1程 度 とな る.増 感 紙 を使 用 しな い,い わ ゆ るノンス クリー ン フ ィル ム タイプ か ら半 導 体 撮 像 素 子 や イメー ジ ン グ プ レ ー トを使 用 した デ ジ タル 撮 影 ま で 様 々 な 媒 体 が 使 用 され る が,ノ ンス クリー ンフィル ム タイプ を用 い た 場 合,増 感 紙 を 用 い た ス クリー ン フィル ム タイプ に 比 べ て10倍 程 度 の 入 射 表 面 線 量 とな る.
口 内 法 撮 影 に お い て,患 者 線 量 を モ ニ タ リン グ す るた め に 利 用 され るの は 患 者 入 射 線 量(PatientEntranceDose;PED)も しくは 面 積 線 量(Dose‑AreaProduct;DAP)で あ る14)‑16).
PEDは 照 射 筒 先 端 で の 自 由 空 気 中 の 空 気 カ ー マ を光 刺 激 ル ミネ セ ンス 線 量 計 な どの 小 型 の 線 量 計 を使 用 して 測 定 す る.こ のPEDに 照 射 野 の 面 積 を乗 じた の がDAPで あ る.ま た, PEDに 入 射 面 に あ る皮 膚 や 軟 部 組 織 や 筋 肉 に か らの 後 方 散 乱 成 分 の 補 正 を す ることに よ り入 射 表 面 線 量(EntranceSurfaceDose;ESD)が 求 ま る.補 正 に 必 要 な 後 方 散 乱 係 数 は, 歯 科 領 域 で は ほ ぼ 一 定 で1.2〜1.3と な る.
歯 科 診 療 で 頻 繁 に 利 用 され るもう一 つ の 撮 影 法 に パ ノラマ 撮 影 が あ る.こ の 撮 影 は,上 下 顎 に わ た るす べ て の 歯 と周 辺 組 織 を1枚 の 写 真 で 総 覧 的 に 表 示 す る.歯 と歯 周 組 織 の 観 察 に は,口 内 法 と比 較 して 解 像 度 が 低 い が,顎 骨 へ 進 展 した 病 変 や 顎 骨 の 疾 患 の 診 断 に 有 用 で あ る.本 装 置 で は 縦 長 の ス リット状 のX線 東 が 頭 部 周 辺 を お よそ3/5回 転 す る.
パ ノラマ 撮 影 のX線 束 は1次 ス リットで 縦 長 の ス リット状 に 絞 られ て 患 者 に 入 射 し,患 者 を 透 過 したX線 東 は2次 ス リットを通 過 して 検 出 器 に 到 達 す る.こ の 装 置 の 患 者 線 量 を モ ニ タ リン グ す るた め に利 用 され るの は 線 量 幅 積(Dose‑WidthProduct;DWP)も しくはDAPで あ る.DWPは2次 スリットの 患 者 側 にOSLな ど の 線 量 計 を設 置 して 線 量 を求 め,X線 フィル ム やIPな どで そ の 位 置 のX線 束 の 幅 を求 め て,両 者 を掛 け あ わ せ てDWPを 得 る.DAPは, X線 フィル ム やIPな どでX線 束 の 高 さを求 め,DWPと の 積 で 求 め る14)‑16).この ように 装 置 の 特 徴 に合 わ せ て,患 者 線 量 をモ ニ タリン グ す る方 法 が 選 択 され て い る.こ れ らの 方 法 は,
実 用 量 と呼 ば れ る実 測 の 容 易 な 量 とな っ て い る.
一 方,癌 な ど の 確 率 的 影 響 の リスクを 見 積 もる 防 護 量 として 実 効 線 量 が あ る.そ の 値 は 人 体 等 価 フ ァン トムな ど に線 量 計 を 挿 入 して 照 射 し,各 線 量 計 か ら得 られ た 指 示 値 に 線 量 計 の 校 正 係 数 を掛 け て 空 気 吸 収 線 量 を 求 め る.次 に 空 気 に 対 す る臓 器 の 吸 収 線 量 変 換 係 数 を乗 じて 臓 器 の 吸 収 線 量 に し,放 射 線 荷 重 係 数 お よび 組 織 荷 重 係 数 を掛 けて 全 身 に つ い て 合 計 して 得 られ る.こ れ ま で 人 体 等 価 フ ァン トム に 入 れ る線 量 計 として,TLDが 一 般 的 に 用 い られ て きた.今 回 用 い たOSLDは 光 を使 用 し,熱 ル ミネ セ ンス 線 量 計 の ように 読 み 取 り過 程 で 熱 を使 用 しな い.こ の 線 量 計 の 特 徴 は 前 章 で 示 した が,人 体 等 価 ファン トム に 挿 入 して 線 量 測 定 を行 う場 合,最 大 の 利 点 は 容 易 に加 工 可 能 とい う点 で あ る.
人 体 等 価 フ ァン トム に 線 量 計 を挿 入 して 測 定 す るに は,人 体 等 価 ファン トム に 穿 っ た 穴 に 合 う線 量 計 を選 択 す るか,穴 に 合 うように 加 工 す るしか 方 法 が な い.OSLDは 薄 い フィル ム の 形 状 をして お り,半 円 筒 形 のPMMAでOSLDを 挟 む な どの 加 工 に よ りあ らゆ る 大 きさに 対 応 で きる.
今 回 の 研 究 は,OSLDの 利 便 性 を利 用 してOSLDを 人 体 等 価 フ ァン トム に 挿 入 し,X線 パ ノラマ 装 置3機 種 に お ける臓 器 吸 収 線 量 を 求 め ることが 目 的 で あ る.
材 料 お よ び 方 法
臓 器 線 量 の 測 定 は,次 に 示 す3機 種 の 装 置 と撮 影 条 件 を 採 用 した.Hyper‑XF(Asahi Roentgen,Kyoto,Japan),管 電 圧78kV,管 電 流10mA,照 射 時 間12s.PanoACT‑1000 (AxionJapan,Tokyo,Japan),管 電 圧80kV,管 電 流6mA,照 射 時 間12s.OP200D
(Instrumentarium,Finland),管 電 圧66kV,管 電 流10mA,照 射 時 間17.6s.実 効 エ ネ ル ギ ー を 求 め るた め に 半 価 層 を 測 定 し た.半 価 層 は,非 接 続 型 測 定 器NEROmAxmodel
8000(Victoreen,Cleveland,OH)の 半 価 層 モ ー ドを 使 用 し て 測 定 し た.得 ら れ た 半 価 層 を NISTか らダ ウ ン ロ ー ドした 半 価 層 に 対 す る 実 効 エ ネ ル ギ ー の 値 と照 らし 合 わ せ て 実 効 エ ネ ル ギ ー を 決 定 した.そ れ に よ る とHyper‑XF,2.87mmaluminum,33.8keV,
PanoACT‑1000,2.75mmaluminum,33.2keV,OP200D,2.80mmaluminum,33.5keV
とな っ た.3機 種 の 半 価 層 に よ る 実 効 エ ネ ル ギ ー の 最 大 と最 小 の 差 が0.6keVで あ っ た.こ の 差 に 含 ま れ る 誤 差 が,測 定 値 へ の 与 え る 影 響 を 計 算 す る と,ほ ぼ 無 視 で きる た め 実 効 エ ネ ル ギ ー は 平 均 値 とし て33.5keVを 用 い た.ま た,各 装 置 か ら得 られ た レ ス ポ ン ス の 変 動 係 数 は0.6%で あ っ た.
人 体 等 価 型 フ ァ ン トムRAND(ThePhantomLaboratory,NewYork,NY)は 頭 頂 か ら骨 盤 ま
で25mmの 厚 さ で34個 に 別 け られ て い る.各 断 面 に お け る 臓 器 をTable2‑1に 示 す.脳,水
晶 体,耳 下 腺,舌 下 腺,顎 下 腺,甲 状 腺,骨 髄(下 顎 骨),乳 房 の 臓 器 線 量 を 求 め た.32
個 のPMMAで 挟 ん で 円 筒 形 に し たOSLDを 人 体 等 価 フ ァ ン トム の 中 に 挿 入 し た.
Table 2-1 Organs selected and distribution of dosemeters in the phantom
Organ Location Number of OSL Phantom level
Brain Eyes
Parotid gland Submandibular gland Sublingual gland Bone marrow (mandible) Thyroid Breast
right / midline/left right / left right / left right / left right / left
right / midline/left
fight / left right / left
2/1/2 2/2 3/3 2/2 1/1 1/1/1
2/2 2/2
3,4,5 4
6 7 7
710
線 量 計 の 指 示 値 の 信 頼 性 を確 保 す るた め に 繰 り返 し照 射 を行 っ た.最 も小 さな 線 量 の 値 に お い て も,信 頼 で きる精 度 で 測 定 で きるように 照 射 回 数 を調 整 して 照 射 を 行 っ た.そ の 回 数 は,PanoACT‑1000お よ びOP200Dで は100回,Hyper‑XFで は50回 とし,そ れ ぞ れ の 積 算 線 量 を 求 め た.照 射 回 数 に よ り累 積 され た 線 量 を 照 射 回 数 で 割 り,1回 あ た りの 線 量 を 求 め た.OSLDの 指 示 値(r)に,実 効 エ ネ ル ギ ー33.5keVに お け る校 正 定 数(N33.5)を 掛 けて 空 気 吸 収 線 量(Dair(Gy))と した.次 に,空 気 に 対 す る臓 器 の 質 量 エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数 比(Corgan)を 掛 け て 臓 器 吸 収 線 量(Dorgan(Gy))と した.軟 部 組 織 に つ い て は,Corganを 1.0617)とした.造 血 骨 髄 は 平 均 原 子 番 号(実 効 原 子 番 号)の 高 い 骨 梁 間 隙 に 分 布 して い る.
骨 梁 か らの2次 電 子 の 影 響 に より骨 髄 は 超 過 線 量(excessdose)を 受 け る.今 回 の 実 験 で は 橋 詰18),丸 橋19)らの 報 告 を参 考 に し,下 顎 骨 内 部 で 測 定 した 空 気 吸 収 線 量 に 軟 部 組 織 の 対 空 気 質 量 エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数 比 を 掛 け,さ らに1.03を 乗 じて1.09と した.
Dair N33.5
Dorgan Corgan
:空 気 吸 収 線 量(Gy) :校 正 係 数
:線 量 計 か らの 指 示 値(Sv) :臓 器 吸 収 線 量(Gy)
:空 気 に 対 す る質 量 エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数
22
結 果
実 効 エ ネ ル ギ ー33.5keVに お けるOSLDの 指 示 値 を空 気 吸 収 線 量 に 変 換 す る校 正 定 数(N33.5)を2.6Gy/Svと した.こ れ らの 校 正 定 数 を掛 け て 補 正 を行 い 得 られ た 結 果 をTable 2‑2に 示 す.こ のtableに はTLDで 臓 器 線 量 を測 定 したLudlow20)とGavala21)に よる値 も併 記 し た.3機 種 す べ て に お い て 最 大 の 臓 器 線 量 とな っ た の は 耳 下 腺 で あ る.臓 器 線 量 は パ ノラ マ 撮 影 装 置 の 撮 影 条 件 等 に 依 存 して 変 動 す るが,3機 種 の パ ノラマ 撮 影 装 置 の な か で は PanoACT‑1000に よる臓 器 線 量 が 最 小 とな った.
Table 2-2 Organ doses, in mGy, during panoramic imaging obtained by using optically stimulated luminescence dosemeters and those obtained by
Ludlow20 and Gavala21 using thermoluminescence dosemeters
Tissue
Brain Eye lens Parotid gland Submandibular gland Sublingual gland Thyroid Bone marrow (mandible) Breast
Asahi Hyper-X
(78 kV/10 mA/12 s)
0.085 0.052 0.792
0.739
0.190
0.437
0.205
0.003
PanoACT-1000
(80 kV/6 mA/12 s)
0.019 0.012 0.728
0.177
0.060
0.298
0.069
0.001
OP200
(66 kV/10 mA/17.6 s)
0.047 0.021 0.866
0.311
0.108
0.329
0.110
0.001
Orthophos (rudlow et al)20 (66 kV/16 mA/14.1 s)
0.035
0.020 0.740
0.625
0.
0.
0.
540
050
578
NA
rrolinezuuu
(Gavala et al)21 (66 kV/8 mA/18 s)
0 0 0
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0 .100 .055 .510
.675
.023
.088
.155
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考 察
今 回 の 臓 器 線 量 の 測 定 で は,設 定 管 電 圧 が66kVか ら80kVで 実 効 エ ネ ル ギ ー の 平 均 が33.5keVで あ った.こ の エ ネ ル ギ ー に お け る方 向 依 存 性 の 欠 損 は,第1章 の 結 果 か ら計 算 す ると,2%程 度 で あ る.
OSLDを 人 体 等 価 フ ァン トム に 挿 入 して 照 射 を 行 うと,1次 線 か ら離 れ た 臓 器 の 線 量 は 著 しく低 下 す る.こ の 場 合,線 量 計 に よっ て は,線 量 直 線 性 が 低 下 す るた め,そ の 補 正 が 必 要 とな る.OSLDは 第1章 の 結 果 より,0.1mGyか ら100mGyの 範 囲 で 良 好 な 直 線 性 を示 して い るの で,そ の 範 囲 に 入 るように 照 射 回 数 を調 節 した.従 っ て,線 量 直 線 性 に よる補 正 を行
わ な か った.
国 際 放 射 線 防 護 委 員 会(InternationalCommissiononRadiologicalProtection;ICRP)
のpublication10322)に よれ ば,実 効 線 量 の 計 算 に 際 し,副 腎,胸 郭 外 気 道,胆 嚢,心 臓, 腎 臓,リ ンパ 節,筋 肉,口 腔 粘 膜,膵 臓,前 立 腺(♂),小 腸,脾 臓,胸 腺 及 び 子 宮/子 宮 頸 (♀)の 臓 器 に組 織 荷 重 係 数 を 与 え た.OSLDは 薄 い フィル ム 状 を して い るた め,口 腔 粘 膜 や 気 道 な どの 測 定 に 相 応 しい 形 状 を して い る.ま た,OSLDは 長 い 線 上 にも加 工 が 可 能 な の で,歯 科 用 コー ン ビー ムCTの 線 量 プ ロフィー ル の 測 定 も容 易 に 可 能 で あ る.
OSLDに よる臓 器 線 量 の 結 果 を評 価 す るた め に,既 報 され て い る結 果 と比 較 し,そ の 妥 当 性 を評 価 す ることも重 要 と考 え た.そ の た め,TLDを 使 用 したLudlow20)とGavala21)の 臓 器 吸 収 線 量 の 結 果 を今 回 の 結 果 に 併 記 した.臓 器 吸 収 線 量 の 値 は,人 体 等 価 フ ァン トム 中 の 線 量 計 の 配 置 や 照 射 す るX線 の 線 質 な どに 依 存 して 変 動 す る.そ れ らの 変 動 を 考 慮 に 入 れ,今 回 の 結 果 は 両 者 の 結 果 と同 じ傾 向 に あ る と結 論 した.3機 種 の パ ノラマ 装 置 か ら得 られ た 臓 器 吸 収 線 量 は 同 様 の 値 を 示 した.そ れ らの 中 で,PanoACT‑1000は 比 較 的 低 い 臓 器 吸 収 線 量 で あ った.
OSLDは 診 断 領 域 で 用 い るX線 の 線 質 に お い て,レ スポ ンス は ほ とん ど 均 一 で あ り,方 向 依 存 性 も少 な い と結 論 で きる.今 回 の 研 究 を 通 じて,OSLDをPMMAで 挟 み,人 体 等 価 フ ァン トム に 挿 入 して も,信 頼 で きる精 度 で 計 測 で き ることが 示 せ た.他 の 撮 影 法 に 関 して も, 同 様 の 測 定 結 果 を積 み 上 げ ることが 重 要 と考 え る.
第3章 歯 科 用 コー ンビー ムCTの 面積 線 量 の測 定 法 の検 討 (診 断 参 考 レベ ル を確 立 す るため の広 域 調 査 用 線 量 測 定 用 具 の開 発)
序 論
歯 ・顎 顔 面 領 域 に お け るX線 を用 い た 画 像 検 査 の 進 歩 は3次 元 解 析 を 可 能 に した.最 も 代 表 的 な 装 置 は,歯 科 用 コー ン ビ ー ムCT(CBCT)の 開 発 で あ る23),24).CBCTは イン プ ラン ト 治 療25),埋 伏 歯 の 抜 歯26),顎 顔 面 領 域 の 外 科 学27),歯 内 治 療 学28),歯 周 病 学29),顎 関 節 の 評 価30)お よび 歯 科 矯 正 科31)などの 歯 科 の 専 門 分 野 で 広 範 囲 に 使 用 され て い る.(論 文9) 最 近,SEDENTEXCTに よ り,歯 ・顎 顔 面 領 域 に お け るCBCTを 用 い た 検 査 の ガ イドライ ン が 提 案 され た32).SEDENTEXCT(safetyandefficacyofanewandemergingdentalX‑ray
modality)は,欧 州 に お け る歯 ・顎 顔 面 放 射 線 学 会 に 設 置 され た 組 織 で,CBCTの 安 全 性 と,そ れ に よる効 果 を増 進 させ ることを活 動 の 目 的 として い る.ICRPはPublication60に お い て,放 射 線 を 医 学 に利 用 す る に あた り,正 当 化 され た 行 為 を 最 適 化 して,経 済 的,社 会 的 な 要 因 を 考 慮 に入 れ,で きる 限 り低 い 線 量 に 保 つ ように 勧 告 して い る(aslowasreasonably achievable;ALARAの 原 則).CBCTは 高 密 度 な 画 像 情 報 を 提 供 す るが,放 射 線 の 過 度 な 利 用 は,患 者 の 不 利 益 に 結 び つ く可 能 性 が あ り,した が っ て,放 射 線 の 測 定 な らび に 放 射 線 防 護 の 最 適 化 は,放 射 線 診 断 学 を は じめ 放 射 線 技 術 学 の 重 要 な 構 成 要 素 とな っ て い る.
1996年 に は,国 際 原 子 力 機 関(InternationalAtomicEnergy;IAEA)が ガ イダ ンス レベ ル を 提 案 し33),同 年,ICRPが 診 断 参 考 レベ ル(DiagnosticReferenceLevels;DRL)を 提 案 した 34).DRLは 放 射 線 診 断 に お け る患 者 防 護 を 最 適 化 す るた め に 設 け られ た 量 で あ る34).DRL は 実 効 線 量 とう実 測 困 難 な 防 護 量 とは 異 な り,放 射 線 管 理 に 用 い て い る環 境 モ ニ タリン グ や 個 人 モ ニ タリン グ に 用 い る実 用 量 に 近 い 量 で 提 示 され る.具 体 的 に は,空 気 中 ま た は 単 純 な標 準 ファン トム,あ るい は 患 者 の 体 表 面 に お ける 吸 収 線 量 な どの 容 易 に 測 定 で きる量 が 適 用 され る.患 者 線 量 はDRLを 適 用 す ることに よ り,放 射 線 を用 い た 診 断 手 順 に お い て 最 適 化 す ることが で きる.DRLは 放 射 線 を 用 い た 検 査 に お い て,そ の 検 査 の 患 者 被 ば くが 多 い い か 少 な い か を示 す ことが で きる.あ る検 査 が 対 応 す るDRLを 超 え ることが 判 明 した ら, 防 護 が 十 分 に最 適 化 され て い るか 調 べ るた め に,そ の 方 法 と装 置 を 検 討 す べ きで あ る.も し,十 分 に 最 適 化 され て い な け れ ば,被 ば く低 減 の た め の 措 置 を 講 ず るべ きで あ る.医 療 被 ば くを 低 減 し,放 射 線 診 断 サ ー ビス の 質 を保 証 す るた め の 実 用 的 な 手 段 としてDRLの 有 用 性 が 認 識 され て お り,欧 州 連 合(EU)で は 加 盟 国 にDRLの 確 立 を義 務 づ け て い る.
IAEAは,ガ イダ ンス レベ ル を 国 や 地 域 の 広 い 範 囲 で 調 査 を 行 い(広 域 調 査),各 々の 国 ご とで 決 定 す るように 勧 告 して い る33).DRLは 広 域 調 査 に 基 づ い て 調 査 域 内 の 大 部 分 の 医 療 施 設 で 容 易 に 実 現 で きる線 量(調 査 結 果 の 累 積 度 数 分 布 の 第3四 分 程 度)と す るように 決 め られ て い る.し か し,広 域 調 査 が で きな い 場 合 に 参 考 に す るた め に,主 な 放 射 線 を 用 い た 画 像 診 断 に お け るガ イダ ンス レベ ル を提 示 して い る.口 内 法 に お い て は,口 内 法 根 尖