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角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する病理組織学的および免疫組織化学的検討

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Academic year: 2021

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(1)Vol. 21 No.1. 角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する 病理組織学的および免疫組織化学的検討 岡 本 英 里1) ・ 重 松 久 夫1) ・ 奥 結 香1) 菊 池 建 太 郎2) ・ 草 間 薫2) ・ 坂 下 英 明1) Clinicopathological and immunohistochenical examination on the recurrence of keratocystic odontogenic tumor Eri OKAMOTO1),Hisao SHIGEMATSU1),Yuka OKU1) Kentaro KIKUCHI2),Kaoru KUSAMA2),Hideaki SAKASHITA1) Key words : keratocystic odontogenic tumor(角化囊胞性歯原性腫瘍) , . nevoid basal cell carcinoma syndrome (母斑性基底細胞癌症候群) ,recurrence (再発). Keratocystic odontogenic tumor(KCOT)is an aggressive lesion with a well-documented predilection for recurrence. This study aims to investigate the reason for the recurrence tendency of KCOT. Material and Methods: The materials were 80 KCOTs in 58 patients. All 80 KCOTs were reviewed histopathologically, and 45 of them in 23 patients were examined immunohistochemically by means of monoclonal antibodies against proliferating cell nuclear antigen(PCNA),Ki-67, interleukin-1 α(IL-1 α),and podoplanin. Results: 1. Comparison of sporadic KCOTs with lesions of nevoid basal cell carcinoma syndrome(NBCCS) (1)Histopathologically, the proportion of lesions showing budding proliferation, islands of odontogenic epithelium and daughter cysts was higher for NBCCS than for sporadic KCOTs. (2)Immunohistochemically, the ratio of Ki-67-positive cells in NBCCS lesions was higher than in sporadic KCOTs. The intensity of PCNA immunoreactivity was higher in the basal layer of NBCCS lesions than in KCOTs. However, there was no significant difference in the ratio of IL-1 α -positive cells between NBCCS and sporadic KCOTs. (3)The podoplanin immunoreactivity in NBCCS lesions was more intense than in sporadic KCOTs. 2. Comparison of recurrent and non-recurrent lesions after enucleation (1)Histopathologically, the proportion of lesions showing odontogenic epithelial islands was higher in recurrent KCOTs(45.5%)than in non-recurrent(11.6%)KCOTs. (2)Immunohistochemically, the positivity ratios were higher in recurrent KCOTs than in non-recurrent KC4.4% and 2.8%)and PCNA(55.6% and 44.6%). (3)In sporadic KCOTs, the podoplanin immunoreactivity in recurrent primary lesions was more intense than in non-recurrent lesions. 3. Comparison of the primary KCOTs with or without recurrence and the secondary KCOTs after recurrence (1)Histopathologically, only one lesion of secondary KCOT showed a slight sign of inflammation, in contrast to the high ratio(63.6%)in primary KCOTs. (2)Immunohistochemically, the ratio of IL-1 α -positive cells in secondary KCOTs that showed almost no inflammation was higher than that in primary KCOTs. (3)There were no significant differences in podoplanin immunoreactivity between primary KCOTs and secondary KCOTs after recurrence. Conclusion: The experimental results suggest that any residual epithelial tissue left behind after surgery on the KCOT has a potential to cause proliferation and recurrence. Furthermore, this immunohistochemical study of reactivity for podoplanin supports the contention that KCOT is a benign cystic neoplasm but becomes aggressive when associated with NBCCS..  海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学 明 分野Ⅱ(主任:坂下英明 教授) 2) 明海大学歯学部病態診断治療学講座病理学分野 (主任:草間 薫 教授) 1) Second Division of Oral and Maxillofacial Surgery, Department of Diagnostic and Therapeutic Sciences, Meikai University School of Dentistry . (Chief: Prof. Hideaki SAKASHITA) 2) Division of Pathology, Department of Diagnostic and Therapeutic Sciences, Meikai University School of Dentistry(Chief: Prof. Kaoru KUSAMA) 1). 緒 言 角化囊胞性歯原性腫瘍(keratocystic odontogenic tumor) は, 2005 年までは歯原性角化囊胞 (odontogenic keratocyst)の名称で歯原性発育性囊胞として分類 されていた 1).本疾患はこれまでもさまざまな検討 がなされ,WHO 分類(2005 年)2) では浸潤性の性 格や再発率の高さ,PTCH 遺伝子変異などがみられ 51.

(2) 小. 児. 口. る症例の存在から上皮が錯角化を示すものを角化囊 胞性歯原性腫瘍として,正角化を示すものは正角化 性歯原性囊胞(orthokeratinized odontogenic cyst) として取り扱うこととになった. 一方,古くは基底細胞母斑症候群とされてきた 基 底 細 胞 癌 症 候 群(nevoid basal cell carcinoma syndrome: NBCCS)は,その主症状として,皮膚 の基底細胞母斑・上皮腫,多発性顎囊胞,大脳鎌の 石灰化,二分肋骨,手掌のピットなどがあげられる が,本症候群の 60 ~ 75% に多発性顎囊胞が発生し, そのほとんどが本腫瘍であることが知られている 3). 本腫瘍における問題点は,多発性と再発率の高さで ある.高い再発率については,①囊胞壁が薄いため に剥離の際に損傷して残るなどの手術手技的側面に 加えて,②囊胞上皮の増殖能が高いこと,③娘囊胞 や上皮塊が存在すること,そして④囊胞上皮に腫瘍 性性格があること 4)などが指摘されてきた.さらに, 本腫瘍の裏装上皮の増殖能については歯根囊胞や含 歯性囊胞に比較して高いことが免疫組織化学的にも 裏付けられてきた 5).しかし,これだけでは,単発 性の本腫瘍と比較して NBCCS に発生する本腫瘍が さらに高い再発率を示すことの説明はつかない.. 腔. 外. 科. June 2011. 本論文では,単発性に発生した本腫瘍(以後,単 発 群 と す る ) と NBCCS に 併 発 し た も の( 以 後, NBCCS 群とする)を対象として,再発と裏層上皮 の状態との関連を調べることを目的に,従来より 上皮増殖のマーカーとして有用とされている Ki67 と PCNA お よ び 増 殖 に 関 与 す る と 考 え ら れ て い る IL-1 αと腫瘍の浸潤・転移に関与するとされる podoplanin との発現を検索し,臨床病理組織学・免 疫組織化学的な比較検討を行った.. 対 象 対象は,1982 年から 2010 年までの 28 年間に明海 大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学分 野Ⅱにおいて取り扱われた本腫瘍 60 症例で,この うち,顎骨離断術を施行した 2 例を除く 58 症例(80 病変)である.手術方法は骨削を併用した摘出術を 基本手技としており,本研究においては,積極的な 開窓術が行われた症例は認めなかったため開窓術に ついての検討は行わなかった. なお,同時期または異時期に解剖学的に異なる部 位に発生したものは「多発」とし, 「再発」は同一. 表 1 単発群における免疫組織化学の検討対象(22 病変)の一覧 症例番号 病変番号. 年齢. 性別. 部位. 1. 1. 24. 男. 左側下顎大臼歯部. . 単胞性. 2. 2. 48. 女. 左側下顎臼歯部. . 単胞性. 3. 3. 28. 女. 正中下顎前歯部. . 単胞性. 4. 4. 61. 男. 右側下顎大臼歯部. . 単胞性. 5. 5. 22. 女. 左側下顎智歯部. . 単胞性. 6. 6. 29. 女. 右側下顎大臼歯部. . 単胞性. 7. 7. 55. 女. 左側下顎大臼歯部. . 単胞性. 8. 8. 31. 男. 左側下顎大臼歯部. . 単胞性. 9. 9. 19. 男. 右側下顎大臼歯部. . 多胞性. 10. 10. 20. 女. 右側下顎智歯部. . 多胞性. 11. 11. 36. 男. 左側下顎大臼歯部. . 多胞性. 12. 12. 52. 女. 右側下顎大臼歯部. . 13. 24. 14. 29. 15. 21. 16. 24. 17. 58. 18. 62. 19. 15. 20. 17. 21. 28. 22. 35. 13 14 15 16 17. P:原発病変,R:再発病変 52. 再発の有無 エックス線所見. 男. 右側大臼歯~下顎枝部. *. 男. 左側大臼歯~下顎枝部. *. 男. 左側下顎小臼歯部. *. 女. 右側大臼歯~下顎枝部. *. 男. 右側小臼歯~下顎枝部. *. 多胞性 単胞性 P 単胞性 R 単胞性 P 単胞性 R 単胞性 P 単胞性 R 多胞性 P 単胞性 R 多胞性 P 多胞性 R.

(3) 角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する病理組織学的および免疫組織化学的検討. Vol. 21 No.1. 部位に異時期に病変を認めるものとし,術後,解剖 学的に近接した部位に発生したもので,独立した病 変と判別が困難であったものとした.また,本論文 では再発した症例の初回手術時の病変を原発病変と し,再発時の病変を再発病変とした.さらに,再発 を認めなかった症例の病変を非再発病変とし,再発 の有無を問わず初回に手術した病変を初回手術病変 と表記する. NBCCS の診断については山村らの診断基準 6) に 従い,①基底細胞母斑または上皮腫,②顎骨囊胞, ③掌蹠小陥凹,④大脳鎌石灰沈着および⑤肋骨奇 形の 5 主徴のうち 2 つ以上の典型像を伴うものを NBCCS とし,1 つだけの場合でも家族性に発生し ているものは NBCCS に加えた.また,上記の診断 基準の②「顎骨囊胞」については,WHO の分類と 名称の変更を加味し, 「顎骨囊胞もしくは角化囊胞 性歯原性腫瘍」として評価した. 58 症例の内訳は,単発群が 52 症例 57 病変(初 回手術病変が 52 病変,再発病変が 5 病変)であり, NBCCS 群が 6 症例 23 病変 (初回手術病変が 17 病変,. 再発病変が 6 病変)である.よって,検索対象は 58 症例,80 病変である. 免疫組織化学的検討については,単発群のうちの 17 症例 22 病変(初回手術病変が 17 病変,再発病変 が 5 病変)と NBCCS 群の 6 症例 23 病変(初回手 術病変が 17 病変,再発病変が 6 病変)を対象とした. 検索対象は 23 症例,45 病変である.単発群症例は, H-E 標本上,病理組織像が典型的であると判断した 病変を選択した.ただし,再発を認めた症例は全て 免疫組織化学的検討の対象に含めた. これら 58 症例(80 病変)について検討すると 単発群における初回手術病変 17 病変の発症年齢は 15 歳から 61 歳(平均年齢は 33.5 歳)で,男女比は 9:8, 単 胞 性 が 11 例, 多 胞 性 が 6 例 で あ り, 再 発症例では単胞性が 4 例,多胞性は 1 例であった (表 1).NBCCS 群における 17 病変の発症年齢は 6 歳から 23 歳(平均年齢は 14.8 歳)であり,男女比 は 1:1 で性差はなかった.また,単胞性が 13 例, 多胞性が 4 例であり,再発病変では単胞性が 5 例, 多胞性が 1 例であった(表 2) .原発病変について検. 表 2 NBCCS 群における免疫組織化学の検討対象(23 病変)の一覧 症例番号 病変番号. 年齢. 性別. 部 位. 再発の有無 エックス線所見. 1. 16. 下顎前歯部. 2. 16. 右側下顎智歯部. *. 多胞性 P. 3. 16. 左側大臼歯~下顎枝部. *. 多胞性 P. 4. 16. 右側上顎智歯~上顎洞部. *. 単胞性 P. 5. 24. 右側上顎臼歯部. 単胞性 R. 6. 25. 右側下顎智歯部. 多胞性 R. 7. 26. 左側下顎臼歯部. 単胞性 R. 2**. 8. 7. 男性. 右側下顎犬歯部. 単胞性. 9. 23. 3. 10. 23. 男性. 右側下顎大臼歯部. 11. 29. 右側下顎大臼歯部. 12. 6. 右側大臼歯~下顎枝部. 13. 7. 右側上顎大臼歯部. 単胞性. 14. 7. 左側上顎大臼歯部. 単胞性. 15. 7. 左側下顎大臼歯部. 単胞性. 16. 12. 右側下顎大臼歯部. 単胞性 R. 17. 19. 左側下顎臼歯部. 単胞性. 18. 19. 右側下顎大臼歯部. 19. 20. 20. 20. 左側上顎大臼歯部. 単胞性. 21. 23. 右側下顎大臼歯部. 単胞性 R. 22. 15. 右側下顎大臼歯部. 単胞性. 23. 15. 左側下顎大臼歯部. 単胞性. 1. 4. 5. 6. 男性. 単胞性. 右側上顎臼歯部. 女性. 女性. 女性. 左側上顎小臼歯部. 多胞性 *. 単胞性 P 単胞性 R. *. *. 単胞性 P. 単胞性 P 多胞性. P:原発病変,R:再発病変 ** 家族性発生例 53.

(4) 小. 児. 口. 討すると,下顎智歯部~下顎枝部にかけての病変が 11 病変中 6 病変(単発群 4 病変,NBCCS 群 2 病変) を占めていた.そのうち多胞性のものは 11 病変中 4 病変(単発群 2 病変,NBCCS 群 2 病変)であった (表 3).原発病変 11 病変では,平均年齢は単発群 (5 例)で 29.2 歳, NBCCS 群(6 例)で 16.0 歳であり, 男女比は単発群で 4:1 と男性に多く,NBCCS 群 では男女差はなかった.再発までの期間は 2 年から 9 年で,単発群では平均 4.2 年(標準偏差 1.7,中央 値 4) ,NBCCS 群では平均 7.0 年(標準偏差 2.0,中 央値 7)であった.. 方 法 1.病理組織学的検討 病理組織学的検討は,80 病変を対象として,①単 発群と NBCCS 群,②非再発病変と原発病変,③原 発病変と再発病変について,それぞれ比較検討した. 摘出した組織を 10% 中性緩衝ホルマリンで約 24 時間固定し,通法に従ってパラフィン包埋後 3 ~ 4 μm の連続薄切切片を作製した.連続切片を用い て,H-E 染色標本を作製した.裏装上皮の状態,娘 囊胞の有無,上皮塊の有無および蕾状増殖について 観察した. 2.免疫組織化学的検討 免 疫 組 織 化 学 的 検 討 は, 対 象 と な る 45 病 変 に ついて,病理組織学的検討と同様に,①単発群と NBCCS 群,②非再発病変と原発病変,③原発病変 と再発病変について,それぞれ比較検討した.. 腔. 外. 科. June 2011. 薄切切片を脱パラフィン後,内因性ペルオキシ ダーゼ活性阻止を目的として 0.3% H2O2 加メタノー ルにて室温で 15 分間処理を行った.抗原性の賦活 化 を 目 的 と し て,0.01M ク エ ン 酸 緩 衝 液(pH6.0) に 浸 漬 し マ イ ク ロ ウ ェ ー ブ 処 理 を 15 分 行 い, 放 熱,リン酸緩衝液(phosphate-buffered saline: PBS; 0.01M phosphate buffer, 0.15M NaCl, pH7.4)で洗浄 した.非特異的反応の阻止として 2%bovine serum albmin(BSA; ICN Biomedicals Inc, Auroa, OH)を 用いて室温で 15 分間処理を行った.一次抗体はマ ウスモノクローナル抗体 Ki67(DACO,CA),PCNA (Santa Cruz, CA),lL-1 α(Santa Cruz, CA), お よび podoplanin(DACO, CA)をそれぞれ 2% BSA 加 PBS で 1:50 に希釈したものを室温で 60 分間反 応させた.PBS にて洗浄後,二次抗体としてペル オキシダーゼ標識抗マウス IgG ポリクローナル抗体 (ヒストファインシンプルステイン MAX-PO(M) ; ニチレイ,東京)を用い,室温にて 30 分間反応さ せ た. 再び PBS で 洗 浄 後,DAB 溶 液(0.05% 3,3'- diaminobenzidine tetrahydrochloride, 0.01% H2O2, 0.05M tris-HCl buffer, pH7.4)を用いて 10 分間発色 させ,水洗後,Mayer のヘマトキシリン溶液(武藤 化学株式会社,東京)で核染色を行った.水洗後, 脱水・透徹を行い,封入し,光学顕微鏡にて検鏡し た.Ki67,PCNA,IL-1 αの免疫組織化学の判定は, その局在を観察するとともに,各病変における上皮 全層での細胞 100 個あたりの陽性数から陽性率を算 出した.陽性率の判定に際しては,染色性が明らか なものを陽性とし,特に染色性の強弱は問わないこ ととした.錯角化層については判定対象とはせず,. 表 3 再発した病変(原発病変)の一覧 症例番号. 単発群. NBCCS. 病変番号 年齢. 部 位. エックス線所見 再発までの期間. 16. 19. 15. 女. 右側大臼歯部~下顎枝部. 多胞性. 2年. 14. 15. 21. 男. 左側大臼歯部~下顎枝部. 単胞性. 3年. 15. 17. 58. 男. 左側下小臼歯部. 単胞性. 4年. 13. 13. 24. 男. 右側大臼歯部~下顎枝部. 単胞性. 5年. 17. 21. 28. 男. 右側小臼歯部~下顎枝部. 多胞性. 7年. 5. 20. 19. 女. 右側下大臼歯部. 単胞性. 4年. 3. 10. 23. 男. 右側下大臼歯部. 単胞性. 6年. 4. 15. 6. 女. 右側大臼歯部~下顎枝部. 単胞性. 6年. 右側上智歯部~上顎洞部. 単胞性. 8年. 左側大臼歯部~下顎枝部. 多胞性. 9年. 右側下智歯部. 多胞性. 9年. 2 1. 3 4. 54. 性別. 16. 男.

(5) Vol. 21 No.1. 角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する病理組織学的および免疫組織化学的検討. 写真 1 病理組織所見 上皮は錯角化を呈しており,上皮の厚さは 6~8層  で,基底層の濃染性核を有する紡錘形細胞や,まれに 細胞分裂も観察された.. 写真 2 病理組織所見 上皮下の結合組織内に娘囊胞が認められた.. . 基底層から有棘細胞層を対象として判定を行った. Podoplanin に対する免疫組織化学の判定は,一視野 の総細胞数の中で,染色がほとんどされていないも のを陰性(-) ,50% 以下が染色されているものを 陽性(+),50% 以上が染色されているものを強陽 性(++)とした.なお,陰性対照標本は一次抗体 の代わりに 2% BSA・PBS を反応させ同様に染色し, 非特異的な呈色反応がないことを確認した.また, 本研究は明海大学歯学部倫理委員会の承認のものと に行った(承認番号:A-0832) .. 結 果 1.病理組織学的検討 単発群と NBCCS 群を問わず,本腫瘍の上皮は錯 角化を呈しており,上皮の厚さは 6 ~ 8 層で,基底 層の濃染性核を有する紡錘形細胞や,まれに細胞. . 写真 3 病理組織所見 上皮の蕾状増殖が認められた.. 写真 4 病理組織所見 上皮下の結合組織内に上皮塊が認められた.. . 分裂も観察された.上皮下には線維性結合組織があ り,部位により炎症性細胞浸潤の存在が確認された (写真 1) . また,ときに上皮が凹凸蛇行嵌入して娘囊胞を 形 成 し た り( 写 真 2) , 蕾 状 増 殖 を 呈 し て い た り (写真 3),上皮塊が散在性に認められた(写真 4). 単発群の 57 病変では,娘囊胞が 26.3%,上皮塊が 15.8% に認められた.NBCCS 群の 23 病変では,娘 囊 胞 は 34.8% に, 上 皮 塊 は 17.4% に 認 め ら れ た. 蕾状増殖は単発群では 3.5% に過ぎず,NBCCS で 13.0% であった(表 4) .また,上皮直下の結合組織 内にみられる炎症所見は NBCCS 群で 52.2%,単発 群で 54.4% と,両群ともほぼ半数の病変に認められ た.単発群と NBCCS 群において比率の差の検定 7) を行ったところ,両群の間に有意差は認めなかった. 非再発病変の 58 病変では,娘囊胞が 29.0%,上皮 塊が 8.6% に認められた.原発病変の 11 病変では, 55.

(6) 小. 児. 口. 腔. 外. 科. June 2011. 表 4 単発群と NBCCS 群の病理組織学的比較 病変数 単発群. 57. NBCCS 群. 23. 娘囊胞. 蕾状増殖. 上皮塊. 炎症. 15. 2. 9. 31. 26.3%. 3.5%. 15.8%. 54.4%. 8. 3. 4. 12. 34.8%. 13.0%. 17.4%. 52.2%. 表 5 非再発病変と原発病変の病理組織学的比較 . 病変数. 非再発病変. 58. 原発病変. 11. 娘囊胞. 蕾状増殖. 上皮塊. 炎症. 17. 4. 5. 35. 29.%. 6.9%. 8.6%. 60.3%. 1. 0. 5. 7. 9.1%. 0.0%. 45.5%. 63.6%. 原発病変は再発した症例の初回手術時の病変とし, 非再発病変は再発を認めなかったものとした.. 表 6 原発病変と再発病変の病理組織学的比較 . 病変数. 原発病変. 11. 再発病変. 11. 娘囊胞. 蕾状増殖. 上皮塊. 炎症. 1. 0. 5. 7. 9.1%. 0.0%. 45.5%. 63.6%. 4. 1. 3. 1. 36.4%. 9.1%. 27.3%. 9.1%. 原発病変は再発した症例の初回手術時の病変とし,再発時の病変を再発病変とした.. 娘囊胞は 9.1% に,上皮塊は 45.5% に認められた. 蕾状増殖は非再発病変では 6.9% であり,原発病変 では認めなかった(表 5) .また,上皮直下の結合組 織内にみられる炎症所見は非再発病変で 60.3%,原 発病変で 63.6% と,両群ともほぼ半数以上の病変に 認められた.非再発病変と原発病変の比率の差の検 定 7)を行ったところ,上皮塊においては有意な差を 認めたがその他については有意差を認めなかった. 原発病変の 11 病変では,娘囊胞が 9.1%,上皮塊 が 45.5% に認められた.再発病変の 11 病変では, 娘囊胞は 36.4% に,上皮塊は 27.3% に認められた. 蕾状増殖は原発病変では認めず,再発病変で 9.1% であった(表 6).また,上皮直下の結合組織内に みられる炎症所見は原発病変で 63.6%,再発病変で 9.1% と,原発病変で何らかの炎症所見が認められた のに対し,再発病変では軽度の炎症が 1 病変に認め られたに過ぎなかった.原発病変と再発病変との比 率の差の検定 7)を行ったところ,炎症については有 意な差を認めたが,その他については有意差を認め 56. なかった. 2.免疫組織化学的検討 1)Ki67 染色所見(表 7-9) 単発群では Ki67 陽性細胞は基底層から傍基底層 に存在し,100 細胞あたりの陽性率は 2.3%,NBCCS 群においては基底層から有棘層にかけて陽性細胞が 認められ陽性率は 4.5% であった(写真 5 a, b).また, 非再発病変と原発病変とを比較すると,非再発病変 が 2.3% に対して原発病変は 4.4% と高い傾向を示し た.なお,再発病変に絞ってみると Ki67 の値は 2.4% に過ぎなかった. t 検定の結果,各群間において統計学的に有意な 差は認めなかった. 2)PCNA 染色所見(表 7-9) PCNA 陽性細胞は,単発群では傍基底層に多く 存在し,NBCCS 群では基底層から有棘層に広く存 在が確認された(写真 6 a, b) .PCNA の 100 細胞 あたりの陽性率は,基底細胞層から有棘細胞層の全.

(7) Vol. 21 No.1. 角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する病理組織学的および免疫組織化学的検討. 表 7 単発群と NBCCS 群の免疫組織化学的比較 Ki67. PCNA. IL-1 α. 単発群. 2.3%. 48.8%. 24.7%. NBCCS 群. 4.5%. 48.3%. 26.6%. 表 8 非再発病変と原発病変との免疫組織化学的比較 Ki67. PCNA. IL-1 α. 非再発病変. 2.3%. 38.6%. 16.1%. 原発病変. 4.4%. 55.5%. 26.4%. 表 9 原発病変と再発病変との免疫組織化学的比較. a a. Ki67. PCNA. IL-1 α. 原発病変. 4.4%. 55.5%. 26.4%. 再発病変. 2.1%. 39.8%. 30.9%. bb 写真 5 Ki67 免疫組織化学所見(a;単発群,b;NBCCS 群). Ki67abNBCCS Ki67abNBCCS 単発群では Ki67 陽性細胞は基底層から傍基底層に存在し,NBCCS 群においては基底層から有棘層にかけて陽 性細胞が認められた.. aa. bb. 写真 6 PCNA 免疫組織化学所見(a;単発群,b;NBCCS 群) PCNA 陽性細胞は,単発群では傍基底層に多く存在し,NBCCS 群では基底層から有棘層に広く存在が確認された.. PCNAabNBCCS PCNAabNBCCS. 57.

(8) 小. 児. 口. 腔. aa. 外. 科. June 2011. bb. 写真 7 IL-1 α免疫組織化学所見 IL-1 α陽性細胞は基底層上から有棘層上部まで広く存在し,単発群と NBCCS 群で,その局在に違いは認められ なかった(a:単発群,b:NBCCS 群) .. IL-1�abNBCCS IL-1�abNBCCS. 表 10 単発群と NBCCS 群の免疫組織化学的比較(podoplanin) 強陽性. 陽性. 弱陽性. 陰性. 単発性. 3. 14. 2. 2. NBCCS. 5. 15. 3. 0. aa. bb. 写真 8 非再発病変の podoplanin 所見 単発群では索状に配列する基底層および傍基底層の細胞膜に強い発現を認め,NBCCS 群では基底層から有棘細 胞層の一部にかけて,より広い範囲で強い発現が観察された(a:単発群,b:NBCCS 群). podoplanin podoplanin abNBCCS abNBCCS. 層では,単発群で 48.8%,NBCCS 群で 48.3% と同 様の値を示していた.非再発病変と原発病変とを比 較すると,非再発病変が 38.6% に対して原発病変は 55.5% と高い傾向を示した.再発病変の PCNA の 値は Ki67 の結果と同様,原発病変と比較して低く 42.0% であった. t 検定の結果,各群間において統計学的に有意な 差は認めなかった. 58. 3)IL-1 α染色所見(表 7-9) IL-1 α陽性細胞は基底層上から有棘層上部まで広 く存在し,単発群と NBCCS 群で,その局在に違い は認められなかった(写真 7 a, b) .100 細胞あたり の陽性率は単発群で 24.7%,NBCCS で 26.6% であっ た.非再発病変と原発病変とを比較すると,非再 発病変が 16.1% に対して原発病変は 26.4% と高い傾 向を示した.また,再発病変は,原発病変(26.4%).

(9) Vol. 21 No.1. 角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する病理組織学的および免疫組織化学的検討. aa. bb 写真 9 原発病変の podoplanin 所見 原発病変では単発群でも podoplanin の強い発現が認められた.(a: 単発群,b:NBCCS 群).. podoplanin podoplanin abNBCCS abNBCCS と比較してみると,30.5% と高い値を示していた. t 検定の結果,各群間において統計学的に有意な 差は認めなかった. 4)podoplanin 染色所見(表 10) Podoplanin の免疫組織化学的検索で,単発群で は索状に配列する基底層および傍基底層に強い発現 を認め,NBCCS 群では基底層から有棘細胞層の一 部にかけて,強い発現を認めた(写真 8 a, b) .ま た, 原発病変における podoplanin の局在については, 単発群にも関わらず,NBCCS 群と同様,基底層か ら有棘細胞層の一部におよぶ強い陽性所見として確 認された.(写真 9 a, b).. 考 察 本腫瘍については,2005 年の WHO 分類の改定 2) の前から良性の囊胞性腫瘍としての指摘がなされて きた 5, 8 ~ 10).これは,主に本疾患の高い再発率のた めであり,再発率は 12.0%11) から 62.5%12) とするも のまで認められる.本疾患はあらゆる年代での発生 が認められているが 11),その 66% が 30 歳代までに 発生するといわれる 13).特に,NBCCS では 10 ~ 20 歳代をピークに比較的若年期に多発性の顎骨内囊 胞性病変として発現することが知られている 3, 14, 15). また,若年層では歯を含む症例が散見されることも 報告 13)されており,病変が多発する NBCCS では高 い再発率への対応と病変と関連する歯の処置という 点でその対応が問題となる 15). 「一塊として摘出し 再発について,Forssell16)は, えた本腫瘍では再発は認められず,いくつかに分割 して摘出した場合にはその半数で再発を認めた」と して,手術手技的な問題点を指摘している.また, 再発例の 72.2% は下顎枝部であり,エックス線像で. の大きさは 70% が直径 4cm 以上と大きいことから, 大きいものの方が再発率は高く,また,形状では再 発例の 60% が多胞性であり,非再発例の 63% が単 胞性であったと報告している.本研究でも,原発病 変では下顎智歯~下顎枝にかけての部位の病変が 11 病変中 6 病変を占めており,多胞性のものが 4 例認 められた. したがって,下顎枝部に及ぶ大きくて多胞性の病 変ほど,一塊として摘出しづらいことが再発要因の 一つであると考えられる.しかし,単胞性のものや 発生部位が必ずしも下顎枝部など奥まった部位でな いにもかかわらず再発をみることがあり,これだけ では高い再発率の説明はつかない. 再発の要因として,以前からこうした不完全な摘 出のほかに,囊胞上皮の増殖能が高いこと,娘囊胞 や上皮塊が存在すること,あるいは,囊胞上皮に腫 8, 17) . 瘍性性格があることなどがあげられてきた 本腫瘍における細胞増殖能については,病理組織 学的に,有糸分裂数(M 期についての検討)18) や DNApolimerase α陽性細胞数(G1 後期~ S 期の検 討)を評価する 19)などのほか,免疫組織化学的には, Ki6720 ~ 22)や PCNA23 ~ 26)などを用いた報告がある. これらの報告では,歯根囊胞や含歯性囊胞,原始性 囊胞 20)あるいは正角化性歯原性囊胞 22)などの囊胞 性疾患と比較して,本腫瘍における陽性率が高く, 裏装上皮の高い増殖能という点では一致している. 新谷 24) らによると,PCNA の陽性率は,歯根囊胞 で 5.0 ± 2.2% であるのに対し本腫瘍では 22.5 ± 9.2% と高値を示し,その陽性率は石灰化囊胞性歯原性腫 瘍やエナメル上皮腫に近い値であるとされる.中川 ら 25) は,PCNA の陽性率が,歯根囊胞で 9.1%,本 腫瘍で 19.7%,本腫瘍の再発例(2 例)ではそれぞ れ 28.1% と 38.8% と高い PCNA 陽性率を示したこ 59.

(10) 小. 児. 口. とから,裏装上皮の高い増殖能が再発率を高くして いる一因としている.一方,金子ら 26) は,本腫瘍 の病理組織学的 ・ 免疫組織化学的検討において,再 発病変と非再発病変とで PCNA 陽性率に有意差は 認めなかったとしている.本研究では,原発病変と 非再発病変とでみると,原発病変における PCNA 陽性率は 55.5%と, 非再発病変(38.6%)と比較して, 高い値を示していた.この結果は,裏装上皮の高い 増殖能が再発の基盤にあることを示唆するが,これ だけでは,NBCCS 群のさらに高い再発率を説明で きないと考えられる. Murtadi ら 27)は, 単発 群と NBCCS 群を比 較し, PCNA の陽性率は NBCCS 群が高かったとしている. また,金子ら 26)は,裏装上皮全層での有意差はなかっ たが,基底細胞層に限ってみた場合,PCNA 陽性率 は NBCCS 群においてやや有意差をみとめたとしてい る.佐藤ら 28)は,PCNA 陽性率について両群間で有 意差を認めなかったが,Ki67 に対する免疫組織化学 では NBCCS 群のほうが単発群よりも陽性率が高かっ たとしている.本研究では,Ki67 の陽性率は NBCCS 群で高かったが,PCNA の陽性率については,金子ら の報告 26)と同様,裏装上皮全層での有意差は認めら れなかった.基底細胞層に限ってみた場合,NBCCS 群でやや高い傾向にあることは否定できないが,両群 間の差は著明なものとは思われず,むしろ,両群間に おける再発率の差には細胞活性以外の因子が関わって いる可能性が高いものと思われた. Li ら 29)は本腫瘍を対象として Ki67 の免疫組織化 学的検討を行い,NBCCS 群の本腫瘍(9 病変)では 91.8 cells/mmBM (基底細胞 1 ㎜あたりの陽性細胞数) と明らかに高い数値が認められたとしながらも,非再 発病変(10 病変)で 53.1 cells/mmBM であったのに 対し再発病変(8 病変)では 44.0 cells/mmBM に過 ぎず,再発と Ki67 陽性率に相関性が認められなかっ たとしている.この結果を踏まえ,両群間の再発率の 差異は,増殖能ではなく娘囊胞や上皮塊の発生率の差 にあるのではないかと推察している. 再発については以前から娘囊胞や上皮塊との関 係を指摘する報告 21, 30) が散見されるが,単発群と NBCCS 群との比較では必ずしも一致した見解が示 されているわけではない.Browne31) や Brannon32) は上皮塊,娘囊胞,上皮脚の延長のいずれにおいて も両群間で有意差を認めておらず,本腫瘍の高い再 発は娘囊胞や上皮塊が原因と考えられるが,NBCCS におけるさらに高い再発率については言及しかねる 結果を示している.一方,Woolgar JA ら 33)は単発 群(164 病変)と NBCCS 群(164 病変)を比較検 討した結果,単発群における上皮塊の発現が 8%, 娘囊胞の発現が 11% であるのに対し,NBCCS 群の 60. 腔. 外. 科. June 2011. 病変において上皮塊の発現が 34%,娘囊胞の発現 が 54% であったとしている.金子ら 26) は上皮塊が NBCCS 群では 50% と高い発現率を認めたが,娘囊 胞の発現率は単発群のほうが高かったとしている. 本研究においても,単発群と NBCCS 群との病理 組織学的な比較では,娘囊胞や蕾状増殖,上皮塊の 全てにおいて NBCCS 群のほうが出現頻度は高かっ た.また,非再発病変と原発病変の比較では,娘囊 胞の出現頻度は非再発症例で 29.0%と比較的高い値 を示したが,両群間の比率の差を検定した結果,有 意差はみられず娘囊胞の出現と再発との関連性は確 認できなかった.一方,上皮塊が非再発病変で出現 率 8.6%であったのに対し,原発病変では 45.5%と 高率に出現が確認され,上皮塊が認められた病変に おいては,明らかに再発率は高かった.NBCCS 群 を検討した結果,上皮塊では PCNA 陽性細胞が広 範囲にわたって分布しており,上皮塊の細胞は他の 部位に比べ生物学的に異常な状態である可能性を示 唆する報告 23)もある. 本研究の結果から,散在性に存在する上皮塊が再 発に関わっている可能性が示唆された.しかし,上 皮の蕾状増殖から上皮が結合組織内に入り込み,上 皮塊となりそれが娘囊胞を形成すると考えると,再 発にはこの 3 つの要素が関連している可能性が考え られる.本研究結果では上皮塊が再発に関わってい る可能性が示唆されたが,蕾状増殖や娘囊胞も結果 として有意差を認めなかったものの,さらに症例を 重ねて検討を加えることでこれらが再発に関わって いることも否定できない.また,そもそも,上皮塊 がなぜ NBCCS 症例でより多く認められるのかにつ いてはさらに検討を要する. 再発までの期間は平均 4 年 10 か月 11) ~ 7 年 13), 長いものでは術後 10 ~ 30 年目に再発したとの報告 もある.本研究における再発までの期間は単発群で 平均 4.2 年であったのに対し,NBCCS 群では平均 7 年とより長期を示していた.本検討では,同時期ま たは異時期に解剖学的に異なる部位に発生したもの を「多発」とし,術後,解剖学的に近接した部位に 発生したもので,独立した病変と判別が困難であっ たものは「再発」とみなしたことから,本来,病変 の「多発」が特徴である NBCCS 群では「多発」病 変が「再発」に含まれた可能性は否定しえない. 「多 発」か「再発」かの判断は必ずしも容易ではないが, いずれにしても,顎骨内に生じた病変が増大し発症 に至るには周囲骨の吸収をともなうことから,周囲 の破骨細胞の活性化に関わる因子が関与しているこ とが考えられる. 歯根囊胞の発生と増大について上皮の増殖と炎症 との関係がよく知られているが,本腫瘍の裏装上皮.

(11) Vol. 21 No.1. 角化囊胞性歯原性腫瘍の再発に関する病理組織学的および免疫組織化学的検討. の増殖についても炎症性因子による修飾を受けてい る可能性が示唆されている 34, 35).趙ら 34) や Paula ら 35) は,炎症の程度と裏装上皮細胞の PCNA 陽性 細胞数では,炎症を伴う病変で陽性率がより高く なっていたとし,裏装上皮の増殖能も炎症性因子に よる修飾を受けているとしている.本研究では,非 再発病変および原発病変では 60% 以上で何らかの炎 症所見が病理組織学的に確認されたのに対し,再発 病変においては,1 例(9.1%)で軽度の炎症が認め られたに過ぎなかった.このことは,炎症が病変増 大の加速やこれに伴う患者の病変認知につながって いることを示唆するものであるとともに,病変発生 初期における何らかの因子のかかわりを示唆するも のでもある. 上皮細胞の増殖について,上皮由来のサイトカイン (tumor necrosis factor-α,interleukin(IL)-1,IL-6 など)による細胞増殖への関与が知られている 36). IL-1 は,IL-1 αと IL-1 βの 2 つの agonists からな り,主にマクロファージや骨芽細胞,線維芽細胞な どに認められるほかに,上皮細胞においてその発現 が 認 め ら れ る.Matrix metalloproteinase(MMP) は正常な骨の改造現象や病的な骨吸収に関与するこ とが知られているが,IL-1 αはこの MMP に加え て,マクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony stimulating factor) お よ び cyclooxygenase (COX)-2 の上皮近くの線維芽細胞における発現 も 誘 発 す る.COX2 は prostaglandin E2(PGE2) を 産 生 し,PGE2 の 分 泌 は 線 維 芽 細 胞 の receptor activator of nuclear factor- κ B(RANK)ligand の 発現を促している.そして RANKL が RANK に結 合することで骨破壊が開始する.したがって,IL1 αの発現は,骨破壊を刺激し,病変の骨内での増 大に関与していると考えられる 5, 37).IL-1 αは,炎 症性サイトカインの一つであり外傷や慢性炎症など によりその発現が誘発されるが,炎症を伴わない本 腫瘍における IL-1 αの発現も報告 37, 38)されており, 本腫瘍における増大因子の一つとして検討がなされ てきている.本検討では,炎症が高頻度に認められ た原発病変での IL-1 αの発現(23.8%)よりも,炎 症所見をほとんど伴わない早期の再発病変において すでに 30.9% と IL-1 αの高い発現が確認された.こ のことから,本腫瘍では早期から IL-1 αが発現し, 顎骨内での増大に関与しているものと考えられる. なお,単発群と NBCCS 群の比較では,IL-1 α陽性 細胞は基底層から有棘層上部まで広く存在し,両群 間でその局在に違いは認められなかった.また,そ の陽性率も単発群で 24.7%,NBCCS で 26.6% であ り有意差は認められなかった.したがって,IL-1 α の発現は,本腫瘍の顎骨内増大に関与するが,その. 再発を左右する直接的な因子ではないと考えられ る.開窓術を行うことにより IL-1 αの著明な減少を 認めたことから本腫瘍における高い内圧によりその 発現が刺激されているとの報告がある 39, 40).このこ とは開窓療法の本腫瘍の治療における有用性を示唆 するものでもあるが,長期的観察では縮小した病変 内に上皮塊の残存を認めたとしており,最終的には 病変摘出の必要性が指摘されている 39).すなわち残 存上皮の存在は,開窓部の閉鎖に基づく内圧の再上 昇や二次感染などを引き金として IL-1 αの発現から 再増殖に転じる可能性が高く,再発につながる恐れ がある.したがって,開窓による減圧だけでは本疾 患の治療としては不適切といわざるを得ない.娘囊 胞の取り残しは論を待たないが,囊胞壁を構成する 結合組織内に散在する可能性のある上皮塊をできる 限り一塊として除去することが重要であると考えら れている 39, 40). 腫瘍性病変における局所侵 襲性や再発に関連し て, 近 年,podoplanin の検 討 が なされてきている. Podoplanin はリンパ管に特異的なマーカーとして用 いられ 41),血行性転移との関係も指摘されている 42). 歯原性腫瘍での podoplanin の発現については,エ ナメル上皮腫 43)や本腫瘍 44)などで認められる.本 検討では,単発群における本腫瘍と NBCCS 群にお けるものとの比較で,podoplanin の発現が後者で より強く認められていた.この結果は,本腫瘍の良 性囊胞性腫瘍の性質を反映するものであり,また, NBCCS に関連する本腫瘍のより高い侵襲性を示唆 するものと考えられる.さらに,単発群の原発病変 における podoplanin の発現については,NBCCS 群 と同様に基底層から有棘細胞層の一部に及ぶ強い podoplanin の免疫組織化学陽性所見が認められたこ とから,podoplanin 発現が本症の再発に関する予後 評価に有用である可能性が示唆される. 本腫瘍の再発については,PTCH 遺伝子 2, 5, 45) の 検討や heparanase46 ~ 48)などその他の局所侵襲性に 関わる因子についての検討が今後さらに必要と思わ れる.. 結 論 1 単発群と NBCCS 群との比較 1)病理組織学的な比較では,娘囊胞,蕾状増殖, 上皮塊の全てにおいて,NBCCS 群でやや高い出現 が観察された. 2) 免 疫 組 織 化 学 的 比 較 検 討 で は,Ki-67 で NBCCS 群において高い陽性率が確認されたものの, PCNA や IL-1 αの値については,両群間で有意差 は認められなかった. 61.

(12) 小. 児. 口. 3)podoplanin の免疫組織化学的検討では,単発 群では索状に配列する基底層および傍基底層に強い 発現を認め,NBCCS 群では基底層から有棘細胞層 の一部にかけて,より広い範囲で強い発現が観察さ れた. 2 原発病変と非再発病変との比較 1)病理組織学的検討では,散在性に存在する上 皮塊が再発に関わっている可能性が示唆された. 2)Ki67 と PCNS に対する免疫組織化学的検討は, 裏装上皮の高い増殖能が再発の基盤にあることを再 度確認する結果であった. 3)Podoplanin に対する免疫組織化学的検討では, podoplanin の免疫組織化学的検索は再発に関する予 後の評価に役立つ可能性が示唆された. 3 再発病変と原発病変との比較 1)原発病変は定期的な経過観察中に発見された 再発病変に比べて炎症所見が著明であり,炎症が 病変増大の加速やこれに伴う患者の病変認知につな がっている可能性が示唆された. 2)IL-1 αに対する免疫組織化学的検討では,早 期から IL-1 αが発現し,顎骨内での病変の増大に関 与しているものと考えられた. 3)Podoplanin に対する免疫組織化学的検討では, 再発病変と原発病変とでその局在に明らかな違いは 認められなかった.. 謝 辞 稿を終えるにあたり,終始御墾篤なる御指導と御 高閲を賜りました本学歯学部社会健康科学講座基礎 数学統計学,井川俊彦教授に厚く御礼申し上げます.. 引 用 文 献 1)I.R.H. Kramer., J.J. Pindborg., et al.: WHO International histological classification of tumours Histological typing of odontoenic tumours. IARCPress, Geneva, 1992, p34-37 2)Leon, B., John W.E., et al.: WHO classification of tumours Pathology & Genetics Head and Neck Tumours. IARCPress, Lyon, 2005, p306-307 3)Muzio, L.L.: Nevoid basal cell carcinoma syndrome(Gorlin syndrome).Orphanet J of Rare Dis 3: 32 2008. 4)白砂兼光,古郷幹彦:口腔外科学,第 3 版.医歯薬出版, 東京,2010, 212-214 頁 . 5)Shear, M.: The aggressive nature of the odontogenic keratocyst: is it a benign cystic neoplasm? Part 2. Proliferation and genetic studies. Oral Oncol. 38:323-331 2002. 6)山村雄一,久保木 淳,他:現代皮膚科学大系.第 1 版, 62. 腔. 外. 科. June 2011. 中山書店,東京,1982,295-299 頁. 7)勝野恵子,井川俊彦:Excel によるメディカル / コメディカル 統計入門,共立出版,東京,2003,165-167 頁. 8)Shear, M.: The aggressive nature of the odontogenic keratocyst: is it a benign cystic neoplasm? Part 1. Clinical and early experimental evidence of aggressive behaviour. Oral Oncol. 38: 219-226 2002. 9)Shear, M.: The aggressive nature of the odontogenic keratocyst: is it a benign cystic neoplasm? Part 3. Immunocytochemistry of cytokeratin and other epithelial cell markers. Oral Oncol. 38: 407-415 2002. 10)A hlfors, E., Larsson, A., et al.: The odontogenic keratocyst: a benign cystic tumor? J Oral Maxillofac Surg 42: 10-19 1984. 11)B r a n n o n , R . B . : T h e o d o n t o g e n i c k e r a t o c y s t : a clinicopathologic study of 312 cases. Part Ⅰ Clinical features. Oral Surg 42: 54-71 1976. 12)Pindborg, J.J. and Hansen, J.: Studies on odontogenic cyst epithelium. 2.Clinical and roentogen logical aspects of odontogenic keratocysts. Acta Pathol Microbiol 58: 283-294 1963. 13)重松久夫,鈴木正二,他:歯原性角化囊胞の治療と再発 に関する臨床病理学的検討.―特に基底細胞母斑症候群 と非症候群との比較―.日口外誌 44:303-310 1998. 14)G orlin, R.J.: Nevoid basal-cell carcinoma syndrome. Medicine 66: 98-113 1987. 15)永 田 雅 英, 中 原 寛 和, 他: 角 化 囊 胞 性 歯 原 性 腫 瘍 (Keratocystic Odontogenic Tumor)の臨床統計学的検 討と WHO 歯原性腫瘍の分類変更の妥当性の検討.大阪 歯学誌 52:33-38 2008. 16)F orssell, K., Sorvari, T.E., et al.: An analysis of the recurrence of odontogenic keratocysts. Proc Finn Dent Soc. 70: 135-140 1974. 17)榎本昭二,岩佐敏明,他:原始性囊胞(Primordial cyst) の臨床的研究.日口外誌 23:121-128 1977. 18)Main, D.M.G.: The enlargement of epithelial jaw cysts. Odont Revy 21: 29-49 1970. 19)望月光治:歯原性角化囊胞―主にその増殖能に関して―. 奈良医誌 39:134-153 1988. 20)Hayakawa M, Okanda H.: Cytokeratin expression and proliferative activity of keratocystic odontogenic tumor. Int J Oral-Med Sci. 5(1):43-49 2006. 21)加茂親子,松尾 朗,他:歯原性角化囊胞の臨床病理学 的ならびに免疫組織化学的研究.―サイトケラチン発現 と上皮増殖能について―.日口診誌 15;199-208 2002. 22)Koizumi, Y.: Odontogenic keratocyst, orthokeratinized odontogenic cyst and epidermal cyst: an immunohistochemicaal study including markers of proliferation, cytokeratin and apoptosis related factors. Int J Oral Sci. 2: 14-22 2004. 23)久保田裕美,関口 隆,他:基底細胞母斑症候群におけ る歯原性角化囊胞の PCNA 発現に関する免疫組織学的検 討.日口外誌 42:714-716 1996. 24)新谷 悟,多和伸介,他:歯原性角化囊胞の抗 PCNA 抗 体による細胞動態の解析.口科誌 42:215-222 1993. 25)中 川幹也,澤渡新太郎,他:抗 PCNA 抗体を用いた歯 原性角化囊胞の免疫組織化学的検討.日口外誌 39: 949-951 1993..

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表 8 非再発病変と原発病変との免疫組織化学的比較

参照

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