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博 士 ( 医 鞘 宇 野 文 平

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 鞘 宇 野 文 平

学 位 論 文 題 名

日本 の 成人 労働 者におけるこころ とからだの健康と 家 族 およ び職 場 の雰 囲気 と の関 連に 関 する研究

緒言

  近年の技術革新の進展や就業形態の多様化等は、労働者に様々なストレス状態を生じさせている。

中には精神的なストレスが原因で職場不適 応を起こす場合もあり、心の問題が労働者の身体的な健 康に影響を与えることカゞ少なくない。

  ストレス性健康障害の発現には、ー方では家庭・職場などの組織内人間関係にもとづく心理的スト レッサーが直接・間接に関わっており、他方では生活習慣病とも関連している。したがって、健康診 断を通してこれらの健康障害を早期発見し、早めに対策を講ずることができれば、予防医学上極めて 有効な方策となる。しかし、定期健康診断や人間ドックの現状は、依然として身体的所見重視の傾向 にある。いうまでもなく、ストレス性健康障害を対象とするには心身両面の状態評価が必要であり、

定期健康診断時の問診票の活用が実践的であることは明白である。しかし、現行の問診票ではこの使 用に耐えるものは見当たらない。かかる現状から、ストレス性健康障害の早期発見と評価を標的とす る調査票の開発が緊急な課題となっている。

  本研究では、質問項目数は可及的最小限 で、尺度の妥当性と信頼性が高いこと、有所見者をスク リーニングできることなどの特徴を備えた 自記式質問紙調査票「複合健康調査票Composite Health Index(以下、CHI)」を創案した。cl‑nは独自に開発したStressgramと12項目版一般健康調査(以下、

GHQ ‑12)を組 み合わせ た簡便な調査票であり、こころとからだの訴えをそれぞ れ2および3段階に 評定 し、 それ らを複合 させてストレス性健康障害を評価する。本研究ではCMを 用いて「家族の雰 囲気」およぴ「職場の雰囲気」の良し悪しと、こころおよび、:からだの訴え項目との関連性、職場の人 間関係とこころとからだの訴え項目との関連性、こころに関する訴えとからだの訴えとの相関などに ついて検討した。

方法

  1.対象者 およぴ調査:対象者は関東地方の3企業に所属する成人労働者1,579名で、うち352名 は女性である。

  2.調査票:CHIはStr.essgram (40項目:こころの訴え9項目、からだの訴え20項目、家族・職場 の雰囲気や人間関係5項目、仕事の質と量6項目)とGHQ ‑12より複合的に構成されている。その他、

既往歴、家族歴及び運動習慣項目があり、総合評価には用いないが、女性の質問も4項目用意されて いる。回答者のこころおよびからだの評価は、それぞれこころの訴えに関するStressgramの9項目お よびGHQ ‑12の12項目の計21項目およびからだの訴えに関するStressgramの20項目に基づぃて行っ た。

    ―106―

(2)

  Str・essgTamのこころならびにからだの項目は、健診時の簡便性を優先し、該当する症状の番号にO を 記 す 回 答 形 式 と な っ て い る 。 心 理 社 会 的 ス ト レ ッ サ 一評 定は5段 階で 回答 を 求め る形 式と なっており、仕事の質と量 に関しても同様に5段階回答 である。なお、測定の対象となる期間設定 は「ここ数週間」である。

  GHQ.12はGHQの最 少項 目の 短縮 番で ある。GHQは地域集団の中から神経症が疑われる者を同定 するためのスクリーニング尺度であるが、現在、保健・健康科学研究領域で最も汎用されている自記 式質問紙調査票である。

  3.統計解析:S眦Ssgmmの該当/非該当(O/1)デー タに対応させるようにGHQ.12も4段階選択 肢をo.O.1・1と配点(いわゆるGHQscodng)した。これらの解析にはズ2検定、Mante卜Haenszelズ2検 定、スピァマンの順位相関をSASを用いて行った。

結果

  1.こころとからだの訴支頻度:こころ の訴えの全体および男女別訴え率を全体での頻度順に示 した。一人当たりの平均該当症状数は男性3.0 (95%信頼区分:2.7‑3.2)、女性3.2 (95%a:2.8・ 3.7)で、有意差は認められなかった。一人当たりの平均該当症状数は男性3.2、女性3.6で、男女間 に有意差が認められた。

  2. CHIスト レス状態判定モデルに基づく評価および´ふ身相関:こころとからだの訴えを組み合 わせたストレ ス状態判定モデルの各分類枠の対象者のうち、ストレス性健康障害の傾向大のものは 10.1%、傾向者は5.4%であった。

  こころとからだの訴えの相関は、全体でO. 48(スピァマン順位相関係数、N=1,486)、男性でO.47 (N=l,141)、女性で0.50(Nニ336)であり、両者間に高い関連性(すべてp=O.0001)が認められた。

  3.心 身の 訴えと家族およぴ職場の雰囲気との関連性:家庭 および職場の雰囲気に対する回答で は 雰 囲 気 を 良 い . 普通 , 悪 い と答 え た順 に該 当率 の有 意な 増加 が認 めら れた 。   職場の雰囲 気では18項目で有意な関連が認められ、家族の雰囲気との関連性は弱かった「眠り浅 い」や「寝付きが悪い」などは高い有意水準であった。平均訴え数は、職場の雰囲気が良いと答えた 群で2.3 (95%CI:1.9‑2.7)、普通群3.O(同2.6‑3.3)、悪い群6.5(5. 7‑7.3)で著しい差異が認 められた(pく0. 0001)。

まとめ

  定期健康診断や人間ドッグでは身体的な検査が中心であるが、こころの訴えの率が高く、心身症傾 向 にある働く人が多く含まれていることがうかがわれた。中でも健康感がないと訴える者が30.1% に及ぶことは特記に値した。

  使用した複合健康調査票CHIはストレスレベルの簡易調査票として健診用に開発されたものであり、

ー次ケアの問診票として使用に耐えるものである。

  本研究でこころ(精神健康上)の訴えとからだ(身体健康上)の訴えの2組の変数で相関をみると、

一 方の訴えの増加にともない他方も増加する相関の強さが認められた。以上から家庭および職場の 雰囲気と密接に相関することが明らかとなった。

(3)

主査教授   小山   司 副 査 教授 前 沢政 次 副 査 教授 岸    玲 子

学 位 論 文 題 名

日本の成入労働者におけるこころとからだの健康と 家族および職場の雰囲気との関連に関する研究

  本研 究は、技 術革新の 進展に伴 って多様化 した就業形態の中で生ずる労働者のストレス 性健 康障害を 健康診断 を通して 早期発見す ることを目的として、新しくストレス性健康障 害 の 早期 発 見と 評 価 が可 能 な 自記 式 質問 紙 調 査票 「 複合 健 康 調査 票Composite Health Index (CHI)」を 創案し、 これを用 いて「家 族の雰囲気 」および 「職場の 雰囲気」の良し 悪し と、ここ ろとから だの訴え 項目との関 連性および職場の人間関係との関連性、こころ に 関 す る 訴 え と か ら だ の 訴 え と の 相 関 な ど に つ い て 検 討 し た も の で あ る 。   CHIは 独 自 に 開 発 し たStressgram( こ こ ろ の 訴 え9項目 、 か らだ の 訴え20項目 、 家 族 ・ 職場 の 雰囲 気 や 人間 関 係5項目 、 仕 事の 質 と 量6項 目 、 計40項 目) とGoldbergら の GHQ−12よ り 複合 的 に構 成 さ れて お り、 さ らに 、既往歴 、家族歴 及び運動習 慣項目と 、 総合 評価には 用いない が、女性 に関する4項 目の質問 を加えた ものであ る。回答者のここ ろ お よ び か ら だ の 評価 は 、そ れ ぞ れこ こ ろの 訴 え に関 す るStressgramの9項 目お よ び GHQ−12の12項 目 の 計21項 目 およ び か らだ の 訴え に 関 するStressgramの20項目 に 基 づ いて 行われる 。心理社 会的スト レッサー評 定は5段階 で回答を 求める形 式となっており、

仕 事 の質 と 量に 関 し ても 同 様 に5段 階 回 答で 、測定 の対象と なる期間設 定は「こ こ数週 間 」 であ る 。統 計 解 析はStressgramの 該 当 /非 該 当(O/l) デ ー タに 対 応さ せるように GHo‑12も4段階 選 択肢 を0―0−1ー1と 配点 し 、X2検 定 、ManteトHaenszelX2検定、 スピ アマ ンの順位 相関をSASを 用いて行 った。

  関東 地 方 の自 動 車産 業 な ど業 種 が異 な る3企 業に 所 属す る1579名 (内 女子352名 )を 対象 として調 査を行っ た結果、

    ―108ー

(4)

  1 .こころに関する一人当たりの平均該当症状数は男性3.0 、女性3.2 で、男女間に有意 差は認められなかった。からだに関する一人当たりの平均該当症状数は男性3.2 、女性3.6 で、男女間に有意差が認められた。

  2 .こころとからだの訴えを組み合わせたストレス状態判定モデルの各分類枠の対象者 のう ち、 ス卜レス性健康障害の傾向大のものは10 . 1 %、傾向者は5.4 %であった。

   こころとからだの訴えのスピアマン順位相関係数は、全体で0.48 、男性で0.47 、女性 で0.50 であり、両者問に高い関連性が認められた。

  3 .心身の訴えと家族および職場の雰囲気との関連性は、職場の雰囲気では18 項目で 有意な関連が認められ、家族の雰囲気との関連性が弱い「眠りが浅い」や「寝付きが悪 い」などは高い有意水準であった。平均訴え数は、職場の雰囲気が良いと答えた群では 2.3 、普通群3.0 、悪い群6.5 で著しい差異が認められた。

   定期健康診断や人間ドッグでは身体的な検査が中心であるが、こころの訴えの率が高 く、心身症傾向にある働く人が多く含まれていることがうかがわれた。中でも健康感がな いと訴える者が30.1 %に及ぶことが明らかとなった。

   こころの訴えとからだの訴えの2 組の変数で相関関係をみると、一方の訴えの増加にと もない他方も増加する相関の強さが認められた。以上から家庭および職場の雰囲気は密接 に関連することが明らかとなった。

   審査にあたり副査の前沢教授から管理区分を明記することのコメント、CHI の気分など 項目の内容、発育期の家庭環境との関連について、副査の岸教授から回収率、産業の種類 の記載、男女差、日本人と南米人との比較について、主査の小山教授から家庭の雰囲気、

独身と既婚者の違い、CHI の信頼性と妥当性、判別点数について、斎藤教授から男女差、

産業別特徴の有無について質問が行われたが、申請者はこれまでの豊富な研究成績および 文献をもとに十分満足できる回答を行った。

   本論文は、これまでどちらかといえば、身体的疾患の発見にカが注がれていた職場の定

期健康診断におけるストレス性健康障害の早期発見を可能にし、予防医学上極めて意義が

深く、審査員一同は申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分に価する資格を有する

ものと判断した。

参照

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