博 士 ( 医 鞘 和 田 典 男
学位論文題名
A Novel Issense Mutation in Codon 218 0f the Albumin Gene inaDistinct PhenobゆeofFami】imD髑甜buminemic
IIyperthyro闘ne血ainaJapanese瓩ndred
(特異な表現型を有する日本人の家族性異常アルブミン高サイロキシン血症家系 に お け る ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 コ ド ン218の 新 し い ミ ス セ ン ス 変 異 )
1、 緒言
Familial dysalbummemic hyperthyroxinemia (FDH)はサイロキシン(T4)との結合能の増大 した 異常 アル ブミ ンに より 高T4血症 を呈す る常 染色 体優 性遺 伝疾 患で、白人では0.01‑¥
1.8%の頻度で存在する。
近 年、 白人 ののFDH患 者に おい てア ルプ ミン 遺伝 子の エク ソン7、コドン218の第2ヌク レオ チド がguanineからadenineヘ置換されるミスセンス変異が見い出され、その結果アル プミンの218番目のアミノ酸がarginine(CGC)からhistidine(CAC)に置換されていることが報 告された。さらに組み換えDNA技術で作成したalbumin‑His218のT4に対する親和性が正常ア ルブミンに比べて増大していることが示された。
一 方、 日本 人で はFDHの報 告は 極め て稀 であ り、 日本 人のFDHに おけるアルブミン遺伝 子異 常に つい ての 報告 はな い。 本研 究では、白人のFDHに比して著しい高T4血症を呈する 日本 人のFDH家 系に おけ る血 清ア ルプ ミンの甲状腺ホルモンとの結合能を検討し、さらに ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 の 解 析 の 結 果 、 新 し い ミ ス セ ン ス 変 異 を 見 い 出 し た 。
2、 対象 と方 法
@対 象お よぴ 甲状 腺機 能関 連検 査
日 本人 のFDH家 系 、3世 代8名 ( 男性4名 、 女 性4名 ) を 対 象 と し た 。 発 端 者 は32歳 女 性 で 、 近 医 受 診 時 に 偶然 血 清 総T4 (TT4)、総ト リヨ ード サイ ロニ ン(fT3) の著 増を 指 摘さ れた が、 血清 甲状 腺刺 激ホ ルモ ン(TSH)は 正常 で、 甲状腺中毒症状を認めなかった。
血 清Tf'4、 遊離T4 (fT4)、リ パー スT3 (rT3)、 サイ ロキ シン 結合 グロブ リン(TBG)は RIAにて 、'IT3、遊 離T3 (fT3) 、TSHはEIAのキ ット を用 いて 測定 した 。血 清ト ラン スサ イ レ チ ン は ネ フ ェ ロ メ ト リ ー に て 、 ア ル プ ミ ン は BCG法 に て 測 定 し た 。
◎ ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 に よ る [ 125I] T4お よ び [  ̄ 25I] T3の 分 布 血清と[ ̄2 I] T4または[ ̄2゜I]T3をインキュベーション後、1%アガロースゲル電気泳 動を行い、オートラヂオグラフイーにて解析した。
◎ アル ブミ ンの [125I] T4に 対す る結 合能 の検 討
血 清 か ら の ア ル プ ミ ン の 単 離 はCibacron blue F3GAの カ ラ ム にて 行っ た。 単離 され たア ル プ ミ ン 溶 液 に [125I] T4お よ ぴ 種 々 の 量 の 非 標 識T4を 加 え て イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し 、 0.1鰯charcoal、0.4%dextranにてB/Fを分 離後 、 各々 の放 射活 性を 測定 し、Scatchard解 析を 行 った 。
@アルプミン遺伝子の解析
末 梢 血 リ ン バ 球 よ ル グ ノ ムDNAを 抽 出 し 、 ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 の エ ク ソ ン1か ら エ ク ソ ン 14を そ れ そ れPCRに て 増 幅 し 、 直 接 シ ー ク エ ン ス を 行 っ た 。 コ ド ン218の 第2ヌ ク レ オ チ ド のguanineからcytosineへ の変異の有無をendonuclease digestion価lele−Speci丘Cpdmermethodにて 検 討 し た 。 す な わ ち 、 コ ド ン218の 直 前 の1塩 基 を 置 換 し たdegenerateセ ン ス プ ラ イ マ ー と 通 常 の ア ン チ セ ン ス プ ラ イ マ ー の 間 で エ ク ソ ン7を 含 む153bpのDNAfragmentをPCRに て 増 幅 し た 。 本 変 異 が 存 在 す る 場 合 、 制 限 酵 素AvロHの 切 断 部 位 (GGNCC) が 生 じ 、AvロII に よ っ て153bpのPCR産 物 が122bpと31bpに 切 断 さ れ る 。 こ れ を ボ リ ア ク リ ル ア ミ ド グ ル 電気泳動で解析した。
3、 結 果
@FDH患 者 は 、 本 家 系8名 中6名 に 、3世 代 に わ た り 男 女 に 関 係 無 く 存 在 し た 。FDH患 者 の 血 清'IT4は1768.2‑‑‑2741.3 nmol/lと正常上限の11‑‑‑17倍の著明な高値であり、'IT3は2.73〜 5.62 nm01瓜rrr3は1.08〜2.52nm01八 と い ず れ も 高 値 で あ っ た 。 ま たFDH患者 の血 清爪 は 11313〜119.7pm01n以 上 、fT3は15.6〜30.1pm01nとい ずれ も高 値で あ った 。FDH患 者、 正 常 者 と も 血 清TSH、 血 清TBG、 ト ラ ン ス サ イ レ チ ン 、 ア ル ブ ミ ン は 正 常 で あ っ た 。
◎FDH患 者 で は 添 加 し た [125I] T4の 大 部 分 が ア ル ブ ミ ン 分 画 ヘ 、 [125I] T3はTBG分 画 よ ル ア ル ブ ミ ン 分 画 ヘ 多 く 泳 動 さ れ た 。
◎FDH患者 の血 清ア ルブ ミ ンのT4と の親 和定 数は9.1x10 mol/l' であり正常者(1.1x10 moM") の 約80倍で あっ た。
@ 発 端 者 の ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 の エ ク ソ ン7、 コ ド ン218の 第2ヌ ク レ オ チ ド がguanineか ら cytosineヘ 変 異 し て おり 、そ の結 果arginine(CGC)がproline(CCC)に置 換さ れて いる と推 測さ れ た 。 他 の エ ク ソ ン には 変異 を認 めな かっ た。Ava IIに よるdigestionの結 果よ り、 検討 した FDH患 者5名 は 全 て 本 変 異 を 持 つ へ テ ロ の 個 体 で あ り 、 正 常 者2名Iに は 本 変 異 を 認 め な か っ た 。
4、 考 察
本 家 系 は 、 血 清IT4濃 度 の 高 値 、 血 清TSH濃 度 が 正 常 で 甲 状 腺 機 能 中 毒 症 状 を 欠 く こ と 、 血 清 ア ル プ ミ ン のT4に 対 す る 結 合 能 の 増 大 、 家 族 性 ( 常 染 色 体 性 優 性 遺 伝 ) の 発 症 よ り FDHと 診 断 し た 。 し か し 本 家 系 のFDH患 者 で は 、 血 清TT4濃 度 が 正 常 上 限 の11‑v17倍 と 著 明 に 高 値 で あ り 、 血 清11、4濃 度 が 正 常 上 限 の2〜3倍 で あ る 白 人 のFDHと は 明 ら か に 異 な っ て い る 。 本 家 系 のFDH患 者 の ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 の エ ク ソ ン7、 コ ド ン218の 第2ヌ ク レ オ チ ド にguanineか らcytosineへ の ミ ス セ ン ス 変 異 を 認 め、 その 結果prolineに 置換 され てい ると 推 測 さ れ た 。 白 人 のFDH患 者 で は 同 じ コ ド ン218に 異 な るarginine(CGC)か らhistidine(CAC) の ミ ス セ ン ス 変 異 が 認 め ら れ て い る が 、 本 家 系 と 白 人 の のFDH患 者 の 血 清 の1114濃 度 の 著 明 な違 いは 、albumin̲Pr02エ がT4に対し てalbumin̲His218よりもさらに高い親和性を有するた め と 考 え ら れ た 。Albumjn̲Pr0218のT4に 対 す る 高 親和 性は アル ブミ ン 分子 のT4結合 部位 に存
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在す る218番目 のア ミノ 酸の 変異 と、 それよるアルブミン分子の立体構造の変化によると 推測された。
今後、組み換えDN」`技術により甜bumin‐Pr0213、mbumin‐His21。等を作成し、X線解析にて T4結 合部 位の構造を検討することにより、アルブミン分子の構造と機能をさらに解明する ことができると期待される。
5、 結 語
FDHには人種差が存在し、血清TT4の著明な高値、血清'173、rT3の高値を呈する日本人 のFDH家 系に おい てア ルブ ミン遺伝子コドン218の新しいミスセンス変異を見い出した。
主 査 教 授柿 沼光明 副 査 教 授小 池隆夫 副 査 教 授浅 香正博
学位論文題名
A Novel IVEssense Mutation in Codon 218 0f the Albumin Gene inaDistinct Phenotype of Famili 甜Dysalbuminemic HypertbyrO 函 nemialnaJapaneSeKindred
網 俣 な 表 現 型 を 有 す る 日本 人の 家族 陸異 常ア ルブ ミ ン高 サイ ロキ シン 血症 家系 に お け る ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 コ ド ン218の 新 し い ミ ス セ ン ス 変 異 )
本 論文 は日 本人 のFamilial dysaibummemic hyperthyroxinemia (FDH)に おけ る血 清ア ルブ ミ ンの生化学的性質とアルプミン遺伝子異常につ いて論じたものである。
日 本 人 のFDHの1家 系 、3世 代8名 ( 男 性4名 、 女 性4名 ) を 対 象 と し た 。 血 清 総T4 (IT4) 、 遊 離T4 (fr4)、 リ バ ー スT3 (rT3) 、 サ イ ロ キ シ ン 結 合 グ ロ プ リ ン(TBG)はRIAに て 、 総T3 (TT3) 、 遊 離T3 (fT3) 、TSHはEIAに て 測 定 し た 。 血 清 ト ラ ン ス サ イ レ チ ン は ネ フ エ 口 メ ト リ ー に て 、 ア ル ブ ミ ン はBCG法 に て 測 定 し た 。 ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 に よ る
[  ̄25I] T4お よ び [125I] T3の 分 布の 検討 は血 清と [ 25I] T4ま たは [ ̄25I] T3をイ ン キ ユ ベ ー シ ョ ン 後 、1弼 ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 い 、 オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ イ ー に て 行 っ た 。 ア ル ブ ミ ン のT4に 対 す る 結 合 能 の 検 討 は 、 血 清 か ら の ア ル ブ ミ ン を 単 離 し 、 ア ル ブ ミ ン 溶 液 に [125I]T4お よ び 種 々 の 量 の 非 標 識T4を 加 え て イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し 、B/Fを 分 離 後 、 各 々 の 放 射 活 性 を 測 定 し 、Scatchard解 析 に て 行 っ た 。 ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子の 塩基 配 列 の 決 定 は 末 梢 血 リ ン バ 球 よ ル ゲ ノ ムDNAを 抽 出 し 、 こ れ を 鋳 型 に ア ル ブ ミ ン 遺 伝 子 の エ ク ソ ン1か ら エ ク ソ ン14を そ れ そ れPCRに て 増 幅 し 、 直 接 シ ー ク エ ン ス を 行 っ た 。 コ ド ン 218の2番目の塩基のguanineからcytosineへの変異の有無をendonuclease digestion/allele‑specific primer methodにて 検討した。
FDH患 者 は 、 本 家 系8名 中6名 に 、3世 代 に わ た り 男 女 に 関 係 無 く 存 在 し た 。FDH患 者 の 血 清'IT4は1768.2〜2741.3 nmol/lと正 常上 限の11‑‑17倍 の著 明な 高値 であ り、'IT3は2.73〜 5.62 nmol/l、rT3は1.08〜2.52 nmol/lと い ず れ も 高 値 で あ っ た 。 ま たFDH患 者 の血 清fT4は
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113.3〜119.7 pmol/l以上、fr3は15.6〜30.1 pmol/lといずれも高値であった。FDH患者、正 常 者 とも 血清TSH、 血清TBG、ト ランス サイ レチ ン、 アル ブミ ンは 正常 であ った 。FDH患 者で は[125I] T4の大 部分 がア ルブミン分画ヘ、[125I] T3はTBG分画よルアルブミン分 画ヘ多く泳動された。FDH患者の血清アルブミンのT4との親和定数は9.1x10 mol/l"であり 正常者(l.lx10 mol/l' ̄)の約80倍であった。FDH患者のアルプミン遺伝子のエクソン7、コド ン218の2番目の塩基/Jsguanineからcytosineヘ変異しており、その結果arginine(CくXニ)jjS proline(CCC)に置 換さ れて いた 。他 のエク ソン には 変異 を認 めなかった。Endonuclease digestion/allele‑specific prinlermethodによる検討の結果より、本家系のFDH患者は全て本変 異を持つヘテロ接合体であり、正常者は本変異を認めなかった。
本 家系 は、 血清1T4濃 度の 高値 、甲状腺機能中毒症状を欠くこと、血清アルブミンのT4 に対 する 結合 能の 増大 、家 族性 (常染色体性優性遺伝)の発症よりFDHと診断した。しか し本家系のFDH患者では、血清一1、4濃度が正常上限の11〜17倍と著明に高値であり、血清
′nr4濃度 が正 常上 限の2倍 程度 である 白人 のFDHと は明 らか に異な って いた 。本 家系 の FDH患者のアルブミン遺伝子のエクソン7、コドン218の2番目の塩基がguanineからcytosine ヘ置 換さ れ、 その 結果218番 目の アミノ酸がpr01ineに置換されていた。白人のFDH患者で はコドン218にar酉mneからMstidine(CAののミスセンス変異が報告されているが、本家系と 白人ののFDH患者の表現型の違いは、aburnjn‐Pr0215がT4に対して虹bumin・His213よりもさら に高い親和性を有するためと考えられた。尚bumin‐Pr021sのT4に対する高親和性はアルブミ ン分 子のT4結 合部 位に 存在 する218番目のアミノ酸の変異と、それよるアルプミン分子の 立体構造の変化によると推測された。
質 疑応 答と して は、 最初 に副 査浅 香正博 教授 よりTBGの親 和性の減少の可能性、FDHは 疾患 と考 える べき かに つい て質 問が あった 。次 いで 副査 小池 隆夫教授よルアルプミンと T4の 結合 部位 の正 確な 位置 と変 異に よる構 造の 変化 、ア ルブ ミンの異常によるT4以外の 物質 の結 合異 常の 報告 の有 無、 日本人でのFDHの頻度についての質問があった。次いでフ ロア ーより異常アルブミンのホモ接合体の報告の有無とその予想される検査所見について 質問 があ った 。最 後に 主査 柿沼 光明教授よりFDH患者で血清遊離T3、遊離T4濃度が高値と な る 機序 、ア ルブ ミン のT4結合 部位で の他 の物 質の 親和 性が 増大 して いる 可能 性、TBG とアルブミンのT4に対する親和性の比較ついての質問があった。
い ずれの質問に対しても、申請者はFDHやアルプミンの構造や機能に関する論文を弓f用 し、豊富な知識に基づぃて明解に回答した。
さ らに 、こ のFDHにつ いて の研 究を発展させることによルアルブミンの構造や機能をさ らに解明することができると期待される。
審 査員 一同 は、FDHに つい て生 化学的に詳細に検討し、アルブミン遺伝子のこれまでに 報告 のない変異を発見した研究成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受ける のに充分な資格を有するものと判定した。
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