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博 士 ( 農 学 ) 細 山 隆 夫 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 細 山 隆 夫

学 位 論 文 題 名

水 田 地 帯 に お け る農 地 賃 貸 借進 展 の 地 域差 と 大 規 模 借 地 経 営 の 展 開 に 関 す る 研究

学 位 論 文 内 容の 要 旨

  1960年 代後 半、 高度 経 済成長 下における地域労働市場の 活況によって、農家労働カは 在宅兼業の形態 で 流 出し 、恒 常的 勤務 化 が進ん だ地域では農地流動化と大 規模経営の成立がみられた。 と<に1970−75 年 の期間は、全国的に顕著な農 家数の減少がみられた時期 であり、兼業深化の中で下層農家のりタイア、

土 地 持ち 労働 者化 、そ の 農地を 借り入れた上層農家のさら なる規模拡大がみられ、借地 集積による借地 制 農業の形成が展望された。

  しかし、低成長期となる1970年代後半以降は、米価低迷 や生産調整強化による集団転作の政策的推進、

さ ら には 安定 兼業 農家 の 滞留も あり、集落機能を基礎とし た集団的土地利用が活発化す る。零細分散錯 圃 制下にあるわが国で借地によ る規模拡大は、圃場分散化 と地域資源管理の困難を招くことが危惧され、

農 場 制農 業を 確立 して い く担い 手として、地域営農集団あ るいは地域農業集団などの育 成が構想された の である。

  そ の後 、1980年 代後 半 に至っ て、さらに全国的に大量の 離農および土地持ち非農家の 発生を契機に、

農 地 が少 数の 大規 模経 営 に借入 される形で吸収されてきた 。現状においてもとくに府県 の平場水田地帯 で は 土地 持ち 非農 家と 大 規模借 地経営への農家層分化が促 され、地域差を伴いながらも 、構造変化が確 実 に 進行 して おり 、そ れ はかつ てこうした農地賃貸借によ る農業構造変化および大規模 借地経営の出現 を 展望した中で、「小企業農( 梶井功)」、「新しい上層農(伊藤喜雄)」として注目された農家群像の次 元 をはるかに越える存在となり つっある。

  本 論文 の目 的は 、こ の ような 農地賃貸借進展の地域差を 分析するとともに、とくにそ の動きが活発で あ り わが 国稲 作を 展望 す る上で 重要な素材地域である北陸 を対象として、農地集積・利 用の到達点と大 規 模 借 地 経 営 の 展 開 条 件 を 明 ら か に し 、 今 後 の わ が 国 稲 作 の 担 い 手 層 を 展 望 す る こ と に あ る 。   本 論文 の構 成は 大き く3編に 分 かれ てお り、 第1編「 農地 賃 貸借 の展 開と 農業構造の 変化」では、大 規 模 借地 経営 が展 開し て いく上 で、農地の貸し手の増加と 稲作の収益性確保が重要な条 件であることを 踏 ま え、 第1章「 地域 労働 市場 の 展開 と農 地賃 貸借 」では 、全国にわたる統計分析によ り、安定労働市 場 が 展開 して いる 北陸 、 東海、 近畿の水田単作地帯では長 期不況下にも拘わらず土地持 ち非農家が広範 に 形 成さ れ、 活発 な農 地 賃貸借 進展がみられるとともに、 借り手が少数のため農地の借 り手市場化が進 行 し ていること、第2章「近年の 稲作生産力階層間格差の動 向と大規模農家層の生産構造 」では、北陸、

近 畿 にお ぃて 稲作 生産 力 階層間 格差が明確に形成されてき ており、とくに北陸では相対 的な高米価のた め に高収益が維持され、大規模 化を誘弓1する収益性が確保 されていることを明らかにしている。さらに、

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第3章「農業構造の変化と地域性」では、全国の中でもと<に北陸地域が大規模水田作の動きが加速し ていることを確認しながら、北陸地域の中でも労働市場のあり方、農業就業者の高齢化程度、経営面積 規模の程度などによって農地の貸し手層の形成に多寡を生じさせ、地域内においても構造変化が停滞的 である地域と進展程度が速い地域のあることを示し、それそれの代表地域として新潟県蒲原平野、頸城 平野をあげ、以降の比較分析の対象地として措定している。

  第2編「農地賃貸借市場の地域差と農家諸階層の動向」は、上述の農地の貸し手市場地域(蒲原平野)

と借り手市場地域(頸城平野)における集落悉皆調査によって、農家の就業構造、農地賃貸借の発生基 盤・展開状況と階層構成変化を分析しながら、大規模借地経営の形成過程への影響を明らかにしている。

第4章「農地の貸し手市場地域における農地流動化の現段階と担い手層の動向宀水稲単作兼業化地域・

新潟県西蒲原ー」では、貸し手市場地域としての西蒲原・岩室村における悉皆調査の結果、そこでは自 作地規模が大きい第I種兼業層である3 ha層が厚く存在し、農地の貸し手が少ないため10haを超える経 営規模拡大への展開が遅れており、そこにおける担い手層は、個別規模拡大を諦めて受託集団を形成し,

作業受託で集積を図っていることなど、貸し手市場地域における担い手の動向を明らかにしている。第 5章「農地の借り手市場地域における農家階層構成と大規模借地経営の存在状況ー恒常的勤務兼業深化 地域・新潟県中頸城ー」では、借り手市場としての中頸城・三和村における悉皆調査の結果、安定第II 種兼業化と土地持ち非農家化が顕著な中で貸し手が多く存在し、大規模借地経営が活発に展開している こと、圃場整備進展が生産組織を生み出して借地経営展開を抑制する局面もあるが、借地経営は他の脱 農的な集落に出作して借地集積を実現してきているなど、借り手市場地域における担い手である大規模 借地経営の動向を明らかにし、大規模借地経営の展開条件として借り手市場の形成が大きな要件になる ことを、実態的に朋らかにしている。

  第3編「大規模借地経営における借地関係の安定性と圃場分散問題の克服」では、安定的かつ効率的 な借地関係の下で大規模借地経営が展開する上で支障となる圃場分散や地域資源管理などの諸問題を検 討している。第6章「大規模借地経営の展開状況と借地関係の安定性の地域性一新潟県・西蒲原と中頸 城の比較を通して←」において、貸し手市場・岩室村では借地獲得競争が激しいために、地代水準・契 約期間など借地関係が不安定になるが、借り手市場・三和村では貸し手が多数なために地主が農地の委 託先確保を優先させるため借地関係は安定的であることなど、借地関係の安定性の地域差を明らかにし ている。また第7章「大規模借地経営の農地集団化、圃場管理法と農地集積戦略ー大区画圃場整備進行 地域・新潟県中頸城郡三和村を対象に」では、大規模借地経営が交換耕作や畦畔除去によって圃場集団 化を図っていること、また兼業農家・地主ヘ圃場管理作業・地域資源管理作業を再委託することによっ て労カを軽減していることを明らかにし、さらに第8章「大規模借地経営の農地集積・利用と経営展開

―圃場分散からの脱却を中心に一」では、大規模借地経営群が大幅な農地集積とそのゾーニングによっ て相互に 面的な農 地集積 を図り、 圃場の分散状況から脱却傾向にあることを明らかにしている。

  終章「大規模借地経営の現段階」は、借り手市場地域で大規模借地経営が担い手として展開すること が農地集団化を促し、生産効率も上昇していることを指摘し、このような大規模借地経営が展開、しうる 地域的条件として、労働市場が活況的である水田単作地帯であること、米価が相対的に高いことを指摘 している。これに対して貸し手市場地域における農業再編方向としては、生産組織化を核に据え、それ を 地 域 的 に 運 用 し て い く 担 い 手 育 成 が よ り 強 く 求 め ら れ て い る と し て い る 。   近代的農法展開の嚆矢ともいえるイギリスにおける農法転換は、革新的な労働手段の開発とともに、

とりわけ土地所有関係の近代化すなわち農地流動化が決定的な役割を果たし、その上に成立してきた借

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地大規模農業者(farmer)が担い手層となって実現されてきたものである。本論文は、近年、多数の兼 業農家の脱農を背景に借地による農地流動化を招いた結果、日本においても大規模借地経営が、種々の 条件下にあっても形成されてきていることを明らかにして、こうした大規模借地経営が現代資本主義制 下におけるわが国稲作展開におけるひとつの典型的な担い手として措定しうることを示唆するものとな っている。

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学 位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

黒河 太田原 三島 志賀

学 位 論 文 題 名

    功 高昭 徳三 永一

水田地 帯におけ る農地賃貸借進展の地域差と 大 規模借地 経営の 展開に関する研究

  1960年代後半、高度経済成長下における地域労働市場の活況によって、農家労働カは在宅兼業の形態 で流出し、恒常的勤務化が進んだ地域では農地流動化と大規模経営の成立がみられた。と<に1970―75 年の期間は、全国的に顕著な農家数の減少がみられた時期であり、兼業深化の中で下層農家のりタイア、

土地持ち労働者化、その農地を借り入れた上層農家のさらなる規模拡大がみられ、借地集積による借地 制農業の形成が展望された。1980年代後半に至っても、さらに全国的に大量の離農および土地持ち非農 家の発生を契機に、農地が少数の大規模経営に借入される形で吸収され、現状においてもとくに府県の 平場水田地帯では土地持ち非農家と大規模借地経営への農家層分化が促され、地域差を伴いながらも、

構造変化が確実に進行しており、それはかつて農地賃貸借による農業構造変化・大規模借地経営の出現 を展望した中で、「小企業農(梶井功)」、「新しい上層農(伊藤喜雄)」として注目された農家群像 の次元をはるかに越える存在となりつっある。

  本論文の目的は、このような農地賃貸借進展の地域差を分析するとともに、とくにその動きが活発で ある北陸を対象として、農地集積・利用の到達点と大規模借地経営の展開条件を明らかにし、今後のわ が国稲作の担い手層を展望することにある。

  本論文の構成は大き<3編に分かれており、第1編では、大規模借地経営が展開していく上で、農地 の貸し手の増加と稲作の収益性確保が重要な条件てあることを踏まえ、第1章では、全国にわたる統計 分析により、安定労働市場が展開している北陸、東海、近畿の水田単作地帯では長期不況下にも拘わら ず土地持ち非農家が広範に形成され、活発な農地賃貸借進展がみられるとともに、借り手が少数のため 農地の借り手市場化が進行していること、第2章では、北陸、近畿において稲作生産力階層間格差が拡 大してきており、とくに北陸では相対的な高米価のために高収益が維持され、大規模化を促す収益性が 確保されていることを明らかにしている。さらに、第3章では、全国の中でもとくに北陸地域が大規模 水田作の動きが加速していることを確認しながら、北陸地域の中でも労働市場のあり方、農業就業者の 高齢化程度、経営面積規模の程度などによって農地の貸し手層の形成に多寡を生じさせ、地域内でも構

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造変化が停滞的である地域と進展程度が速い地域のあることを示し、各々の代表地域として新潟県蒲原 平野、頸城平野をあげ、比較分析の対象地として措定している。

  第2編は、上述の農地の貸し手市場地域(蒲原平野)と借り手市場地域(頸城平野)における集落悉 皆調査によって、農家の就業構造、農地賃貸借の発生基盤・展開状況、階層構成変化を分析しながら、

大規模借地経営の形成過程への影響を明らかにしている。第4章では、貸し手市場地域としての西蒲原・

岩室村における悉皆調査の結果、そこでは自作地規模が大きな第I種兼業層である3 ha層が厚く存在し、

農地の貸し手が少ないため10haを超える経営規模拡大への展開が遅れており、担い手層は個別規模拡大 を諦めて受託集団を形成し、作業受託で集積を図っているなど、貸し手市場地域における担い手の動向 を明らかにしている。第5章では、借り手市場としての中頸城・三和村における悉皆調査の結果、安定 第II種兼業化と土地持ち非農家化が顕著な中で貸し手が多く存在し、大規模借地経営が他の脱農的な集 落に出作して借地集積を実現してきているなど、借り手市場地域における担い手である大規模借地経営 の動向を明らかにし、大規模借地経営の展開条件として借り手市場の形成が大きな要件になることを、

実態的に明らかにしている。

  第3編では、安定的かつ効率的な借地関係の下で大規模借地経営が展開する上で支障となる圃場分散 や地域資源管理などの諸問題を検討している。第6章において、貸し手市場・岩室村では借地獲得競争 が激しいために地代水準・.契約期間など借地関係が不安定になるが、借り手市場・三和村では貸し手が 多数なために地主が農地の委託先確保を優先させるため借地関係は安定的であることなど、借地関係の 安定性の地域差を明らかにしている。また第7章では、大規模借地経営が交換耕作や畦畔除去によって 圃場集団化を図っていること、また兼業農家・地主ヘ圃場管理作業・地域資源管理作業を再委託するこ とで労カを軽減していることを明らかにし、さらに第8章では、大規模借地経営群が大幅な農地集積と そのゾーニングによって相互に面的な農地集積を図り、圃場の分散状況から脱却傾向にあることを明ら かにしている。

  終章は、借り手市場地域で大規模借地経営が担い手として展開することが農地集団化を促し生産効率 も上昇していることを指摘し、このような大規模借地経営が展開しうる地域的条件として、労働市場が 活況的である水田単作地帯であること、米価が相対的に高いことを指摘している。これに対して貸し手 市場地域における農業再編方向としては、生産組織化を核に据え、それを地域的に運用していく担い手 育成がより強く求められているとしている。

  以上、本論文は、多数の兼業農家の脱農を背景に借地による農地流動化を招いた結果、日本において も大規模借地経営が形成されてきていることを明らかにして、こうした大規模借地経営がわが国稲作展 開におけるひとつの典型的な担い手として措定しうることを示唆するものとなっており、これらの研究 成果は学術的に高く評価しうる。よって審査委員一同は、細山隆夫が博士(農学)の学位を受けるのに 十分な資格を有するものと認めた。

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参照

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