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学位論文審査の要旨主査

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Academic year: 2021

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博 士 ( 法 学 ) 岸 本 太 樹

学 位 論 文 題 名

「 行政契約の法理論」

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 稿 は、 行 政 主体 と 私 人が 締 結す る 行 政契 約 に妥 当 す る法 理論( 行政契約 法 ) を 検 討 す る も の で あ る 。 本 稿 は 、 行 政 契 約の 一 般法 理 ( 行政 契 約 法総 論 )を 考 察す る も ので あ り、 具 体 的な 行 政 領域 で 締結 さ れ る個々 の行政契約 に のみ 妥 当す る 固 有の 法 理論 ( 行 政契 約 法 各論 ) は、 こ れ を検討 対象から除 外 して い る。

  本 稿 は 序 章 と 終 章 を 含 め 、 全 部 て9章 よ り 構 成さ れ てい る 。 第1章乃 至 第 6章 で は 、 行 政 契約 に 関し て 我 が国 よ り数 段 緻 密な 議 論を 展 開 する ド イ ツ行 政 法学 の 動向 を 追 いな が ら、 「 公 法契 約 」 法理 の 一部 を 規 律する 「ドイツ連 邦 行 政 手 続 法 ( 以 下 、 単 に 行 政 手 続 法 と い う ) 第 四 部 ( 第54条 乃 至 第62 条 )」 に 焦点 を 当 て、 公 法契 約 の 法理 論 を 、「 契 約交 渉 」 から「 契約締結」

に 至 る ま で 時 系 列 的 に 検 討 し て い る 。 ま た 第 七章 で は、 「 行 政上 の 私 法契 約 」に 妥 当す る 法 理論 を 解明 し て いる 。

  序 章 は「 問 題 提起 」 で あり 、 行政 契 約 に関 す る日 本 行 政法 学の動 向を振り 返 り な がら 、 本 稿の 課 題を 示 し てい る 。

  第1章 「 公 法 契 約 形式 の 一 般的 許 容要 件 」 では 、 オ ット 一 ・マ イ ヤ ー以 来 の ドイ ツ 行政 法 学 説が 、 公法 契 約 の可 能 性 及び 許 容要 件 に ついて 様々な見解 を 提示 し てい た 事 実を 振 り返 っ た 上で 、 「 法規 定 に反 し な い限り 」で公法契 約 を 許 容 す る 旨 を 規 律 し た 行 政 手 続 法 第54条 の 立 法 趣旨 を 探っ て い る( 第 2節 ) 。 本 節 で は、 「 法規 定 に 反し な い限 り 」 とい う 許容 要 件 が、 「 法 律の 禁 止 に 反 し な い 限 り ( 契 約 に よ る 法 律 関 係 の 規 律 が 禁 じ ら れ て い な い 限 り )」 と いう 意 味 で理 解 され て い るこ と を 確認 し 、行 政 手 続法の 立法者が、

契 約を 授 権す る 法 律が 存 在せ ず 、 ある い は 法律 自 体が 存 在 しない 行政領域で の 契約 締 結を 広 く 許容 し 、以 て 公 法契 約 に 対し 法 治主 義 の 補完機 能を期待し て い た こ と を 確 認 して い る 。ま た 第3節で は 、 「法 規 定に 関 し ない 限 り 」で 許 容 さ れ る 公 法 契 約 と 「 法 律 の 留 保 」 の 関 係 を 検 討 し て い る 。   第2章 「 公 法 契 約 手続 」 で は、 行 政主 体 と 私人 が 公 法契 約 の締 結 を 目指 し て 契約 交 渉に 入 っ た場 合 に、 い か なる 法 理 論が 妥 当す る の かを検 討する。本 章 て は 、 行 政 手 続 法第 二 部 が規 律 する 「 行 政手 続 の 通則 規 定( 第9条 乃 至第 34条 ) 」 が 、 聴 聞 を 規 律 す る 第28条 を 除 い て 公 法 契約 に も準 用 さ れる 事 実 を 確認 し 、行 政 行 為手 続 と公 法 契 約手 続 の 間に は 理論 的 差 違が存 在しない旨 を 指摘 し てい る 。

  第3章 「 公 法 契 約 の内 容 」 では 、 行政 の 行 為形 式 の ーっ と して 、 法 律適 合 性 原理 や 公益 適 合 性原 理 に服 す 公 法契 約 が 、契 約 交渉 を 経 て、「 いかなる要

件下第 3 換契じて 第 5 息」して   第 約が公法 同意法契

、 具 体 的 に ど の よ う な内 容 を 持ち う るの か 」 を検 討 して い る 。第2節 と 節 で は 、 行 政 手 続 法 第55条 及 び 第56条 が 規 律す る 「和 解 契 約」 と 「 交 約 」 を取 り 上 げ、 両 契約 の 概 念を 説 明 する と 共に 、 立 法資料の 分析を通

、 両 契約 に 対 して 課 され た 許 容要 件 の 内容 と 意義 を 検 討してい る。また 節 と 第6節 で は 、 近 年 ド イ ツ で 積 極 的 な 活 用 が 説 か れ て い る 「 遅 滞 利

「 違 約罰 」 「 即時 執 行」 及 び 「解 約 」 に関 す る各 契 約 条項につ いて検討 い る。4章 「 公 法 契 約 の 成 立」 で は 、契 約 交渉 を 経 て内 容 が確 定 さ れ

、 法的 拘 束 カを 伴 っ て成 立 する 為 の 要件 を 検討 す る。主な 検討 契 約の 内 容 が第 三 者 の権 利 を侵 害 す る場 合 に、 当 該第三者 の書 が あ る ま で 契 約 の 成 立 を 否 定 す る 行 政 手 続 法 第58条 と ( 第2 約 の 書 面 化 を 要 求 す る 行 政 手 続 法 第57条 で あ る ( 第3節 ) 。

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節 で は 、 第58条 に よ り 公 法 契 約 へ の 同 意 権 限 を 保 障 さ れ る 第 三 者 の 範 囲を 解 明 し 、 それ が 行 政行 為 取 消訴 訟 の原 告 適 格を 認 めら れ る 第三 者 の範 囲 と 完 全 に 一 致 す る こ と 、 第58条 が 保 障 す る 第 三 者 の 同 意 が 、 行 政 行 為 の 取 消訴 訟 に 代 わ る 第 三 者 の 権 利 保 護 制 度 に 位 置 づ け ら れ る こ と を 指 摘 して い る 。   第5章 「 瑕 疵 あ る 公 法 契 約 の 存 続 効 」 では 、 公法 契 約 の無 効 原 因を 規 律す る 行 政 手 続 法 第59条 を 概 観 し 、 い か な る 契 約 が 、 第59条 の ど の 条 項 に該 当 し て 無 効 に な る の か を 確 認 す る ( 第2節 及 び 第3節 ) 。 ま た 第4節 で は 、 違 法 な 公 法 契 約 の 中 に は 、 第59条 に よ っ て は 無 効 に な ら ず 、 有 効 に 存 続 する も の が 複 数存 在 す るこ と を 確認 し た上 で 、 「違 法 ・有 効 な 契約 」 を認 め る 第 59条 に 関 する 違 憲説 と 合 憲説 の 対立 を 紹 介し 、 各説 の 論 拠を 分 析 して い る。

そ の 上 で 第5節 「 合 憲 説 と 違 憲 説 の 接 近 」 では 、 近年 、 違 法・ 有 効な 公 法 契 約 の 存 在 を 認 め る 第59条 に つ い て 合 憲 説 に 立 つ 論 者 の 中 に 、 違 憲 説 と の調 和 を は か る動 き が 存在 し 、 現在 で は、 違 憲 説と 合 憲説 の 対 立が 相 対化 し て い る 事 実 を 確 認 し て い る 。 第5節 で 掲 げ る 「 契約 締 結上 の 過 失法 理 」や 「 国 家 賠 償 」 等 は 、 い ず れ も 第59条 に よ っ て は 無 効 に な ら な い 違 法 な 公 法 契 約の 多 く を 、 事 実 上 無 効 に す る 為 の 法 理 論 と し て 近 年 注 目 を 集 め て い る 。   第6章 「 民 事 契 約 法 と の 比 較 に お け る 公法 契 約法 の 理 論的 特 色 」で は 、前 章 ま で に 検討 し た 公法 契 約 法が 、 民事 契 約 法( 私 人間 で 締 結さ れ る民 法 上 の 契 約 ) と の 比 較 に お い て 、 い か な る 理 論的 特 色を 持 っ かを 検 討 する 。 第2節 で は 、 公 法 契 約 へ の 準 用 を 否 定 さ れ る 民法 規 定を 、 第3節 では 、 公法 契 約 へ の 準 用 に 際し て 修 正を 必 要 とす る 民法 規 定 の内 容 を概 観 し 、こ れ らの 民 法 規 定 が 公 法 契約 へ の 準用 を 否 定さ れ 、あ る い は準 用 に際 し て 修正 を 要求 さ れ る 理 由 が 、 公法 契 約 をも 支 配 する 「 法律 適 合 性原 理 」「 公 益 適合 性 原理 」 に 求 め ら れ て い る 事 実 を 確 認 し て い る 。 ま た第4節 で は、 民 事 契約 と の関 係 で 常 に 議 論 さ れて き た 「契 約 自 由の 原 則」 や 「 私的 自 治の 原 則 」が 、 公法 契 約 に 関 与 す る 行政 主 体 にも 存 在 する と 言え る の かを 検 討し 、 ド イツ の 判例 及 び 学 説 の趨 勢 が 、こ れ を否 定的 に理解し ている事 実と、その 理由を分 析してい る。

  第7章 「 私 法 契 約 法 」 で は 、 「 行 政 上 の私 法 契約 」 に 妥当 す る 法理 論 が、

前 章 ま で に検 討 し た公 法 契 約法 と ぃか な る 関係 に あり 、 結 局「 ( 公法 ・ 私 法 を 問わ ず ) 行政 契 約の 法 理 論と は いか な る もの か 」を 検討する 。第1節で は、

公 法 契 約 と 私 法 契 約 の 峻 別 基 準 に 関 す る学 説 を紹 介 ・ 検討 し た 後、 第2節 で は 、 行 政 の私 法 活 動に 対 し て公 法 的拘 束 を 及ぼ す こと を 目 指し た ヴォ ル フ の 行 政 私 法 論を 確 認 した 後 、 現在 そ の延 長 線 上で 、 公法 契 約 法を ー それ が 憲 法 原 理 の 具 体化 と み なし う る 限り で ―、 可 能 な限 り 私法 契 約 法に も 転用 す る こ と を 試 み るド イ ツ 行政 法 学 の動 向 を紹 介 し 、公 法 契約 法 と 私法 契 約法 と の 間 に は そ れ ほど 大 き な理 論 的 相違 が 存在 す る わけ で はな い こ と、 か かる ド イ ツ 行 政 契 約 論の 動 向 が、 同 じ く私 法 契約 を も 含む 我 が国 の 行 政契 約 論に と っ て 参 考に な る こと を 指摘 し て いる 。

  終 章 「 総括 的 考察 と 今 後の 課 題」 で は 、第 一 節で 本 稿 を要 約 し た後 、 第二 節 で は 、 本稿 で 検 討し た ド イツ の 行政 契 約 論か ら 、我 が 国 行政 法 学が 何 を 学 ぷ べ き か を検 討 し てい る 。 また 第 三節 で は 筆者 に 課せ ら れ た今 後 の課 題 を 提 示 して い る 。

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学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査    教 授    畠 山 武 道 副 査    教 授    木 佐 茂 男 副 査    助教 授    村 上裕章

学 位 論 文 題 名

「行政契約の法理論」

  審査対象論文は、行政契約全体に通用する一般法理を、ドイツの議言侖を参考に検討しようとす るものである。

  まず、第1章では、公法契約の可能性および許容要件に関するドイツの代表的な学説を紹介す る。第2章では、行政主体と私人が公法契約の締結のために契約交渉に入った場合に適用される べ き法理論の内容を検討する。とくに、行政手続法第2部の通則規定が、聴聞を定める28条を 除いて公法契約にも準用され、行政行為手続と公法契約手続の問に基本的な差異がナょいこと・を指 摘している。第3章では、和解契約と交換契約を取りあげ、これらの契約の内容、限界を立法資 料等から明らかにし、さらに最近のドイツで積極的な活用が主張されている遅滞利息、違約罰、

即時執行、解約を定める契約条項を検討している。第4章では、,契約交渉を経て内容の確定され た公法契約の成立要件・効力発生要件を検討する。とくに、公法契約の書面化を定めた行政手続 法57条、および第三者の権利を侵害する公法契約にっいて、第三者の書面による同意を必要と す る旨を定める第58条が詳細に検討されている。第5章では、とくに「違法であっても有効な 契約」を認める59条をめぐる違憲説・合意説の対立を紹介し、近時における合憲説が違法・有 効な契約の範囲を限定することで達意説との差異を解消しつっあるとしている。第6章では、公 法契約への準用が否定される民法規定および公法契約への準用にあたり修正を必要とする民法規 定を概観し、民法規定の準用の否定ないし修正を要求される理由が、法律適合性原理、公益適合 性原理にあること、公法契約にっいては、判例・学説の大勢が、契約自由の原則や私的自治の原 貝I亅を消極に解する状況およびその理由を分析している。第7章では、行政上の公法契約と行政上 の私法契約との間で、適用されるべき法理論に基本的な違いがないことを明らかにし、終章で、

近時のドイツの行政契約論が、日本の行政契約理言侖のみならず、行政指導、協議などを含めた行 政 上 の 交 渉 と い わ れ る 現 象 を 法 的 に 検 討 す る 場 合 に 有 効 で あ る こ と を 述 べて い る 。   本論文の長所は、第1に、これまで少数の研究者によって断片的にしか紹介されてこなかった     ―45

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ドイ ツ 行政 契約 理論 を、 行 政手 続法 に従 い、 ほ ば網 羅的 に検 討 した こと にあ る。 と くに 、特定の 領域 に 限定 せず に、 行政 契 約の 交渉 から 始ま り 、締 結、 内容 ・ 効果 、無 効、 履行 確 保に まで至る 行政 契 約の サイ クル を詳 細 に検 討し た文 献は 日 本に は見 当た ら ず、 今後 、ド イツ 行 政契 約理論を 研究する際に、広く 参照・引用されることが期 待できる。

  2に 、 最 近 の 学説 を 含め 、多 数の 文献 が 渉猟 され てお り 、こ の点 でも 、最 新 のド イツ の学 説 の状 況 や論 争点 の所 在を 正 確に 伝え てい る。 ま た、 伝統 的・ オ ーソ ドク スな 学説 よ りは 、最近の 若手 研 究者 の学 説紹 介に 頁 を費 やし てお り、 ド イツ 行政 法研 究 の中 心が 、権 力的 手 法か ら誘導・

協議等の非権力的手 法に急速に移りつっある状 況を、描き出している。

  3に 、行 政契 約 の個 々の 論点 の 検討 にお いて は、 行 政法 学; の基本命題で ある法冶主義との関 連に 絶 えず 触れ てお り、 そ こか ら逆 に法 冶主 義 原理 が今 日当 面 して いる 課題 を、 照 射す ることに 成功している。

  最 後 (第4)に 、 記述 全体 にっ い ては 、論 点の 整理 が 的確 で、 記述にも無駄 ナよ点やあいまいな 点が な く、 構成 にも 推敲 を かさ ねた 跡が みら れ る。 また 、訳 文 もこ なれ てお り、 ド イツ 語の読解 にっいても、十分な 能カがあることをうかがわ せる。

  問 題 点と して は、 行政 契 約に おけ る論 点を 包 括的 に取 り上 げ 検討 して いる ため に 、全 体が、や や教科書的ナよ説明 とナょり、執筆者の問題意 識が十分に浮かび上がってこナょいきらいがある。今後 は、 行 政契 約に 関す る一 般 抽象 理論 のみ なら ず 、主 要な 領域 に おけ る行 政契 約の 特 色や 、行政契 約の 実 際の 機能 に配 慮し た 研究 が望 まれ る。 ま た、 行政 的手 法 の中 心が 、権 力的 手 法か ら非権力 的手 法 に移 りつ っあ るド イ ツの 現状 にっ いて 、 さら に掘 り下 げ た背 景説 明が なさ れ るべ きであろ う。 た だし 、終 章で 、今 回 の研 究を 基礎 とし て 交渉 型行 政シ ス テム の法 理論 全体 を 構想 する意図 が述 べ られ てい るが 、こ の 種の 研究 は、 ドイ ツ にお いて も本 格 的検 討が 開始 され っ っあ る段階で あ り 、 今 回 、 そ の 論 証 よ り は 問 題 提 起 に と ど め て い る の は 妥 当 な 処 置 と い え る 。   以 上 、行 政契 約法 理の 研 究が 手薄 ナょ 日本の行政 法学の現状に照らすと、本 論文は日本における 行政 契 約理 論の 研究 水準 を 高め 、学 界に 貢献するこ ゛とが十分に期待できるの であって、全員一致 で、法学博士の学位 を付与するに足るものと判 断した。

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