中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 修士論文
統合交通ネットワークを用いた 首都圏鉄道利用モデルの構築
Æ Æ
入学年度
年
学籍番号
福智 一正
指導教員 田口 東 教授
年
月
概 要
東京首都圏において,毎朝,通勤・通学目的で鉄道を利用する人は約
万人にものぼる.そ のため,都心部を走る多くの電車は,毎朝激しく混雑している.この混雑を緩和するために,鉄 道会社は多くの事業
例えば,複々線事業
を検討している.しかし,このような事業を実施する ためには,鉄道会社は工事費用を始めとする多くの負担を負わなければならない.そこで,実施 する事業によって混雑が緩和されるかを,事前に把握することは有益である.
そこで,本研究では,鉄道利用者の駅利用を念頭に置き,次の
つを柱として研究を進めた.
つめは「土地属性から見た駅の特徴づけ」である.本研究では,鉄道利用者の駅までの移動 を考慮して,駅勢圏を点ボロノイ図ではなく,ネットワークボロノイ図を用いて算出する.そし て,算出した駅勢圏を用いて,駅と土地属性
例えば,ビルやコンビニエンスストア
とを対応 付ける.各駅に対応付けられた土地属性を用いて,駅を特徴づける指標を算出する.その結果,
「ベッドタウン度」, 「都市度」, 「レジャー度」を表わす指標を算出することができた.また,各駅 に対応付けられた土地属性を用いて,駅をいくつかのまとまりに分類する.その結果, 「平日と祝 日とで異なる顔をもつ駅」, 「商業が集積している駅」, 「鉄道の利便性が低い駅」, 「乗換駅」, 「郊 外地方への玄関駅」, 「商業があまり発展していない駅」, 「都心を中心にして放射状に伸びている 路線沿線の駅」に分類することができた.
つめは, 「鉄道利用者の駅選択モデルの構築」である.従来の研究の多くは,鉄道利用者の移 動を解析するにあたり,乗車駅から降車駅までの間の経路選択のみを考慮していた.しかし,真 の出発地・目的地は,乗車駅・降車駅ではなく,居住地・勤務地である
本研究では,通勤・通 学目的で鉄道を利用する人のみに着目するため,目的地は勤務地である
.そこで,本研究では,
居住地から勤務地までの経路選択を考慮したモデルを提案する.まず,鉄道ネットワークと道路 ネットワークを統合した統合交通ネットワークを構築する.次に,構築した統合交通ネットワー クに利用者均衡配分を適用することにより,各鉄道利用者の乗車駅・降車駅を決定する,駅選択 モデルを提案する.本モデルの特徴は, 「鉄道利用者の経路が混雑を決定し,混雑が鉄道利用者の 経路を決定する」という合理的な相互連関を明示的に取り入れたことである.また,ロジットモ デルを用いて,優等列車が停車するか否かといった要素を考慮した駅選択モデルを提案する.
キーワード: 鉄道利用モデル,駅選択モデル,利用者均衡配分,ロジットモデル
目 次
第 章 はじめに
研究の背景と目的
本論文の構成
第
章 ネットワークボロノイ図を用いた駅の評価
ネットワークボロノイ図
実都市圏への適用
ネットワークの構築
土地属性の抽出
駅と土地属性の対応付け
主成分分析を用いた駅の評価
主成分分析
主成分分析結果
第
主成分得点を用いた路線の評価
クラスタ分析を用いた駅の分類
クラスタ分析
クラスタ分析結果
第
章 統合交通ネットワークの構築
道路ネットワークの構築
道路ネットワーク
居住地・勤務地
鉄道ネットワークの構築
代表駅ノード
走行リンク
乗り換えリンク
乗車・降車リンク
統合交通ネットワークの構築
乗り込みリンク
統合交通ネットワークの概要
第
章 利用者均衡配分を用いた駅選択モデルの構築
利用者均衡配分
配分アルゴリズム
実都市圏への適用
大都市交通センサス
モデルの適用
本モデルの問題点
第
章 ロジットモデルを用いた駅選択モデルの構築
定式化
ロジットモデルの概要
駅選択モデル
確定項の設定
確定項の要素
確定項の決定
実都市圏への適用
乗車駅選択モデル
降車駅選択モデル
乗車駅・降車駅選択モデル
第
章 結論
まとめ
今後の展望
付 録
土地属性データの詳細
付 録
大都市交通センサスデータ
付 録 モデル の考察
乗車駅選択モデル
降車駅選択モデル
乗車駅・降車駅選択モデル
第 章 はじめに
研究の背景と目的
東京首都圏において,毎朝,通勤・通学目的で鉄道を利用する人
以下,鉄道利用者
は約
万人にものぼる.鉄道利用者の居住地は広範囲
ドーナツ型
に拡がり,その中心部
都心部
に勤 務地は集中する
鐘型
特徴がある.そのため,都心部を走る多くの電車は,毎朝激しく混雑して いる.図
に,駅間を走行する電車に乗車している人数を混雑率毎に集計したものを時間帯別 に示す .図
から,朝の
に走行する電車は,激しく混雑していることがわかる.
図
に,平成
年大都市交通センサス
以下,大都市交通センサス より取得した,定期券 利用者の出発時刻による累積利用者数を示す.図
から,多くの鉄道利用者は,
に 居住地を出発し,勤務地に到着していることがわかる.そこで,本研究で対象とする鉄道利用者 を,
に居住地を出発し,勤務地に到着する鉄道利用者とする.
6_0 6_20
6_40 7_0 7_20
7_40 8_0 8_20
8_40 9_0 9_20
9_40 10_0 0
2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
駅間 乗客 数[千 人]
時刻[時_分]
0%
50-100%
100-150%
150-200%
200-250%
250%-
図
混雑分布
4 5 6 7 8 9 10 11 12 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000
累積 利用 者数 [千 人]
出発時刻[時]
住まい出発時刻
乗車時刻 降車時刻 勤務先到着時刻 計算対象
図
定期券利用者の出発時刻による累積 利用者数
このような電車の混雑を解消し,より快適な車内空間を提供するために,鉄道会社は様々な事 業を計画している.例えば,複々線事業は,混雑時に運行する列車本数を増やすことによる混雑 の緩和や混雑により発生する遅延を解消することによる所要時間の短縮といった効果が期待され る事業である.しかし,このような事業を実施するためには,鉄道会社は工事費用を始めとする 多くの負担を負わなければならない.そのため,鉄道会社にとって,事業を実施する前に,鉄道 利用者の多様な行動を分析し,事業の有効性を示すことは非常に有益である.
一方,
株
昭文社刊行の
デジタル地図データを始めとする多くの空間データ
が大規模かつ精密に整備されるようになり,各地点における詳細な情報
例えば,夜間人口や土
地利用
を把握することができるようになった.
そこで,本研究では,大規模かつ精密な空間データを用いて,鉄道利用者の多様な行動を分析 し,鉄道利用者の駅選択行動を表現するモデルを提案する.
既存研究の多くは,鉄道利用者の行動を分析する際に,入力値として,乗車駅と降車駅間の交 通需要
以下,駅間
交通需要
を用いている.しかし,鉄道利用者の真の出発地
・ 目的地
!は,乗車駅・降車駅ではなく,居住地・勤務地である
本研究では,通勤・
通学目的で鉄道を利用する人のみに着目するため,目的地は勤務地である
.つまり,乗車駅・降 車駅は,鉄道利用者が居住地から勤務地まで移動する際に選択したものである.
そこで,本研究では,まず道路ネットワークと鉄道ネットワークをそれぞれ構築し,それらを 統合したネットワーク
以下,統合交通ネットワーク
を構築する.そして,統合交通ネットワー クを用いて,鉄道利用者の居住地から勤務地までの経路を決定し,決定した経路から乗車駅・降 車駅を決定するモデルを提案する.
圓山
, , は,行政区の形状・大きさ,駅の位置といった純粋な空間的情報から得ら れる,居住地
勤務地
から乗車駅
降車駅
までの距離
コネクターコスト
を用いた駅選択モデ ルを提案した.一方,本研究では利用者均衡配分やロジットモデルを用いて,居住地
勤務地
か ら乗車駅
降車駅
までの距離だけでなく,電車の混雑,優等列車が停車するか否かなどの要素も 考慮した駅選択モデルを提案する.ここで,これらの要素を考慮することによりモデルの有意性 が上がるだけでなく,複々線事業を始めとする,輸送量の増強に関する事業の有効性を定量的に 把握することができる.
内山ら
は,駅までのアクセス交通に着目し,駅までのバス整備や駐輪台数を考慮したアク セス合成関数を用いた駅選択モデルを提案した.ここで,内山ら
は,駅選択モデルを用いて,
千葉県船橋市東洋高速鉄道沿線地域
東西
"#,南北
"#を対象地域とした.一方,本研究で は,広範囲にわたって整備されている空間データを用いることによって,分析対象地域を東京首 都圏とした.
本論文の構成
本論文の構成を以下に示す
第
章では,駅選択モデルを構築する前に,土地属性
例えば,ビルやコンビニエンスストア
から駅の特徴を見出すモデルを提案する.具体的には,まず,道路ネットワークを構築する.次 に,構築した道路ネットワークを用いて,駅を母点とするネットワークボロノイ図を算出し,駅 勢圏とする.算出した駅勢圏から,駅と土地属性とを対応付ける.最後に,対応付けられた土地 属性から,駅の特徴を示す指標の算出や駅の分類を行なう.
第
章では,統合交通ネットワークの構築方法について説明する.
第
章では,第
章で構築した統合交通ネットワークを用いて,真の出発地である居住地から
真の目的地である勤務地への経路を混雑を考慮して決定し,決定した移動経路から,各鉄道利用
者の乗車駅・降車駅を決定するモデルを提案する.提案するモデルの特徴として, 「鉄道利用者の
経路が混雑を決定し,混雑が鉄道利用者の経路を決定する」という,合理的な相互連関を明示的
に取り入れたことが挙げられる.
第 章では,ロジットモデルを用いて,優等列車の停車本数などの要素を考慮して,各鉄道利
用者の乗車駅・降車駅を決定するモデルを提案する.
第
章 ネットワークボロノイ図を用いた駅の 評価
本章では,建物属性・土地属性
以下,土地属性
から,駅の特徴を見出す.具体的には,都心 にはビルやデパートといったものが多くある.そこで,ビルやデパートが周辺に多くある駅を都 心にある駅として特徴づける.
本章の流れは,以下の通りである.
節では,ネットワークボロノイ図を定義する.
節では,まず,
株
昭文社刊行の
デジタル地図データを用いて,東京首都 圏を対象とする道路ネットワークを構築する.次に,大都市交通センサスに記載されている駅の 座標を,国土地理院数値地図 空間データ基盤
を用いて取得して,その地点に駅ノードを置 く.そして,駅ノードから道路ノードへリンクをはり,駅を母点とする道路ネットワークのネッ トワークボロノイ図
以下,駅勢圏
を算出する.最後に,算出した駅勢圏を用いて,駅と土地属 性とを対応付ける.
節では,駅と土地属性との対応関係を用いて主成分分析を行ない,駅を特徴づける指標を 算出する.
節では,駅と土地属性との対応関係を用いてクラスタ分析を行ない,駅をいくつかの特徴 あるまとまりに分類する.
ネットワークボロノイ図
ネットワークボロノイ図は,点ボロノイ図をネットワークに拡張したものである.
まず,点ボロノイ図を定義する.いま,平面上に
個の母点
, ,
が置かれているとする.
また,平面上の任意の点
と母点
との距離を,ユークリッド距離
,
で表わす.
このとき,平面上の任意の点
において, 「
,
, ,
のうち
から最も近い点は
である」
という性質を満たす領域
は
$
,
,
,
$,
$,
, ,
,
%, ,
ユークリッド距離 ,:点の座標が, , , ,と与えられたときに
,
と表わされる距離.
と表わすことができる.このとき,
を点
のボロノイ領域と定義する.そして,ボロノ イ領域からなる集合
$
, ,
を点ボロノイ図と定義する.
次に,ネットワークボロノイ図を定義する.いま,ネットワーク上に
個の母点
, ,
が 置かれているとする.また,任意のノード
と母点
との距離を,最短経路距離
,
で表 わす.
このとき,ネットワークを構成する任意のノード
において, 「
,
, ,
のうち
から最 も近いノードは
である」という性質を満たすサブネットワーク
は
$
,
,
,
$,
$,
, ,
,
%, ,
と表わすことができる.このとき,
をノード
のボロノイ・サブネットワークと定義す る.そして,ボロノイ・サブネットワークからなる集合
$
, ,
をネット ワークボロノイ図と定義する.点ボロノイ図はユークリッド距離を用いて平面を分割したもので あるのに対して,ネットワークボロノイ図は最短経路距離を用いてネットワークを分割したもの である.このことに着目し,本研究ではネットワークボロノイ図を用いて,駅勢圏を算出する.
点ボロノイ図を用いた研究は数多く存在する .一方,地図データが高密度に整備され,詳 細な道路ネットワークを容易に構築できるようになった昨今,ネットワークボロノイ図を用いた 研究も行なわれるようになってきた.稲川ら は,ネットワークボロノイ図を用いて,救急車 の管区を決定している.ネットワークボロノイ図は人やものの移動を考慮しているため,救急車 や店舗利用者といった行動を要するものを対象とした研究には適している.なぜなら,経路の途 中に川のような障害物がある場合,ユークリッド距離で近い
点も,最短経路距離では遠い
点 になりうるからである.ここで,調布駅周辺を対象地域とした点ボロノイ図,ネットワークボロ ノイ図をそれぞれ,図
,図
に表わし,点ボロノイ図とネットワークボロノイ図の違いを示 す.図中の黒丸は母点である駅を,線分は道路をそれぞれ表わしている.ここで,線分の色は,
道路リンクの始点・終点ノードが,どこのボロノイ領域に含まれているかを表わしている.対象 地域の中心部には,多摩川が流れているため,川岸の道路において色のつき方に大きな違いが見 られる
図中の丸で囲まれた部分
.つまり,点ボロノイ図では,川を挟んで反対側にある母点
のボロノイ領域
に含まれる道路ノードがいくつか存在するが,ネットワークボロノイ図 では,そのような道路ノードは存在しない.実際,川の反対側に行くためには,橋のある場所ま で行かなければならず,遠回りを余儀なくされる.よって,移動を考慮した駅勢圏の作成には,
単純に距離をユークリッド距離で表わした点ボロノイ図ではなく,最短経路距離で表わしたネッ トワークボロノイ図の方が適していると考えることができる.
実都市圏への適用
本節では,まず,ネットワークボロノイ図を作成する際に必要となるネットワークを構築する.
次に,空間データを用いて土地属性を算出する.最後に,構築したネットワークを用いて,駅勢 圏を算出し,土地属性と駅とを対応付ける.
最短経路距離 ,
: からまでの最短経路に沿って算出される距離.
図
点ボロノイ図
図
ネットワークボロノイ図
ネットワークの構築
まず,
年に刊行された
株
昭文社の
デジタル地図データから取得した道 路中心線データを用いて,首都圏を対象とする道路ネットワーク
道路ノード,道路リンク
を構 築する.対象とする道路種別は,国道・主要道・一般道である.
次に,大都市交通センサスで定義された駅を代表駅ノードとする.ここで,大都市交通センサ スに記載されている駅の座標を国土地理院刊行の数値地図 空間データ基盤
を用いて取得 する.大都市交通センサスでは,同一構内にあっても路線が異なる駅に対して,異なるコードが 割り当てられている.
最後に,任意の代表駅ノードから半径
#以内に含まれる全ての道路ノードと代表駅ノー ドとの間に道路リンクをはる.ここで,半径
#以内に含まれる道路ノードがない場合は,代 表駅ノードから半径
#以内に含まれる道路ノードの中で,代表駅ノードから最も近い道 路ノードのみに道路リンクをはる.しかし,代表駅ノードから半径
#以内に含まれる道路 ノードもない場合は,分析対象駅から外す.
構築したネットワークの道路リンク数は,
,道路ノード数は
,代表駅ノー
ド数は
である.構築したネットワークを図
に,東京
区を拡大したものを図
に示
す.図
において,緑線は,代表駅ノードと道路ノードとの間にはられた道路リンクを表わす.
図
構築したネットワーク
赤線:国道,青線:主要道,黒線:一般道
図
構築したネットワークの拡大図
東京
区近辺
土地属性の抽出
本節では,
年に刊行された
株
昭文社の
デジタル地図データから注記 データ
を取得する.
以下に,取得可能な注記データの一部を示す.
川・山・海岸などの自然地形
デパート・スーパー・コンビニエンスストアなどの商業施設
パーキングエリア・インターチェンジなどの道路施設
駅・バス停留所などの交通施設
役所・警察署などの公共施設
学校・大学などの教育施設
本研究では,この中から,いくつかの注記データを取得する
.ここで取得された注記データ 数は,
である.
図 ,図
に,取得した注記データを用いて作成したコンビニエンスストア及びガソリン スタンドの分布図を示す.
図 コンビニエンスストアの分布図 図
ガソリンスタンドの分布図
本研究では,空間をネットワークで表現するため,ここで取得した注記データを最も近い道路 ノードに対応付け,道路ノードの土地属性とする.すなわち,ある道路ノードの土地属性とは,
「ガソリンスタンドが
店舗,コンビニエンスストアが
店舗ある」といったことを表わす.
全国の公共機関・道路・交通機関などの位置情報や属性情報が記載されているデータ
付録に,取得した注記データの説明を載せる.
駅と土地属性の対応付け
本節では,前節で取得した土地属性と駅を対応付ける.
ここでは,以下に示すアルゴリズムを用いて,各道路ノードがどの駅勢圏に含まれるかを算出 し,各駅勢圏の土地属性を算出する.そして,駅と土地属性とを対応付ける.
ネットワークを読み込む.各道路ノード
の母点
を
&'とし,母点からの距離
を非常に大きな値とする.
任意の駅
を起点として,全道路ノードに対する最短経路問題を解く.ここで,任意の道 路ノード
において,
,
であれば,
$
,
$
,
とする.
駅
と駅
において,同一視可能な駅対であれば,
$
である道路ノード
に対し て,
$
とする.
各道路ノード
に対応付けられた土地属性と駅
とを対応付ける.
ここで,
の同一視可能な駅対とは,駅名が同じ,かつ駅間のユークリッド距離がある程 度短い駅対のことである.本研究では,複数の路線が乗り入れている駅
例えば,新宿駅
におい て,土地属性が複数の駅に分散してしまうことを防ぐために
を設けた.
図
,図
に,各駅に対応付けられたコンビニエンスストア及びガソリンスタンドの数を 表示する.
1 77
図
コンビニエンスストアの数 図
ガソリンスタンドの数
また,算出した駅勢圏に含まれる道路のリンク長
#を道路種別ごとに集計したものと,大都 市交通センサスから抽出した各駅における定期券・普通券利用者の乗車・降車・通過人数
人
も 土地属性として用いる.
次節では,各駅に対応付けられた土地属性を用いて,主成分分析とクラスタ分析を行ない,各
駅の特徴を見出す.
主成分分析を用いた駅の評価
主成分分析
本節では,
を参考に,主成分分析を簡単に述べる.
主成分分析は,多くの変量の値をできるだけ情報の損失なしに,
つまたは少数個の総合的指 標
主成分
で代用させる手法である.
また,主成分分析はもとの変数間の類似性に基づいて,新たな少ない数の変数へと集約する.
よって,モデル式は,
$ %
% %
となる.
は
個からなる変数,
は各変数に乗ずる重みである.
は集約された新たな変数で あり,主成分と呼ばれる.算出される主成分は必ずしも
つではなく,
$ %
% %
,
$
%
% %
,
$
%
% %
のように複数個の総合特性から成り立つ.このとき,
,
, ,
をそれぞれ第
主成分,第
主成分, ,第
主成分と定義する.
主成分分析結果
各駅に対応付けられた土地属性を用いて,主成分分析を行ない,算出された各主成分負荷量を 表
に示す.第
主成分までの累積寄与率が
(に近いことから,第
主成分までの主成分を 用いることにより,駅の特徴を見出すことができたと考えられる.
表
主成分負荷量
土地属性 第
主成分 第
主成分 第
主成分
乗車人数
降車人数
)通過人数
) )国道
)主要道
)一般道
)集約駅
)自然地形
)基本官公署
その他の官公署
)学校
)医療機関
)宿泊施設
スポーツ施設
)アミューズメント
)名所
)ショップ
)コンビニエンスストア
)ファミリーレストラン
)ガソリンスタンド
) )寄与率
累積寄与率
解釈 ベッドタウン度 都市度 レジャー度
第 主成分
図
に,第
主成分の主成分負荷量を示す.図
から,第
主成分は,ガソリンスタンド・
ショップ・コンビニエンスストアなどがプラスに強く作用していることがわかる.一方,マイナ スに強く作用している要素は見当たらない.このことから,第
主成分は, 「ベッドタウン度」を 表わしていると考えられる.
表
に,第
主成分得点の上位
駅と下位
駅を示す.また,図
,図
は,第
主 成分得点の分布図である.図
,図
から,第
主成分得点の高い駅の多くは都心からある 程度離れた駅であり,逆に山手線の内側にある駅の第
主成分得点は低いことがわかる.
通過 人数
乗車 人数
集約 駅
降車 人数
その 他の 官公 署
宿泊 施設
ショッ プ
基本 官公 署
医療 機関
コン ビニ エン スス トア
学校
ファ ミリ ーレ スト ラン
ガソ リン スタ ンド
国道
アミ ュー ズメ ント
主要 道
自然 地形
スポ ーツ 施設
名所 一般 -0.2 道
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
主成 分負 荷量
土地属性
図
第
主成分負荷量
表
第
主成分得点
上位
駅 下位
駅
順位 駅名 第
主成分得点 順位 駅名 第
主成分得点
平塚
品川
)
本厚木
さいたま新都心
)
東松山
浜松町
)
君津
新芝浦
)西八王子 八景島
)
伊勢原
大川
)
北本
黒子
)東川口
塔ノ沢
)
竹ノ塚
扇町
)
西川口
仲御徒町
)-1 7
図
第
主成分得点分布
全地域
-1 7
図
第
主成分得点分布
都心拡大
第
主成分
図
に,第
主成分の主成分負荷量を示す.図
から,第
主成分は,乗車人数・通過人 数・降車人数などがプラスに強く作用していることがわかる.一方,自然地形・名所などがマイ ナスに作用していることがわかる.このことから,第
主成分は,駅周辺の「都市度」を表わす 指標であると考えられる.表
に,第
主成分得点の上位
駅と下位
駅を示す.また,図
,図
は第
主成分得点の分布図である.図
,図
から,新宿駅や渋谷駅といっ
た大規模な駅の第
主成分得点は高く,郊外にある駅の第
主成分得点は低いことがわかる.
通過 人数
乗車 人数
集約 駅
降車 人数
その 他の 官公 署
宿泊 施設
ショッ プ
基本 官公 署
医療 機関
コン ビニ エン スス トア
学校
ファ ミリ ーレ スト ラン
ガソ リン スタ ンド
国道
アミ ュー ズメ ント
主要 道
自然 地形
スポ ーツ 施設
名所 一般 -0.2 道
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
主成 分負 荷量
土地属性
図
第
主成分負荷量
表
第
主成分得点
上位
駅 下位
駅
順位 駅名 第
主成分得点 順位 駅名 第
主成分得点
新宿
武蔵嵐山
)
渋谷
森林公園
)
東京
本納
)
横浜
高坂
)上野
指扇
)
新橋
下総松崎
)
北千住
千城台
)秋葉原 印旛日本医
)
品川
小室
)
赤羽
ちはら台
)-2 15
図
第
主成分得点分布
全地域
-2 15
図
第
主成分得点分布
都心拡大
第
主成分
図 に第
主成分の主成分負荷量を示す.
図 から,第
主成分は,自然地形・国道・宿泊施設などがプラスに強く作用していること がわかる.一方,学校・コンビニエンスストアなどがマイナスに強く作用していることがわかる.
このことから,第
主成分は,駅周辺の「レジャー度」を示す指標であると考えられる.
表
に,第
主成分得点の上位
駅と下位
駅を示す.また,図
,図
は,第
主
成分得点の分布図である.表
から,武蔵嵐山や箱根湯本といった,レジャーとしての要素が
強い駅の第
主成分得点が高いことがわかる.また,新宿駅のような,都心にあるが,周辺に娯
楽施設や宿泊施設が多くあるよな駅も第
主成分得点が高いことがわかる.
自然 地形
国道 宿泊 施設
名所 主要 道
一般 道
集約 駅
基本 官公 署
降車 人数
スポ ーツ 施設
乗車 人数
アミ ュー ズメ ント
通過 人数
ガソ リン スタ ンド
ショッ プ
ファ ミリ ーレ スト ラン
その 他の 官公 署
医療 機関
学校
コン ビニ エン スス トア -0.4
-0.2 0 0.2 0.4 0.6
主成 分負 荷量
土地属性
図 第
主成分負荷量
表
第
主成分得点
上位
駅 下位
駅
順位 駅名 第
主成分得点 順位 駅名 第
主成分得点
武蔵嵐山
竹ノ塚
)
森林公園
大師前
)
東松山
西八王子
)
箱根湯本
西川口
)本納
新小岩
)
相模湖
川口
)
高坂
蕨
)青堀 三鷹
)
伊勢原
平塚
)
新宿
古淵
)-4 11
図
第
主成分得点分布
全地域
11
-4
図
第
主成分得点分布
都心拡大
第 主成分得点を用いた路線の評価
前節で,第
主成分得点が,駅周辺の「都市度」を表わす指標であることを示した.本節では,
各路線沿線の駅の第
主成分得点を集計することによって,各路線の特徴を見出す.
まず,
路線に着目したとき,
路線の平均値
*,
路線の標準偏差
をそれぞれ
*
$
,
$
*
と定義する.
ここで,
は
路線沿線の駅の個数であり,
は駅
の第
主成分得点である.平均値は路 線全体を見たとき,その路線が都市化が進んでいる地域
以下,都市域
を走る路線であるか,郊 外を走っている路線であるかを示す指標であると考えられる.また,標準偏差は対象とする路線 の中で,都市域にある駅と郊外にある駅がどの程度ばらついているかを示す指標であると考えら れる.
各路線の平均値・標準偏差を算出し,路線ごとに色付けしたものをそれぞれ図
,図
に 示す.ここでは,赤に近くなるほど,それぞれの値が大きい路線であることを表わす.
図
から地下鉄や山手線の内側を走る路線の平均値が高いことがわかる.また,私鉄の各路 線の平均値は比較的,低いことがわかる.図
から,山手線の内側にある各駅から郊外に向か う路線の標準偏差が高いことがわかる.
次に,全路線の中から,平均値の上位
路線,下位
路線を選びだし,ボックスグラフで表
わしたものを図
,図
に示す.ここで,ボックスグラフとは,各ボックスに付いた 本の
-1 3
山手線
図
第
主成得点平均
4
0
埼京線
図
第
主成分得点標準偏差 横線が下から順に
パーセンタイル値, パーセンタイル値,中央値, パーセンタイル値,
パーセンタイル値を示したものである.また,それぞれの図は,左から右に平均値が低くなる ように並び替えて表わしている.
山手 線
東海 道本 線
半蔵 門線
常磐 線快 速
銀座 線
中央 本線
埼京 線
京浜 東北
・根 岸線
丸ノ 内線
(1)
総武 線各 駅停 車
横須 賀線
日比 谷線
都営 大江 戸線
東横 線
東西 線
東北 本線
高崎 線
都営 新宿 線
千代 田線
常磐 線各 駅停 -2 車
0 2 4 6 8 10
第2主 成分 負荷 量
路線名
図
第
主成分平均上位
高尾 線
江ノ 島電 鉄線
五日 市線
金沢 シー サイ ド線
総武 流山 線
多摩 都市 モノ レー ル線
北総
・公 団線
伊豆 箱根 鉄道 大雄 山線
山口 線
越生 線
川越 線
常総 線
成田 支線
(1
) 御殿 場線
千原 線
埼玉 新都 市交 通伊 奈線
小湊 鉄道 線
久留 里線
ユー カリ が丘 線
日光 -1 線
-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
第2主 成分 負荷 量
路線名
図
第
主成分平均下位
山手線の平均値は高く,標準偏差も比較的高い値である.これは,山手線の特徴である複数の 都市域を結ぶ路線を表わしていると考えられる.
一方,埼京線の平均値はあまり高い値ではないが,標準偏差は対象路線の中で最も高い値であ
る.これは,埼京線沿線には,新宿駅や池袋駅といった山手線内にある駅や赤羽駅といった比較
的大きな駅が含まれるだけでなく,与野本町駅や戸田駅といった郊外にある駅も含まれているた
め,埼京線沿線の駅の第
主成分得点にばらつきが生じたためであると考えられる.
また,平均値が低い路線は,新宿駅や渋谷駅といった都市域を通らない郊外路線であると考え られる.
以上のことから,各路線沿線の駅の第
主成分得点の平均値・標準偏差を用いることにより路 線を分類することができると考えられる.本研究では,以下の基準を設けて,路線を
つのタイ プに分類する
図
.
都市域にある大規模な駅を結ぶ路線 平均値
*は正の値を取り,標準偏差
よりも大きい.
勤務地と居住地を結ぶ路線 平均値
*は正の値を取り,標準偏差
よりも小さい.
郊外路線 平均値
*が負の値を取る.
中央本線
東海道本線
横浜線
図
路線タイプ
図
において,赤色の路線は「都市域にある大規模な駅を結ぶ路線」を,緑色の路線は「勤 務地と居住地を結ぶ路線」を,青色の路線は「郊外路線」をそれぞれ表わしている.図
か ら,山手線のようにターミナル駅を結ぶ路線は「都市域にある大規模な駅を結ぶ路線」として,
中央線や東海道本線のような都心から放射状に伸びている路線は「勤務地と居住地を結ぶ路線」
として,横浜線のような郊外を走る路線は「郊外路線」として分類されていることがわかる.
クラスタ分析を用いた駅の分類
本節では,まず を参考にして,クラスタ分析を説明する.そして,
節で算出した,駅 と土地属性との関係を用いて,クラスタ分析を行なうことにより,駅をいくつかの同一のまとま り
以下,クラスタ
に分類することを試みる.
クラスタ分析
クラスタ分析とは,異質な要素の混ざりあった対象を,それらの間に何らかの意味で定義され た類似度を手がかりにして似たものを集め,いくつかのクラスタに分類する手法である.大別す ると階層的な方法と非階層的な方法とに分けられる.
階層的な方法は,デンドログラム
樹形図
を算出することができる方法で,特にクラスタの数 を定めずに,対象の階層的構造を求めることができる方法である.また,目的に応じて大分類か ら小分類までいろいろなクラスタ分けが可能な方法である.しかし,大規模なデータを取り扱う ためには,処理に時間がかかるという欠点をもつ.さらに,算出されたデンドログラムに関して も,大規模なデータでは解釈が困難である.
一方,非階層的な方法はあらかじめ分析者がいくつのクラスタに分類したいかを入力すること により,デンドログラムを用いることなく,大量の項目の分類にも適用することが可能な方法で ある.しかし,非階層クラスタ分析を行なうためには,クラスタの数の設定が非常に重要である.
本研究では,多変量解析ソフト
+++を用いて,非階層的な方法により,各駅を
個のク
ラスタに分類する.ここで,
個と定めたのは,クラスタの数を
個から
個の間で実験を行
なったところ,最も解釈がしやすかったためである.図
図
に
個のクラスタに分類し
た結果を示す.ここで,各クラスタに含まれる駅のある場所をそれぞれ正方形で表わす.各クラ
スタの特徴を次節に示す.