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Academic year: 2021

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1/4  水本 剛四郎

路線バスの遅延を考慮した旅行時間の信頼性の評価

An Experimental Study on Reliability of Travel Time of Local Buses Running in a Congested Road Network

      情報工学専攻  水本  剛四郎     MIZUMOTO Goshiro

1. はじめに

  路線バス交通は,近年の自動車交通の増加に伴う慢性 的な交通渋滞により,時刻表通りの運行が難しくなって いる.特に,都心部では,頻繁に遅延が起きているため,

路線バス利用者は時間に余裕を持った経路を選択する必 要があり,利便性が損なわれている.一方,路線バスが 頻繁に到着するような市街地であれば,時刻表からの遅 れが,そのまま期待旅行時間からの遅れとなるわけでは ない.また,正確に運行されている電車ネットワークと 組み合わせた場合に,路線バスがどの程度使えるのかを 知ることは大変に興味深い.

  そこで,本研究では,遅延を考慮したダイヤグラム (以 下,遅延ダイヤグラムという)と時刻表通りのダイヤグラ ムとの旅行時間を比較することで,旅行時間の信頼性を 評価するシミュレーションモデルを構築する.

2. 遅延特性分析

2.1. バスロケーションデータ

  バスロケーションデータは,何時何分に路線バスがど の停留所間にいるかを把握することができるデータであ る.本研究では,都営バスと近畿地方の市街バス(以下,

関西バスという)のバスロケーションデータより,運行状 況を示すダイヤグラム ( 以下,実ダイヤグラムという ) を 作成する.

都営バス  対象期間は, 2005 年 5 月 9 日(月)〜 5 月 13 日(金)の 5 日間である. 23 区内を走る 8 路線 102 停留所 を対象とする.対象路線では,1 日 669 本の路線バスが 運行されている.

関西バス  対象期間は, 5 日間である.近畿地方の市街 地を走る 10 路線 63 停留所を対象とし,対象路線では,

1 日 158 本の路線バスが運行されている.

2.2. 停留所間の遅延時間

  停留所間の遅延時間 を以下の式(1)で定義する. c

i

=

=

ni

i i

i i i

i

t

t d c n

1

1   (1)

d

i

:停留所間 i の実ダイヤグラムの所要時間

t

i

:停留所間 の時刻表の所要時間 i n

i

:停留所間 i の路線バスの運行本数

遅延時間 は,路線バスが 1 分間運行する時に生じる 遅延時間を表す.図 1 に,都営バスの停留所間の遅延時 間と平均所要時間を示し,図 2 に関西バスの停留所間の 遅延時間と平均所要時間を示す.

c

i

2.3. 遅延時間推計モデル

図 1,図 2 より,鉄道駅,商業集積地,寺・神社などの 周辺の停留所間で,遅延が発生している.そこで,本研 究では,遅延時間は周辺の土地利用の影響を受けている と仮定し,重回帰分析を用いて時間帯別に遅延時間推計 モデルを構築する.時間帯は,朝(6 時〜10 時)・昼(11 時〜17 時)・夜(18 時〜23 時) の 3 つとする.

目的変数は,停留所間の遅延時間とし,サンプル数は 42 である.説明変数は,国土地理院が刊行している 10m

渋谷駅東 宮下公園 神宮前6 表参 宮前1 千駄ヶ谷小 北参 千駄ヶ谷5 新宿4 新宿伊勢 日清食品 東新宿駅 大久保通 新宿ミッ 障害 学習院女子大 高田馬場2 学習院下 千登世橋 東京音楽 南池袋3

-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8

時間(分)

停留所間

遅延時間 所要時間

図 1 都営バスの遅延時間

京都駅 烏丸七 烏丸五 烏丸松 四条烏 四条大 壬生寺 四条中振 西大路四 西大路三 山之 庚申 蚕の 太秦東 太秦広隆 太秦開 帷子 生田 有栖 車折神社 下嵯 角倉 嵐山 京福嵐山 野々 嵯峨小学 嵯峨釈迦 小渕 大覚

-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8

時間(分)

停留所間

遅延時間 所要時間

図 2 関西バスの遅延時間

(2)

2/4  水本 剛四郎

メッシュ土地利用(畑・空地・工業・低層住宅・商業・道 路)を各停留所の半径 100m 以内で集計した値と停留所 間の平均所要時間とする.

表 1 に,朝の時間帯の分析結果を示す.修正済み決定 係数は 0.475 である.

表 1 分析結果 (朝)

説明変数(単位)  回帰係数  t値  畑(100 ㎡)  -0.020  -2.071 空地(100 ㎡)  0.011  2.922 工業(100 ㎡)  0.007  3.011 低層(100 ㎡)  0.003  3.245 商業(100 ㎡)  0.001  1.338 道路(100 ㎡)  0.002  1.321 所要時間(分)  -0.549   -3.699

3. 路線バス・鉄道ネットワーク

  一般に, 鉄道ネットワーク・路線バスネットワークは,

鉄道駅・停留所(以下,駅という)をノードとし,駅間を リンクで結ぶことによって表現される.これを図 3 に示 すように,路線バス利用者が時々刻々と移動する状態を 表現できる時空間ネットワークに拡張する[1].

  図 3 のネットワークの説明をする.各駅における各路 線バス・電車の発着をそれぞれノードで表し,駅間の運 行をリンク(走行リンク)で表す.そして,同一駅にある ノードを時刻順に並べて,その間にリンク(待ちリンク) を張り,路線バス・電車の待ちと乗り換えを表す.徒歩 で乗り換え可能な駅対に対して,移動元の駅のノードか ら,移動先の駅のノードのうち駅間所要時間を加えて間 に合う最も早いノードにリンク(乗換リンク)を張って,

乗り換えの移動を表す.このネットワークを以下では,

路線バス・鉄道ネットワークという.

4. 関西圏の路線バスへの適用

4.1. シミュレーションの設定

4.1.1. 対象地域

  関西圏の路線バス(8 社) ・私鉄網 1,652 路線 5,521 駅を 対象とする.対象路線では,平日 1 日に約 120,000 本の 路線バス・電車が運行されている.総延長は,路線バス が 4,544km で,電車が 23,848km である.

図 3 路線バス・鉄道ネットワーク

4.1.2. 路線バス・鉄道ネットワークの構築

まず,2.3 節の遅延時間推計モデルを用いて,関西圏 の路線バスの駅間の遅延時間 を推計する.駅間 i の遅 延を考慮した所要時間 は以下の式(2)で定義する.

c

i

d

i

i i i

i

t t c

d = + ×     (2)

c

i

:駅間 i の遅延時間の推計値

t

i

:駅間 i の時刻表の所要時間

式(2)で算出された を用いて,遅延ダイヤグラムを作 成する.ただし,推計値が,負であるなら 0 分とする.

また,鉄道は,時刻表通りに運行すると仮定する.そし て,遅延ダイヤグラム通りに運行する路線バス・鉄道ネ ットワーク(以下,遅延ネットワークという )を構築する.

遅延ネットワークは,総ノード数が 1,162,222,総リン ク数が 2,807,060 である(図 4).

d

i

同様に,時刻表通りに運行する路線バス・鉄道ネット ワーク(以下,時刻表ネットワークという)を構築する.

4.1.3. サンプル OD の設定

それぞれのネットワーク上を移動する路線バス利用者 のサンプル(以下サンプルという)を,出発駅を神戸市バ スの神戸駅前〜西丸山一丁目間の各駅,到着駅を各路線 バス会社の駅からランダムに選び,出発時刻を朝の 7:00

〜8:59 間で,ランダムに定め作成する.サンプル数は,

100,000 とする.

図 4  関西圏の路線バス・鉄道ネットワーク

走行リンク 到着駅1 到着リンク

出発駅2

鉄道11 出発駅1

到着駅2

鉄道12

バス21 バス22

鉄道13 待ちリンク 出発リンク

乗換リンク

京都バス・京都市バス 阪急バス・阪神バス

南海バス・大阪市バス 山陽バス・神戸市バス

明石駅

名古屋駅

(3)

3/4  水本 剛四郎

4.1.4. 旅行経路の信頼性の評価基準

  路線バス利用者は,旅行時間を最小にするように経路 を選択すると仮定する.そこで,サンプルが通る時刻表 ネットワーク上の旅行経路 A,旅行時間 A を算出する.

次に,同じサンプルが通る遅延ネットワーク上の旅行経

路 B,旅行時間 B を算出する.これらの旅行時間を比較

し,遅延が生じているか否か,早着が生じているか否か で旅行時間の信頼性の評価を行う.さらに,これらの旅 行経路を比較し,同じ経路を通るか否かで旅行経路の信 頼性の評価を行う. 旅行経路は, 経路が同一な「同一経路」,

経路は異なるが路線が同一な「同一路線」,路線も異なる

「異経路」の 3 つに区別する.       

4.2. シミュレーション結果

シミュレーション結果は,図 5 に散布図で示す.散布 図は,対応する算出時間のサンプル数を色付け(赤が1番 多く,青が 1 番少ない )して表示した図である.散布図の 縦軸は,遅延ネットワークの算出時間 を取り,横軸は,

時刻表ネットワークの算出時間を取る.

図 5 より,旅行時間に大きなばらつきがあり,旅行時 間の信頼性が損なわれていることがわかる.その原因を 追究するために,旅行時間を乗車時間と待ち時間に分割 し,比較を行う.図 6 ,図 7 に,乗車時間と待ち時間の 散布図を示す.

図 6 と図 7 を比較すると,待ち時間は,ばらつきが非 常に大きいことがわかる.旅行時間のばらつきの主な原 因は,待ち時間であることがわかる.

次に,乗り換え回数に注目し,旅行経路の信頼性の評 価を行う. 図 8 は, 乗り換え回数別の経路の比率を表す.

図 8 より,乗り換え回数が少ない時は,旅行経路の信 頼性が保たれている.しかし,乗り換え回数が 3 回を超

えると 60%以上のサンプルが異経路を通っており,旅行

経路の信頼性が損なわれている.その原因は,京都市・

図 5 旅行時間の散布図

図 6 待ち時間の散布図

図 7 乗車時間の散布図

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

0 1 2 3 4 5 6 7

乗り換え回数

比率

同一経路 同一路線 異経路

図 8 乗り換え回数別の経路

大阪市には多くの路線バス・電車が運行されており,乗 り換えが容易に行えるため,サンプルが異経路を通りや すくなるからである.

4.3. 都心・郊外別のシミュレーション

4.3.1. サンプルの設定

  都心は,人口集中地域の数値[3]を参考にし,昼間か夜 間の人口密度が 4000 人/km

2

以上の地域とする.それ以 外の地域を郊外とする.また,都心の地域内にある駅を 都心駅,郊外の地域内にある駅を郊外駅と区別する.昼 間人口と夜間人口は,平成 7 年国勢調査,平成 8 年事業 所・企業統計調査の 3 次メッシュから抽出する.

サンプルの出発駅と到着駅は, 「都心駅→都心駅」 , 「郊

(4)

4/4  水本 剛四郎

外駅→郊外駅」の移動を表現するように決定する.さら に出発時刻とサンプル数は 4.1.3 節と同様である.

4.3.2. シミュレーション結果

  4.2 節のシミュレーションと同様に行う.シミュレー ション結果の中で,最も特徴的であったのが異経路の乗 車時間であったので,図 9 と図 10 に,異経路の乗車時 間の散布図を示す.

  図9と図 10 より,それぞれの移動パターンによって 特徴がある. 「都心駅→都心駅」の移動は,異経路の乗車 時間にばらつきが大きい.その原因は,路線バス・電車 の運行本数が,郊外に比べて多いことより,乗り換えが 容易に行えることが挙げられる. 一方, 「郊外駅→郊外 駅」の移動は,異経路の乗車時間にばらつきが少ない.

その原因は,郊外に行けば行くほど乗り換えが容易に行 えないことが挙げられる.

次に,乗り換え回数に注目し,旅行経路の信頼性の評 価を行う.図 11,図 12 は,乗り換え回数別の経路の比 率を表す.

図 11 より, 「都心駅→都心駅」の移動は,乗り換えが 容易に行えるため, 乗り換え回数が3 回を超えると, 60%

以上のサンプルが異経路を選択しており,旅行経路の信

図 9 「都心駅→都心駅」の異経路の乗車時間

図 10 「郊外駅→郊外駅」の異経路の乗車時間

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

0 1 2 3 4 5 6 7

乗り換え回数

比率

同一経路 同一路線 異経路

図 11 「都心駅→都心駅」の乗り換え回数別の経路

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

0 1 2 3 4 5 6 7

乗り換え回数

比率

同一経路 同一路線 異経路

図 12 「郊外駅→郊外駅」の乗り換え回数別の経路 頼性が損なわれている.図 12 より, 「郊外駅→郊外駅」

の移動は,異経路を選択するサンプルが少なく,旅行経 路の信頼性が保たれていることがわかる.やはり,郊外 は,運行本数が少なく,決まった経路を通りやすいから である.

5. まとめ

  遅延を考慮したダイヤグラムを用いて,遅延ネットワ ークを作成することができた.また,ネットワークを時 空間ネットワークに拡張したことで,路線バス利用者の 旅行経路,旅行時間を算出でき,遅延が及ぼす影響を定 量的に把握することができた.

参考文献

[1] 田口 東,首都圏電車ネットワークに対する時間依

存通勤交通配分モデル,日本オペレーションズ・リサー チ学会和文論文誌,vol.48,pp.85-108,2005.

[2]  佐野 可寸志,須賀 由美子,松本 昌二,地方

都市における路線バスの定時性走行に関する研究,

第 25 回交通工学研究発表会論文報告集,pp277-280,

Oct.2005.

[3]  総務省統計局. “総務省統計局ホームページ” .

(オンライン),入手先<http://www.stat.go.jp/data/

kokusei/2005/kouhou/>,(参照 2006-2-8).

参照

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