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首都圏の道路交通における騒音の外部費用の推計

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Academic year: 2021

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(1)

首都圏の道路交通における騒音の外部費用の推計

Estimation of External Noise Cost Emitted from Motor Vehicles in Tokyo Metropolitan Area

土木工学専攻

14

号 駒宮 隆男

Takao KOMAMIYA

1.はじめに

自動車を原因とする環境問題は大気汚染や気候変動な どさまざまであるが,その中でも騒音は人々にとって最 も知覚しやすい問題である.

騒音が発生すると,アノイアンス(不快感)や睡眠妨 害などの生活妨害が生じる.さらに,

WHO

や松井ら1) 2) が述べているように,睡眠障害が虚血性心疾患という健 康被害へのリスクがあることがわかってきている.

通常ドライバーはこうした騒音により生じている費 用を考慮せずに走行しており,経済学ではこうした費用 を外部費用と呼んでいる.そしてこうした外部費用を価 格に反映することを内部化と呼び,これにより社会厚生 を高めることが望ましいとされている.

欧州では外部費用推定の研究(

INFRAS, IMPACT

な ど)およびその内部化を図る政策(Eurovignette)が積極 的にすすめられている3.しかし,わが国においては自 動車交通の外部費用に関する研究は多くない.

兒山(2004)4)は交通量などが計測されている道路交通 センサス対象道路と対象外の道路双方を対象として交通 騒音による外部費用を求めた.その結果,日本全国の交 通騒音による外部費用の総額として年間

1

1,260

億円

~1兆

9,412

億円という結果を得た.しかし,各都道府

県内及び政令指定都市内の道路沿道人口密度が一律であ ることや,平日と休日の交通量,昼と夜の交通量の違い を考慮していない.

今長

(2004)

5)は,国勢調査に基づく

1

㎞メッシュの人 口密度を基本単位とし,また,昼夜での人口密度の違い を考慮して,1都

3

県の自動車の騒音費用の推定を行っ ている.道路交通が発生させる被害全般を

CVM (Contingent Valuation Method)

を使い,主観的な損失 評価価値を導き出し,社会的費用として昼間が年間あた

1,165

億円,夜間が

250

億円であることを明らかにし

ている.しかし,ここでは道路交通センサス対象の道路 しか考慮されていない.また両者ともに騒音の外部費用 としてアノイアンスのみを対象としており,騒音による 健康被害については推定を行っていない.

そこで本研究は,兒山,今長の特徴,長所を組み合わ せ,昼間は騒音暴露によるアノイアンス,夜間は騒音に より発生する睡眠妨害の健康影響リスクより外部費用を 求めることを目的とする.また推定のための仮定を変更 することで暴露騒音レベル人口がどの程度変化するかと いう感度分析を行う.

2.方法

研究の流れを図-1に示す.

図-1 本研究のフローチャートと既存研究との関係

道路地図,人口密度分布,そして騒音レベルについて

GIS

のオーバーレイおよびバッファリング機能を用いて,

騒音レベル別暴露人口算出する.求めた騒音レベル別暴

(2)

露人口に対して騒音暴露に伴うアノイアンスおよび健康 影響リスクを求める.その際,昼夜の別により沿道住民 の健康への影響も変わると考え推計を行う.具体的には,

騒音によるアノイアンスが昼夜問わず存在するとし,昼 夜の別により疾患リスクが発生する騒音レベルの閾値が 変わるとする.費用原単位については兒山(2004)を参考 にし,中位値 5,000[円/dB]を各時間帯に按分し用いる.

また,夜間において睡眠障害及び心疾患のリスクを考 慮に入れる.ここでは,松井ら(2009)の知見を用いて健 康被害に関する原単位を算出し使用する(第 6 章を参照 されたい).

アノイアンス及び健康影響リスクを各騒音レベル [dB]の閾値から貨幣換算し合算したものを道路交通にお ける騒音の外部費用とする.

3.データ

対象年は 2005(平成 17)年とする.

3.1 交通量データ 3.1.1 道路交通センサス

交通量等のデータとして平成 17 年度道路交通センサ ス箇所別基本表を用いる.対象車種として道路交通セン サス箇所別基本表に記載されている乗用車・バス・小型 貨物車・大型貨物車の 4 車種とする.

3.1.2 道路交通センサス対象外道路

平成 17 年度道路交通センサス(基本集計 表 4-9(A)) には平日及び休日の 24 時間走行台キロが車種別に記載 されている.これを平日数 243 日,休日数を 122 日とし て年間走行台キロを算出すると,年間総走行台キロは 5,

342 億台㎞となる.これを基に自動車輸送統計に記載さ れている年間走行台㎞は約 7,642 億台㎞であることを加 味すると,道路交通センサスでは自動車輸送統計の約 70%をカバーしていると考えられる.逆に残る 30%の自 動車交通が道路交通センサスの対象外の道路を走行,通 行しているものと考える.これを細街路交通量とする.

兒山(2004)にならい表-1 のように道路を区分し,交通 量を振り分ける.

表-1 道路交通センサス対象外道路の内訳(首都圏)

交通量の仮定として,乗用車の細街路交通の 10%が 細街路(細)を通行するものとし,そこでは騒音被害は 発生しないものとする.またバス及び大型貨物車につ いてはすべて細街路(太)を通行するものとする.

細街路交通量の試算の仮定として,

仮定 1:小型車の一日交通量が細街路(太)において細街 路(中)の 2 倍とし,各細街路毎に全延長において均一 の 1 日交通量であるとする.

仮定 2:すべての車両が細街路(太)を通行するものとみ なす.ここでも, 全延長について均一の 1 日交通量 であるとする.

3.2 道路地図データ(DRM)

GIS を用いて道路沿道の騒音分布及び騒音暴露人口を 求める.その基礎となる道路地図データは住友電工の「拡 張版全国デジタル道路地図データベース(Digital Road Map 以下 DRM)」を用いた.DRM には様々なデータが収納 されているが本研究では「全道路リンクデータ」,「全道 路リンク拡張属性データ」を使用する.

3.3 人口データ

統計情報研究開発センターの「平成 17 年度国勢調査,

事業所・企業統計調査等のリンクによる地域メッシュ統 計」の 3 次メッシュ(1辺1km)毎の昼間人口,夜間人口 を使用する. 3 次メッシュ内の人口密度は均一であると 仮定をする.

4.騒音予測モデル

騒音の推計は日本音響学会道路交通騒音調査研究委 員会による交通騒音モデル ASJ モデル 20086)にて行う.

4.1 基本式

本研究では乗用車,バス,小型貨物車,大型貨物車の 4 車種分類で等価騒音レベル

𝐿

𝐴𝑒𝑞,𝑇

[dB]を求める式は

道路区分 改良・未改良幅員(m) 道路延長(km)

19.5- 190.6

13-19.5 762.8 5.5-13 28413.3

未改良 5.5- 1716.2

改良済 -5.5 78388.9

未改良 3.5-5.5 12847.1

細街路(細) 未改良 -3.5 91018.2

合計 213337.1

細街路(中)

細街路(太) 改良済

(3)

𝐿

𝐴𝑒𝑞,𝑇

= 𝑎 + 𝑏 log

10

𝑉 − 10 log

10

𝑙 + 20 log

10

𝑉 + 10 log

10

𝑄 + 10 log

10

( 3 . 6

2𝑇 )

・・・・

(4-1) 𝐿

𝐴𝑒𝑞,𝑇:等価騒音レベル

[dB]

𝑎

:車種別定数,

𝑏

:速度依存性係数,

𝑉

:走行速度[km/h]

𝑙

:音源から観測地点までの距離[m],

𝑄

:交通量

[台]

𝑇

𝑄

台通過する時間

[s]

とする.

4.2 合成騒音レベル

4. 1

で求めた

4

車種の伝搬騒音レベルを合成し住民が 暴露する

A

特性音圧レベル

𝐿

𝐴を求める.

𝐿

𝐴を求める式は次式のようになる.

𝐿

𝐴

= 10 log

10

(∑ 10

𝐿𝐴𝑒𝑞𝑇

10

)

・・・・

(4-2) 𝐿

𝐴:A特性合成音圧レベル[dB(A)]

𝐿

𝐴𝑒𝑞,𝑇:等価騒音レベル

[dB]

4.3 騒音レベル減衰

本研究において,騒音の暴露は全て建物内部で行われ ると仮定している.そのため,騒音は壁を通過する際一

律に

15[dB]減衰するものとする.

5.騒音レベル別暴露人口

騒音暴露人口を算出するために株式会社インフォマ ティクスの

GIS

ソフト,SIS(Spatial Information

System)を使用する.

手順としてまず,

DRM

を投影しそこに属性データよ り道路沿道騒音レベルの値をリンク毎に付加させていく.

SIS

の機能であるバッファリング機能を使用し

DRM

よ り

0m~10m, 10m~20m, 20m~30m

のバッファを発 生させる.発生させた各バッファをクッキーカット(地域 メッシュでの按分)し,3 次メッシュ内に属するバッファ の面積を求める.求めた面積でメッシュ内の昼夜の各人 口を案分し,それを昼間及び夜間の騒音暴露人口とする.

6.騒音の単位費用

6.1 アノイアンス(annoyance)

兒山(2004)では,既存研究に近い値である 5,000[円 /dB(A)・人・年]を中位ケースとして試算している.

しかし,この値は騒音暴露が 1 日において一定の場合 に成り立っている.本研究では昼夜の別,また平・休日 別に交通量を定義しているので兒山の使用した値を案分 し使用する(表-2).

表-2 各時間帯におけるアノイアンス単位費用[中位値]

6.2 健康被害

松井ら(2009)は騒音の暴露による虚血性心疾患の死亡 リスクについて以下の

3

式を用いて試算を行っている.

PAR

𝑛

% =

{𝑃𝑒𝑛100×(RR𝑛−1)}

{𝑃𝑒𝑛100×(RR𝑛−1)+1}

× 100

・・・(6-1)

PAR𝑛%:騒音レベルnにおける人口寄与危険度(Population Attributable Risk)

𝑃𝑛:騒音レベルnの暴露を受けている住民の割合

PAR

𝑛

= 𝑃

𝑑

× PAR

𝑛

%/100

・・・(6-2)

RR

𝑛:騒音レベルnの暴露による疾病の相対危険度 𝑃𝐴𝑅𝑁:騒音レベルn暴露が原因と考えられる死亡者数[人]

𝑃𝑑:疾病全体による死亡者数[人]

HDC = ∑ 𝑃

𝑛 𝑑𝑛

× 𝐻𝐿

・・・(6-3) HDC:健康被害の外部費用 [円]

𝐻𝐿:人身損失額 [円/人]

健康被害についてはリスク及びそれに対しての損失額 が必要である.その人身損失額𝐻𝐿として,同じ交通分野 の内閣府が行う交通事故に関する推定を参考にする.以 下を足し合わせ人身損失額とする。

・逸失利益(24,041千円,損保データより)

・医療費(259千円,厚生労働省報告書より)

・精神的損失額(212,900千円,内閣府報告書より

)

ここで,騒音の人身損失額(死亡)を計算してみると一 人当たり

237,200

千円となる.

(4)

7.結果

7.1 騒音レベル別暴露人口

図-2 両ケースの昼間における騒音レベル別暴露人数

図-2に昼間の騒音レベル別暴露人口を示す.同じ閾値、

単位費用で兒山の研究ではケース1と2において総費用 に倍近い違いが見られたが本研究では差は見られなかっ た.細街路の約

4

割を占める

3.5~5.5mの道路から, 5.

5m以上の道路へ交通量が移った場合において外部費用

はほとんど変動をしなかった.暴露人口を見てみるとケ ース2の方が

60dB(A)以上の騒音に暴露している人数の

割合が全体に対して多いが,外部費用に違いが現れない 程度のものであった.

7.2 外部費用

表-3,4 に騒音の外部費用について先行研究との比較 の結果を示す.

表-3 今長(2004)との総費用の比較

表-4 兒山(2004)との総費用の比較

今長(2004)とでは昼間の騒音の外部費用が約

1. 8

倍,

今長の値の方が大きい.これは今長が交通量を流動的に 定義した結果交通のピーク時間がより詳細に長く設定さ れたためと考える.夜間におけるアノイアンスについて の結果は昼間の結果ほど乖離はしていない.

兒山との結果では細街路について乖離が見られた.こ れは,本研究では兒山とは異なり室内での暴露(室外の騒 音レベル-15dB)を考慮していることが原因と考えられ る.最後に、首都圏で求めた騒音の健康費用及び,車種 別走行台キロの騒音外部費用を表-5,6に示す.

表-5 首都圏における健康被害に対する外部費用

表-6 走行台キロ別騒音外部費用(アノイアンス、ケース1、

閾値50dB)

8.おわりに

課題として他の都市地域についても同様の推計を 行い今回の首都圏エリアとの差異を見ることで地域 ごとの特性を明らかにする必要がある.

参考文献

1)松井利仁,「交通騒音の健康影響-新たな知見-」自動車研究

31(12),pp607-612,2009

2)岸川洋紀,村山留美子,松井利仁,内山巌雄,「騒音暴露による

虚血性心疾患のリスク評価」社団法人日本騒音制御工学会研究発 表会講演論文集2007年,pp85-88,2007

3)INFRAS,EXTERNAL COSTS OF TRANSPORT,Summary,

pp1-16,2004

4)兒山真也,「日本における自動車交通騒音の外部費用の推計」商

大論集55(3/4),pp121-157,2004

5)今長久,「道路交通が発生する被害への暴露に伴う損失評価値の

計測と社会的費用の推計」中央大学博士論文,2004

6)日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会,「道路交通予測モデ

ル“ASJ RTN-Model 2008”:日本音響学会道路交通騒音調査研 究委員会」日本音響学会誌65(4),pp179-232,2009

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

45- 50- 55- 60- 65-

千人

ケース1 ケース2

昼間 夜間

億円 億円

駒宮 752 312

今長 1,165 250 首都圏

エリア 外部費用

総費用 センサス対象道路

億円 億円 億円

駒宮ケース1 1,064 579 1,643 駒宮ケース2 1,064 428 1,492

兒山 1,594 2,647 4,241

総費用(アノイアンス)

センサス

対象道路 細街路

首都圏

エリア 外部費用

センサス対象道路 細街路

億円 億円 億円

ケース1 574 59 633

ケース2 574 47 621

仮定

首都圏 エリア

健康費用

乗用車 バス 小型貨物 大型貨物

1.23 5.87 1.1 5.94 走行台キロあたり費用 [円/台/㎞]

参照

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