首都圏鉄道における旅客流動の再現と運行スケジュールの評価 07D8104019G 松本 徹朗
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室 2011 年 3 月
あらまし:電子時刻表をもとに時空間ネットワーク を構築し,首都圏の鉄道の運行を表現する.次に,
Dijkstra
法を用いて旅客流動を再現し,そのシミュレーション結果から,
JR
京浜東北・根岸線,JR
中 央・総武線各駅停車,JR山手線の3
路線の役割を 分析する.さらに,JR中央線上りの運行状況を推 定し,運行スケジュールを評価する.キーワード:公共交通機関,鉄道ネットワーク,時 空間ネットワーク,Dijkstra法,停車時間関数 1 序論
首都圏の鉄道は目的地への移動手段として,非常 によく利用されている.その一方で,首都圏への人 口集中も原因となり,通勤,通学の時間帯では,混 雑が非常に激しい状況となっている.本研究では首 都圏鉄道ネットワークに対して,時空間ネットワー クを構築し,旅客流動を再現する.そして,各路線 の移動人数を計算し,路線の役割を分析する.さら に,JR中央線上りの駅停車時間を利用者数から計 算して,混雑時の各電車の運行状況を推定し,運行 スケジュールを評価する.
2 首都圏鉄道の時空間ネットワーク 2.1 時空間ネットワークの概要
鉄道ネットワークを,時間軸方向に拡張すること により,空間軸と時間軸上の移動を静的なネットワ ークとして表現したものを時空間ネットワークと 呼ぶ.
2.2 時空間ネットワークの構築
[3]
を参考に,図2.1
で示す 対象範囲(首都圏)にある 132 路線1899
駅で,以下のような 要素を定義して時空間ネット ワークを構築する.時空間ネッ トワークへの拡張の様子を 図2.2
に示す.駅ノード:各駅における各電車 の停車
走行リンク:電車に乗って次の駅へ移動する行動 待ちリンク:駅で次の電車を待つ行動
待ち合わせリンク:駅で待ち合わせを行なう電車に 乗り換える行動
乗換リンク:駅で別の路線に乗り換える行動
図
2.2:時空間ネットワークへの拡張
2.3 構築した時空間ネットワーク 図
1.1
に構築した時空 間 ネ ッ ト ワ ー ク を 示す.平日に運行する 電 車 を 対 象 と し て お り , 総 ノ ー ド 数 が
922,066,総リンク数
が3,290,322
である.3 旅客流動の再現
3.1 通勤利用者移動データ
本研究では
OD
交通需要として,2005年に実施 された平成17
年大都市交通センサス [1] の鉄道定 期券・普通券等利用者調査を用いて,旅客流動を再 現する.鉄道定期券・普通券等利用者調査には最大2
回の鉄道利用状況と帰宅データが収録されてい る.本研究では各利用者の鉄道利用に関する乗車駅,降車駅,乗車時刻,降車時刻などの情報を用いる.
全電車利用データ
285,785
個のうち,データとし て利用できないものを除いた265,927
個を用いる.3.2 交通量配分 3.2.1 Dijkstra 法
所要時間をコストとした
Dijkstra
法を用いる.3.2.2 利用電車割り当てアルゴリズム
センサスデータから得た
OD
交通需要をもとに 時空間ネットワーク上で交通量配分を行ない,旅客 流動を再現する.各利用者は乗車駅から降車駅まで 所要時間を最小とする最短経路を移動すると仮定 する.ただし,利用者が利用した列車種別と経路,出発時刻をセンサスデータ通りとした上で最短経 路を求める.
3.2.3 乗降者人数計算アルゴリズム
3.2.2
項で求めた各利用者の電車利用データを用いて,各駅での乗降者人数を計算する.
3.3 路線の役割の分析
混雑率が高い
JR
京浜東北・根岸線,JR中央・総武線各駅停車,JR山手線の両方面の乗降者人数 から各路線の役割を分析する.
JR
京浜東北・根岸線 南行路線:
埼玉県と東京都を結ぶ放射線 東京都と神奈川県を結ぶ放射線 北行路線:神奈川県と東京都を結ぶ放射線 JR
中央・総武線各駅停車 西行路線:
千葉県と東京都を結ぶ放射線 都心部の駅間を結ぶ路線JR中央線下りの緩行電車
東行路線:
東京都郊外と都心を結ぶ路線 都心部の駅間を結ぶ路線 JR
山手線:両方面とも放射線である他の路線が 運んできた利用者を目的駅,もしくは都心へ行く ためのハブ駅へ運ぶ路線.ただし,各方面で利用 傾向が異なる(図3.1).なお,時計回りに運行す
る路線が外回り路線である.外回り路線:環状線の東京駅側を多く利用
図
2.1:対象範囲
図
1.1:時空間ネットワーク
内回り路線:環状線の新宿駅側を多く利用
図
3.1:利用者数の傾向
4 JR 中央線上りの運行スケジュールの評価 4.1 JR 中央線の現状
JR
中央線は日本の鉄道の中では定時性があまり 良くない路線で,通勤時間帯の遅延が頻繁に発生す る.また,列車種別が多様であることや支線が多い ことから運行形態が複雑になり,遅れの回復が困難 な路線である.4.2 各停車駅での停車時間の分析 4.2.1 停車時間関数
大戸ら [2] によって,モックアップ車両を用い た乗降速度に関する実験が行われている.この実験 によって得られた結果に車内の混雑による影響を 加味して,駅における停車時間
t
を導出する関数を) 2 ( 7908 . 0 ) 2 ( 0031 .
0 x z
2x z
t [秒] (1)
) 5 , 007 . 0
min( e
0.002yz (2)
と定義する.ここで,x
は最も混雑した扉の乗降者
人数,y
は車内人数,z
は一時降車人数である.
また,(2) 式は一時降車人数が表
4.1
のようになる と仮定したときの近似曲線から得られた式である.なお,中央線の乗車率
100%
の時の車内容量は1424
人とする.また,一時降車人数は最大でも5
人と仮定する(図4.1)
.表
4.1:車内人数と一時降車人数
車内人数(人) 一時降車人数(人) 乗車率(%)
2136.0 1 150
2563.2 3 180
2848.0 5 200
図
4.1:車内人数と一時降車人数の関係
4.2.2 各停車駅での停車時間
(1)
式を用いて,JR中央線上りの午前6
時から 午前9
時の間に始発駅を発車する電車の各停車駅 での停車時間を求める.列車種別ごとの各停車駅で の平均停車時間を示す.図
4.2:平均停車時間
4.3 運行スケジュールの評価 各 停 車 駅 で
の 停 車 時 間 と 各 駅 間 の 所 要 時 間 を 用 い て 各 電 車 の 運 行 ダ イ ヤ を 作 成 し,運行スケジ ュ ー ル を 評 価 する.ただし,
運 行 ダ イ ヤ を 作成する際に,
停 車 時 間 と 所 要 時 間 を 用 い て 算 出 し た 停 車 駅 の 到 着 時
刻が運行ダイヤよりも早く到着する場合,運行ダイ ヤの到着時刻をその停車駅の到着時刻とする.対象 となる時間帯に運行している電車の列車種別ごと の電車数と終着駅到着時刻の差の平均を表
4.2
に,終着駅到着時刻の差の分布を図
4.3
に示す.終着駅 に2
分以上遅れて到着する電車が多いことから,運 行スケジュールの見直しを行なうべきであると言 える.特に快速の運行ダイヤには遅れを調節する時 間を取り入れる必要がある.5 結論
本研究では,電子時刻表を用いて首都圏鉄道の時 空間ネットワークを構築し,
OD
交通需要をもとに 旅客流動を再現することにより,JR京浜東北・根 岸線,JR
中央・総武線各駅停車,JR
山手線の役割 を分析した.さらに,JR中央線上りで乗車人数,降車人数,車内人数の
3
つのデータから各停車駅で の停車時間を計算し,各駅間の所要時間も用いて通 勤時間帯の運行スケジュールを評価した.その結果,通勤時間帯に多く運行している快速電車の終着駅 到着時刻の差が大きかったことから,運行スケジュ ールの見直しを行なう必要があることがわかった.
6 参考文献
[1] 運輸政策研究機構,平成 17
年大都市交通センサス,財団法人 運輸政策研究機構,東京,
2007.
[2] 大戸弘道ほか,鉄道駅における旅客流動に関す
る研究 その8 乗降速度に関する実験,日本
建築学会大会学術講演梗概集,E-1, pp.845-846.
[3] 田口東,首都圏電車ネットワークに対する時間
依存通勤交通配分モデル,日本オペレーション ズ・リサーチ学会和文論文誌,48
巻,pp.85-108,
2005.
図
4.3:差の分布
列車種別 電車数 到着時刻の差の平均
快速
63 3分13秒
中央特快
3 3分53秒
通勤特快
5 1分36秒
表