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鉄道利用客の消費行動を考慮した駅の集客力分析

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Academic year: 2021

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1/4  平林  大季

鉄道利用客の消費行動を考慮した駅の集客力分析 

Gravity-like Model for Consumers in Public Railway Network

情報工学専攻  平林  大季 HIRABAYASHI Daiki

1. はじめに

駅周辺施設において効果的に集客をするため には,駅が飲食,娯楽,購買といった目的のうち,

どのような目的で利用され,どの程度の人に利用 されているのかを正確に把握することが重要で ある.このような施設の利用者数を予測するモデ ルは数多くあるが,鉄道移動の場合,移動距離の 他に料金や駅の規模といった要因を考慮しなけ れば,施設の利用者数を正確に予測することは困 難である.

本稿では,東京都首都圏における飲食,娯楽,

購買を目的とした鉄道利用者を対象とし,鉄道利 用者が考慮する鉄道移動の際にかかる料金や駅 の規模といった要因を用い,駅集客モデルを提案 する.また,提案したモデルを用いて,駅の集客 力を把握することを目的とする.

2. 使用データ

東京70km圏在住の12歳から69歳までの男女

10,013人を対象とした,200275日から8

までの4日間の移動行動と消費行動のアンケート データ(以後 JR データとする)を使用する.本 研究では飲食,購買,娯楽の3つの目的で調査期 間中に1度でも鉄道を利用した利用者を対象とし,

駅の利用者数,および,鉄道利用者の移動経路を 抽出する.

3. 駅−施設ネットワーク

駅から施設までの移動を表現するために,鉄道 ネットワークと駅から施設までのネットワーク を統合した,駅−施設ネットワークを作成する.

また,施設が持つ魅力度を決定する.ここで,鉄 道ネットワークは[1]に基づいて構築する.駅から

施設までのネットワークには平成8年事業所・企 業統計調査の500mメッシュデータを用いる.ま ず,抽出したメッシュの重心点を算出し,メッシ ュ代表点とする.つぎに,駅を中心に半径 800m の探索範囲を設け,探索範囲内に含まれるメッシ ュ代表点と駅の間にリンクをはり,駅−施設ネッ トワークを作成する(図1).ここで,メッシュ内 に含まれる各目的に対応すると考えられる施設 として,表1に示した施設の従業員数の総和をメ ッシュ代表点に与える.リンクコストは駅−施設 間のユークリッド距離を分速80mで割った値と 500[m]

:メッシュ代表点 :駅ノード :鉄道リンク

:駅−施設リンク

する.

1  駅−施設ネットワーク

:施設探索範囲

1  対象とする施設一覧

対象目的 対象施設 飲食目的 飲食店,百貨店

娯楽目的 百貨店,衣類品店,飲食料品店,

書籍,家具・雑貨店,医薬品店

購買目的

映画館,劇場,ボウリング場,

テニス場,バッティングセンタ ー,遊戯場,雀荘,パチンコホ ール,博物館,動物園

(2)

2/4  平林  大季

4. Logit モデルを用いた鉄道ネットワークの

4.1 用選択モデルの適用  

過する,降車し て

構築 駅利

4.1.1 駅利用選択モデルの構築

駅において乗り換えを行う,通

施設に向かうという3つの選択行動を表現する モデルを構築する.nn=1,2,L,N)駅で乗り 換えを行う(i=1), ,降車して 施設に向かう( =3)という3つの選択肢が与え られ,多項Logi デルを仮定すると,選択確率 は次式で与えられる.

(

通過する(i=2i

t

    )

∑ ( )

=

= 3

1

exp expVin

j

jn in

V

P    

: 駅で を選択する確率

る効用の確定項 ここで,効用の確定項

α

α +

+ + finn

9

7 α

α α

α + + +

= t c en

V

とする( :パラメータ).本モデルに用いる効 る全ての駅

: 全ての次駅ま

: いて

: いて乗り換えが可

:通過のためにかかる料金を示す.[2]から抽

: 円

: の鉄道会社の路線数

.1.2 

の利用目的別に最尤推 定

目 的

(i=1,2,3)

Pin n i

Vin: を選択されたi n駅が受け Vin

8 6

5 1 4 1 1

1n =αtn+α c α s

V n n

2 4 2 2

2n n n

n n

n t c

V3 =α3 3 +α4 3 α

用の確定項は,以下の値を用いる.

t1n:n駅において乗り換えが可能であ

に対し,駅間のユークリッド距離を分速55m で割った値の平均値とする.

n駅から乗り換えせずに行ける t2n

での所要時間([3])の平均値とする.

駅−施設ネットワークを用い,n駅にお t3n

リンクがはられている全ての施設までの所 要時間の平均値とする.

[2]から抽出した,n駅にお

c1n

能である路線の初乗り料金の平均値とする.

ただし,同じ鉄道会社への乗り換えは0円と する.

c2n

出した次駅までの料金の平均値を用いる.

n駅を降車するときの料金であり,ここでは c3n

0 とする.

n駅における他 en

snn駅における同じ鉄道会社の路線数

4 パラメータの推定 JRデータを用いて,鉄道

法を用いパラメータを推定する.ここで,利用 者が比較的多い駅に対しモデルを適用する.各鉄 道の利用目的のサンプル駅数は飲食目的が49駅,

娯楽目的が99駅,購買目的が88駅である.

パラメータ推定結果,および,各鉄道の利用 における相関係数を表2に示す.中程度の相関 が得られたことから,モデルの適用結果と実際の 駅の選択確率は,似た傾向があると考えられる.

1:終点駅である

n

fin 0:終点駅でない

パラメータ 飲食 娯楽 購買

α1 0.155

(0.782) ( ( 0.116 2.082)

0.028 0.073)

α2 0.006

(-0.011) ( ( -0.047 -0.338)

-0.122 -0.759)

α3 -0.118

(-0.327) ( ( -0.045 -0.057)

0.207 0.160)

α4 -0.085

(-0.165) ( ( -0.047 -0.759)

-0.047 -1.310)

α5 -0.082

(-0.249) ( ( -0.126 -1.016)

-0.066 -0.233)

α6 0.463

(3.877) ( ( 0.662 5.473)

0.139 1.808)

α7 -0.170

(-1.293) ( ( -0.194 -1.511)

-0.171 -1.104)

α8 -0.567

(-0.534) ( ( -0.240 -0.334)

1.506 1.659)

α9 2.140

(2.643) ( ( 2.640 3.097)

3.955 8.033)

乗り換え 0.677 0.599 0.604

通過 0.720 0.647 0.659

相関係数

降車 0.615 0.483 0.584

サンプル駅数 49 99 882 駅利用選択モデルのパラメータ推定結果

(括弧内はt値)

(3)

3/4  平林  大季

4.2 Logitモデルを用いた鉄道ネットワークの

構築

  鉄道利用者の移動は,所要時間,料金,駅の規

+     (1) 式(1)から算出した を図 2 のよ にリン

,鉄道利用 者

St 1.鉄道利用者の所要時間が最短となる移動経 模といった要因の影響を受けると考えられる.そ こで,これらの要因を考慮し,鉄道利用者の移動 を表現する鉄道ネットワークを構築し,鉄道利用 者の移動の満足の度合いを算出する方法を提案 する.4.1 節で算出した各選択行動の効用値は,

駅において鉄道利用者がある選択行動を選んだ 際に得られる満足の度合い(以後,満足度とする)

と捉えることができる.そこで,効用値を用いる ことで,所要時間以外の料金や利便性など,鉄道 利用者の移動経路に対する満足度を表現する.

まず,鉄道利用者は所要時間が最小となる経路 通ると仮定する.次に,降車における効用値を 基準として,乗り換え,通過の効用値がどの程度 の大きさなのかを数値的に扱うために,駅利用選 択 モ デ ル よ り 算 出 し た す べ て の 駅

n=1,2,L,N)における各選択肢の効用値Vinに 対し,以下の計算を行う.

( 3

= in n

in V V

V ) 1

V′in う クコス

トとして与えることで,鉄道移動の満足度を考慮 した鉄道ネットワークを構築する.

構築した鉄道ネットワークを用いて

の移動経路に対する満足度を算出する方法を 以下に示す.

ep

路を探索する.

Step2.移動経路上のV′inを加算し,その総和を鉄

道利用者の移動経路における満足度とす る.

5. 駅集客モデルによる駅の集客力分析 5.1 駅集客モデルの適用

4.2 節で提案した鉄道ネットワークから算出す る移動経路の満足度とハフモデルを使用し,鉄道 の利用目的ごとに駅の集客を表現する駅集客モ デルを作成する.モデルは以下の式で表される.

( )

( )

=

= K

k

ik k

ij j

ij

d W

d P W

1

2 2

exp exp

1 1

λ λ

λ λ

ij i

ij mP

S =

Pij: 駅で乗車した人がi j駅を選択する確率 dij: 駅からi j駅までの移動経路の満足度 Wjj駅の最寄り施設の魅力度の総和

mii駅で乗車する利用者数

Siji駅で乗車しj駅で降車する利用者数 λ:パラメータ

ここで魅力度は,駅−施設ネットワークにおいて 駅とリンクがはられている施設の従業員数とす る.

5.2 パラメータの推定

パラメータλは最小二乗法により推定した値 を用いる.得られたパラメータおよび実際の駅利 用者数との相関を表3に示す.また,最短の所要 時間を用いた,従来のハフモデルの結果を,駅集 客モデルの比較対象として合わせて示す.結果か ら,各モデルにおいて相関がみられた.また,時 間距離を用いた従来のハフモデルに比べ,駅集客 モデルの方がわずかではあるが高い相関が得ら れた.

路線B

:駅ノード

:降車ノード

:乗り換えリン

:通過リンク

:降車リンク

:移動方向 路線A

1 , 1n+

V

1 , 2n+

V

, 3n V

1 , 2n+

V

+1 2 , 2n+

V

V2,n n +2 n +3

n

3 , 3n+

V

n

+1

2  鉄道ネットワーク

3  各モデルの推定結果

a駅集客モデル

λ1 λ2 相関係数 サンプル駅数 1.15 8.897

飲食 0 0.817 1815

娯楽 0.913 2.602 0.737 1815

購買 1.265 4.022 0.832 1815

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4/4  平林  大季

吸引力からみた駅の集客力

  吸引力とは,ハフモデルのモデル式から, 駅 で乗車する利用者を 駅が引く力である.駅集客 モデルにおける吸引力を算出し,算出結果を図示 することで,各モデルにおいて駅が利用者を引き 付ける力の分布, 吸引力の強さから利用 者を引き付けやすい路線や駅などを把握する.吸 引力を とおくと駅集客モデルの吸引力は以下 の式で表される.

5.3

i j

および,

fij

( ij)

ij Wj 2d

f = λ1expλ

ここで,パラメータλは駅集客モデルより算出し

渋谷駅は,池袋駅,五反田駅と いった山手線西部の駅に対する吸引力が強く,ま

谷駅は,山手線 および田園都市線といった路線から集

提案した鉄道ネットワークを用い,

を使用して,駅集客モデルを作成した.

して,駅の集客力を把握した.

謝辞

  本研究を進めるにあたり,多大なる指導,ご助

く感 究を通してお互い学

たします.

参考文献

[1]  田口 東,首都圏電車ネットワークに対する

時間依存通勤交通配分モデル,日本オペレー ションズ・リサーチ学会和文論文誌,48巻,

pp.85-108,2005.

[2]  マイライン東京時刻表20053月号,交通

新聞社,東京,2005.

[3]  MATT 関東圏時刻表 MATT2002年5月号,

八峰出版,東京,2002.

た値(表3)を用いる.

  新宿駅と渋谷駅の吸引力を図3に示す.図3か ら,新宿駅は中央線沿線の駅,特に吉祥寺駅,荻 窪駅,中野駅に対する吸引力が強く,また,池袋 駅や渋谷駅といった山手線西部の駅に対する吸 引力が強い.以上のことから,新宿駅は中央線沿 線,および山手線西部の駅からの集客があること がわかる.また,

た,田園都市線沿線の駅に対する吸引力も強いこ とがわかる.以上のことから,渋

西部の駅,

客があることがわかる.

6. まとめ

  本研究では,鉄道利用者の移動の手間を表現す るために,効用値を用いた鉄道ネットワークを提

した.また,

ハフモデル

作成したモデルを用い,新宿駅,渋谷駅を対象と

言を頂いた中央大学理工学部 田口  東教授に深 謝したします.また,研

び,励ましあった田口研究室の同輩諸氏に感謝い λ1 λ2 相関係数 サンプル駅数

飲食 1.055 0.553 0.811 1815 娯楽 1.042 0.157 0.687 1815

購買 1.419 0.297 0.781 1815

(b)ハフモデル

b)渋谷駅

3 各駅の吸引力(購買目的)

渋谷駅

五反田駅 池袋駅

田園都市線

新宿駅

中央線 吉祥寺駅

渋谷駅 池袋駅

(a)新宿駅

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