トリコット編機に関する機構的研究について(第2報 ) カム機構における加速度について
著者 奥田 薫
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 11
号 1.2
ページ 69‑75
発行年 1963‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/5056
トリコット編機に関する機構的研究について(第 2 報) カ ム 機 構 に お け る 加 速 度 に つ い て
奥 田
薫
00 the Mechanisms of the Kinitting Method of the Tricot M a
Kaoru OKUDA
The cams which is used in the knitting parts of the tricot machine is a complex type having two definite functions brought about by the front and back rollers which follow the two faces of the composit cam. The first function is to lead the thread and the second is to prevent the vibration.
The author analysing thus elucidated in the present paper the cause of the vibration finding the value of Coriolis' functional acceleration equation.
ま え カ
1き
通常の速度にてトリコット編機する場合にはカムを使用するが,乙の場合は カムは複型式にな っていて前カムは編織駆動の役目をなし,後カムは 振動を防止するような方向に駆動され,高速 度にて編織するには適当ではないが,カムの形状さえ変えると任意の編織曲線を画き出すことが出
jl~
来るのが特色であるO これらのカムの加速度の方向と量を調査した。
C
1
) 針 カ ム~I~
トリコットに使用するカムは針カム1 i/ Yカーカ ム,圧力カムおよびガイドカムよりなり,何れも正 負のカムを有し,正カムは要求されたカムの運動を なし負カムは正カムの運動の衝撃を防止するように 別の運動をなすのである口
最初に針カムについて考えることにするq 第1図においてローラの中心を
B
, カ ム の 中 心 をO
2,ピボットの中心を03,02B, B03の長さをそれ ぞれγM らとし.r
およびYをローラーB
およびB '
の 半径とし,ローラとカムとはP点またはQ
点におい て相接触すると仮定をする口またr
5を04Qの長さ,r
s'を03B'
の長さとし九,r
〆を接触点P
およびP '
点 における曲率半径としら,r
2'を020,020'の長さ とするDまたθ2'8,伊84,85,83,83',8〆を水平線とγ2'九,
r
4,γ5, Fig. 1r S
,r 3 '
,r
〆のなす角としどOBO=fJr0
40
3の水平線となす角を(}mとする口接触点におけるカム上の点を
Q
としローラ上の点をPと考えると# 教 授
70 福井大学工学部研究報告第11巻 第1・2号
実数と虚数に分けてω3
,
ωrを求め得るからp'
点の速度はv
p=μ3 T5ω2 (tan (Jr COS (J5 ‑ sin (J5) /r3 (tan (Jr COS (J3 ‑ sin (J3)十μrr5ω2 (tan (J3 cos
f l s ‑
sin (J5) /r (tan fJ s
cos Or ‑ sin Or)侶)
式を徴分してP
点の加速度を求めるとV
p=内 向 一μ3úJ~/i 十仲 ωr μrωr2/i同様にして他の負カムとローラの接触点p,の加速度は '¥¥Tp ' =μs
ム
srー μsrω' ; / i
十μJム
J一
μ,
.rωT12/ i
ここに μ
ピ = i
T3' e'83' μr' = ir '
ei8rv=γ5 et8s二 0203ei8m + r3 et8 + r ei8r 乙の式を微分して
i r5 (J5 et8s = i r3 03 ei83 + i r Or ei8r ここに(J5= O2すなわちω ω 2であるo
μ5ωμsω3+μrωT ここに μ5
=
i T5 ei85μ3 = i
r
3 ei83 μr =i r
e叫・また接点
P
およびQ
については Vp =Te愉 ・ ‑r
et¥8件 前V
Q = r5et 85ー (T2 et~+ r
p ei8p) 加速度の切線成分はV
pt =r
(Or一九)
e i(8十 号 、
" ¥ V Q t
= ‑r
!p (02一九)
ei耐+ 1 ¥
Vpt
=
¥VOtとれより
ι
を求め得からP点の加速度は. . .
・
H・ . . … …
(1)︑ ノ
r k
ヮ‑
‑
B
•
•
•
…
H・
H・ ‑ …
(3). . .
・
H・ . . .
(4). (5)
。
W '
P =内 向 一μ3uJVi+μr(rpw,ρ‑rpω2十 ωpr)/r ‑ μr ' r~ωI~ (tanfla COS05
‑ sin (J5) 2/i r2 (tan 03 COSr
‑sinOr)2
…
H・
H・ . . . ・
H・ ‑ ・
(6)また B
点IC関するベクトノレ方程式はム02 AB
より得られる口
VB
= 0203 ei8'W + T3 ei83 = r2 et8:! + (r十九)e叫 VB=~tWB= μzω2+μρωp =μzωsM r L ¥
< ¥ f
3'百f
,(J)¥、¥斗Fig. 2
ことに μ2 = i r 2 et82 μ伊
=
i (r+r伊)ei8伊 μ3=
ir3ei83 負カムについて考えるとVB'
=
O2 03et伽+
r3'ei83'= r/
e叫 十γ(〆+rp')e叫ここに μ
ピ =
tr 2 '
ete2'!‑tt均
1 i f 正 7 i
(
,
\.tr~u).
科
JL A''V
記 ゅ ; .
μI{! = i (r'十rp')et6p'
μ3 = i γ3 ei63'
故l乙前式を徴分してB点の加速度を求めると
"WB= μzω2 一 μ2ω~/
i +
μpωρ ‑/J.pωρ2 / i =
μsωs一
μsω~/i
V
B=
μ2Fω2 ‑/J.2〆ωVi+
μpFωpr一
μprω〆 / i =
μ3Jω
ピー
μ3ωγ/ i
ここに ω3
= { r
2ω2 sin(Op ‑ (2) ‑ r2ω~ COS (0‑。
2) + r3ω~cos (Op‑03) ‑ (r + rp) ωp2} / r 3 sin (Op‑(3)ωp ニ {r2úJ~Sin(03 ‑ (2)一九ω(03 ‑ (2)
+ ( r
十r
p)ωp2COS(fJ3‑0p)‑r
3ωV(γ 十九)sin (03 ‑ (}p)今カムに加わる全加速度をVtotazとするととれは正負 カムに加わる加速度の差である口
Vtotaz =
W
B ‑V
B ' • …・・ (7) (2)シ ン 力 一 力 ム
第4図はVンカーカムのリシク機構を示しローラ Fig. 3 の 中 心
Bが支点03の周囲を回転すると仮定すると, リンク
r
4 ~乙動力が伝わり,端 C は 05 を中心として
回転することになるO
このベクトノレ方程式を作ると
r5 ei:O!.<
+ r
4 ei64ニ 0305+ r
3 ei63 乙れを徴分して次の式を得る口‑r
5fJ5 Sin(}5 ‑r
4fJ4 sin(}4 +r
3fJ3 Sin03 = 0r
5(}5 COS{}5 十r
4(}4COS(}4 ‑raf}3 COS3 = 0 これを解して03BC 05において
. (8)
Os =γ3"3 VBsin(03 ‑ (4) / rssin(Os ‑ (4)
、
↑…… (9) 04 =
r
303 VBsin(03 ‑ (5) / r4sin(04 ‑ (}s) Jただし
V
B=
tJ3r
3 更に上式を徴分して‑ VsfJs sinOS ‑γ
i J
4 sin九十rsfJ3sinO‑r5f)~CoSOs ‑ r40 ;
COS!?4 + r3号COS(}3= 0十
r
5( h
COS(JS +r
4'"/4 COS(J4 ‑r s f J
3 COS03 ‑rSo; sin(Js ‑ r4ぺ
ψ
tJ; sin九十r3tJ~ Sin(J3 = 0
乙とに rs3 = VB γsi=VBω Fig. 4 tJs = {r 3tJS Sin(03‑(}4)一九時cos(Os‑(J4) ‑
r
4( } !
十VBcos(OS‑(}4)}/r5sin(Os ‑ (4)72 福井大学工学部研究報告第11巻 第1・2号
故にC点の加速度は()575であるからC点の加速度は次のようになるO
Voニ rs{γsfJsin(fls ‑ (4) ‑ rsO~ COS(fJs ‑(}4) 一九{}~
+
VB COS({}S ‑ (}4)} / r5 sin(Os ‑ (}4) (3) ガ イ ド カ ム第
5
図はガイドリンク線図を示しνy
カーと異なる点は更に0
5点を基準としてC
点の運動がD
点に伝わり !}yクr7の先端Eが 08を基点として回転運動するととになる口 リシク r9はリンク 78と共に固定されているからリンク9の先端Fはトシク78の回転運動は直ちにFの回転運動となる口
今リシク U5C=γ5, C D = 76' 77, r 8et8s十r7et81=
0
50
8+
(r5十r6)e叫乙れを微分して
78 K対してベクトJレ方程式を作ると
. (10)
r
8 (}8 COS九 十 r101 COS(}7一(九十九)(}5 COS(}5 = 0 とれを解いてーγ808叫 ー 刊 叫 十 ( 九 十 九)
(}5 叫:~
} Ti J︑ ︑ ︐ ︐唱i
︐ ︐
E弘 ︑
•
08 =
( r
5十r
6)05sin ((}6 ‑ (}7) / r8sin ((}8 ‑ (}1)、
(}7 =
( r
5+
76) (}6sin ((}6 ‑ (}8) /r
7 Sin(01 ‑ ()8) ) 更に上式を徴分して一 九 九sin(}8 ‑7lJ1 Sin{}7十(r5十r6) 05 Sin(}5一 九 時cos98‑r7 (j~CoSfJ7 十 (r5十r6) (}~ COS(}5 = 0 r8 (}8 COS8十r7 (}1 COS(}7一(75十 日)fJ5 COS(}5 ‑ r 8 (j~ Sin08 ‑ r 7 (}~ Sin01十
( r
5十日)8;sinOs = 0 08 = (γ5+
r6)fJ5sin(fJ6‑07) ‑r8 r; COS(β8‑(}7) ‑77 O~+ (r5+r6) fJ~ COS((}6‑(}7)/r8 sin(8s‑(}1) 従ってガイドリンクのE
点の加速度は求められるo( 4 )
図 的 説 明︑I
J
1i ‑i ︐
s a︑
(a)針カムに関して考えるo クラY E
ク軸の中心を
O S 1
カムローラの 中心をBとすると, B はOsを中'11心とし速度ベクトノレの中心を O曹
とすると Oり点より BSsの方向に
的 ωsをとりBS4の方向lこ んω4を 引くとその差の速度ベクトノレは μ4仰4一 向ωsとなり,これがカム に対するローラーの関係的速度ベ クトノレとなる口
同様にして負ローラー
B '
点につ いてはB s '
点に対するB/
点の関 係的速度は μ4"84 ' ‑
fJ.3'ωsrと なる口したがって針カムにおいては針を 動かす速度は乙の両者の速度差と なり,その値は
0 ..
Fig. 5
V
伺 =μ4ω4一 内 向 一μ4〆ω4 ' +
(}3'ωa〆となるc
次にローラーに力11わる加速度について考える口
00,を中心として03BにO,oEを引くと乙れは B3点の法線的加速度となり,
四 ・ n
V
B =V
B一
ω;r
3 ei03= ーは
μ3 /i
その1ii
i
はζれに垂直なベクトノレを引くと,
V~ =
i
ω3r
3 eiO3 =ω3 fJ3これがB点の切断的加速度となり, その111¥ば
となるO しかるに
VB3 = V B 4十 WB3B4' また
・ 崎
WB~ = V~ 十 V'B3B4
V
B+
W~=
V~+
W..J十 V~B+
W~B 叫 ・z ・叫 . t ・n ・z VB,十" V
B,=¥ V
B,十 WB,十 VB'B'十 VB'B'しかるに
O
2点は国定点であるから切線的加速度はW
B =0となる。故にVB+VB=WB+VBB十 WBB
今 Oaを中心としてB 03に平行に
W
B = ‑(I)~ 内 /i をとり B 点において知棋を引く J 他方 Oa}.I.~ よ‑ 河 ・ 泊
りOa点より 02Bに平行に WB μ4
w ; / i
をとりA点を定むコ A 点より BS3 に、I~: 行に VRRfJ4 (I)~ /
i‑
μ3U J ; / i
に等しくKをとり, K点より無線を引き BFとの交点そ Fとすると BF= VR=ω3μ3 KF =
V
R B μ3ωs一 仰 向=μsω3となるJ すなわち次の関係が生ずるコ OaF =W
B 十W
B 二 一μ3w ; /
i十 ωsμ3‑ 叫 ・ 拘
・
s= OaA
+
A K十 KF= V
B+
W"BB十 WBB(μ4ω~ / i)十(μ4l1)~ /
i 一
μsω;/ i)+
(μsω3) 他の負ローラに対しでも同様の関係が成立するO。 α F '= 1 I
R,十 可V
B' = ‑1-l31 ω~' / i +
ωsrμSF
したがってローラを動かす合加速度は
"'iftotal μ3 w~ / i十 内 向 十μa'w~' / i
一
μJω3F となり,これが直接針に加わる加速度となる。(b) i/ ::‑'カーカムにおいてはカムが時計の回転方向と反対方向にある角速度にて回転するとロー ラ‑ Bおよび B'のなす合加速度がリンク
r
3は伝わるD加速度の原点をOaとするo リシク
r 5
の法線加速度 OaM= ' V
5=‑ w ;
μ5 / i
をとり, これに垂 直lこ線を引くD他方Oa点より 03Bに平行に
W a n
をとると‑ 帽
Oa Bl = V 3 = ‑μ3 w~ /
i
となり74 福jj:大学工学部研究報告第11巻 第1・2号
また
BIE = W
3 = 内 向 B1E上B1EEF
二V
O B二 一μ(3w~ /i ‑
/15 w; /i ) ,
EFIIBC にとりF点において無線を引き OaC]との交点を C1とするとMC}二 V5=μ5ω5
EC1 = V O B
=
μ3ω3‑μ5ω5 となる口 したがってOa C1 = V 5 ‑‑i‑V 5
=ー
μ5w ; / i +
μ5 (1)5および • 1
・
t・
n・
s Oa C}=
V 3十 V3十 VOB+
V OB二一 μ3ω3/i+μ3ω3 一 (μ3ω~/
i
一 μ5ω;/i )
+ (μsωsー μ5W5) この OaC}が
ν
シカーを動かすC点の加速度を与えることになる。(c) ガイドカムのりンク機構はやや捜雑であるO
ローラBIC連結するリシクじの一端
C
は05を中心として回転運動をなし,この運動はP
シクr
5の 端 D点 lこより拡大される ('!Jy
クr s . r
7 •r
8 • 05, 08は4リシク機構を示しリ シクr
gの先端Fは左右 運動をなしてガイドの役目をなす♂加速度の原点として OaをとるoOa
N } = V
s二 一μ5w ; / i
となり OaN}J...N1C}とし N1C1を引き 他方 Oa Bl=
V 3二 ‑ Il3 ω~ /i
B} E J... Oa BlBIE
=V
3ニ μ3ω3 としてE }
を求めDE
1/EF
,EF
=V
σB一
(ω3μ3/ iー ωiμ5/ i), FE
上FC }
として交点C1を 求めるとFC1 = V O B
=
ω3μ3一 ω5μ5N1 C1 = V 5 =ω5μ5 となる口
次に N1C11/ N2D !とすると D点は求まり N2D = V~ =ω5μ;
となる口同様にして
OaM =
v :
=-μsω~ /i
OaM上M C2OaD
=
\V~ 十 v ~= ‑
p~'w ; /
i+
ω5 P5'D
1E
1 = V~J)=ー
(μ;ω;/ i ‑118w ; /
i),
El C2上D1E として交点C2を求めるとE
1C
2 =V ら
'D /1/ω5ー μsω8M C
2 = v~ =μsωaとなり OaCの方向と値は求められる口乙のC2点の加速度は
i
在ちに求めることが出来る。(5)結 言
カム上を転勤する正ローラーおよび負ローラーの速度および加速度を求めるにZ軸に実数y軸に 虚数をとった複素函数を用いてベクトノレ変位方程式を作り,これを微分して速度ベクトノレ方程式 を更に徴分して加速度ベクトノレ方程式を作り,乙れらを解いて各点の速度および加速度を求泊 7こo
カムの回転速度,各リンクの長さおよび位置が有知ならび,これらの函数として各ローラーの先 端すなわち針カム,プレサーカムおよびガイドカムの加速度は求められるごこのカム機構によっ て編織する場合はリシク機構によって編織する場合に比して, /!J'クTがカム上を動くことによ って生ずる
B 4
点のB 3
点に対する,またはBl
点のB
a'点に対する関係的法隷的加速度,すなわ ちCoriolis'函数的加速度‑ 冊 ・ 拍
W
B B a4w ! j i ‑
μaw ; / i , ¥ V
B'B' μ~ w~'/ i ‑
J1~w ; ' / i
が余分に加わるととになる。これがカム機構が!J‑;/ク機構よりも多く振動の原凶を生ずるものと 思考される口
(受理年月日 昭平~j37年9月 28 日〕