ポリエステル繊維のキャリヤー染色について第1報 ポリ工ステル膜へのオルソフェニールフェノールの 吸着
著者 清水 融, 栗原 孝文
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 10
号 1.2
ページ 29‑34
発行年 1962‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/5080
29
ポリエステル繊維のキャリヤー染色について第 1 報 ポリ工ステル膜へのオルソフェニー)(.,フェノー)(.,の吸着
清 水 融 ・ 栗 原 孝 文
The Carrier Dyeing on Polyester Fibres (1) The Adsorption of Ortho‑phenylphenal by Polyester Film
Toru Shimizu
,
Takabumi KuriharaThe study of the adsorption of the carrier by fibre is of fundamental importance in the consideration of carrier dyeing.
We have established the method of quantitative analisis for the estimation of ortho‑ phenylphenol (0. P. P.) adsorbed on the polyester film (Mylar).
The O. P. P. is extracted from the Mylar with 0.01 moljl phosphate buffer solution (pHll)
,
and resulting solution is developed by diazotised sulphanilic acid. The coloured solution is estimated colorimetrically in the usual way.We have measured the adsorption of O. P. P, from bath of different conditions and have shown that the adsorption decreases with increasing concentration of dispering agent and with increasing temperature.
1 , 序 言
オノレソプエニーノレブェノーノレ (O.P.P.)はポリエステノレ繊維染色用のキャリヤーとして広く使 用されている。染色におけるキャリヤーの作用機構については種々の説が提出されたが,未だ満足 すべき機構は示されていない。 Schulerll,幻はイソオクタン溶液中でポリエステノレ繊維へのアセトプ ェノシ等の吸着を測定し,その吸着量が増加すると染色速度が促進されることを認めたD 乙れが水 溶液系にも適応できるかは問題であるが,キャリヤーのポリエステノレ繊維への吸着はキャリヤー染 色を研究する上に極めて重要な問題と考えられるD
筆者はポリエステノレ膜への O.P.P,の吸着量を測定し,その挙動を観察することがキャりヤー 染色に対する基礎的知見を得るに必要であると考え,以下の実験を行なった口
2 . 試 料
ポりエステル膜はマイラ一幹50(Du Pont,厚さ 0.013mm)を, O.P.P.として化学用試薬を 再結晶し,精製せる m,p, 76‑770Cのもの,およびキャリヤ一幹100(日華化学, O.P.P.純 度
55.296)を用いた。分散剤はサシレックス〈日華化学, 高扱アルコールスルホン化物〕を,スノレ ブァニノレ酸は化学用試薬を文献3)にしたがい精製した純度引 99,1%のものを用いた口その他の薬 品は化学用試薬をそのまま用いた。
3
,o .
P, P.の 定 量
ポリエステノレ繊維に吸着した O.P.P.の量はその重量の増加によって測定できるが,精度が悪 く,かっ処理浴中から同時に吸着される分散剤がその重量中に加わっている。したがって,より精 度の高い分析法が必要であるO
普福井大学助教授 H 福井大学工学部事務員
これを比色定量す 福井大学工学部研究報告第10さ 第1・2号
O.P.P.はスノレブァニノレ酸ジアゾ化物と反応して撞色色素が得られるので,
ることにより O.P.P.の定量が可能であると考えられる。
30
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Fig.2
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ポリTステル出へのオJレソフェニールフェノールの吸着 (第1報) 31 に冷却し v'アゾ液1c cを加え.1 hr撹持した後, 室温 (12‑‑‑150C)で放置した。一定時間放 置後,液のpHおよび光学密度を測定した結果は第1表に示す口 pHが高いときに光学密度は低く,
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と 光 学 密 度 I 24hr反応
I
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I 2244 hr hr II添 加後NaOHO. 147 O. 076 I O. 510 0.497 I 0.496 0.512 O. 500 I O. 499: O. 505 0̲ 502 I 0̲ 501
O. 493 I O. 492 i
0̲ 423 i 0̲ 435 O. 182 I O. 271 0̲ 023 I 0̲ 039
かっ時間経過と共に増加がみられるo これはずアプニワム化合物が次の平衡関係、にあり5) pHが 高いときには反応速度が減少するためと考えられるD
R 一両三 NブR-N=N-Cl→R-N=N-ONa~R-Nー Na
吐一一 〈一一、
N=O
pH約6 pH9...10 pH約12 pH約13
さらに pHの低い8.1の場合は色素生成時!r生ずる塩酸および空気中の CO2ガスの影響が緩衝 剤が加えられていなかったため液のpHを低下させ,時間と共にpH変化によって光学密度が小さ くなったものと考えられるo したがって反応時のpHは10.5‑‑11が最適で,以下反応浴はMj100 リン酸緩衝液(第3リン酸ソーダ:第29)/酸ソーダ.3:2)を使用することにしたロ
ii) カップ
P
シグ時における U アゾ液添加量の影響 O.P.P.原液1c. C.をMolj100 9 )/酸緩衝液50c. c. !乙稀 釈し.0...5 oC K冷却後,ジアゾ液0.2‑‑‑3c. C.を添加し.1hr 撹拝した後室温で2hr放置し,全量をM o1 /
1009 )/酸稜衝液 で100.CC.として光学密度を測定したD その結果は第2表の如 く.O.P.P,に対するUアゾ化物の混合割合が1:1‑‑‑1.5の場 合には土 1% で一致した値となるが .V' アソ~1t物の量が増加す るにしたがい光学密度は減少した口したがって, O.P.P.の定 量にはジアソ化液を O.P.P.1Mol に対し 1‑‑‑1.5Molを加 える必要があるD あるいは O.P.P.濃度が未知なるときには 各種Uアゾ化液添加量の異なる試料を作り,最も大きな光学密 度のものを選択し.O.P.P.の濃度を求めなければならないロiii) マイラーをアノレカリ抽出した液の影響
マイラーに吸着した O.P.P.を抽出するのにアノレカリを用
いるが,この際抽出液中にマイヲー加水分解物が溶出し,これがジアゾ化物と反応し着色物を作る 恐れがある。乙の点を確認するため,マイラーをカセイソーダ 3.2g/1液および pH11のM/100
リン酸緩衝液で3hr煮沸した液にジアゾ化液を加えたが,いずれの場合も室温放置5hr以内では 着色がない。しかし 24hrでは黄色を呈するo
iv) マイラ{に吸着された O.P.P.の定量
第2表ジアゾ化物添加量の影響
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32 福井大学工学部研究報告第10巻 第1・2号
O. P.P.を吸着せるマイラー30mgをpH11のMolj1009 >'酸緩衝液 20C. C.で冷却管付プ ラスコ中で30min煮沸抽出するD との操作を3回繰返すと完全にマイラーから O.P.P.は抽出 されるロ抽出液を合せ,これを一定容量にうすめ,乙の一部を取り冷却後,ジアゾ化液を加えii) の如く操作し,各種ジアゾ化液添加量の異なる液の最高光学密度のものに対して検定線からO.P.
P.の量を算出すれば良い口
4 .
マイラーへの o.p.p. の吸着O. P.P.水溶液からマイラーへの O.P.P.を各種条件で吸着させ,上記の測定法にしたがい 平衛吸着量を求めた。 第3表キャリヤー非1ω!C酢酸を添加し
た際のO.P.P.吸若量への影響 i ) 市販 O.P.P.キャリヤー剤中和の25響
キャリヤー非100はO.P.P.にアノレカリおよび 乳化剤を加えて水溶性の型として市販されてい る。そして O.P. P.含有量は前記の分析法によ り55.2彪であった口
キャリヤ一帯1000.3g, サyレックス 0.6g および任意量の酢酸を添加し水で全量を30c.c.と
した浴中にマイラー 0.24gを入れ1000C,6 hr 処理し,かるく水洗した後,マイラーに吸着した
実 験 │ 酢 酸 容 l吸者前の│吸若後の I
9
・P.P. 番号1 1 1 0 1 J i
浴のp H I
浴のp H I 地 h 芳
011 I 2 10.32 i 10. 95 1. 54 2 4 9. 92 10. 30 I 2. 67 3 6 9.10 9.日 3.79 4 I 7 6. 73 i 8. 53 I 4. 36 5 8 6. 05 6. 89 I 4. 51 6 ! 9 5.58 I 5. 63 4.51 O.P.P.を 測 定 し た 結 果 は 第3表の如くであ (キャリヤー枠1
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0.3g=O. P. P. 9. 72x 10‑4 Mol) る口キャリヤ一帯100を中和するに要する酢酸量は, O. P . P. 1Mol I乙対し0.75Molであるが,マイラーに対する O.P.P.の吸着もこれに比例し, O.P. P.はO Hの未解離の型でマイラーに
6[ I ‑‑‑‑‑‑,,‑‑‑‑‑‑,.‑‑‑‑ l 強く吸着されると考えられるO
したがって O.P. P. Na塩のものは 完全に中和しO H型にして使用する乙と が第2報に示す如く多量に吸着させる目 的には望ましいが,しかし完全なO H型 では分散が困難で多量の分散剤添加が必
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ii ) 分 散 剤 の 影 響
キャリヤ一幹100 10 gjlにサシレ ックス0,......60gjlを加え, 酢酸でpHI0 とし,この液で上記の如き条件でマイラ ーを処理し,吸着量を測定した結果は第 3図 の 如 く で あ るO 分散剤濃度の増加 はO.P.Pの吸着量を減少させるととが
ω
認められた。さらに浴中の O.P.P.の 吸着量を減少させることが認められた。Fig.3 Effect of Dispersing agent on adsorption of O. P. P. さらに浴中の O.p.P.濃度の変化による 殴着量の変化を,一定のサyレックス濃度40gjlおよび O.P.Pに対して 3.6倍のサシレックス濃 度を用いて実験した結果は第4図に示すD
ただし再実験において酢酸の添加量は異なり前者は pH10に,後者はpH5に調整して行なった ものであるD 分散剤を一定にした後者の場合,浴中のO.p.p.濃度の低い部分は pHが低いにかか
わ ら ず 吸 着 量 が 前 者 よ り も 少 な し 明 らかに分散剤の過剰である影響が見ら れるロしたがって
o
P P の使用はOH
型が望ましいが,その溶解が困難 なため多量の分散剤の使用はキャリヤ ー染色にとって不利益であるCiii) 温 度 の 影 響
染浴中の分散剤濃度を一定(サンレ ックス 40g/めとし上記と同様にキャ リヤー濃度を変えて,酢酸で pH5!乙 調整した浴で.80, 1∞ お よ び1200C の温度でそれぞれ24,6および3hr処 理し,マイラーに対する O.P. P.の 吸着量を求めた結果は第5図の如くで あるq
吸着量は高温ほど減少するが,濃度 の高い部分で逆点の傾向がみられるD
この傾向はo.P.P.のかわりにトリク
ローノレベシゼンを用いた場合に明瞭に現われたが,
33
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Adsorption Isotherm for O. P. P. on Mylar at 1000C 乙の点に関しては後報に記載の予定である白そ
して,乙れは温度上昇により単分子状 のo.p.p.濃度が増加するためと考え
られるO
Fig.4
10
O.p.P.のポリエスエノレ繊維への吸 着の研究はキャー染色において実用上 また機構の考察上にも重要であるO 筆 者はまずマイラー中のo.P.p.の定量 に対して,マイラーへのキャリヤー吸 着量をその重量増加により測定したが 使用せる分散剤の吸着がともない極め て誤差が大きい口それ故,マイラーか らo.p.p.を抽出し,スルブァニノレ酸 ジアゾ化物で呈色させて比色分析する 定量法を確立した。そしてO,p.p.の マイラーへの吸着量が分散剤および温
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Fig.5 Effect of temperatur on adsorption of O. P. p, on Mylar 度によって如何に変化するかを調べた口その結果として,
i) O.P.P.は分散剤濃度の増加によってマイラーへの吸着量が減少する口
ii) 温度上昇はO.p.p.の吸着量を減少させる口しかし, O,p.p.に対して分散剤の使用割合 が少ないときには逆点の傾向がみられるD これはO,p.p.の分子状分散濃度が温度上昇によって増 加するためと考えられるD
iii) 使用した市販乳化型O.P.p.はNa型が多量に含まれており, 乙れを中和して使用した場合
10 4
CONCENTRATlON QF O., .Pp111 LI folUOR刷OL/LIO')
。 。
34 福井大学工学部研究報告第10巻 第1・2号
のO.P.p.の吸着量は著しく増加するO
Na型にくらべてOH型のマイラーに対する親和力は著しく大であると考えられ,ポリエステノレ繊 維に多量の吸着を望むには完全なOH型を使用することが有利であるが, OH型は分散が困難で多 量の分散剤を要し,乙れの添加が吸着量の減少を惹起するO し7こがって実用的には分散が均ーとな る適当な酢酸および分散剤の組合せが必要であるD
文 献
1) Schuler: Text. Res.
, . 1
27,
352 (1957) 2)清 水 : 繊 維 加 工 11,
1097,
1188 (1959)3) 日本学術振興会: 染科中間体および助剤品位検定法 p.19 (1950) 4) 日本学術振興会 ibid. p.59 (1950)
5) Groggins Unit Processes in Organic Synthesis p.166 (1952)
(受理年且日 昭和37年1月16日)