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中学校の空間図形教材に関する研究 : 立方体の切断を中心にして

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(1)平成9年度 学位論文. 中学校の空間図形教材に関する研究   一立方体の切断を中心にして一. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻 自然系コース.

(2)  中学校1年置3学期になると、平面図形の作図も終わり空間図形の授業になる のだが、その空間図形の授業について同僚教師たちと意見がいつも分かれる。あ る同僚は、 「空間図形の学習指導は曖昧な論理のみで、平面図形の内容も十分に. 理解できない子どもが多いのに、空間図形の指導を行うことは混乱を招く。空間. 図形の指導は3時間程度でよい。それより文字式の計算が中学校1年で最も大切 だから余った時間でもう一度復習をすべきである」という。こういつた教師の空. 間図形の指導は、教科書主導の消極的な授業であり、空間図形のおもしろさや操 作活動の楽しさなどは感じられないに違いない。そして、第2学年からの論証指 導に対して生徒も教師も学習の困難さを知るのである。.  筆者は操作活動の楽しさを通じて空間図形のおもしろさを知るようになった。. 経験的にも操作活動は図形に対する興味・関心につながる場合が多いと考えられ るので、筆者の授業にも空間図形の指導方針として操作活動を取り入れるように している。その操作活動の一つとして立方体の切断の立体模型をケント紙で作ら. せたとき、見取図では切断面が描けているのに実際に作ってみると立体模型が作 れない生徒が何人も出てくる。計算問題等では良くできていた生徒が悪戦苦闘し ているのである。その悪戦苦闘している生徒の見取図を見てみると、切断面を間 違えている場合か、見取図が描けていても展開図を間違えている場合が多い。さ らにそこでは、立方体の切断面が三角形や四角形の簡単な場合は出来ても、ひし. 形・五角形及び六角形の場合は見取図にどのように切断面を描くのかが理解でき ないことが多い。ところが、その作った立体模型を説明させるときには、生徒は 一生懸命考えて論理的に説明しようとする。このように論理的に考えるという経. 験は2年生から始まる論証の準備になるだろうし、その意味では、操作的・直観 的と思われがちな立体の切断も2年生の数学への自然な橋渡しとなるだろう。し かし、生徒は立体の切断に関してどのように考えるのだろうか。さらに、立体の 切断の時に利用する見取図の見方や考え方を理解しているのだろうか。このよう な疑問が、筆者の空間図形教育における研究のスタートである。. 平成9年12月. 冨山伸治郎 一1.

(3) 【目次】 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1. 第1章 本論文の目的と研究方法 ……・……・・一・・・………・・… 4  第1節 空間図形教育の現状の問題点 ・・・・… 一・・… 一一一・・一・一・5  第2節 本論文の目的と方法 ・… 一一・・・・・… 一一・一・一・・・・… 一・7.  第3節 本論文の構成 ・……・……・・・・・・・… …・……・……・8. 第2章 数学教育における空間図形の位置づけ ・…………・一…… 9  第1節 空間図形の先行研究 ・……・・…・・一・・一・…………一・10   1,1 風間(1993)の研究 …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 10   1.2 村上(1989)の研究 ・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 11.   1.3 礒田(1996)の研究 ……・・…・・・・・・・… …… …・…・・12.   1。4 その他の先行研究 ……・…………… ………・…・14  第2節 空間図形教育の意義・目的・教材内容 一…・…… 一・…・・16   2.1 中学校の空間図形教育の意義・目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 16   2.2 中学校の空間図形教育の教材内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 16.  第3節 立体の切断教材の位置づけ 一・…・・・・… ……… 一・…・・18   3.1 中学校の空間図形教育の指導内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 18.   3.2 立体の切断教材の位置づけ ……・… …・…・一・一・一・・18  第4節 空間図形の3つの表現様式 ・…・・・・・・… ……・・…・・・… 21.   4.1 見取図を中心とした2次元表現について ・・…・… ……・21   4.2 コンピュータについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 26.   4.3 模型などの具体物による具体的操作について ・・・・・・・・・… 29.   4.4 本節のまとめ ……・…・…・・・・・・… …・…… ……・30 第3章 中学校での立体の切断教材の変遷 ・一・一・・…… 一一・… 一一34  第1節 空間図形教材の歴史的変遷 ・…・・… 一・…・一・・……・・一35   1.1 戦後の教科書の歴史的変遷 …・・・・・… …・・・・… ……・35   1.2 中学校における空間図形教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 39. 一2一.

(4) 第2節 中学校の立体の切断教材の内容と方法の変遷 一・・… 一… 一40  2.1 戦後の中学校教科書の立体切断教材の歴史的変遷 ・・・・・… 40  2.2 教科書における立体切断教材の変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 51. 第4章 立体の切断に関する中学校の実態調査 …・…・……… …・・53  第1節 調査の目的と方法 …・一…・一……一・……一… 一・… 54   1.1 調査目的’……・・…・…・・… …………・・・・・・… …54   1.2 調査方法 …・・… …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 55.   1.3 調査問題 ……・…・………・…………… …・・… 56  第2節 結果と考察 …… 一・・・・・・・・・… 一一・・・・・・・・・・・… 一・… 57.   2.1 立方体の切り口の形が正三角形になる問題 ・・・・・・・・・・・… 57.   2.2 立方体の切りロの形が台形になる問題 ・・・・・・・・・… …… 58.   2.3 立方体の切り口の形がひし形になる問題 ・……・・……・60   2.4 立方体の切り口の形が長方形になる問題 …・…・…・・…62  第3節 全体的な考察 ・・・… …… 一・・一・・・・・・・… 一一・・・… 一・・63   3.1 模型の効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 63.   3.2 見取図の誤答 …………・…・…・……・・…・…・…64   3.3 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 66. 第5章 空間図形教育への示唆 …・一・・・・・… …・・・… …・・・・・・・… 67.   1.1 中学校1年の学習内容と第2・第3学年の学習内容の関連・・68   1・2 第1学年の空間図形における説明させる学習活動 … …・・68   1 3 空間図形における直線と平面の位置関係の理解 ・・・… …・69.   1 4 見取図についてのかき方や見方の理解 ・……・・………69 おわりに … 一・・・・… 一一・・一・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・… 一一・一・… 71. 引用・参考文献 ・・……・…・一・・一・・・・・・・… …・・… 一・・・・・・・・… 73. 一3一.

(5) 本論文の目的と研究方法.  本研究では、中学校1年での空間図形指導の問題点として、次の4つ を取り上げた。. (ア)第1学年の空間図形の内容と第2・第3学年の内容との間に系統性が.  薄い (イ)中学校1年の空間図形では、部分的にでも説明させる学習活動が欠け.  ている (ウ)空間における直線と平面の位置関係の理解が不足している (エ)見取図についてのかき方や見方の理解が不足している.  これら4っの問題点を踏まえた上で、本研究の目的と方法及び本論文 の構成を述べる。. 一4一.

(6) 第1節 空間図形教育の現状の問題点  中学校1年における空間図形注1に関する学習は、飯島(1988)や国宗ら(1985)の. 論文の中で、生徒にとって理解しにくい内容であると報告されている。例えば国 宗ら(1985)は、中学生に対する調査から、生徒は直線と平面の位置関係を理解す. ることが難しく、直線が平面に含まれる状態についても正しく理解していないと いう実態や、さらには基本的な立体についての見取図・展開図・投影図の作図、 特に、見取図の作図について理解が不十分であることを指摘している。そして、. そのような実態を踏まえて、直線や平面の位置関係の指導を重視すべきであると 指摘している。昭和57年度実施の「達成度調査」や平成2年度実施の「基礎学力 調査」からみても、生徒の空間における直線と平面の垂直の位置関係の理解は不 足しているといわざるを得ないようである。また風間(1993)は、現行指導要領下. (昭和52年、平成元年)について中学校1年の空間図形の指導が円滑に行われてい. ない、つまり、第1学年の空間図形の内容と第2・第3学年の内容との問に系統 性が薄いことと、指導内容や指導方法の研究が進んでいないことを指摘している。.  三次元の立体を二次元の見取図に表す能力や見取図から立体を構成する能力な どに関する従来の研究では、生徒達の空間図形認識が十分でないことが指摘され ている(山本,1990)。さらに、生徒が空間図形の問題を解決できないのは空間概. 念をよく理解していないことも考えられるが、それ以前に問題に与えられている 見取図がよみとれない、したがって、問題となっている3次元的状況が把握でき ていない所にあるという、見取図の視点からの空間図形の問題解決の阻害要因に 対する指摘もある(鈴木,1994)。.  また、生徒の認知的な要因ばかりではなく、指導上の問題点から考えてみる。. 例えば、立方体の切断面を調べるために、操作活動としてプラスチック製の透明 立方体に色のついた水を入れ水面を切り口に見たてた活動だけで終わっていると すれば、それは小学校の学習と変わりがない。その具体物に対する操作や観察か ら「なぜそうなるのか」という根拠に目をつけ、部分的にでも説明させる学習活. (注1)本論文で空間図形(space figure)とは、立体図形を包含し、三次元空間の中で考えた.  図形とする。立体図形(sohd geometrical figure)とは、三次元の広がりをもつ空間.  図形を意味することにする。例えば、立方体などがその例である。. 一5一.

(7) 動が中学校1年の空間図形の指導では欠けているように思われる。つまり、生徒 に可能な程度において筋道を立てて考えさせることが必要なのである。さらには、. 見取図をかかせるという活動は空間図形の位置関係に関する知識を応用し、筋道 を立てて考えさせる機会を与える場であるのだから、そういった見取図のかき方 も曖昧なままで終わっていることは問題であろう。.  以上をまとめてみると、空間図形に関わる問題点が4つ考えられる。 (ア)第1学年の空間図形の内容と第2・第3学年の内容との間に系統性が薄い (イ)中学校1年の空間図形では、部分的にでも説明させる学習活動が欠けている (ウ)空間における直線と平面の位置関係の理解が不足している (エ)見取図についてのかき方や見方の理解が不足している  これらの(ア)・(イ)に関しては教材内容に関わる問題点であり、(ウ)・(エ)は. 認知的側面に関わる問題点であろう。. 一6一.

(8) 第2節 本論文の目的と方法  前節で述べた4つの問題点を踏まえて、本論文では中学校の空間図形教育を教 材内容と生徒の認知的側面の両面から考察し、空間図形教材の指導方法に関する. 示唆を与えることを目的とする。ただし、具体的な考察の対象を、生徒に関して は空間図形が教科書で取り扱われる1年生にしぼり、なおかつ、その指導内容に 関しては、現在の中学校1年の教科書で、大きな位置を占める立方体の切断にし ぼることとする。より具体的には、前節の各問題について以下のような方法で考 察・検討を進める。.  (ア)の問題点に関しては、現時点の中学校の教材の内容を、その意義・目的・. 取り扱われ方という観点に基づいて整理し、第1学年の教材がどのように第2・ 第3学年の内容に関わっているのかを検討する。その際に、(イ)の問題点を鑑み、. 論理的に説明させる学習活動が、第1学年と第2・3学年の教材内容のなめらか な接続を保証するか否かという点について考察する。さらに、立方体の切断とい う教材内容の意義・目的の歴史的な変遷についても考察を加える。  また、前節の(ウ)・(エ)については、概念的な説明だけに終わらずに操作活動 を通して考察すれば、空間図形の概念や性質の理解を深められ、同時に(ウ)・. (エ)の問題点の改善に役立っのではないかと考えられる。その操作活動としては. 「切断」があろう。さらに、立方体の切断を見取図にかく際には、空間図形の位. 置関係に関する知識が応用される必要があり、その意味では見取図を媒介にした 指導も大切になってくる。ただし、その見取図をかくことや、その認識に関して は、中学生では一定ではないことも言われている(山本,1990)。 それゆえ、見取. 図が立体の切断の認識に与える影響について実態調査をすることにより、見取図 に関する生徒の認識について詳細に考察することにする。. 一7一.

(9) 第3節 本論文の構成  前節のような具体的な目的のもとに、本論文を以下のように構成する。.  本章である第ユ章では、申学校の空問図形教育の現状の問題点を述べ、さらに それを踏まえた上での研究の目的と方法を述べた。.  第2章では、第1節において本研究に関わる先行研究を概観し、第2節では空 間図形教育についての意義・目的を考察し、第3節においては、立体の切断教材 のカリキュラムにおける位置づけについて考察する。第4節においては、空問図 形の3つの表現様式として、  ①平面上に見取図で表現する方法  ②コンピュータを使って画面上に表現する方法  ③具体物を実験・操作して表現する方法. に焦点を当て、これらの表現様式の利点・欠点及び指導上の留意点を、立方体の 切断を例として考察する。.  第3章では、現在の中学校の空間図形教育について立方体の切断が取り入れら れてきたその意義と目的、さらにはそれらの取り扱われ方を歴史的に明らかにす るために、戦後の中学校における空間図形教育の歴史について考察する。.  第4章においては、見取図が立方体の切断面の認識に与える影響について、現 在の中学生の実態調査をもとに考察する。.  第5章では、空間図形教育の問題点が教材内容と生徒の認知的側面の両方にあ ることを受けた前章までの考察を踏まえ、これからの空間図形教育への示唆を与 えることとする。. 一8一.

(10) 数学教育における. 空間図形の位置づけ.  本章では、1章で述べた申学校の空間図形に関する4つの問題 点を踏まえて先行研究を概観し、その教育の意義や目的を探るこ とにする。そして、中学校の空間図形教育が操作活動を重視して おり、しかも操作として立体の切断が活用されていることを示し. 中学校の空間図形教育における立体の切断教材の位置づけを考察. する。さらに、その具体的な指導における空間図形の3つの表現 様式について検討する。. 一9一.

(11) 第1節 空間図形の先行研究 1.1.風間(1993)の研究  風間(1993)は、空間図形指導の教育的価値を以下のように述べ、中学校3年間 を通した空間概念の育成をめざし、現状のカリキュラムの改善を考えている。  (1)図形・幾何教育の立場から空間概念を育成すること.  (2)立体を空間の中にある立体としてとらえていくことができること  (3)論理的な思考力と想像力を育成していくζと.  しかし、現在の中学校3年間での空間概念の育成を考えるときには、次の問題 点を指摘している。つまり、現行指導要領下(昭和52年、平成元年)においては、. 中学校1年の学習内容と第2・第3学年の学習内容との関連がうすく、その関連 のうすさが原因となって、中学校1年の指導が円滑に行われていないというので ある。この中学校1年の指導が円滑に行われていないことは、指導者によって指 導内容や指導方法にさまざまな様相がみられるということである。さらに、第2. ・第3学年の学習内容とのつながりがスムーズでないことから、中学校1年の空 間図形自体魅力に富んだ指導内容であってもそれを生かしきれない指導のままに なっていることも指摘されている。一方、研究面では、空間図形の指導の研究が 全体的に消極的で指導内容や指導方法の検討が十分になされていないことと、認 知的な側面からの研究が少ないことが指摘されている。.  しかし、上記(1)を達成するための具体的な目標としては「平面図形及び空間. 図形についての概念や性質を理解すること」と「論理的な思考力を育成するこ と」が揚げられており、空間図形の積極的な指導に数学教育の重要な価値を見い だしている。.  また、上記の(2)に関して風間(1993)は次のように述べている。   立体そのものについての学習も重要であるが,それにとらわれすぎることなく、  立体の辺や面を広げてものをとらえたり、考えたりすることに重要な価値があり、  「それが想像力の育成にもつながる。すなわち、立体の辺は、辺に留まらずにその辺   を通して直線が意識できるか、立体の面は、面に留まらずにその面を通して平面を  意識できるかが重要である (P.63)。.  風間のいう「立体を空間の中にある立体としてとらえる力」は、筆者の授業経 験からは生徒が最も不得手とするところなのである。したがって、学習経験が乏 一10一.

(12) しい中学校1年では、辺を通して直線を考えるということは価値があるといえる。  そして、上記の(3)について風間は、それが(1)と(2)のどちらとも切りはな. せないものであり、空間概念の育成の教育的な価値として重要であると述べてい. る。さらに、空間概念の育成のためには中学校3年間を通して空間図形の教育を 積極的に行うことと、論理的な思考力の育成は、生徒たちから発する自然な疑問 を大切にすることであるとも述べている。. 1.2.村上(1989)の研究  村上(1989)は、以下のような点に空間図形の指導の問題点があるとしている。. つまり、空間図形の性質が平面図形の性質から簡単に推測できるという安易で誤 った指導理念に基づいて指導されているという問題点である。もちろん、その問 題点の所在を明確にしそれを解消するための方策が取られない限り、空間概念は 養われず現状は少しも改善されないとしている。そして、より具体的には現在の 問題点を次の2点から考察している。 (1)平面図形から立体図形を構成する仕方は現在のままでよいか (2)空間図形を考察する仕方は現在のままでよいか  (1)では、つぎの3つの仕方を取り上げている。.  ①展開図による仕方  ②平面図を積み重ねる仕方  ③平面図形の軌跡による仕方(主に回転体や角柱)  (2)では、次の3っの仕方を取り上げている。.  ①空間図形を点、直線、平面の平行・垂直・包含関係で考察する仕方  ②断面図で考察する仕方  ③投影図で考察する仕方.  これらはほとんど中学校1年で学習する内容であるが、考察に使う立体図形は 単なる考察するための手段にすぎない補助的な役割であり、空間図形の性質とは 直接の関係をもたせないで行われていると指摘している。.  さらに、見取図によって断面図の形状を正確に求めることは、空間図形の内包 (条件、性質)を拠り所にしなければならないから、中学校1年で学習することは. 無理であると指摘している。例えば、立方体の切断面の内、図2.1の2点A,Bと 中心0を通る平面で切断したときの断面図を求める場合に、生徒は見取図だけで. 一11.

(13) 求めることはできないし、透明な模型を使っても簡単には求めることができない。  しかし、立体図形の見取図をノートに描くことができ                           ロ                            コ. るようにする指導は、単にそれを考察の手段にすることl   B    l.                           I                              [                           コ                              じ. ができるというだけではなく、立体の構成と深くかかわl A,    1.                           コ                              コ                           1        「            o                           ロ                              コ. っていることも述べている。そして、(1)に対してはもl  l    l.                           l         ●           1.                           コ                              ロ                                つと多様な立体の構成の仕方を考えねばならないことを、1  /0一一’  1.                           ■      !                 ■.                                                          ロ. (2)に対しては空間図形の様々な性質に観点をおく指導l        l.                           I                              巳                           コ                                                          コ                              ほ. をしなければならないことを、それぞれ指摘している。 1 図2.1   1.                           1}一一一願■鴨一一一冒一卿鱒騨■■軍一一一騨一■. 1.3.礒田(1996)の研究  礒田(1996)は、以下のような点に空間図形の問題点があるとしている。つまり、. 中学校1年の空間図形は、生徒に対してただ視覚や直観に訴えて調べればよいと いう考え方に誤解があるというのである。例えば、教師は平面図形の指導では 「なぜそうなるのか」という根拠を大切にするのに、空間図形の指導では視覚や. 直観の活動に終始する場合があり、数学的にどの様に説明するかが意識されてい ないのではないかということである。.  しかし礒田は、中学校1年の空間図形の指導を、 「空間(対象)を平面(方 法)で考える」ことの学習指導として位置づけることを提案している。すなわち、 空間図形の前半部分の「直線、平面の位置関係」で扱う垂直や平行(対象)は、. 平面図形からの類推(方法)で定義し、後半部分の「空間図形(対象)」は、展 開図・投影図・切断(方法)などを通して考察していこうというのである。そこ では、空間図形を平面的な図の上で作図させることにより論証の素地を培う性質 から命題で考えることが求められ、さらには「空間を平面で考える」ゆえに、平 面から空間へと類推するだけでなく、空間と平面の  「一一…一一一一一一一一一1                                                                                                          . 違いも問題にされるのである。          1   ・    l                          l         l             1                                    じ    コ           また礒田は、見取図を平面にかくことで起こる   l   I l   l 1. 知覚的混乱についても留意し、視点を明言すべき であると指摘している。例えば、立方体の切断面. 1 去. 湘. で、右の図2。2のように面ABCDで切断する場合、. できる図形の対辺は必ず平行になる。模型を示せ ば「視覚的に明らか」で終わってしまうが、平面. 一12一. 図2.2.

(14) 上の図の上で作図させると、 「平行な2平面と交わる平面がっくる2本の交線は 平行である」という既習の命題を根拠に、平面上での性質で命題を考えることが 求められるようになる。.  また、礒田(1996)は、中学1年生に対して「空間を平面で考える」とき、立方. 体の切断シミュレーションを例に調査をしている。下の切断の作図を、指導前と. 立体の切断に関する授業の1時間目(シミュレーション)の後と3時間目(根拠 を探り議論をする)の後のそれぞれで調査をしている。この調査の結果によれば、 切断面を作図する力は、指導を経る毎に深まっている。   9                                                                                 1   1                                                                                 1   ロ                                                                                 コ.   l  a)       b)        c)      l   l                                                                                      l.                                                                                     コ.   l         I                 I                  l           ■   l                                                                                 l.                                                          コ            ロ.   i  i    i    i  i   l          l                 l                  I           l   ロ                                                                                  .   量      ,L、           ,し、            ,L、       1.   暑     ,”   ㌔、、軸       ,”   q、、、        ,”   、、、鴨     ■   璽                    、                      唱                       、     . 1.   量                                                                                 8   コ                                                                                      コ.   1        図2.3             1   1                                                                                 1   1                                                                                      1.   ■                                                                                 1.   1■_一一一一一一一一一一一一騨噂一一一一一一}一一曜隅一一一一一一一一一一,一一一一一噸一一一一一一一一一幽一一藺一一一一一噂}一一}一■.  3時間目の後の調査では、生徒の解答に平行な      見取図 辺に矢印記号をつける解答が目立っているが、そ 、. の調査の前の1時問目の後の解答では、そのよう な記号はほとんどみることができなかったとある。. ノ. 、. ノ. 美. 3時間目の後の根拠を探り議論した学習の後では、 生徒は、条件としての平行を意識して推論し、解. ナ. 答していたと考えられる。 図2                                4  特に、     3時間目の後で大多数が正解に至った理由として、正六角形であれば 「なぜ、向かい合った辺が平行といえるのか」・                       「等長といえるのか」を言語化. しあい、既習事項を根拠に意識的に性質を命題で考える対象としたことで、1時 耳目の後と同じ正答でも推論の仕方が違っていることを述べている。  以上のことから、 「空間を平面で考える」ことでいえることは、生徒自身がシ. ミュレーション結果を言語化しあい、既習を根拠に議論し合うことによって、生 徒の大多数が正答するに至っているということである。また、切断面を作図する 力は、指導を経る毎に深まっていることである。. 一13一.

(15) 1.4.その他の先行研究  鈴木(1994)は、空間図形領域の問題解決について生徒が問題を解決できないの. は、空間概念が身についていないだけでなく、問題文と見取図で示された3次元 的状況において見取図を利用できなかったり、そこから必要な情報をよみとるこ とができないことも原因となっている可能性が高いのではないかと指摘している。  そして、これらを解決する方法として、 「見取図のかき方の指導」や「立体図 形の多様な性質に気づかせる指導」などを提案している。  また、山本(1990)は、空間図形の表現方法の一つである見取図を中学生がどう 認識しているかを、以下の点に関して調査している。. (i)見取図から空間図形を表象する場合、中学生はどのように考えているのか (ii)見取図に対する見方は、その配置にどの程度左右されるのか (湿)見取図に対する見方は、特定の配置に依存するか.  山本(1990)が行った18種の立体図形の見取図についてのアンケート調査は、. 中学生だけでなく大学生や一般の人に対しても実施されている。その結果、山本 は、大学生や一般の人に比べて、中学生の場合には同じ見取図であってもその方 向を変えるとそれに対する判断が一貫しない場合があり、見取図から立体図形を 表象する場合には一定でないことを明らかにしている。見取図で基本的な立体図 形を表象することは重要な能力でありながら、中学生には十分達成されていると は言えないとして、この点を考慮した空間図形の指導の改善が必要であることも 指摘されている。.  畑江(1964)は、立体図形の中に平面図形を見出したり、位置関係を洞察したり、. 図形を動的に考察したりすることによって推理を進めることのできる教材として、. 立方体の切断を題材に選んで指導している。生徒に立方体の切り口の位置(切断 する平面の位置)と切り口の形について予想をたそさせ、 「切り口がそのような 平面図形になる」根拠(推理の過程)について説明させることによって、図形の 定義の必要性を感じとれたり、定義と性質の使い分けができたりし、さらには空 間図形の位置関係に関する知識を応用する場合などの学習に効果があったと述べ ている。.  また、畑江によると、生徒は立方体の切断を見取図だけで考えているため、3. 点を通る切り口の形について、図2.5より△BPDが直角三角形であるという誤. 一14一.

(16) 答をするものがおり、その誤答を検討するために畑江は、    A  D. 直角三角形BCDから正三角形BGDまで∠BPDの点P ∠ を移動して図形を動的に考察している。            lC                               =                              ,r嘲’輌P“H                              ’                             F   G.                             図2.5  これらの先行研究から、生徒に説明させたり議論をさせることは生徒の空間図 形の概念を育成する上で大切なことであるのがわかる。そして、生徒の空間図形 の概念が育成されるように空間図形の指導内容と指導方法に関しての研究を進め ることが大切になるのである。その空間図形教材の指導方法の具体的な対象を、. 生徒に関しては空間図形が教科書で取り扱われている1年生にしぼり、なおかつ、 その指導に関しては、現在の中学校1年の教科書で大きな位置を占める立方体の 切断にしぼって考察する。そのために第2節において中学校の空間図形教育につ いての意義・目的を考察し、第3節において立体の切断教材の位置づけについて 考察する。. 一15一.

(17) 第2節 空間図形教育の意義・目的・教材内容 2.1.中学校の空間図形教育の意義・目的   中学校指導書数学編(1989)で、数学科における図形領域の目標は、次の2項 目にまとめられている(P.33)。. ①平面図形及び空間図形についての基礎的な概念や性質の理解を深め、それ  を応用する能力を伸ばす。. ②図形に対する直観的な見方や考え方を伸ばすとともに、図形の性質の考察  における数学的な推論の方法について理解させ、論理的な思考力を伸ばす.  ここで述べられている空間図形に関する指導は、本来、中学校1年から3年ま でを通しておこなわれるものである。そして、この目標の中に述べられている空 間図形についての基礎的な概念や性質の中には、 「空間における直線や平面の位. 置関係」や「平面図形の運動による空間図形の構成」、「空間図形の切断投影及 び展開」が含まれている。このような空間図形が教科書で取り扱われているのは. 中学校1年であるので、具体的な考察の対象を申学校1年にしぼると、中学校1 年の空間図形の指導は操作的な活動や直観的な取り扱いを中心に、空間図形の基 礎的な概念や性質の理解を深めることを目的としている。それゆえ、平林(1991) は《中学1年の空間図形の内容は、将来の数学的研究の素地となる》(P.13)とも. 述べており、そのことからも空間図形についての理解を深めることや、空間概念 を豊かにすることは意義あることといえる。. 2.2.中学校の空間図形教育の教材内容  平成元年に施行された中学校学習指導要領の数学における第1学年「B図形」 には、次のように書かれている(P.38)。. (2)図形をいろいろな操作を通して考察し、空間図形についての理解を深める.  ア 空間における直線や平面の位置関係  イ 平面図形の運動による空間図形の構成  ウ 空間図形の切断、投影及び展開  上記のような中学校第1学年の空間図形の指導は、中学校から始まるのではな い。小学校における学習を基礎としているのである。その小学校で扱う空間図形 一16一.

(18) の指導内容は以下のようになっている。. 第1学年・… 立体図形の特徴をとらえての分類. 第2学年・… 箱の形の観察、作成より方眼紙を用いた箱の形の構成 第3学年・… 球(中心・半径・直径). 第4学年・… 立方体・直方体、直線や平面の平行及び垂直、.       空間にあるものの位置の表し方、簡単な見取図や展開図のかき方 第5学年・… 立方体・直方体の求積の仕方、体積・容積. 第6学年一・・角柱・円柱及び角錐・円錐の表し方や作り方、見取図、展開図、正.       面から見た図または真上から見た図のよみ方、かき方  このような小学校における学習を基礎にして、中学校1年の空間図形は、さら に「空間における直線や平面の位置関係」や「平面図形の運動による空間図形の. 構成」及び「空間図形の切断、投影及び展開」というまとまった形で系統的に学 習するのである。.  そして、第1学年の空間図形では操作的な活動や直観的な取り扱いが重視され ることから、操作的な活動や直観的な取り扱いで大きな位置を占める立体図形の 切断について考察する。例えば、小学校における学習では、生徒は立体図形とし ての理解は一応されていると思われるが、それは外面的であると思える。それを 切断という操作に着目して、立体の内面的な考察を通して空間図形の本質的な理 解を深めるのである。そして、どのような平面で切断をするのか、切り口の図形 はどのような形になるのかというように、切断方法を決める観点として、直線や 平面の位置関係などの理解が必要になってくる。その位置関係の理解をもとに、. 平面図形の運動による空間図形の構成を取り扱い、それらを基盤として立体図形 の切断が取り扱われているのである。. 一17一.

(19) 第3節 立体の切断教材の位置づけ 3.1.中学校の空間図形教育の指導内容  空間図形の指導(文部省,1982)によると、空間図形そのものにかかわる指導内 容としては、次の4つがあるとされている(p.35)。.   ア 基本的な空間図形の概念や性質の理解   イ 適切に図に表したり、正しく作図したりする能力   ウ 空間図形についての知識や技能を応用する能力   工 立体図形の計量の能力. そして、空間図形の指導を通して育てられるものとしては、次の2つがあるとさ れている。.   オ 空間図形に対する直観的な見方や考え方   力 筋道を立てて考える力.  中学校の空間図形に関する指導は、中学校3年間を通して行われるものであろ うが、空間図形そのものの内容が教科書に登場するのは中学校1年だけである。. その中学校1年の空間図形の指導に当たって具体的な操作活動を取り入れること は、空間図形についての理解を深めるとともに、空間図形に対する見方やとらえ 方を一層豊かにする。その具体的な操作活動の一つとして立方体の切断の学習が ある。立方体の辺や面の位置関係をもとにして空間図形における直線や平面の位 置関係へと発展させることができるし、立方体の切断について切る平面の方向を 変えたり、切り口の形がどのような場合があるのかを考えたり、また、そのよう な図形になる理由を既習事項を根拠にして演繹的に説明させたりすることによっ て、空間図形についての理解を深めることができるのである。.  以下、ア∼カの項目を立体の切断教材を通して考察してみる。. 3.2.立体の切断教材の位置づけ  ア 基本的な空間図形の概念や性質の理解.  操作に関する概念としては、運動、切断、投影及び展開などが中学校1年の教 科書において取り扱われている。その中の切断については、立体を平面で切断し たときに切断面はどうなるかという観点から、その立体自体の特徴を明らかにし たり、切断された立体がどのような立体図形に分けられるかを考察させたりする 一18一.

(20) という形で利用されるであろう。また、立方体や直方体を切断する操作を通して、. 立体図形の断面を想像できるようになることなどもねらいとなるであろう。そし て、生徒が切断の操作によって立体図形を考察しようとするとき、直線と平面の. 位置関係で扱われる事柄や平面の決定条件、さらには平行な2平面と1平面との 交線が平行であることなどの知識を必然的に使う場面がでてくることになる。そ れらは、今まで学習した平面図形と空間図形の内容の双方に関連しているので、 図形教育の暫時的なまとめとしても利用できる。.  イ 適切に図に表したり、正しく作図したりする能力  立体の切断面を平面に表現するものとしては、立体図形の概形をわかりやすく 表現できる見取図がよく用いられる。空間図形の問題を見取図に表そうとすると、. 生徒が困難を感ずることがあるといわれているが、その見取図に関する中学生の 実態調査に関しては第4章で述べる。  ウ 空間図形についての知識や技能を応用する能力.  立方体を平面で切断したときの断面の形を考察する場合、空間図形についての 知識や図表現の能力が必要である。例えば、立方体の切断では、立方体の3点を 通って切断する場合がよく用いられる。そして、様々な切断面を考察させること により、直線と直線の位置関係や直線と平面の位置関係についての知識を、さら には見取図の見方やかき方についての知識・技能を応用できる。.  第2学年では、平面図形が中心であるから空問図形を取り扱うことは少ないが、 その発展問題として平行平面によって切り取られた線分の比など空間図形に関す、. る内容を取り扱うこともある。第3学年では、三平方の定理や相似な立体の関係 の単元で第1学年の空間図形で学習した知識や技能が応用できる。ともすれば、. 孤立して捉えられがちな第1学年の空間図形の内容も第2・第3学年の内容につ ながるのである。.    k  工 立体図形の計量の能力  直方体の体積の公式(縦×横×高さ)に関して縦×横を底面積Sとすると(ある. いは、縦(横)×高さを底面積Sとして残りを高さhと読み替えれば)、直方体の 体積は(底面積×高さ=Sh)と考えることができる。この考え方を利用して直方 体を四角柱として切断すれば、三角柱の体積の公式を導くことが出来る。それを 応用して一般の多角柱(正n角柱)や円柱が三角柱に切断できると考え体積をVと                  一19一.

(21) すると求積公式V=Shを導くことができるのである。  オ 図形に対する直観的な見方や考え方  直観的な見方・考え方の一つに、操作活動(実験、実測、作図)を通して、直接. 的に図形の性質を知る方法というものが考えられる。つまり、操作活動を通して 経験を蓄積させるによって直観的な見方や考え方は伸ばされるということであり、 そのことによってさらに経験の範囲が拡大し、質も高まっていくのである。 \.  力 筋道を立てて考える力.  筋道を立てて考える力とは、既有の知識をもとにして部分的に演繹による推論 を行うことである。例えば、立方体の3点を与えて切断させ、その切り口の形が どのような形になるか判断させるとき、それが正三角形であるとか平行四辺形で あるとかいう根拠を図形の定義に従って推論し、説明させることが大切である。. そうした論理的に考えるという経験が2年生から始まる論証の準備になるのであ る。.  以上のように、空間図形そのものにかかわる指導内容であるア、イ、ウでは、. 立体の切断が深く関わっており、切断が立体図形の学習において必要であり、意 義があることが確認できた。また、空間図形の指導を通して育てられるものであ るオ、カでは立体の切断が関わっていることを示した。.  また、このことより、立体の切断教材は1章で取り上げた空間図形に関わる4 つの問題点に対しても関わっているのである。.  このような空間図形で立体の切断が関わっている表現様式について坦坦で述べ るとともに、第3章で現在の中学校の空間図形教育で立方体の切断が取り入れら れてきたその意義と目的、さらにはそれらの取り扱われ方を歴史的に明らかにす るために、戦後の中学校における空間図形教育の歴史について考察する。. 一20一.

(22) 第4節 空間図形の3つの表現様式  中学校1年の空間図形の指導の際には様々な表現様式が使われる。生徒の空間 図形の認識を豊かにするためにも、多様な表現様式が使われることは容認されて よいことであろう。空間図形における表現様式の具体例としては、最も一般的に. 使われている見取図や投影図・展開図など3次元のものを平面上に表現する方法 やコンピュータを使ったシミュレーシュンで画面上に描画する方法、さらには立 体模型などの具体的なモデルを使う方法などがある。ただし、各表現様式は、各 々独自の特性を持っており、指導の際にはそれらの特性、特にそれらの利点と欠 点を踏まえた上で使わなければならない。よって、この節では、空間図形を表現. する際の3つの表現様式  ①平面上に見取図で表現する方法  ②コンピュータを使って画面上に表現する方法  ③具体物を実験・操作して表現する方法. に焦点を当て、それらの表現様式の利点・欠点などについて「立体の切断」、特 に立方体上に3点を与えてそれを切断するという具体的な教材を例としながら考 察することを目的とする。.  また、これら3つの表現様式の利点と欠点を踏まえた上で、各表現使用に際す る指導上の留意点についても考察する。. 4.1.見取図を中心とした2次元表現について (1)ある見取図を使った立体の切断に関する問題について.  見取図とは、一般的には「立体を見たままに近い形で平面上に図表現したも の」であり、平面上の図表現で最も多用されているものである。  金児(1990)は、立方体の見取図を与え、そこに与えられた3点を通るような平. 面で立方体を切ったときの切り口を考えさせる次のような問題(問1、問2)を 中学1年生36名に与えた。. 一21.

(23) 問1.図2.6のように3つの頂点を通って   切断するとき、切り口の形はどんな図   形になるだろうか。. !圏一一一需一一 ! !. 図2.6. 問2.次の3点を通るように包丁で切ったら   切り口の形はどんな図形だろうか。見取   図を使ってその切り口を考えてみなさい。. 1一 一鰯一一 ! !. !. 図2.7.             1. 1. lll置11 一   一   囎   一   霜   }.             :             5             卿             1零一  一一層一一一 一   一   一.            !!.     l.     醒. @   l @   l @   I @   I @  1  一一  一一. @   1 @   1 @   1 @   1. @ ! @!. I. 一   一   一. @  1聯一一  冒幽. 騨   騨   鴨. @! I.  図2.6A    図2.7A   図2.7B   図2.7C           正解(6名)   (17名)    (3名)  上記の問1について、図2.6Aのような見取図で考えた場合の答えは、正三角形 (14名)、二等辺三角形(15名)であったという。それを模型を手にとって確か. めて、さらに大根で作った立方体を実際に切って切り口を見させた場合、正答は 32名(生徒36脳中)になったという。問2の場合、正解の図2.7Aは6名と少なく 図2.7Bの誤答が17名と多かった。この結果から、見取図の利点・欠点について 考察してみる。. (2)見取図の利点. 情報の添加や操作が可能であり、論理的思考の対象になる  見取図では、立体を見たままに近い形で平面上に図表現す る。例えば立方体の見取図は、教科書などでは図2.8のよう に表されることが多い。しかし、教科書などで多用される反.                 一22一. :. =. ♂■一一 ’ ’. 図2.8.

(24) 面、立体図形の見取図は読みとりにくかったり、錯覚を引き起こす場合がある。 問1に対して図2.6Aの見え方から、その三角形を二等辺三角形と判断してしまう のはその典型である。見取図から立体を正しく想像するためには、構成要素間の 関係を正しくつかむ(つまり、見取図のかき方・読み方に関する規約注2を理解す ること)が大切であろうし、図形の構成要素間の関係を正しくっかむためには、. 必然、理論的に考えることが要求される。その点からも、図形の構成要素間の関 係を正しくつかむためには、生徒に見取図の描き方の共通理解をさせるべきであ ろう。例えば、図2.6Aについて切断面が正三角形であると答えた生徒は、図の見 え方だけで判断したのではなく、 「三角形の三辺はいずれも辺の長さが同じ3つ の正方形の対角線だから三辺が等しく、それゆえ正三角形である」と、論理的に. 考えていると思われる。また、見取図をかく際の大まかな規約を知っていさえす れば、紙などの媒体にかかれた見取図に何らかの情報を手軽に描き加えることが できる。少なくとも、そのような表現(媒体)上での情報の添加や操作を許すの が、見取図の大きな利点となる。.  先の問1・問2のような問題に対しては、図2.7B・2.7Cのような誤答を生み出 す可能性はあるが、与えられた3点を通る平面を見取図上に描く方法を知ってい れば、その(見取図上での)正確な切り口は論理的、形式的に描くことができる(平 林,1994)。 そういった描き方を知らなくても、見取図上に様々な平面を試験的に 描いたりできるし、見取図に関する規約《平行な直線は平行にかく》(平林,1994,. p.178)を利用すれば、与えられた情報に関するある程度の論理的操作は可能であ. ろう。例えば、図2.7のように与えられた3点のうち2点を選び、それら2点を 通る直線を描く。さらに、3点目を通る直線をそ. 、. 、. 、 、. の直線に平行になるように描けば、切り口に関す る大きな情報が得られることになる(図2.9)。 こ. 、 、. れらの操作を一貫して頭の中で行うことよりは、. 、.  3.  ! 、   戸一一一 !. 見取図上で徐々に行うことの方がはるかに作業記 憶の負担を減らすであろうし、容易でもあろう。. 1. 図2.9. (注2)見取図のかき方には、次のような規約があると思われる。 (平林,1994).  (1)平行な線は平行にかく。  (2)同じ方向の長さは比較できる。 (長短・相等がわか。).  (3)見えない線は点線でかく。  (4)形がわかりやすい位置においてかく。.                 一23一.

(25) (3)見取図の欠点 〔ア〕確認するのが難しい.  上記の問題に対して、図2.7Aの正解を答えたものは6名であり、図2.7Bの誤答. をしたものは17名と多かった。この図2.7Bと答えた生徒は単純に3点を結んだ場 合だと考えられる。見取図は、3次元の立体を表しているため、立体の内部や見 えない部分を点線で表すなど、多くの複雑な情報を含んでいる。そのため、誤答 の多くは図2.7B、図2.7Cともに3点を通って切断するというイメージが創れずに. 正確な図がかけなかったと考えられる。つまり、見取図は、その表現方法を知っ ており、かつ論理的に考えて表現する必要があるので、見取図上で立体の切断面 を確認するのは難しいのである。 〔イ〕立体を見る方向によって見え方が違う.  見取図だけでは、見る方向によって間違った判断をする場合が考えられる。. 例えば、図2.6Aをgoo回転させた図2.10の場合では、正    ・. 三角形や二等辺三角形と答える解答比率は問1のときと同    1                               メー一 一 じだろうか。問2についても、図2。7を90.回転させた   ,                              ’. ら、違った回答比率になるかもしれない。立体を見る方向   図2.10. によっても見え方は違うし、見取図をどう表すかによって. も生徒の解答は変わってくると思える。生徒は、視座の異なる見取図が与えられ た場合、見取図がどのような立体図形を表しているのかよみとれないことがある。. 視座が異なると立体の見え方が異なり、それを表す見取図の形態が異なる。その 見取図と生徒の記憶上に保持している見取図との形態が大きく異なることも考え られる。このような場合において、与えられた見取図と生徒の記憶上に保持して いる見取図とを簡単に照合はできない。もちろん、照合しやすくするために与え られた見取図を心的に回転して操作する場合もあるが、見取図は3次元の立体を 表しており、多くの複雑な情報を含んでいる。そのため、生徒が記憶上に保持し ている見取図を想起しながら、与えられた見取図を心的に回転して操作すること は、生徒にとってかなりの認知的負荷となると思われる。これらの認知負荷のた めに、視座の異なる見取図で与えられた立体図形を捉えられなかったり、異なる 立体図形と取り違えてしまうことが考えられる(鈴木,1994)。. 一24一.

(26)  例えば、一般的な例として、小笠原ら(1981)は. 次のようなことを述べている。. 苅後 左右 上下 斜め 図①    図③    図◎    図④.   空間における2直線のねじれの位置を学ぶときに. 面.一〔塑嚇.  直方体などの辺を利用することが多く、前後、左右、.  上下にねじれの位置があるときは、イメージ化しや  すいが、斜めの位置にくるとイメージ化されにくく. 図2.11.  なる(図2.ll,p.225)。.  その具体例として、Kopelmanら(1994)の論文の例を考えてみる。彼らはイスラ. エルの11年生や教師たちに対して、次のような問題を与えた。 2つの線分が、個々の立方体の、2つの面において描かれる。直線は空間 において交差しているのか。もしそうでなければ、直線は空間において 平行なのかあるいはそうでないのか。(p.98). / ⑦. 図2.12  上記の課題のDの場合における、イスラエルの11年生の正答率は54%であった。 教師においてはわずか14%の正解率であった。この図2.12のDの場合、見取図を 左回りに回転させて⑦の面が上にきたとき(図2.13)、ねじれの位置という正しい. 結論を導いていた。この課題などは、2直線の与えら れ方によってはねじれの位置をイメージできないもう. 1つの例だと思われる。特に、この場合は同じ見取図 であってもその方向をかえると、それに対する判断が 変わるという視覚型の判断が困難な場合のものになっ ている。    ’. 図2.13. (4)見取図で表現するときの指導上の留意点  生徒は、見取図を正しく理解しているのだろうか。また見取図を正しくかける のだろうか。それに関して鳥井(1990)と金児(1990)の2人が報告している。.                  一25一.

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