図1
第3節 全体的な考察
3.1.模型の効果
(1)成績による比較
3年生の実験群において、定期考査の平均点によってクラスを単純に3等分し、
上位の成績の生徒を上位群(12名)、次を中位群(13名)、成績下位の生徒を下 位群(12名)とする。同様に3年生の統制群においても上位群(12名)、中位群
(14名)、下位群(12名)を選んで比較してみた。また、1年生も同様に分類し て比較してみた。
表4.11.3年頃実験群の正解の平均点 表4.12.3年生統制群の正解の平均点
成績 合計点 見取図 切り口 上位 12.8 7.3 5.5
中位 10.8 6.3 4.5
下位 4.3 2.9 1.3 平均 9.4 5.5 3.8
成績 合計点 見取図 切り口 上位 9.3 6.0 3.3
中位 6.5 3.9 2.6 下位 3.0 2.0 1.0 平均 6.3 4.0 2.3
(見取図・切り口の形を答える問題は9問より9点満点とし、合計点は18点満点とする。)
表4.13.1年生実験群の正解の平均点 表4.14.1年生統制群の正解の平均点
成績 合計点 見取図 切り口 上位 5.6 3.4 2.1 中位 3.7 2.1 1.6 下位 4.8 3.2 1.6 平均 4.8 2.9 1.8
成績 合計点 見取図 切り口 上位 5.7 3.3 2.4 中位 3.4 2.0 1.4 下位 3.1 1.7 1.4 平均 4.1 2.3 1.7
(見取図・切り口の形を答える問題は9問より9点満点とし、合計点は18点満点とする。)
表4.11と表4.12より、3年生の実験:群の上位群と中位群の正解の平均点は、3 年生の統制群の上位群や中位群の正解の平均点と比較するとかなり高い。特に、
切り口の形を答える問題において高いことがわかる。表4.13と表4.14より、1年 生では実験群と統制群の上位群と中位群においては差がなく、わずかに実験群の 下位群が統制群の下位群と比較すると高い数値を示している。この3年生と1年 生の学年間の差は、3年生の実験群にとっては学習の効果より立体模型が有効に 働いたのではないかと考えられる。1年生の実験群の上位群と中位群においては、
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立体模型を手に持ち切り口の形を確かめながら考えていても、その利用方法が学 習されていないので立体模型が有効に働かなかったのではないかと思われる。し かし、1年生の実験群の下位群の生徒にとっては、わずかに立体模型が有効に利 用できたのではないかと推察できる。
(2)解答による比較
表4.3.において、図A・図Bともに正解している生徒は、3年生の実験群は 43.2%であり、3年生の統制群は10.5%であった。この図A・図Bと同じく、回 転させれば切り口の形が同じになる図D、図E、図Fの正答率に関して、3年生 の実験群と統制群を比較する。まず3年生の実験群では、切り口の形について、
3問全部正解している生徒は32.4%、2問正答している生徒は29.7%であり、こ れらの合計は62.2%である。一方、3年生の統制群では3問全部正答している生 徒は13.2%、2問正答している生徒は10.5%であり、これらの合計は23.7%であ る。このことから、実験:群とは正答率において大きな差があることがわかる(表 4.15)。これより、3年生の実験群は、立体模型を手に持って切り口の形を確認
しながら考えることができるので正答率が高くなったと言える。
表4.15. 切り口が台形の形になる図D・図E・図Fの正答率(%)
3年生 3問正解 2問正解 1問正解 全部誤答 3年実験群(37人中) 32.4(12) 29.7(11) 21.6(8) 16.2(6)
3年統制群(38人中) 13.2(5) 10.5(4) 31.6(12) 44.7(17)
3、2.見取図の誤答
3年生の実験群で、見取図が間違っているが切り口の形が正答である場合とし て次の2通りがみられた。
〔1〕切り口の形が四角形になる問題において、切りロの名前は2問以上正解し ているが、見取図は3点を結んで三角形をかいている生徒。
〔2〕切り口の形が四角形になる問題において、切り口の名前は2問以上正解し ているが、見取図を正確にかけなかった(例えば、平行な線を平行にかく ことができていない)生徒。
3年生の実験群37平中、 〔1〕は6名(16.2%)で〔2〕は2名(5.4%)であっ た。 〔1〕の生徒は模型によって切り口の形はイメージできているのだが、見取
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図に表すとき安易に3点を結んで三角形の見取図をかいた生徒だと考えられる。
〔2〕の生徒も模型によって切り口の形はイメージできているのだが、見取図に 表すとき3点からもう1点を考えるとき、平行な線を平行にかくことができてい ない生徒だと考えられる。
3年生の統制群では、見取図は間違っているが切り口の形が正答である場合と して次の1通りがみられた。、
〔3〕切り口の形が四角形になる問題において、切り口の名前は2問以上正解し ているが、見取図をかき間違えている生徒。
3年生の統制群38名中、 〔3〕は7名(18.4%)いた。
1年生の統制群34名においても、3年生の実験群の〔1〕と同じパターンのも のが3名(8.8%)、 〔2〕と同じパターンのものが3名(8.8%)いた。
1年生の実験群では、3年生の実験群の〔1〕と同じパターンのものが1名
(3.1%)のみであった。
これらの生徒は、見取図の作図法を正確に理解することで、切り口の形がより 理解できるようになるのではないかと思われる。
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図1の誤答 切り口の形が四:角形になる場合の誤答例の一部
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3.3. まとめ
以上の結果を整理する。
(1)3年生・1年生とも実験群が統制群に比べて正解者が多かった。このこと より立体の切断における授業の場合、模型など具体物による考察が有効で あることがわかった。
(皿)1年生全体と3年生の統制群では、見取図を見る方向が異なると、切り口 の形も異なって読みとる生徒が多いことがわかった。これは見取図から論 理的に考察しようとしないで、単純に3点を結び、その形の見え方だけで 切り口の形を判断していることが主な原因であると思われる。
(皿)切り口の形を答えるとき、3年生であっても図Gや図Hの場合には、正解 者が20%を超えなかった。このことより、立方体の3点を通る場合の複 雑な形の切り口を考えなければならないときには、ほとんどの生徒がその 切り口の形を理解できていないものと思って指導しなければならない。
(W)切り口の形では正解しているのに見取図の作図法が理解できていないため 見取図を正確に表せない生徒もいた。
4章においては、中学校の空間図形の中で最も一般的な立方体において、3点 を通る切り口の見取図とその形の名前を問う調査をした。その調査の結果から、
空間図形の立体の切断教材の指導では模型などの具体物を利用すれば有効である ことがわかった。また、生徒は見取図から切り口の形を判断している場合が多い こともわかった。これらの結果を踏まえると、見取図と切断面について以下のよ うな示唆を与えた。
立体の切断の見取図をかくとき、見取図の見え方から判断させるのではなく、
論理的な思考により切り口の形を考察できるように指導すべきであり、論理的な 思考を根拠として見取図をかくように指導することが大切である。
また、複雑な形の切断面を考えねばならないようなときには、ほとんどの生徒 がその切り口の形を理解できていないものと思って、生徒に見取図や模型などの 具体物を持たせて切り口の形を考えさせた後、具体物による切断かコンピュータ
・シミュレーションで確認するなどして生徒が理解できるように指導すべきであ
る。
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空間図形教育への示唆
本章では、空間図形教育に関わる4つの問題点が教材内容と 生徒の認知的側面の両方にあることを受けた前章までの考察を 踏まえ、本論文が意図とするこれからの中学生への空間図形教 育への示唆を与えることとする。
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1.1.中学校1年の学習内容と第2・第3学年の学習内容の関連
1章で問題点として述べたように、中学校1年の空間図形教材は、第2・第3 学年の教材内容との関連性が薄い。しかし、第2・第3学年につながる空間図形 の学習内容もある。例えば、3年生では三平方の定理の応用として直方体の対角 線の長さを求める問題があるし、2年生では立方体を切断したときそれが平行四 辺形になる場合に、それを証明する問題などがある。これらの問題では立体の切 断における概念が応用されることになる。この際、空間図形の概念が曖昧であれ ば、前者の問題では、どの辺とどの辺が直角三角形を構成するのかがわからなか ったりするであろうし、後者の問題では、どの面が平行四辺形であるのかが理解 できなかったりするであろう。それゆえ、第1学年と第2・第3学年との教材間 の関連が薄いようであっても、立方体の3点を通って切断するときの切断面に関 して、 「この切り口の形は平行四辺形らしい」という直観的な見方や考え方から 出発することによって、次第に既有の知識や図形の定義をもとにして平行四辺形 であるという根拠を演繹的に説明させていくことが、2年生から始まる論証への 準備となるだろうし、第2学年への橋渡しになるのである。ゆえに、中学校1年 の空間図形の学習内容は、それ以後の図形教育の学習の基礎・基本の一つに十分 なりうるのである。
1.2.第1学年の空間図形における説明させる学習活動
2章の先行研究の中で述べたように、礒田(1996)は、中学1年生に対して立体 の切断の作図を、指導前と立体切断に関する授業の1時問目(シミュレーション)
の後と3時聞目(根拠を探り議論した)の後のそれぞれで調査した。その結果で留 意すべきことは、生徒自身が1時問目の授業によるシミュレーション結果を既習 事項を根拠に議論し合うことから切断の作図の問題において大多数が正答したと いうことである。そして、そのことから切断面を作図する力は、指導を経る毎に 深まっているということである。また、畑江(1964)は、生徒に立方体の切断の切
り口の形について予想を立てさせ「その図形になる」と判断した根拠(推理の過 程)について説明させた。そのことから、生徒は図形の定義の必要性を認識し、
定義と性質の使い分けができるようになるのである。さらには空間図形の位置関 係に関する知識を応用する場合などの学習に効果があったと述べている。説明し
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