• 検索結果がありません。

博士(地球環境科学)望月麻友美

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(地球環境科学)望月麻友美"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博士(地球環境科学)望月麻友美      ,    学位論文題名

, Peptide ― conjugated Chitosan Membranes As Extracellular      ●

  Matrix Mimetics ;New Biomaterials For Tissue Engineerlng    (ベプチドーキトサン膜を用いた人工基底膜の創製に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  エネ ルギ ー・ 資源 の枯 渇、 地球 環境 の汚 染に 関す る問題が広く論じられる中、我が 国 で は2000年 に 「 循 環 型 社 会 基 本 法 」 が 施 行 さ れ た 。 環 境 へ の 負 担 を 減 ら し次 世 代 に持 続可 能な 社会 を実 現す るた めに は、 単に 廃棄 物対応の循環ではなく、自然やエ ネ ルギ ーな どす べて の資 源が 効率 的に 循環 でき る循 環型社会の構築が必須である。リ デ ュー ス・ リユ ース ・リ サイ クル が機 能す るこ とに よって、経済社会の中での資源の 循 環を 実現 する こと がで き、 それ と同 時に 自然 の循 環を尊重することができると考え られる。

    キチン、キトサンは, カニ,エビなどの甲殻類の殻をはじめとして昆虫の表皮 ,軟 体 動物 の骨 格や 殻, キノ コ, 病原 菌な ど細 菌細 胞壁 に広く分布している。地球上で毎 年 推定 一千 億ト ンも 生合 成さ れ, 同時 に生 分解 され ている。この生合成と生分解の循 環 が地 球の 環境 と生 態系 を保 全し てい た。 長年 の問 、食された後に残される大量のカ ニ 殻は 廃棄 処分 され てい るの が現 状で 、循 環の バラ ンスが保てなくなっている。そこ で 水産 加工 場か ら廃 棄さ れる カニ 殻キ チン を原 料に キトサンの工業生産が始まった。

キ トサ ンは 、反 応可 能な 一級 アミ ノ基 を有 する ため 、化学修飾が比較的容易であり、

様 々な 機能 を付 加す るこ とが 可能 であ る。 これ まで に食品・工業・農業分野、医用材 料 分野 、成 型品 分野 など で数 々の 応用 が進 展し た。 しかし未だにそのほとんどが生ゴ ミ・産業廃棄物として処理 されている状況である。

  本申 請者 は天 然産 業廃 棄物 キト サン を有 効利 用す ることに強い関心を抱き、有効利 用の手段として医用材料へ 応用することを目的として研究を行ってきた。キトサン は、

免 疫原 性が 低く 、生 分解 性で ある ので 、こ れら の特 性を保ったまま組織と強い親和性 を 持つ 柔軟 な膜 や線 維と して 形成 し医 用材 料と して 実用化されている。またキトサン は 、コ ラー ゲン やフ ィブ リン など の脊 椎動 物由 来の 生体高分子と比べて、人畜共通感 染 症等 の危 険性 がは るか に低 く、 医用 材料 など の用 途で人に用いるのに適していると 考 えら れる 。近 年、 医用 材料 の分 野で は基 底膜 など の細胞外マトリックスが生体内で 担 う役 割の 重要 性が 認識 され つっ あり 、そ の機 能を 模倣した医用材料の研究が報告さ れ はじ めた 。特 に、 発生 段階 や組 織再 生時 にお ける 基底膜構成タンパク・ラミニンの 機 能に 注目 が集 まっ てい る。 本申 請者 は、 キト サン に化学的に生物活性(ラミニン由 来 活性 ペプ チド )を 固定 化す るこ とで 、生 体内 の組 織の再生、維持に重要な役割を果 たす基底膜の活性を模倣し た人工基底膜の創製を試みた。

  第一章では、ペプチド― キトサン膜を開発し、膜の活性を検討した。キトサンに 二価 官能性試薬のN−(マレイミドベンゾイルオキシ)ースクシイミド(MBS)を導入しMB―キト サ ンを 調製 した 。キ トサ ンに 固定 化さ せる 生物 活性 として基底膜の主要構成成分であ る ラミ ニン の細 胞接 着部 位( 生物 活性 ペプ チド )の 中で、細胞接着活性が強い部位、

イ ンテ グリ ンや シン デカ ンと いっ た細 胞膜 上の 受容 体(レセプター)が同定されてい

203

(2)

る部位を用いた。ペプチドのN末端にシステインを付加し、システインのSH基を介して キトサン膜のMB基と共有結合させペプチドーキトサン膜を調製する方法を開発した。こ の方法によって得られたペプチド―キトサン膜に由来の異なる様々な株化細胞を加えて 無血清状態で2時間培養し細胞接着活性を測定すると、活性ペプチドを固定化したキ トサン膜は明瞭な細胞接着活性を獲得することがわかった。接着する細胞数は、キト サン膜に固定化したペプチド量に依存すること、また、培養皿にベプチドを直接コー トする方法よりも、キ卜サン膜に化学的に結合させる方が、用いたぺプチドの質量あ たりの接着する細胞数が多いことがわかった。これはキトサン膜が細胞に対して物理 的に良好な足場として働いていることや、膜に結合されたペプチドが活性型コンフオ メーションをとりやすいためと考えられる。さらに、固定化するぺプチドによって細 胞は異なる形態を示し、このような細胞形態の違いは結合するレセプターの違いによ ることを明らかにした。また、ペプチド―キトサン膜上で副腎髄質由来の神経系細胞は ペプチドの種類に依存して形態的に異なる神経突起伸長活性を示すことを明らかにし た。この結果から、ペプチドーキトサン膜は直接細胞に働きかけて接着する機能をもち、

細 胞 の 分 化 を 促 進 す る こ と が で き る 可 能 性 を 示 す こ と が で き た 。   第2章では、ペプチド―キ卜サン膜を用いて、より生体に近い環境の模倣を試みた。

実際の生体内の細胞には、様々なレセプターを介した情報が基底膜から同時に伝達さ れている。代表的なレセプターのインテグリンファミリーに注目し、インテグリン特 異的に作用するペプチドキトサン膜の活性評価を行った。ラミニン、コラーゲン、フ ィブリノーゲンといった基底膜などの細胞外マトリックス構成タンパク質由来のイン テグリン接着部位(ペプチド)を約10種類合成し、開発したペプチドーキトサン膜に 利用した。これらのぺプチドーキトサン膜の生物活性を調べたところ、4種類のベプチ ドでインテグリン特異的な細胞接着を確認することができた。さらにこれらは異なる インテグリンを介して細胞と作用していることを明らかにした。また、作用するイン テグリンにより、神経系細胞の神経突起伸長促進に違いがあることも明らかにした。

この結果から、キトサン膜に固定化させるペプチドを組み合わせることにより、標的 細 胞 あ る い は 組 織 に 適 し た 環 境 を 提 供 で き る 可 能 性 を 示 す こ と が で き た 。   第3章では、実際に動物を用いたin vivo実験への応用のためのキトサン膜の調製 を試みた。近年、受傷部位に上皮系の細胞を添加することで、細胞自身のもつ効果に より創傷治癒を促すという細胞移植法が注目されてきている。この方法では、加える 細胞が組織に効率良く接着することが必須で、細胞が接着するための足場となり細胞 を生物学的に制御できる基質が重要視されている。そこで強い細胞接着活性を有する ペプチド―キトサン膜の受傷部への細胞のキャリアヘとしての応用を図った。これまで 用いていたベプチド―キトサン膜は、細胞への活性を検討するには有効な手段であった が、生体内に用いる際には、MB基の毒性が懸念された。そこで、クロロアセチル基 を導入したクロロアセチルキトサンを新規に開発し、その生物活性を確かめた。キト サンは無水クロロ酢酸と反応させることによルクロロアセチルキトサンを合成した。

また、ピンセットなどで容易に取り扱える膜に加工することに成功した。その膜上に ペプチドを固定化させて細胞接着活性を確かめたところ、MB−キトサンと同等の強い 細胞接着活性を持つことを明らかにした。

  これらの結果から、ペプチドーキトサン膜は新規の「足場」として有効なだけでなく、

目的細胞の接着や分化をコントロールできる人工基底膜として応用可能であることが 示された。

  このような付加価値を有したペプチド―キトサン膜は地球環境に優しい医用材料と して認識されるとともに、実際の医療へ大きな寄与をもたらすと考えられる。また本′

研究とその成果は地球環境科学ならびに資源化科学研究に大きく寄与するものである と確信する。

204

(3)

学位論文審査の要旨

主査   助教授   春木雅寛 副査   教

  

授   坂入信夫 副査   教

  

授   荒木義雄 副査   名誉教授

  

西

  

則雄

副査   教

  

授   野水基義(東京薬科大学)

    

学位論文題名

Peptide

conjugated Chitosan Membranes As Extracellular Matrix Mimetics

New Biomaterials For Tissue Engineering

(ベプチド―キトサン膜を用いた人工基底膜の創製に関する研究)

  近年 、天 然資 源の 循環 型社会への組み込みが模索されている中で、種々の廃棄物の有効 利 用は 地球 環境 にと って 今後ますます重要になるものと考えられる。カニ,エビなどの甲 殻 類の 殻の 主要 構成 成分 であるキトサン(脱アセチル化キチン)は、水産加工場で大量に 廃 棄さ れて いる が、 反応 可能な一級アミノ基を有するため様々な機能を付加することが可 能 な高 分子 多糖 であ る。 現在では廃棄されたカニ殻の一部を原料にしたキトサンが工業生 産 さ れ 、 食 品 ・ 工 業 ・ 農 業 ・ 医 用 材 料 分 野 な ど で 利 用 さ れ て い る 。   キト サン は、 生分 解性 が高く、脊椎動物由来の生体高分子と比べて、人畜共通感染症等 の 危険 性が はる かに 低い などの医用材料に適した特性を有する素材である。一方、医用材 料 の分 野で は基 底膜 など の細胞外マトリックスが生体内で担う役割の重要性が認識されつ っ あり 、そ の機 能を 模倣 した医用材料の研究が報告されはじめた。特に、組織の発生・再 生 時 に お け る 基 底 膜 構 成 タ ン パ ク ・ ラ ミ ニ ン の 機 能 に 注 目 が 集 ま っ て い る 。 本 申請 者は キト サン をさ らなる付加価値を付けた医用材料として開発することを目的とし て 研究 を行 った 。す なわ ち、キトサンに化学的に生物活性(ラミニン由来活性ベプチド)

を 固定 化す るこ とに より 、生体内の組織の再生、維持に重要な役割を果たす基底膜の活性 を模倣した人工基底膜の創製を試みた。

  第一章では、ベプチドーキトサン膜を開発し、膜の活性を検討した。キトサンに二価官能 性試薬のN―(マレイミドベンゾイルオキシ)―スクシイミド(MBS)を導入したMB−キトサンを 調 製し 、ラ ミニ ンの 細胞 接着部位(生物活性ベプチド)を化学的に固定化させペプチド―

キ トサ ン膜 を作 成し た。 これに細胞を加えて無血清条件下で培養すると明瞭な細胞接着活 性 を獲 得す るこ とが わか った。接着する細胞数は、キトサン膜に固定化したペプチド量に 依 存し た。 また 、ベ プチ ドによって異なる細胞形態は、結合するレセプターの違いによる ことを明らかにした。これらの結果から、ペプチドーキトサン膜が細胞膜上の特定のレセプ ターを介して直接細胞に作用することを示した。

(4)

  第二章では、ベプチドーキトサン膜を用いて、より生体に近い環境の模倣を試みた。ベプ チドが結合する細胞膜上の代表的なレセプターのインテグリンに特異的に作用するベプチ ド―キトサン膜の活性評価を行った。細胞外マトリックス構成タンパク質由来のインテグリ ン接着部位(ベプチド)を約10種類合成し、このうち4種類のペプチドーキトサン膜でイ ンテグリン特異的な細胞接着活性を確認した。また、作用するインテグリンにより、神経 系細胞の神経突起伸長を促進したことから、分化の誘導に違いがあることも明らかにした。

ペプチドが介するレセプターによって細胞への作用が大きく異なったことから、目的細胞 あるいは組織に適した活性を有するぺプチドをキトサン膜に固定化することにより、ベプ チド―キトサン膜が様々な細胞の活性を誘導する、生体内に近い環境を提供できる可能性を 示した。

  第三章では、動物実験を行いぺプチドーキトサン膜の実際の評価を行った。動物実験用に 大量に調整可能なクロロアセチルキトサンを開発し、強い細胞接着活性を有するAG73ベプ チドを固定化した。膜をピンセットなどで容易に取り扱えるように加工し、動物の受傷部 に被覆して数日後、創傷治癒促進作用を確認した。また、AG73ーキトサン膜上に表皮細胞を 接着させた細胞組み込み型AG73―キトサン膜を調整し、これをヌードマウスに移植して数 日後、マウス組織中に移植した表皮細胞を確認した。これらの結果から、AG73―キトサン膜 は 創 傷 治 癒 を 促 進 し 、 ま た 細 胞 移 植 時 の キ ャ リ ア と し て の 可 能 性 も 示 し た 。   本申請者は、以上のように、開発したペプチド―キトサン膜を用いて細胞接着活性や細胞 分化の機構を明らかにし、生体に近い環境の模倣を試みた。さらに動物実験により創傷治 癒の促進効果を確かめた。これらの結果から、ペプチド―キトサン膜は目的細胞あるいは組 織に適した環境を提供し、細胞をコントロールできる人工基底膜として応用可能であるこ とを示した。

  本研究とその成果は、資源化素材であるキトサン膜に細胞への直接的な作用性を付加さ せることに成功し、応用範囲を広げた点で、医用材料研究に貢献するだけでなく、資源化 科学研究に新しい方向性を示すとともに地球環境科学ならびに生態環境科学研究に大きく 寄与するものであると確信する。

  審査員一同は、これらの研究成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、

大学院課程における研鑽や単位取得なども併せ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を 受けるに十分な資格を有するものと判定した。

参照

関連したドキュメント

   第6 章 では、 さらに 、この紫外線照射DNA フィルム電極をエスト口ゲン物質に応用した。本実験では最も強 いェ スト口 ゲン活 性を示 すE2 と、

的評 価を 行う こと で、 予測 可 能性 の低 さに 内部 変動 が及 ぼす 影響

  SST −SAT < 1 ℃のときは仮温位が高度ともに増加しており大気境界層が安定な状態を示 しているのに対し、SST ―SAT

  

  

両方法の調査結果から、オジ口ワシはさまざまな水域に生息する魚類と鳥類を主食とし、哺乳類も少

   ま た本 モデルによりWatanabe and Kondo (1990) が定義したバルク運動量輸送 係数 (り を群 落構造 と関 連さ せ表 現す ることが出来た。さらにThom (1971 )が 提案