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肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の病理 : 胸部X腺で腫瘤状陰影を呈する疾患を中心として 利用統計を見る

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山梨肺癌研究会会誌 11巻1号 1998

肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の病理

―胸部X腺で腫瘤状陰影を呈する疾患を中心として―

岩手県立中央病院 病理診断センター長 冨地信和  はじめに  肺癌の増加とともに、近年肺の良性腫瘍および腫瘍様病変に遭遇する機会が増加して いる。肺の良性腫瘍および腫瘍様病変は肺野型肺癌と同様に、胸部X線写真上肺野に孤 立性の腫瘤陰影を呈するものが多い。肺の良性腫瘍および腫瘍様病変は肺癌との鑑別が 重要であり、そのためにはかかる疾患の臨床病理学的な理解が必要である。  1.肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の組織分類  肺には多種類の良性腫瘍および腫瘍様病変がみられる。WHOの肺腫瘍組織型分類と AFIPの肺腫瘍アトラスを参考にして、私どもが肺の良性腫瘍および腫瘍様病変を組織学 的に分類したものを表1に示す。良性腫瘍は上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍に大別される。 上皮性腫瘍は乳頭腫と腺腫に分類されるが、乳頭腫は大部分中枢側の気道上皮から発生 する。また、腺腫は中枢側に発生し気管支腺に由来するもの(表1、1−2.1)∼5)) と末梢肺に発生し肺胞上皮細胞ないしクララ細胞に由来するもの(表1、1−2 6)7)) とがみられる。一方、非上皮性腫瘍には平滑筋、脂肪、結合織、軟骨など肺の間質組織 に由来する間葉系腫瘍(軟部腫瘍)とリンパ組織増殖性病変としての偽リンパ腫および リンパ腫様肉芽腫症(良性ないし境界病変)がみられる。腫瘍様病変としては過誤腫、 硬化性血管腫、炎症性偽腫瘍、肉芽腫性病変(結核、真菌症、寄生虫)などがあり、そ の大部分は末梢肺に発生する。  2.肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の頻度

 過去7年間(1990.7月∼1997.6月)に私どもの施設において、胸部X線

写真上肺野に腫瘤状陰影を呈し、切除肺組織あるいは胸腔鏡下肺生検組織により病理診 断の確定できた症例は468例あり(表2)、そのうち肺の良性腫瘍および腫瘍様病変

は14.3%(67例)にみられた。一方、肺癌は69.4%(325例)、転移性肺

癌は10.9%(51例)であった。肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の内訳は表3に示 すが、過誤腫、硬化性血管腫、肺結核などが多くを占めていた。なお、Mundenらは胸 部CT写真上1㎝以下の小結節性病変を示した64例に対しての病理組織診断(胸腔鏡 下肺生検組織)で、良性腫瘍ないし良性病変が42%(27例)あったと報告している (Radiology、 202 :105、 1997)。 3.過誤腫、硬化性血管腫、肉芽腫性病変の病理所見 1)過誤腫 一48一

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平成10年4月1日  過誤腫の大部分は無症状で末梢肺に発生し、胸膜とは離れていることが多い。肉眼 的には境界明瞭で、石灰化や骨化を伴うものがあり、割面では分葉状を呈している。 組織学的には、軟骨、脂肪、平滑筋、myxoidの結合織などの間葉成分と無線毛ない し繊毛円柱上皮細胞(細気管支ないし気管支上皮に類似)の上皮成分からなる。一般 には軟骨を主体とした軟骨性過誤腫が多くみられるが、一部には軟骨を欠く過誤腫 (非軟骨性)も存在する。 2)硬化性血管腫  中年女性に多く(平均年齢46才、約85%が女性)、大部分無症状で中下葉に発 生するものが多い。肉眼的に被膜はないが腫瘤の境界は明瞭で、過誤腫と同様に容易 に核出される。組織学的に①充実性、②乳頭状、③出血性/血管腫様、④硬化性から なる4つの主要組織パターンが特徴としてあげられる。また慢性炎症性細胞、肥満細 胞、泡沫状マクロファージ、ヘモジデリン、石灰化、コレステリン結晶など高頻度に 出現し、組織診断に役立つことがある。なお迅速診断標本において、乳頭状のパター ンを主体とした腫瘍組織がみられた場合には、乳頭状腺癌との鑑別が問題になり注意 が必要である。本腫瘍は充実性部分を構成する細胞がH型肺胞上皮細胞への分化傾向 を示すとの報告が多く、肺胞上皮細胞腫(pneumocytoma)とみなされっっある。 3)肉芽腫性病変  肉芽腫をきたす肺の結節性病変としては、結核、真菌症(とくにクリプトコッカス)、 肺犬糸状虫症などがある。  肺結核としての結核腫は、中心に凝固壊死(乾酪壊死)を示す被包化された結節性 病変で、組織学的に類上皮細胞性肉芽腫の反応に乏しく、また結核菌の検出率が低い。 しかし最近は、被包化が不明瞭で類上皮細胞性肉芽腫のめだつ結核結節(細葉性結 節性増殖性病変の融合)を経験することが多く、胸部X線写真でsatellite・lesionの確認 が肺癌との鑑別に参考になるものと思われる。  肺クリプトコッカス症(クリプトコッコーマ)は健常人にもみられる。組織学的に は、肺組織内に類上皮細胞性肉芽腫(壊死一∼+)からなる結節性病変が認められ、 壊死部あるいは組織球ないし多核巨細胞の胞体内に球状の酵母型真菌(グロコット、 ムチカルミン、アルシアン青染色に陽性)が見い出される。  肺犬糸状虫症は組織学的に、末梢肺組織に壊死性肉芽腫性病変を認める。また診断 確定には壊死巣内の肺動脈内に、約100∼350μmの犬糸状虫の虫体(厚い角皮、 側線細胞など)を証明することが必要である。  なお、その他の良性腫瘍および腫瘍様病変の病理所見については紙面の関係上割愛 する。  おわりに  肺癌検診の普及により、胸部X線で肺野に腫瘤状陰影をきたす症例を精査する機会が 今後ますます増加してくるものと思われる。肺癌を診断するためにも、臨床医および病 理医にとって鑑別疾患としての肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の理解が一層望まれる。 一49一

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山梨肺癌研究会会誌 11巻1号 1998 表1.肺の良性腫瘍および腫瘍様病変の組織分類 1.上皮性腫瘍 ll.非上皮性腫瘍 皿.腫瘍様病変 1.乳頭腫  1)扁平上皮細胞乳頭腫  2)移行上皮細胞乳頭腫 2.腺 腫  1)多形腺腫  2)単形腺腫  3)嚢胞性腺腫  4)筋上皮細胞腺腫  5)膨大細胞腫  6)II型肺胞上皮細胞型    乳頭腺腫  7)肺胞腺腫  cf.細気管支肺胞腺腫 1.間葉系腫瘍(軟部腫瘍)  1)平滑筋腫  2)脂肪腫  3)線維腫  4)軟骨腫  5)神経鞘腫  6)神経線維腫  7)良性明細胞腫  8)血管系腫瘍  9)穎粒細胞腫 10)パラガングリオーマ 2.リンパ組織増殖性病変  1)偽リンパ腫  2)リンパ腫様肉芽腫症 1.過誤腫 1)軟骨性過誤腫 2)非軟骨性過誤腫 2.硬化性血管腫  (肺胞上皮細胞腫) 3,炎症性偽腫瘍 4.肉芽腫性病変  (結核,真菌症,寄生虫など) 5.好酸球性肉芽腫 6.アミロイド腫瘍 表2.肺野に腫瘤状陰影を呈する肺病変の病理組織診断       岩手県立中央病院病理科 1990.7∼1997.6 肺   癌 転移性肺癌 良性腫瘍および 腫瘍様病変 肺炎,肺膿瘍 リンパ球系腫瘍 その他 325 例 51 67 9 3 13 (69.4%) (10.9 ) (14,3 ) (2.O (O.6 (2.8 ) ) )

468例

表3, 腫瘤状陰影を呈する良性腫瘍および腫瘍様病変 過誤腫 硬化性血管腫 炎症性偽腫瘍 血管性腫瘍 パラガングリオーマ 肺結核 肺クリプトコッカス症 器質化肺炎 肺犬糸状虫症 肺内リンパ節 18 10  3  3  1 20  2  3  1  6 例 (26.9%) (14.9 (4.5 (4.5 (1.5 (29.9 (3.O (4.5 (1.5 (9.0 ) ) ) ) ) ) ) ) )

67例

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