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福井県鯖江地方の蚊の種類並に その季節的浩長1こついて

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(1)

729

福井県鯖江地方の蚊の種類並に その季節的浩長1こついて

第二報 昭和26年度採集の蚊について

金沢大学医学部細菌学教室(主任 谷友次教授)

専攻生 木  水  英

研deo K伽mizu

(本論文の主旨は昭和27年4月5日第4回衛生動物学会で報告したものである.)

内  容  抄  録  昭和25年度の調査に引続き,昭和26年度の福井県鯖

江地方産の蚊の分類並にその季節的消長を調査する目 的にて,6月初めより10月10日 ?フ期間中に,昭和25 年度と同一・な採集方法によって,毎週土曜日の日没後 30分間,人家内で採集人100人に依頼し,蚊の成虫雄 685匹,雌2176匹を捕獲し,これを調査研究するに次 の成績を得た.

 1)種   類

 昭和26年度に捕獲した蚊を調査して見るに,昭和25 年度とほぼ同一なるも,異なる点はエセシナハマダラ

カ,トラフカクイカ,キソバラナガハシカが捕獲され ず,本年始めてエゾヤブカの少数が捕獲されたことで ある.昭和25年度に福井県下にて始めて捕獲したと報 告したアシマダラヌマカが本年も捕獲され福井県下に おいて,アシマダラヌマカ,エゾヤブカが存在するこ とが明らかとなった.昭和26年度に捕獲された蚊はア ノブエレス1種類,イエカ属8種類,ヌマカ属1種類,

クロヤブカ属1種類,ヤブカ属5種類の5属16種類で

あった.

 2)季飾的消長

 7月下旬より10月初めまでの雨量が極めて少なく,

特に7月下旬より8月末日迄の約45日間は殆んど降雨 を見なかったため,蚊の発育が阻害され,8月に入り 急激に減少し,9月に入って昭和25年度において見ら れた山も,低い且小さかった.シナハマダラカは6月 下旬より7月下旬に亘る山を認め,アカイエカは6月 に多く,7月,8月,予々減少し,9月に入り更に著 明に減少した.コガタアカイエカは6月より7月下旬 に亘る大きな山を作り,次第に減少して,9月に小さ な山を認めた.シロハシイ・nカは7月にのみ山を認め オホクロヤブカは8月下旬より9月末日に亘る山を認 めた.捕獲数は各地域とも昭和25年度の約半数にて,

市街地の捕獲数は他の地域の約半数である.シナハマ ダラカは市街地,水田地ではほぼ同数であるが,山麓 地は多い・アカイエカは昭和25年度の約半数にて,市街 地は少なく,:水田地,山麓地はほぼ同数である.シロ

ハシィエカは水田地が,他の2地域よりも少数にて,

オホクロヤブカは市街地において極めて少ない.コガ タアカイエカは各地域とも昭和25年度とほぼ同数にて 水田地,山麓地に多い・

第1章緒   言

第2章蚊の採集方法

第3章 蚊の分類及び捕獲成虫の多少

第4章季節的消長

 第1節 重要蚊雌成虫の季節的消長

 第2節 市街地,水田地,山麓地別に見た重要蚊     雌成虫の季節的消長

第5章総括並に考案

第6章結   論    文   献

( 81 ]

(2)

第1章  緒

 地方病の流行状況を調査研究するには,過去

の流行史を勿論知らなければならないが,特に 地方病は人体に寄生,叉は接触する昆虫類及び 小動物の病原の伝搬に起因することが極めて多 いことも,最近予防医学の進歩にともなって明 らかになったことである.この意味において疾 病の伝搬者である昆虫類,小動物のその土地に

おける種類,分布状況及び1力年間における発 生消長を熟知していることは,地方病の発生,

流行状況及び予防法を知る基礎的調査事項とし て必要なことである.しかして流行地における 伝搬者の発生消長を知るには,多年の正確な調 査iを必要とする.今回,福井県のVラリアの流 行状況を調査研究するにあたり,先に昭和25年 度の福井県鯖江地方の蚊の分類とその季節的消 長を報告したが,以下は昭和26年度における調 査成績である.

第2章 蚊の溢出方法

 昭和26年6月初めより同年10月10日迄の期間 中,鯖江中学校第3学年生徒100名に依頼して,

鯖江町を中心とする東西約1{・粁,南北約8粁の 範囲内の1町44部落を戸数,面積に比例して,

採集人を平等に分散配置し,日没後30分の間,

吸虫管により人家内の蚊を毎週土曜日に採集し

た.蚊を捕獲する方法は吸虫管法により,静止 申の蚊を,一定時間内に出来得る限り多く捕獲 した.種の同定には,山口,:LaCasseの「日本 及び朝鮮産の蚊の図鑑」,佐k,浅沼の「蚊を調 べる人のために」及び徳永の「医用昆虫学,上 巻」を参考にした.

第3章 分類並に捕獲数の多少

 本調査期間中に捕獲された蚊の成虫は,雄

685匹,雌2,176匹である,これ等の蚊の分類 並に癸生度(捕獲i数の多少)は第1表の如くで ある.即ち,アノフェレス属1種類,イエカ属 8種類,ヌマカ属1種類,クロヤブ直属1種類,

ヤブカ属5種類の5属16種類にて,捕獲数の多 い蚊種は,シナハマダラカ,アカイエカ,コガ タアカイエカ,シロハシイエカ,オホクロヤブ カにて,昭和25年度の捕獲成績と同様である.

昭和25年度にて捕獲され,昭和26年度において 捕獲出来なかった下種はアノフェレス属のエセ シナハマダラカ,イエカ属のトラフカクイカ,

ナガハシカ属のキンバラナガハシカであり,昭 和26年度になって捕獲された蚊種はエゾヤブカ の一種であった.エゾヤブカAedes esoellsis Yamada,(1921)は日本では寒冷地に産する蚊 種にて,佐Ze 1)によると北海道,樺太に普通に 産するとなし,北海道のルベシベにて捕獲せる

成虫,幼虫,輔の形態学的な記載をなしてい る.余は6月IO日に市街地にて雌1匹,6月24 日に山麓地にて雌1匹を捕獲した.アシマダラ

ヌマカMans・1)ill lll)if・rmfs The・bald(1901)

は本年度も水田地区にて9月10Hに雌】匹を捕

獲した.

 ナガスネカ属のハマダラナガスネカに類似す る1蚊種3)については昭和25年12月3日,山麓 地の竹藪においた水甕の中に生棲していた越冬 幼虫より発見し,実験室内にて飼育,羽化し同 定したものにて,福井県内にては全然未発見の ものであり,日本内地においても,本門と類似 すると思われるものは,浅沼,高橋等の発表し

た Orthopodomyia an ophel oi des Gi les 1944,

La Casse,山口等の発表したOrthopodomyia

anopheloides var. nlPl)onica,1948,の報告が あるだけにて,蚊の分類学的な種名は決定して いない.詳細は昭和26年4月,第3回日本衛生

( 82 ]

(3)

福井県鯖江他方に於ける蚊の種類並にその季節的消長にりいて 731

第1表  鯖江地方の蚊族の種類並にその発生度

属   名

発生度

1950 1951

アノフェレス属

1

シナハマダラカ

A.hyrcanus sinensig 柵 柵 2 エセシナハマダラカ A.sineroides

3 ア  カ  イ エ  カ C。P董piens pallens 冊 柵

4 コガタアカイエカ C.tritaeniorhyncbus 柵 柵

5 シ ロ ハ シ ィ エカ C.vishnu三 柵 柵

6 カ ラ ツ ィ エ カ C.bitaeniorhynchus

7 セ シ ロ イ エ カ C.whitmorei

8

ハマダラウスカ

C.oriehtalis

9 ト ラ フカクィ カ Gvorax

10

コガタクロウスカ C.hayashii

11 ミ ツボシイエカ C.sinensis

ヌ マ カ 属 アシマダラヌマカ M.uniformis 十一

クロヤブカ属 13 オ ホ ク ロ ヤブカ Arm. obturbans 14 ヒ ト ス ジシマカ Ae. a】bopictus

15

トウゴウヤブカ

Ae. togoi

16 ヤ マ ト ヤ ブ カ Ae.」馳ponicus

17 キy イ ロヤブカ Ae. ve職1s nippon童i

18 エ  ゾ  ヤ  ブ  カ Ae. esoensis

@      l

ナガハシカ属 19 キンバラナガハシカ Trip. bambusa ナガスネカ属 20 ハマダラナガスネカ

鋤繍一 @ {

動物学会にて発表し,同雑誌に報告した.    「其の他」の欄は捕獲数の割合に少なかった,

 各種雌雄の捕獲実数及び百分比を採集した月  カラツイエカ,セシロイエカ,ハマダラウスカ,

日別に調査するに,第2表の如くにして,表中  コガククロウスヵ,ミツボシイェヵ,アシマダ

       第2表 成虫蚊の雌雄実数,比較

性 採 集

6. io16. i7i6. 24[ 7. i 1 7.s 17 ・ lg[ {!.1iLILs: 3gl.g : lfg?:一IIIg・ i6一.lg: 2411Lo: 3

       6

シナハマダラカ

       9

11 II 51 61 41 7

111 51 281 541 72E 58 61 41 21 6

  6:9

計   o/0  24    9.

246

アカ イエカ

♂孚 48

X2 18 R3

23 R3

29 R6

18 R9

22 Q4

238  2

R3

518 817

8

  10

P 5 175 R76 49.

コガタアカイエカ

♂♀ 69

P43 83 P76

126 Q55

44 P31

29 P02

55 V6

い1

S8 39 1

12 Q0

11 R9 1

28 438

@   42.102

{ S3 ]

(4)

11 2 13 シロハシィエカ

1 6 151

@1 82 53 28 3 6 7 6

ll 208 6.2

@}

一 一 一 』      

一 一 ゴ    一 一 一    一 一

3 5 2 1 1 2 1 3 2 17

オオクロヤブカ

21 13 11 4 4 5 19 31 51 60 15 32 216 6.3

一 巴 一

δ 2 5 1 8

そ  の  他

6 2 3 4 10 4 3 4 3 1 2 42

19,

8 125 104 159

 一 一

X1

一    一

T4 84 31 11 18 22 2} 12

274 235 345 311 280 195 114 116 102 131 26 47 2176 31.5 6  ♀ %

4昨2

46.0 29.2   115・7 狽S3・02.6   EX.4117,616.7  1

} }  一

7.6 25.5 5

ラヌマカ,ヒトスジシマカ,トウゴウヤブカ,

ヤマトヤブカ,キンイロヤゾカJエゾヤブカを 意味している.雄の雌に対する百分比は総数よ り見るに,約31.5%にて,昭和25年度の2倍の 成績を示した,最も比率の少ないのは8月の2.6

%であり,6月は46〜44%にて,10月半25.5

%となっている.種別による比率は,アカイエ カ49.2%,コガタアカイエカ42.5%,「其の他」

   第3表  昭禾025年度,昭禾026年度       に捕獲した成虫の比較

種    名

1950 11951

b説%一 一 一  一    }  一   一 一  『    }   一   一 一 一 一     一  一  一   一   一

捕酬%

 一 一    一  一 一   一       一  

  49

@542

@    一 一       一

@260

@1032

9.1

Q5.1

  24

@ 246

@ 175

@ 376

一 一        一

X.

S9.

シナハマダラカ

@   一      一

A カ イ エカ

一 3 ♀

    一  『 R   ガ   タ

Aカ イエカ

♂♀ 219

P147 19.0

娚1029 42.

    一      一      一

?  一 』  一  一  一

Vロハシイ一山

δ♀ 16

U02 2.6   13

@208

?         ㎜   一  一 一

@ 17

@266

6.

?      一  一 一

オホクロヤブカ U.

♂♀

@63

@622 10.1

一其  の  他

♂♀ 16

P65 9.8

842

19.

Q一

δ♀ 622

S110 15.1 685 Q176 31.

が19.0%,シナハマダラカ9.71%,,オホクロヤ ブカが6.3%,シロ・ハシイエカが6.2%で,こ の順位は昭和20年度の成績と同一にて,大体に おいて昭和25年度の2倍の成績を示した.(第3

表)

 次に地域別に20人の採集人を選び,捕獲した 蚊の雌成虫の数を,昭和25年度の成績と比較し

て見るに第4表の如くである.即ち捕獲総数は 各地域とも昭和25年度の約半数である,市街地 の捕獲数は他の2地域の夫kのほぼ半数であ り,山麓地が一番多い.これは山麓地が成虫の 生棲に適していることを意味する.シナハマダ ラカは市街地と水田地はほぼ同数であるが,山 麓地は約2倍であり,アカイエ.カは市街地では 他の地域の約半数にて,水田地,山麓地は多い.

コガタアカイエカは各地域とも昭和25年度とほ ぼ同数にて市街地は他の2地域より少ない.シ    第4表 地域別に見たる蚊の捕獲

      数の比較

ミこ一一趣 市街地 水田地 山麓地

種    年  名

・95・1・95・ ・9・・1・95・ ・95・1・95・

シナハマダラカ 101 50 114 53 203 8

ア カ イ エ カ 189 78 336 105 272 113 コガタアカイエカ 196 163 392 301 300 341 シロハシィエカ 156 76 108 20 193 オホクロヤブカ 39 11 170 95 282 1 其  の  他 39 8 64 7 28 1

計 723

v 386 1184

μ1

1278 71

【別 】

(5)

福井県鯖江地方に於ける蚊の種類並にその季節的消長について 733

ロハシイ山野は水田地が少なく,オホクロヤブ カは山麓地が最も多く,市街地は発生数が極め て少ない.而して,これ等の地域別に見た成績

は,昭和25年度,昭和26年度,共に同様であ

る.

第4章 季節的消長

    第1節 重要蚊雌成虫の季節         的消長

 蚊の季節的消長は季候的な変化にともなう蚊 の発生消長と云ってよい,季候的な変化の蚊の 発生に及ぼす主なる条件は温度と湿度であり,

これ等の外的条件に対する蚊の生存期間と抵抗 力が問題となる.蚊の皮膚には体温調節装置が 発達しておらず,体が微小にして,体表面は体 重に比して大きいから,熱は輻射 及び伝導によ り容易に体の内外に交流し,体温は外界の温度 に近づく.細井の蚊の発生速度曲線4)による と,蚊は温度と共に増加するが,上昇率は一様 でなく,低温部は徐々で中間部では急速且つ,

直線的に,高温部では再び緩徐となる.細井5)

によるC.piP{ensの最:長生存記録は22℃,相 対湿度90%にて林檎だけを吸わせた未吸血雌に て237日間生きており,同様な条件にて吸血と 産卵を極度に反復させたものは,72日間に短縮 されたと報告している.叉成虫の温度に対する 抵抗は細井6)(」944)によると,アカイエカは 38℃,湿度40〜60%ではme 1.2日,雌2.3日 で死に,叉31〜32℃,湿度90%では,幼虫を 21℃で飼育したものは平均10日,又幼虫を32

℃で飼育したものは平均4日の生存に耐えると なし,32℃で羽化した成虫を5℃にさらすと 雌雄とも2日で死ぬと云っている.

 温度の発生速度に対する影響はMartini 4)

(1941)によると,C. pi piensの幼虫は2・5℃で 10日,1,5℃で15日となっている.余の実験室

内での成i績では,Ae. albopictus, Ae. togoi,

Ac. japo・nicusの第3齢期幼虫では18℃で8 日目に化蝸を,10日目より羽化を認めた,

 A.niaculi peni s4)では,卵の購化に要する日 数は水温,24〜27℃で2日,20〜22℃で3日,

16〜19℃で5日となっている.以上を要約す るに蚊の発生停止温度は5℃であり,22〜27

℃で最も多く発生し,32℃になると著しく低

下する.

 食物も発育に及ぼす影響が大きく,幼虫期に おいて,食物不足のため発育が抑制され,叉一 時に全部が飢餓により死亡することは,我々実 験室でよく経験することである.第5表はAe・

albopictus, Ae. togoi, Ae. japonfcusの第3,

第4齢期幼虫の18℃の状態における,27日間 の観察成績であるが,井戸水申に小麦粉を飼料 とした幼虫の25匹中,16匹死亡し,7匹は羽化 し,2匹は羽化が見られず,幼虫の生魅してい た水のみにて,何ん等飼料を与えなかつte時 は,10匹申半数は死亡し,幼虫の成長は見られ ず,飼料を与えず井戸水のみにては,ユ0匹中3 匹が死亡し,2匹が羽化し,5匹は成長が認め

られず,5%の砂糖水のみにては,ユO回申3匹 が死亡し,1匹が羽化し,6匹は成長が認めら れなかった.即ち飼料が与えられる時は,幼虫 の成長も認められ,期間も短縮されるが,飼料 のないときは幼虫の成長が抑制された.

 蚊の成虫の春季における発生順序と,晩秋に おける消失する順序を,余の昭和25年度の福井 県鯖江地方における調査成績より見ると,4月 迄は殆んど蚊の成虫の発生を見ないが,4月初 旬より5月中旬の期間申はアカイエカ並にシナ ハマダラカの越冬成虫の人家内の散発を認め,

5月下旬より6月に進むに従い,次第にその数,

及びその種:類が増加し,コガタアカイエカ,セ シロィェヵ,シロハシイエカ等が加わり,それ 以来本格的な蚊の発生期となる様である.晩秋 における成虫の消失状況は,9月下旬より急激 にその数を減少し,10月に入り特に顕著とな

( 85 ]

(6)

第5表 シマカ属の第1,第IV齢    期幼虫の発育状況

   (18℃恒温)

 (Ae. albopictus, Ae. togoi,

 Ae. japonicus)

試騒副IH影回叫

幼虫 の

フ集場所

竹山山手雨

フ申申地滴 の の の の切水水花落二二溜二二

山山山

??¥の の の

???ュ二三

飼   料

井  戸  水 ャ  麦  粉

採井糖

W  水

n戸曾 イ 幼虫劃55555}1・・…}

一月.日

S.24

死幼虫脱皮羽化 2   2   1

@   3

1

『 一

S.25

@

死幼虫脱皮羽化 2

4.28

死幼虫脱皮羽化

  1 2

P     3

〜   一一

@水の @入替

4.29

?一

S.30

 死

@踊

@:羽化一   一   『 一  一  

@死 @蠣

@羽化

3

  _ _  一 一  一 一

@  1

x 一 7    一   一        一 一   『   一   一

} 一

T.1

T.3  蠕

@}羽化

泥踊羽化死

   1

@ −

@  1

@     1

?  一 _ 一 一     一  一  一   一   一一     一_  一     一一   一       り  一

@   1 1 1

@  1     1

@  1

@1 1

@1

5.4

死蠕羽化

1

1

水の

5. 5

5, 6

5. 7

5.11

5.12

5,17

5.19

結 果

死 馬 羽化

死 蝋 羽化

死 蠕 羽化

死 骸

:羽化

死 蝋 羽化

死 蝋 羽化

死 蠣 羽化

死 幼虫 羽化

1 1

1

1

1 1

1 1

1

1

1

2

3

2 1

1

25441t5 33

0000 215 56 3011 210 21

り,その順序は9月下旬シロハシイエカが先ず 消え,次にコガタアカイエカがなくなり,10月 に入りオホクロヤブカが先ず消え,シナハマダ ラカ,アカイエカの順に人家内より消失してゆ

く.

 昭和26年度における余の調査においては,昭 和25年度との気候の差異は第6表の如くにし て,気温,湿度において左程差は認められなか ったが,蚊の発生期間における昭和26年度の降 水量が,全般的に少なく,特に7月20日より8

月30日迄の量は僅かに13.0 mmにて殆んど降 雨がなく,乾燥が続き,水田は長期間水がなく 地割を生じた.

【鴎】

(7)

福井県鯖江地方に於ける蚊の種類並にその季節的消長について 735

第6表  昭和25年度,昭和26年度の季候状況

季   候 年 旬      李      均

5周6月17月18月19副・・月

気 温195017.9

  c 1 19sl !14.6 湿   度 1950

(相  対) 1951

74.3 74.3

17.9 16.4

75.3 77.1

16.3[ls.6

 i

18.3i20.6

 t

75.4 74.4

83.8 71.7

20.1 19.0

84.9 77.2

22.5 20.8

23.3 22.2

86.8183.8 80.1182.7

26.1 23,4

78.9 80.2

27,6 26.5

76.7 79.2

27.4 26.2

83.7 79.6

27.1 28.0

82.4 75.5

25,2 27.1

82.4 72.8

24.2 22.5

81.9 77.4

25.9 20.3

78,9 82.6

18.8 18.3

15.

17.6

ss.ol s,.

80.4P 77.7

町 鳶

降水量

@ mm

1950

P951 29.017.8

36.124.2!認.169.3錦.1

@     28.7 42.850.527.91482

11よ6145,313,542,757.8

@     129.8 0.1 8.0

70

 6月10より10月3日迄の蚊の雌成虫の捕獲i実 数による消長曲線は第1図の如くである.即ち,

捕獲総数より見るに6月下旬より著明■の増加を 認め,7月の申旬より急激に下降する瞼峻な高 い山を作り,8月は増加の山はなく,9月に入り 又僅に増加し山を作る.

 シナハマダラカは6月下旬より7月申旬に亘 る山を作り,9月に低い山を,アカイエカは6 月下旬と7月下旬よりS月申旬に亘る山を,コ ガタアカイエカは昭和26年度においては,最も 多く捕獲され,総数曲線の消長傾向と同一にて

350

第1図 成虫蚊(雌)の季節的消長

300

250

2eo

lso

loo

se

瞬」糧」R 盤  ℃ぷ療度

㎜吻30

1eo lca 20

so se to

ooo

6月 7 8 9   10

7.7 0.o

78.9 4.9

51.0 43.0

27.2 36.4

78.4 23.6

98.2 10.7

6月下旬より7月中旬に亘る二二な山を作り,

8月は増加の山はなく,9月になり叉僅かに増 加する低い山を,シロハシィエカは6月下旬よ

り7月下旬に亘る山と,9月に低い山を,オホ クvヤブカは7月下旬より僅かに増加し,9月 中旬を頂点とする山を作った.

 之等の種属の捕獲実数による月別に見た百分 率は第7表,第2図,第3図の如くである.即 ち,シナハマダラカは,6月,5.1%,7月23.4

%,8月4.4%,9月3.1%にて10月は捕獲され ず,全体の11.3%である,アカイエカは7月 31.2%にて最高にて,全体の17.2%,コガタア

カイエカは昭和26年度は目立って多く,6月は 67.2%にて次第に下降し,10月は17.0%となり,

全体の47.2%にて最高である.シロハシイエカ は割合に発生率が少なく,7月20.7%,10月は 捕獲されず,全体の9.5%である.オホクロヤ ブカは8月より上昇し,11,月は68.1%にて全体 の12.2%であり,「其の他」の蚊は全体の1.9%

にて極めて少数である.

   第2節 市街地,水田地,山麓地        別に見た重要:蚊雌成虫の        季節的消長

 市街地(第7表,第2図参照)

 雌成虫の捕獲数は555匹であり,シナハマダ ラカの捕獲数は72匹にて,6月より7月下旬に 亘り山を作り,8月,10月は捕獲されなかった.

[ 87 ]

(8)

 アカイエカは】12匹にて,6月 と7月に山を作り,コガタアカイ エカは234匹にて,6月中旬より 7月中旬に亘り高い山を,シロハ

シ イエカは109匹にて,他の地域 より多く,6月下旬より7月申旬 に亘る高い山と,9月に低い山を,

オホクロヤブカは16匹にて,他の 地域より少なく,6月に小さい山 を,8月より9月に亘り低い山を 作り,7月は捕獲されなかった.

 水田地(第7表,第2図参照)

 雌成虫の捕獲数は730匹にて市 街地より多く,シナハマダラカは 67匹にて,7月にのみ山を,アカ イエカは132匹にて6月上旬と,

7月上旬,9月下旬に3個の山を,

コガタアカイエカは377匹にて,

6月より7月に亘る起立した山

と,9月下旬に低い山を,シuハ シイエカは他の地域よりも少な く,26匹にて7月上旬にのみ低い 山を認めジ9月,10月は捕獲され ず,オホクロヤブカは119匹にて 6月に低い山と,9月申旬に高い

山を認めた.

 山麓地(第7表,第2図参照)

 雌成虫の捕獲数は891匹にて最 も多く,シナハマダラカは107匹 にて他の地域より多く,6月と7 月に山を認め,アカイエカは132

匹にて,6月,7月,8月,9月

の4個の山を認め,そのうち8月 が最も高く,コガタアカイエカは 427匹にて他の地域より多く,

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に亘る大きな高い山を,シロハシイエカは73匹 にて6月下旬より7月置旬に亘る山と,9月下 旬の低い山を,オホクロヤブカは131匹にて他 の地域より多く,8月上旬より9月末日に亘る 山と10月の山を認めた.

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 地域別,月別に見たる各種属間の百分率は第 7表,第3図の如くである.即ち市街地におい ては,6月はコガaアカイエカが最:高にて60.3

%,シナハーマダラカ4.4%,アカイエカ28.0%,

7月はシロハシイエカが最高にて33.5%,コガ タアカイエカ28.4%,シナハーマダラカ24.4%と

【認 】

(9)

福井県鯖江地方に於ける蚊の種類並にその季節的消長について 737

第2図  成虫蚊の地域別にみた季節的消長

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ロハシ イエカが20〜30%にて,シナハマダラ カは5.4%,10月頃オホクロヤブカがアカイエ カと同様33.3%,シナハマダラカ,コガタアカ イエカ,シVハシイエカは捕獲されなかった.

全期間を通じて,シナハマダラカが12.9%にて 他の地域よりも僅かに多く,オホクロヤブカが 2.8%にて他の地域よりも遙かに少ない.

 水田地においては6月は,ゴガタアカイエカ

      第3図

68.7%,アカイエカ14.6%,シナハマダラカ・5.1

%にて,7月はコガタアカイエカ47.1%,シナ ハマダラカ20.4%,8月越コガタアカイエカ 35.0%,アカイエカ27.5%,オホクロヤブカ 26.3%となり,9月はオホクロヤブカが46.2%

に増加し,コガ、タアカイエカ25.8%,アカイエ カ24.7%となり,シロハシイエカは捕獲されず,

10月はオホクロヤブカ77.0%,・コガタアカイエ カ16.5%にて,シナハマダラカ,シロハシイエ カは捕獲されなかった.全期間を通じてシナハ マダラカは市街地より少なく9.1%,オホクロ 地域別,月別に見たる各種:重要雌成虫の百分率(昭26)

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(10)

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 山麓地においては6月はコガタアカイエカ 70.4%,シナハマダラカ(;.7%であり,7月は

コガタアカイエカ42.0%,シナハマダラカ24.6

%,8月はコガタアカイエカ,アカイエカは 30〜40%にて,シナハマダラカは3.7%とな

り,オホクロヤブカが増加して21.1%となる.

9月はオホクロヤブヵ6〔}.5%となり.10月オホ クロヤブカ65.4%にて,シナハマダラカ,シロ ハシイェカは捕獲されず,全期間を通じてコガ タアカイエカが最高にて,47.9%,シナハダマ ラカ12.O%,アカイエカ14.8%,オホクロヤブ カ14.7%であった.

第5章 総括並に考按

 以上の調査成績を総括し,昭和25年度の成績 と比較,考按するに次の如くである,

 1)蚊 の 種 類

 或限定された地域に如何なる蚊の種類が発生 するかを決定するには,1力年間の調査では誠 に不充分と云わねばならない.蚊の地理的な分 布状態は,主として気候的な条件に左右される ことが多い.熱帯地区に産する蚊と,温帯地区 に発生する蚊と,寒帯地区に発生する蚊とは,

その種属の気温に対する適応性により,自から 異なるものである.Gil17)の1938年になしたマ ラリア気候帯によると,沖縄以南を熱帯とな し,北海道の南端より樺太の旧日・ソ境界線ま でを温帯となし,その中間位の本州並に九州,

四国を亜熱帯として流行病学的な区分をなして いる,余は昭和25年度に,:福井県鯖江地方の蚊 を採集し,分類したと同じ方法によって,昭和 26年度も同じ地域の蚊を採集し分類するに,・5 属16種類にて捕獲数の多い二種はシナハマダラ カ,アカイエカ,コガタアカイエカ,シロハシ イェカ,オホクロヤブカにて,ハマダラカ属の エセシナハマダラカ, イエカ属のトラフカクイ カ,ナガハシカ属のキンバラナガハシカは昭和 26年度は捕獲することが出来なかった,本年に なって始めてヤブカ属のエゾヤブカが捕獲され た.エゾヤブカは北海道,樺太に普通に発生す るが,本州には少ないとされている.本年の成 績にて特に目立つことは,コガ,S アカイエカが 多く捕獲iされ,捕獲i総数2,176匹中1,029匹に て47.2%を占め,昭和25年度の22.9%に比し2

倍強にて,特に6月は総数854匹中574匹にて

67.2%を占めた.

 結局,福井県鯖江地方にて日没後,人家内に て捕獲した蚊の2力年間の成績を見るに,第1         ヨ表の如くにして6属19種類にて,ハマダラカ属 では,シナハマダラカ,妻入シナハマダラカ.

イエカ属では,アカイエカ,コガタアカイエカ,

シロハシイェカ,カラツイエカ,セシロイェカ,

ハマダラウスカ,トラフカクイカ,コガタクロ ウスカ,ミツボシイ山導.ヌマカ属ではアシマ ダラヌマカ.クロヤブカ属ではオホクロヤブカ,

ヤブカ属では,ヒトスジシマカ,トウゴウヤブ カ,ヤマトヤブカ,キンイロヤブカ,エゾヤブ カ.ナガハシカ属では,キンバラナガハシカに て,エセシナハマダラカ,カラツイェカ,セシ ロイエカ,ハマダラウスカ,トラフカクイカ,

コガタクロウスカ,ミツボシイエカ,アシマダ ラヌマカ,ヒトスジシマカ,トウゴウヤブカ,

ヤマトヤブカ,キンイロヤブカ,エゾヤブカ,

キンバラナガハシカは発生数が少なかった.

 更にナガスネカ属に属する一種があるがこれ は越冬幼虫より発見したものである.

 2)季節的消長

 蚊の季節的な消長を論ずるには,蚊の生存に 関する内因的な条件は別として,最も適した気 温,湿度を基礎として考えらるべきものであ

る,

 成虫にとって水は湿度に対する間接的な問題 であるが,幼虫には絶対的に必要なものにて,

幼虫の生棲個所の水の量,温度,水の流動,日

[ sc 1

(11)

福井県鯖江地方に於ける蚊の種類並にその季節的消長について 739

光,水素イオン濃度,溶解物質,澗濁性,食物,

駆蚊植物,水面被覆物質,捕食動物等,種々幼 虫の生活に関係のある事項が挙げられている.

或限定された地域の気候は年・kt左程変化のある ものではない.故にその地域の蚊の消長曲線も 左程変化するものではない.春季気温の上昇に

ともなう蚊の覚醒,梅雨期後における蚊の増加,

酷暑期,乾燥期における蚊の減少,秋冷期及び 降雨による発生の再燃,気温降下による蚊の消 退,冬眠等々,その土地の気候に応じて年k週 期的に繰返されているものである.ただし蚊の 種の温度,湿度,乾燥に対する抵抗力により各 種間の年々の発生数の多少は考えられることで ある.余の昭和26年度の福井県における調査成 績を見るに5月中旬より平均気温15℃以上と なり,6月初旬,20℃内となり,7月,8月共 に20℃内にて,9月下旬になり18.3℃とな り,10月初旬17.6℃となっている.降水量は 7月下旬より8月末日野極めて少なく,乾燥期 が続いた.これを昭和25年度と比較するに第6 表の如くにして,平均気温は殆んど同一である が昭和26年度の7月下旬より8月末日迄は降水

量が僅かに13.Ommにて,昭和25年度の乾燥

;期は7月中旬の13.Ommと8月中旬の7.7mm だけであるのに比較すると非常な差異があっ た.気象と蚊の発生消長は第1図の如くにし て,6月下旬より7月上旬に亘る大きな山と,

9月中旬より9月下旬に亘る低い山の2山を見 ることが出来る.オホクロヤブカは8月申旬よ り上昇し,9月中旬を頂点となし,10月初旬に 亘る1山型である.昭和25年に見られた8月下 旬の山は,本年度は乾燥期が長く,甚しかった ため出現を見なかった.昭和26年度において,

コガタアカイエカが前年度の百分率の2倍強を 示したことは,主として6月の発生の多かった

ことによるものにて,上記の乾燥とは関係ない ようである.各地域別に見た蚊の発生数の調査 成績は,第4表によると,市街地は一番少く,

次に水田地,山麓地となっている.

 特にオホクロヤブカ,シナハマダラカは山麓 地に多く,これに反し,シロハシ イエカの市街 地に割合に多いのは,更に研究を要することで

ある.

第6章  結

 昭和26年6月10Hより同年10月3日迄の期間

申,昭和25年度と同一なる採集方法により毎週 土曜日の日没後30分間,人家内で採集人100人 に依頼して,蚊の成虫雄685匹,雌2,176匹を 捕獲し,これを調査し,昭和25年度の成績と比 するに次の如き成績を得た.

 1.分類するにハマダラカ属1種類,イエカ 属8種類,ヌマカ属1種:類,クロヤブカ属1種 類,ヤブカ属5種類の5属16種類で,捕獲総数 は昭和25年度の約半数である.昭和26年度に始 めて捕獲された蚊はヤブカ属のエゾヤプカに

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ナガハシカ属1種類,ナガスネカ属1種類の7

論 属20種類である.

 2.雄:雌の個体数の百分率は総数より見る に31.,5%にて,昭和25年度の2倍である.種別 による百分率は,アカイエカ,コガタアカイエ カ,オホクロヤブカ,シナハマダラカ,シロハ シイエカの順序にて,コガタアカイエカを除き 捕獲された雌の総数の順位と一致した.百分率 の最:も小さかった月は8月上旬の2.6%にて,

乾燥期による蚊の発生の停止を意味する.

 3.蚊の発生と温度との関係は,発生の停止 温度は5℃であり,22〜27℃は最:も多く発 生し,32℃になると著しく低下する.

 4.食物の蚊の幼虫の発育に及ぼす影響は,

余のヤブカ属の実験では,18℃においで食餌 が与えられているときは8日目に化蠕が始ま

[ 91 ]

(12)

り,10日目に羽化が始まったが,食飼の与えら れなかった時は発育が抑制された.

5.福井県鯖江地方における,春季の蚊の覚 醒は4月初旬に,アカイエカ,シナハマダラカ の越冬成虫の散発より始まり,5月下旬より,

コガタアカイエカ,セシロイエカ,シロハシイ エカが発生し,6月より本格的な発生期となり,

9月下旬に入り,シロハシイエカが先ず消え,

10月に入り,オホクロヤプカが先ず消え,次に シナハマダラカ,アカイエカの順に人家内より 消失する.

 6.蚊の発生状況は6月中旬より7月中旬ま でが最:盛期にて,高い大きな山を作り,9月下 旬に低い山を作った.昭和26年度の消長はオホ クロヤブカを除き,各蚊種とも2山型を示し,

8月の蚊の減少は乾燥の長かったためによるも のである.

 7.月別に見た各四種の個体百分率は6月,

7月は,コガタアカイエカが最高にて67,2%と 39.2%の値を示し,9月,10月は,オホクロヤ ブカが最高にて4δ.6%と68.1%とであった。シ ナハマダラカの高率の月は7月にて,23.4%で

あった.

 8.地域別に見た蚊の発生状況は,昭和25年,

昭和26年とも山麓地が最も多く,市街地が最:も 少ない.シナハマダラカ,オホクロヤプカは山 麓地に多く,アカイエカ,コガタアカイエカは 水田地,山麓地に多く,シロハシイエカは水田 地が最も少ない.

 9.地域別,月別に見た各蚊種の個体百分率 は,シナハマダラカは6月,8月,9月は各;地 域とも低率にて,7月市街地にて24.4%,水田 地にて20.4%,山麓地にて24.6%にて,10月は 各地域とも発生を見なかった.アカイエカは市 街地では,6月28.O%,8月30.9%にて,水田 地では8月27.5%,山麓地では8月,33.0%で あった.コがクアカィエカは各・地域とも6月が 高率にて60〜70%であり,月が進むに従がい 低下した.シ.ロハシイエカは市街地において,

6月33.5%にて最も大きな値を示した.オホク ロヤブカは各地域とも8月より率が上昇し,9 月水田地46.2%,山麓地60.5%であるが市街地 は僅かに13.5%であった.

 欄記するに臨み恩師谷教援の御懇篤なる御指導並に 御校閲に対し深甚なる謝意を表す。

文 1)佐々學,浅沼靖:蚊を調べる人のために;71

(1948)東京出版株式会社. 2)S・Yamaguti and Walter J. La Casse: Mosqui to fauna of Japan and Korea. Office of the Surgeon H. Q.

8tb. Army Apo,343,:100,(1950) 3)木水 英夫:福井県鯖江地方の越冬幼虫より羽化した Ortbopodomyia anopheloidesの形態について,衛

生動物,5(1,2); 25一一28,1952.   4)細 井輝彦:蚊の生物学:143・一144.東京河出書房

(1948)  5)二二輝彦=蚊の生物学=152,東 京河出書房(1948)  6)細井me彦 :蚊の生物 学=160,東:京河出書房,(1948) 7)徳尿雅明:

医用昆虫学,上巻・761,診療と経験杜,大阪,

(昭7)

( 92 ]

参照

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